Posted at the Institutional Resources for Unique Collection and Academic Archives at Tokyo Dental College, Available from http://ir.tdc.ac.jp/
Title
歯根破折後の血流の違いによる歯髄組織の創傷治癒
Author(s)
伊藤, 幸太; 小林, 史卓; 武田, 侑大; 木所, 亮; 松岡,
海地; 松坂, 賢一; 井上, 孝
Journal
歯科学報, 112(2): 159-159
URL
http://hdl.handle.net/10130/2742
Right
目的:チタンは生体親和性が高く,イオン化しにく いため,デンタルインプラント治療の材料に用いら れている。しかし,異種金属との接触によりイオン が溶出する可能性があり,インプラント埋入後の患 者の血液中からチタンイオンが検出されたとの報告 もある。また,インプラントの失敗原因として,チ タンに対するアレルギー反応との関連を示唆する報 告もある。本研究では,チタンイオンが免疫担当細 胞に及ぼす影響について,マウス脾細胞を用い,サ イトカインレベルおよび細胞数を指標にして検討した。 方 法:5∼10週 齢 の C57BL/6マ ウ ス,BALB/c マ ウスより採取した脾細胞を,10%FBS を含む RPMI 1640培 養 液 に5.0×105/ml に 調 整 し,96-well 細 胞 培養プレートに播種した。培養液に,濃度4.5∼72 ppm のチタンイオンを添加し,対照群は無添加と した。細胞数の変化について,XTT 細胞増殖 Assey Kit を用いて,チタンイオン添加7日後まで,継時 的に検討した。また,培養4日後に LPS を添加し, その17時間後のサイトカインレベルをMulti-Analyte-ELISAKit で 調 べ た。統 計 学 的 解 析
は,Bonfer-roni s Multiple Comparison Test を用い,p<0.05 を有意差とした。 成績および考察:細胞数の変化を調べた結果は,両 系統のマウス脾細胞ともチタンイオン添加10時間後 から濃度依存的に細胞の増殖がみられ,18ppm チ タンイオン添加群では,7日後に対照群に比べ有意 (BALB/c : p<0.05,C57BL/6:p<0.01)な増殖 がみられた。LPS 添加後の Malti-AnlyteELISAKit の結果では,両系統のマウスとも9ppm チタンイ オン添加群で IL-1β,IL-6,IL-10,IFNγ,TNFα,GM -CSF のレベルが対照群より有意(p<0.02)に高 かった。これらの結果から,チタンイオン添加群で サイトカインレベルが上昇したのは,細胞増殖によ るものと考えられたため,細胞数を考慮してサイト カインレベルを評価したところ,チタンイオン添加 によってサイトカインレベルに変化はみられない か,逆に対照群よりも減少している傾向がみられ た。以上のように,チタンイオンはマウス脾細胞の 増殖を促すため,LPS 刺激により誘発されるサイ トカインレベルが上昇することがわかった。 目的:生活歯が歯根破折した場合,歯髄組織中の血 流変化が起きていることが考えられる。しかしなが ら,その細胞動態に関して詳しく検索した研究は少 ない。本研究の目的は,生活歯の歯根破折を想定し た実験モデルを作成し,歯髄組織の治癒過程を歯冠 側(血流の低下部位)と歯根側(血流の正常部位) に分けて検索することである。 方法:実験動物には250∼300g の SD 系雄性ラット を用いた。麻酔下にて下顎右側第1臼歯近心根部に 粘膜 Flap 形成後,骨面中央部をラウンドバー(直 径1mm)にて切断し歯冠側および歯根側に分離し た。複根歯のため歯冠側は近心根以外の根尖を伝う 血流低下群,歯根側は根尖から直接血流が入る群と した。切断後,1,2,3,5および7日後,通法 に従い,H-E 染色標本を作製した。免疫組織化学染 色として,細胞増殖のマーカーである PCNA,神経 幹細胞および象牙芽細胞のマーカーである Nestin を施し検索した。 成績:H-E 染色では,1日例で歯冠側および歯根側 いずれも切断面に象牙芽細胞の消失およびフィブリ ン網の形成,2および3日例では,炎症性細胞の浸 潤と毛細血管および膠原線維の増生が認められた。 5日例では,血管腔内の充血が観察され,7日例は 歯根側で切断面に硝子様を呈した結合組織の形成が 観察された。 PCNA は,歯冠側および歯根側いずれも1およ び2日例では認められず,3日例では血管周囲に強 い陽性が観察され,さらに歯冠側で歯髄全体に陽性 を認めた。また5日例では切断面に陽性細胞が散見 されたが,7日例ではわずかに認められた。Nestin は,陽性細胞が1日例で歯冠側および歯根側いずれ も象牙芽細胞層に認められ,2日例では象牙芽細胞 下層に散見された。また3日例では切断面周囲にも 陽性細胞が認められ,さらに歯根側では歯髄全体に 陽性を示した。5および7日例では歯冠側において 象牙芽細胞下層で,歯根側では歯髄全体で陽性が観 察された。 考察:PCNA の結果から3日例において歯冠側で 細胞増殖能が強かったことから,歯髄細胞の血流低 下環境への抵抗性と残存した毛細血管の周囲に存在 する細胞の増殖・活性化によるものと考えられた。 ま た3,5お よ び7日 例 で 歯 根 側 は 歯 髄 全 域 に Nestin 陽性が観察されたことから,未分化間葉系 細胞が象牙芽細胞への分化を起こしたことが考えら れた。