ジュニアアルペンスキー選手の競技継続の予測とその決定過程に影響を与える因子
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(2) 冬季スポーツ研究 第9巻1号 17-25, 2006 (北海道教育大学冬季スポーツ教育研究センター紀要). ジュニアアルペンスキー選手の競技継続の予測とその決定過程に 影響を与える因子 加藤 清孝1),小林 規2) 1)国際教養大学,北海道教育大学冬季スポーツ教育研究センター学外研究員,2)北海道教育大学冬 季スポーツ教育研究センター The Decision Making Process of Junior Racers Regarding the Continuation of Alpine Competitions Kiyotaka KATO1) and Tadashi KOBAYASHI2) Akita International University, 193- 2 Aza Okutsubakidai, Tsubakigawa, Yuwa, Akita 010-1211, Japan.1), Research and Education Center for Winter Sports, Hokkaido University of Education, 5-3 Ainosato, Kita-ku, Sapporo, Hokkaido 002-8502, Japan2 Abstract The theory of planned behavior [1, 2], TPB, was used to predict the middle school alpine racers’ intentions toward the behavior, continuing alpine competitions after graduation, and to analyze the factors that affected their intentions. Multiple regression analysis revealed that TPB can predict intentions well. Only subjective norms had significant impact on intentions whereas two other factors, attitudes toward the behavior and perceived behavioral controls had no significant impact on intentions. In order to confirm whether there are any differences in the results of racers dependent on region of residence, additional multiple regression analyses were conducted after the respondents were split into two blocs, one of which contains relatively better regions for skiing, bloc A, and another which is relatively worse for skiing, bloc B. According to the results, subjective norms had a large impact on intentions for both blocs. Attitudes had a small impact on intentions for bloc A, while no impact on intention in bloc B. Although there was no significant impact of perceived behavioral controls on intentions for either bloc, there was a significant positive relationship between perceived behavioral controls and subjective norms. It was concluded that subjective norms play an important role in the racers’ decision making process concerning whether or not to continue alpine competitions. Theoretical and practical implications of these findings are discussed. [Keywords] Theory of Planned Behavior, Alpine Competitions, Decision Making Process. 緒言. え,ここ数年スキー場経営会社の破綻やスキー. レジャー白書によると[19],日本のスキー人. 場の閉鎖が相次いでいる.また,一般のスキー. 口は1994年の1720万人より減り続け,2005. ヤーが減少する一方で,競技スキーの分野では. 年には710万人にまで減少した.このスキー人. ジュニア選手の減少が深刻な問題となってきて. 口の減少はスキー場経営にも大きな影響を与. いる.全国高等学校体育連盟スキー専門部の統 17.
(3) 加藤 清孝,小林 規. 計によると,アルペンスキー部門の登録者数は. ジュニア選手の,競技の継続(もしくは競技か. 2006年までの6年間で3683人から2411人へ. らの離脱)に至るその決定過程を検証すること. と,実に35%も減少している.日本中学校体育. は,これから様々な対策を立てる上での第一歩. 連盟では全国的な集計は行っていないが,ジュ. になると考えられる.そこで本研究は,中学卒. ニアクラブチームのコーチへのインタビューか. 業を控えたアルペンスキー選手を対象. ら(2004年12月17・18日北海道阿寒湖畔ス. に,Planned Behavior 理論 [1, 2]を適用し,. キー場にて実施)中学校でも高校と同様の現象. 卒業後のスキー競技継続の予測と,その決定に. が起きていると考えられ,日本のジュニア競技. 影響を与える因子を検証することを目的とす. 人口が,全体として大きく減少していることが. る.また選手の居住地域による違い(スキー環. 推察される.. 境に恵まれていると思われている地域とそうで. ジュニア選手の減少は,今後多方面にわたっ. はない地域)が,分析結果にどのような影響を. て影響を及ぼすことが考えられるが,第一に選. 及ぼすかも,あわせて検証することとする.. 手強化への影響が心配される.より優秀な選手 をより多く輩出するには,選手数においてより. 行動予測研究. 大きな母集団を持つほうが,その確率が高くな. スキー競技の継続はひとつの「行動」と考え. ると考えられるからである.次に,ジュニア選. られる.人間の行動を予測する研究手法として. 手の減少は,スポーツ用品産業へも大きな影響. もっとも一般的なものは,「態度」に着目した. を与えることが予想される.スキー用品はス. ものといえよう[14].特に期待-価値理論を. ポーツ用具の中では高価な上,さらに選手は種. ベースとしたReasoned Action 理論, TRA,. 目に合わせてスキー板,ストック,ウェアーを. [11] とその応用モデルであるPlanned. 複数用意するのが一般的である.そのため選手. Behavior 理論, TPB, [1, 2],はこれまでに多. 一人一人の用具にかける費用は高額となり,選. くの行動予測の研究に用いられてきた.TRA. 手数の減少はスポーツ用品産業にも影響を与え. によれば,人間の行動はその行動を実際に行お. ると考えられる.これらの観点から,ジュニア. うとする「行動意図」によって予測できるとし. 競技選手の減少は,いわゆる「スキー界」に将. ている.また「行動意図」はその行動に対する. 来にわたって大きな影響を及ぼし続けることが. 「態度」と,「主観的規範」によって影響を受. 予想され,この減少に歯止めをかける対策が早. ける.態度には100を超える定義と500を越え. 急に立てられる必要がある.. る尺度があるといわれるが [14],TRAにおけ. ジュニア選手減少の背景には,スキー競技を. る態度とは,対象の情態的,認知的評価といえ. 始める子供が少なくなったことと,スキー競技. [11],「好き-嫌い」,「楽しい-楽しくな. をやめる子供が多くなったことが考えられる. い」,「ためになる-ためにならない」といっ. が,後者に関して,先のインタビューを行った. た次元で表される評価である [3].また,対象. ジュニアコーチたちは,小学校卒業時もしくは. そのものに対する態度と,行動に対する態度は. 中学校卒業時に,多くのジュニア選手がスキー. 別々に考えられなければならない [11].つま. 競技をやめていくとの認識を持っていることが. り,「テニススクール」(対象)そのものに対. わかった.したがってこれら卒業時期を控えた. する態度と,「テニススクールで週3回レッス. 18.
(4) ジュニアアルペンスキー選手の競技継続の予測とその決定過程に影響を与える因子. ンを受ける」(行動)ことに対する態度は,異. を受ける [4].その概念はBandura [6] が提唱. なる概念として扱われなければならない.. する「自己効力感」に近いものである.TRA. 一方,主観的規範は,行動者が実際にその行. においては,行動意図のみが行動に影響を与え. 動をとった場合,行動者の生活の中で重要な他. る要因であったが,TPBでは,行動のコント. 者はその行動をどう評価するかを,行動者が主. ロール感は行動意図に加え,行動に直接影響を. 観的に認識することである.例えば,中学生に. 及ぼすとしている(図1).. とって重要な他者と考えられる父母が,その中. スポーツや運動の分野においても,多くの行. 学生がその行動を実際に取るべきと考えるかど. 動予測研究がTRAやTPBを用いて行われ,その. うかを,その中学生が主観的に判断した結果が. 予測力は非常に高いとされている.Haggerら. 主観的規範である.Fishbein & Ajzen [11]. [12] は,TRAとTPBを用いて行われた72の先. は,自発的に行われる行動で,態度の対象(つ. 行研究をもとにメタ分析を行い,行動は行動意. まり,行動に対する態度)と行動が一致する限. 図によって統計的に有意に予測され,TRAよ. り,人間の全ての行動はTRAによって予測で. りTPBにおいてその予測力はより高いとしてい. きるとしている.. る.また,行動意図の形成には,3因子の中で. しかしながらAjzenは [1],人間の全ての行. 態度がもっとも大きな影響を及ぼすとの知見を. 動が自発的に行われるわけではないとし. 得ている.またHausenblasら [13] が行ったメ. て,「行動のコントロール感」を新たな構成概. タ分析においても同様に,TRA,TPBともに行. 念としてTRAに加え,TPBを提案した.行動の. 動意図は有意に行動を予測し,TPBにおいて予. コントロール感とは,行動者がその行動を実行. 測力はより高く,行動意図は主観的規範より態. することの困難さ(容易さ)の認識であり,過. 度からより大きな影響を受けている.他のメタ. 去の経験,予想される障害や支障によって影響. 分析やレビューにおいても同様の結果が得られ. 図1 Planed behavior 理論 [2]. 19.
(5) 加藤 清孝,小林 規. ている [7, 10, 11].以上の結果から,スポー. (以後単に,高校スキー部あるいはスキークラ. ツ・運動分野において,TPBは行動をよく予測. ブとします)に入ることの,あなたの態度を,. し,行動意図に影響を与える因子の中では特に. 次の対称的な10組の言葉でそれぞれ表してく. 態度がより大きな影響力を持つと考えられる.. ださい」との問いに対し,10組の意味的に両 極となっている形容詞(ばからしい-かしこ. 研究方法. い,ためになる-ためにならない,そんになるかいがある,悪いこと-良いこと,価値がない-. 調査対象者 2005年2月4日より7日まで,秋. 価値がある,面白くない-面白い,楽しくない-. 田県鹿角市において開催された,第42回全国. 楽しい,気持ちよくない-気持ちが良い,興味. 中学校スキー大会・アルペン競技会に出場した. をそそらない-興味をそそる,魅力的でない-魅. 中学3年生を調査対象とし,質問紙調査を行っ. 力的だ)を,それぞれ「まったくそう思う」を. た.質問紙は開会式に先立ち行われた,各都道. 両極に,「どちらでもない」を中間にして7件. 府県の代表者による監督会議の場で,調査の趣. 法で回答した.. 旨を説明したのち都道府県ごとに配られ,大会. 主観的規範の測定項目は,Ajzen & Driver. 期間中の3年アルペン選手への配布と記入,回. [4] を参考に作成した次の2項目(7件. 収ボックスへの投函が依頼された.その結果. 法),「私にとって大切な人(例えば,家族や. 188名(男子112名,59.6%,女子76. 友人)のほとんどが,私が次のシーズンまで. 名,40.4%)から回答が得られ,そのなかで. に,高校スキー部あるいはスキークラブに所属. 回答に欠損値のない174名(男子104. することを認めている」と「私の人生にとって. 名,59.8%,女子70名,40.2%)のデータを. 大切な人(例えば,家族や友人)のほとんど. 分析に使用した.またこの174名を所属都道府. が,私が次のシーズンまでに,高校スキー部あ. 県によって,スキー環境に比較的恵まれている. るいはスキークラブに所属するべきだと考えて. と思われる地域(全日本スキー連盟の区分によ. いる」を使用した.. る,北海道,東北,甲信越ブロック,83名). 行動のコントロール感はAjzen & Madden. と,それ以外の地域に(北関東,南関東,東. [5] を基に作成した2項目(7件法),「もし私. 海・北陸,西日本ブロック,86名)にわけ,. が望めば,次のシーズンまでに,私は高校ス. 地域の違いによる検討を行った.. キー部あるいはスキークラブに所属することが. 質問紙 質問紙は,態度,主観的規範,行動の. できる」と「次のシーズンまでに,私が高校ス. コントロール感,そして行動意図を測定する項. キー部あるいはスキークラブに所属するかしな. 目と,回答者の属性に関する項目(学年,今大. いかは,ほとんど私しだいである」によって測. 会出場の有無,性別,所属都道府県)によって. 定した.. 構成された.態度の測定には,SD法 [18] に. 行動意図は,Dzewaltowski, Novle, &. 基づいたKang [15] の研究に準拠して作成した. Shaw [8] に準拠した2項目(7件法)「次の. 質問項目を使用した.回答者は「次のシーズン. シーズンまでに,私は高校スキー部あるいはス. (2005-2006年)までに,高校アルペンスキー. キークラブに所属するつもりである」及び「次. 部あるいはアルペンレーシングスキークラブ. のシーズンまでに,私は高校スキー部あるいは. 20.
(6) ジュニアアルペンスキー選手の競技継続の予測とその決定過程に影響を与える因子. スキークラブに所属することを,すでに決めて. は一般的水準と考えられる.70以上で,内的整. いる」と,Kang [15] に基づいた1項目(11件. 合性は高く尺度の信頼性は得られた.一方,行. 法)「次のシーズンまでに,私が高校スキー部. 動のコントロール感のα係数は.70を大きく下. あるいはスキークラブに所属する可能性は」に. 回り(α= .54),満足できる信頼性が得られ. よって測定した.. なかった.したがって,以後の分析から行動の. なおデータ収集に先立ち2005年1月に,秋田. コントロール感を除外するのが適当と考えられ. 県の中学生アルペン選手13名を対象に予備調. たが,α係数が.50以上であることと. 査を行い,わかりにくい質問文などを訂正した. [17],2004),行動のコントロール感はTPB. のち,質問紙を完成した.. の重要な構成概念であることから,そのまま説 明変数として残すこととした.. 分析方法 TPBを適用し中学生スキーヤーの卒. TPBを適用し中学生スキーヤーの卒業後のス. 業後のスキー競技継続の予測と,その決定課程. キー競技継続を予測するため,行動意図を従属. に影響を与える因子を検証するため,強制投入. 変数,態度,主観的規範,行動のコントロール. 法による重回帰分析を行った.統計解析には. 感を説明変数にし,強制投入法による重回帰分. SPSS 12.0 を用いた.. 析を行った.はじめに表1に各変数間の相関係 数を示す.変数間の全ての相関係数は,1%水. 結果. 準で有意であった.重回帰分析の結果から(表 2),TPBは態度,主観的規範,行動のコント. 行動のコントロール感を除くすべてのα係数. ロール感の3変数で分散の50%を説明し,中学 生スキーヤーの卒業後のスキー競技の継続に対. 表1 各変数間の相関係数マトリクス. 表2 予測モデルと記述統計量. 21.
(7) 加藤 清孝,小林 規. する意図を有意に説明することがわかった. 考察. (F(3, 170) = 55.60, p < .01).各変数から 行動意図への標準偏回帰係数では,主観的規範. 本研究では,中学3年生のアルペン競技ス. のみが有意な値を示した(β = .62, p <. キーヤーを対象に,中学卒業後のスキー競技継. .01).. 続の予測とその決定過程に関し,TPBを適用し. 次に回答者を所属都道府県によって,スキー. 検証を行った.先行研究 [9, 10, 12, 13] が示. 環境に比較的恵まれていると思われる地域(ブ. すとおり,本研究においてもTPBの説明変数. ロック A,TPB-A)と,そうではないと思わ. は,中学卒業後の「スキー競技の継続」を実行. れる地域(ブロック B,TPB-B)にわけ,重回. することの意図を高く説明する結果となった.. 帰分析を行った(表2).その結果,TPBの説. 本研究では,中学卒業後に,実際にスキー競技. 明変数はブロックAにおいて行動意図の分散の. を継続したか否かの追跡調査を行っていない. 53% (F(3, 79) = 30.20, p < .01),ブロック. が,Fishbein & Ajzen [11] によると,行動意. Bにおいて48%( F(3, 82) = 24.98, p < .01). 図が特定の行動(action),目標(target),状況. をそれぞれ説明し,TPBは中学生スキーヤーの. (context),時間(time)を考慮して測定されるな. 卒業後のスキー競技の継続の意図を有意に説明. ら,行動意図の行動の予測力は高くなるとして. した.各変数の標準偏回帰係数では,両ブロッ. いる.本研究の行動意図測定項目には,次の. クにおいて主観的規範が有意に行動意図に影響. シーズンまでに(時間)・高校(状況)・ス. を及ぼした(ブロックA・Bそれぞれ,β =. キー部(目標)に・所属する(行動),とこれ. .64, p < .01, β = .58, p < .01).態度に関. らの基準がすべて含まれている.したがって,. しては,ブロックAにおいて有意に行動意図を. 本研究においても行動意図は行動をよく予測. 規定したが(β = .17, p = .04),ブロックB. し,行動意図に影響を与えた説明変数は,行動. においては有意な値を示さなかった.一方行動. 意図を媒介して行動に間接的に影響を与えると. のコントロール感は,両ブロックにおいても行. 推察できる.すなわち,TPBの説明因子である. 動意図に対し,有意な影響力を示さなかった. 態度,主観的規範,行動のコントロール感は,. が,ブロックBにおいては標準偏回帰係数. スキー競技を継続するという行動を,行動意図. が.17(p = .07)で,行動意図に対する緩やか. を通して規定すると考えられる.. な影響力が推察された.. しかしながら,行動意図を規定する説明因子. Kline [16] は偏回帰係数の大きさから,絶対. の説明力の大きさに,先行研究との違いが見ら. 値で.10以下を 小さな ,.30程度を 中程度. れた.これまでに実施されたスポーツ・運動行. の ,そして.50以上を 大きな 効果としている. 動分野のTPBとTRAに関するほとんどのメタ分. が,以上の結果から,主観的規範は行動意図に. 析では,態度が主観的規範を上回る行動意図へ. 対し大きな影響力をもち,態度はブロックAに. の説明力を示している [9, 10, 12, 13].しかし. おいて,行動のコントロール感はブロックBに. ながら本研究では,全ての重回帰分析において. おいて,小から中程度の影響力を持つことが示. 主観的規範の説明力が態度を上回った.さらに. された.. 主観的規範は全ての重回帰分析において,大き な影響を 行動意図に及ぼしたが [16],一方で. 22.
(8) ジュニアアルペンスキー選手の競技継続の予測とその決定過程に影響を与える因子. 態度は,ブロックAの分析においてのみ小さな. も見られた.態度はブロックAにおいてのみ,. 影響が認められた.また行動のコントロール感. 行動意図への有意な影響力が見られたが,全て. に関しては,偏回帰係数の値からブロックBに. の分析において態度と主観的規範の間にも有意. おいてわずかな影響力が推察されたが,いずれ. な相関関係が認められた.つまり,スキー競技. の分析においても行動意図への有意な説明力は. を継続することは楽しく価値があることだと考. 認められなかった.. えている選手は,同時にその選手にとって重要. これら本研究の結果と多くの先行研究で得ら. な他者は,その選手がスキー競技を継続するこ. れた知見との違いは,スキー競技の特性にある. とを認めている,と感じていることが推察され. と考えられる.スキー競技は活動に非常に多く. る.よって態度も,主観的規範を通して間接的. の経費がかかるスポーツである.用具のみなら. に行動意図に影響を及ぼしていると考えられ. ず,合宿や大会遠征などでも多額の経費が必要. る.. となる.本研究は全国中学スキー大会の参加者. A・B両ブロックともで,主観的規範は行動. からデータを得たが,参加者はいわばジュニア. 意図に大きな影響を及ぼしたが,態度に関して. のトップ選手であり,現在のレベルに到達する. は異なる結果となった.比較的スキー環境に恵. までに,すでに多くの経済的援助を受けてきた. まれていると考えられるブロックAにおいて,. ことと、卒業後のスキー競技継続には、更なる. 態度が行動意図に対し有意な規定力を示したの. 援助が必要であることを,回答者は自覚してい. は,選手個人のスキー競技継続に対する情態的. ると考えられる.また、これらの経済的負担は. 認知的評価が,競技継続の意図に対し直接的に. 一般的に父母が担っていると考えると、回答者. 反映されることを意味する.一方,環境が比較. の主観的規範の対象者は父母と推察される。し. 的厳しいと考えられるブロックBにおいては,. たがって、すでに父母からの理解や承認を得ら. そのような個人の評価の影響力は直接的には認. れている者ほど,スキー競技継続を強く決めて. められなかった.おそらくこの違いはスキー環. おり,それはたとえ本人がスキー競技を継続す. 境の違いがそのまま現れたものと考えられる.. ることは楽しく価値があることだと考えていて. ブロックBの選手がスキー競技を行うことは,. も,この父母の理解や承認なしには,競技の継. 日常のトレーニング場へのアクセスや大会地へ. 続は難しいことを意味していると考えられる.. の遠征費など,経費の面を考えても,ブロック. また,行動のコントロール感は行動意図に有. Aの選手よりその負担は重くなることが考えら. 意な影響力を示さなかったが,行動のコント. れる.そしてこれら経費を負担するのは父母で. ロール感単独でではなく,主観的規範と関連し. あると考えられる.ブロックBに所属する選手. て行動意図に影響を及ぼしていることが考えら. たちは,この父母の負担の大きさを認識し,ス. れる.行動のコントロール感と主観的規範との. キー競技継続に対する自分の評価ではなく,父. 間には高い相関関係が認められた(表2).し. 母の理解や承認をブロックAの選手よりも優先. たがって,行動のコントロール感は主観的規範. させていることが推察される.. に影響を及ぼし,主観的規範を介在して間接的. 本研究の結果から,スキー競技の継続にはお. に行動意図に影響を与えていると推察できる.. そらく父母が,重要な役割を担っていることが. またこのことは,態度と主観的規範との関係に. わかった.したがってジュニアスキー選手の減. 23.
(9) 加藤 清孝,小林 規. 少を食い止めるためには,父母の子供のスキー 競技に対する理解を高めていくための方策がと. 6.. られる必要があると思われる.つまり,スキー 競技にかかわる者たちは,スキー競技を通して. 7.. 得られる身体的,心理的,社会的効果を父母に 訴える活動,またその効果を最大限に引き出す 環境作りを図っていく必要があるのではないだ ろうか.. 8.. 本研究では,中学3年アルペンスキー競技選 手を対象に,中学卒業後のスキー競技継続の決 定過程に影響を及ぼす因子を検証したが,今後 の研究課題として,選手の決定過程に最も強い 影響力を持つと推察される,父母の子のスキー. 9.. 競技継続に対する理解や承認に影響を与える因 子を,検証する必要があると考えられる. 10.. 参考文献 11. 1.. 2.. 3.. 4.. 5.. 24. Ajzen, I. (1987). Attitudes, traits, and actions: Dispositional prediction of behavior in personality and social psychology. In l. Berkowitz (ed.), advances in experimental social psychology (Vol. 20, pp. 1-63). New York: Academic Press. Ajzen, I. (1991). The theory of planned behavior. Organizational Behavior and Human Decision Processes, 50, 179-2 1 Ajzen, I. (2001). Nature and operation of attitudes. In s. T. Fiske, d. L. Schacter, & c zahn-waxler (ed.), annual review of psychology (pp. 27-58). Palo Alto, CA: Annual Reviews. Ajzen, I. & Driver, B. L. (1992). Application of the theory of planned behavior to leisure choice. Journal of Leisure Research, 24,207-224. Ajzen, I. & Madden, T. J. (1986). Prediction of goal-directed behavior: Attitudes, intentions, and perceived behavioral control. Journal of Experimental Social Psychology,. 12.. 13.. 14.. 22, 453-474. Bandura, A. (1997). Self-efficacy: The exercise of control.New York, NY: W. H. Freeman and Company. Blue, C. L. (1995). The predictive capacity of the theory of reasoned action and the theory of planned behavior in exercise research: An integrated literature review. Research in Nursing & Health, 18, 105-121. Dzewaltowski, D. A., Noble, J. M., & Shaw, J. M. (1990). Physical activity participation: Social cognitive theory versus the theories of reasoned action and planned behavior, Journal of Sports & Exercise Psychology, 12, 388-405. Godin, G. (1993). The theories of reasoned action and planned behavior: Overview of findings, emerging research problems and usefulness for exercise promotion. Journal of Applied Sport Psychology, 5, 141-157. Godin, G. (1994). Theories of reasoned action and planed behavior: Usefulness for exercise promotion. Medicine and Science in Sports and Exercise, 1391-1394. Fishbein, M., & Ajzen, I. (1975). Belief, attitudes, intention, and behavior: An introduction to theory and research.Reading, MA: Addison-Wesley. Hagger, M. S., Chatzisarantis, N. L. D., & Biddle, S. J. H. (2002). A meta-analytic review of the theories of reasoned action and planned behavior in physical activity: Predictive validity and the contribution of additional variables. Journal of Sport & Exercise Psychology, 24, 3-32. Hausenblas, H. A., Carron, A. V., & Mack, D. E. (1997). Applicaiton of the theories of reasoned action and planned behavior to exercise behavior: A meta-analysis. Journal of Sport & Exercise Psychology, 19, 36-51. Kang, J. (1996). Decision-making processes for the initiation of physical activity: The moderating effects of self-esteem and action control on the relationships among attitudes, self-image congruency, and intentions to exercise.:Unpublished doctral dissertation, University of Michigan, Ann.
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