原子から宇宙まで I
第一回 (4月7日)
Introduction 物理学とは何か?
法政大学 兼任講師
福川賢治
1
自己紹介
1984 年生まれ (31歳) 経歴
2003 年 京都大学理学部入学
2007 年 京都大学大学院理学研究科物理学・宇宙物理学専攻 に 進学 2012 年 博士(理学) 取得
2012 年 4月 理化学研究所仁科加速器研究センター 特別研究員 2013 年 11月 INFN Catania, postdoctoral fellow
2015 年 4 月 大阪大学核物理学研究センター (大阪工業大学非常勤講師と兼任)
2016 年 4 月 工学院大学学習支援センター講師 (法政大学兼任講師)
研究の興味: 核力と原子核、中性子星、クォークから見たバリオン相互作用 (この辺りは、さわりだけ後期で取り扱う予定です)
趣味: 将棋、カラオケなど (最近は見る専門ですが・・・)
2
この授業の進め方
詳しくは、Webシラバスを参照してほしい。
URL: https://syllabus.hosei.ac.jp/web/show.php
・取り扱う内容 (普通の力学)
1. 物理学の基礎: 単位、基本的な物理量(時間・長さ・質量)、 2. 運動法則と種々の運動: 様々な保存則
3. 熱力学の基本: 気体反応・分子運動論
を歴史的観点を交えながら説明していく (予定)。 授業の流れ
0-35 分 説明または演習 1
35-45 分 現代的な話題 (休憩) できるだけ用意したい。 45-80 分 説明または演習 2
80分 - 感想・アンケート等 (出席確認をかねて) (授業に関係することであれば基本的には何でも)
注:
進度や難易度によっては予定は前後することがあります3
評価について
1. 成績評価は基本的にテストによる (80%程度を予定)
・テスト問題は、記述式問題と計算問題を大問 2 問ずつ程度予定。 詳細は近づいたら発表する。
・必要な数学の公式は書く予定。
2. 試験時のやむを得ない欠席 (病気、自己、忌引等)については、 追試験について、事務に確認する必要があるのでなるべく早めに 相談してください。
3. その他にレポート問題 (2-3回 ?)や、出席点を加味して評価する 4. A+ (90点以上), A (80点以上), B (70点以上), C (60点以上), D (59点以下), E (未受験) で評価
5. 平均点が著しく高い(低い)場合は、調整する。
4
レポートについて
1. レポートは簡単な計算問題、論述問題 (講義で扱いきれなかった事)を扱う。
2. 2 週間後の授業の最初を締め切りとし、 一部の問題について解説を加える予定。 3. 提出方法 ① 授業時に回収する ② 直接手渡す
③ 電子ファイルで下のアドレスに送る (件名を講義レポートとすること)。
4. A4 で提出してください。手書きか、電子ファイルかは問いません。
私のオフィスアワー・連絡等について
1. 授業期間中の木曜日:10 時から 最低17 時くらいまでは 法政大学内にいる予定。
2. 2 限開始前は教授室 (58 年館 2 階)、3 限終了後はボアソナードタワー 8 階の物理研究室 (812号室) にいるようにするつもりです。
3. その他の時間は基本的に e-mail で随時(成績をつけるまで)受け付ける。 連絡先: [email protected]
3 営業日以内には返信する予定。
それまでに返信がない場合は申し訳ないですがもう一回連絡してください。
5
授業を受ける際の注意事項
1. 試験における不正行為は厳に慎んでください
2. 私語は慎んでください。ゆっくりめに授業を行うつもりですので、 質問はいつでも構いません。
3. 食事は控えてください。
水分補給は周囲のものを汚さないように気をつけて行ってください。 4. トイレ等は自由に行っていただいて構いません。
5. スマートフォン・携帯電話類はマナーモードか 電源切でお願いします。
講義情報のURL
私の個人 HP (https://sites.google.com/site/kfukukawa00/hosei)に 講義ノート・スライド・レポート (問題・解答)の PDF、
そのほかアナウンス をアップロードするので、 随時チェックしてください。
数学について
ニュートン以前の運動学はもっぱら幾何学的方法によっていた。 (Principia でもそうなっており、そのため非常に分かりにくい)
現在では、微積分が確立しており、高校や大学初級の教科書レベルで できる計算がある程度ある。
(ちなみにこのことができる、ということは全く自明ではない) この授業では、必要最低限と思われる数学
(簡単な微分・積分、三角関数等) の導出も行う予定である。
中学数学 (分配法則を用いた簡単な文字式の展開) 程度は仮定する予定。
第一回 物理学とは何か?
物理学といっても、どのようなものであるか?という質問には、 完全には答えられない。現在の学問体系はあまりに複雑。
主な物理学 (太字はある程度この1年で触れることを目指している科目) 古典物理学 (19世紀までに概ね成立したと考えられる学問)
1. 古典(ニュートン)力学…この授業で取り扱う。
物体の運動と、そこに働く力との関係を考察。 17世紀-19世紀にかけて大きく発展。
(解析力学や、連続体力学 (流体力学や弾性体力学)につながる) 2. 光学 … 光の性質や物質との相互作用を研究。
幾何光学と波動光学(電磁気学の一部ともみなされる)に分かれる。 3. 電磁気学…電気や磁気に関する現象を取り扱う。18世紀頃から発展し、 19世紀に古典理論が、20世紀半ばに量子理論が完成。
(Tomonaga, Schwinger, Feynman)
4. 熱力学 … 熱に関するマクロな現象を取り扱い諸量の関係を調べる。 統計力学…ミクロな視点からマクロな熱力学的な関係を研究。
(原子仮説をその基礎におく)
5. 量子論… 非常に小さい物体 (分子・原子・原子核等)を記述する理論。 主に 20 世紀初頭から 1970 年代 - 80年代にかけて発展。 原子核より小さい物質については、未解決な問題が多数ある。 6. 相対性理論…アルバート・アインシュタインにより発表された理論。
物質が光の速さと比べ無視できない速さで動いている時(特殊相対論, 1905年)と 重力が非常に大きい場合の理論 (一般相対論, 1915-1916年)に分かれる。
自然界の階層性
http://www.cc.kyoto-su.ac.jp/department/physics/top/deptphys.html から引用 Glashowによるウロボロスの蛇の図
自然界にはそれぞれの階層性があることの自然な表現 (原子から宇宙まで)
そして、素粒子論と宇宙論は繋がっている!
要素還元主義:自然界の最も基本的な相互作用と 構成要素がわかれば、自然は理解できる
(自然界の普遍性)
全体論: その基本的なシステムが理解できたとしても、 全体が理解できるわけではない。
(自然界の創発性)
原子説の一つの証拠
人類は、様々な物理的な性質を調べ、非常に素粒子を構成要素とする、 驚くべき精密な理論も知っているが(素粒子の標準理論)、
万物の理論 (Theory of Everything)はまだ手に入れていない。 例えば、量子重力理論などはまだできていない。
要素還元主義と全体論がどの程度正しいかは、今後の人類の科学研究がどのような 速度で進むかと、科学研究の結果をどう理解するかによっている。
なぜ古典力学か?
1. 力学は他の物理学の学問体系の規範
2. 簡潔な法則で我々が理解できることが多く導き出せる 3. 実験を行いやすい (対応がみやすい)
ブラウン運動
微粒子が水分子の衝突により、不規則に動き回る。
Wikipedia より引用
物理学と他の学問との関連
古くは自然科学は未分化であり「自然哲学」と呼ばれていた。 例えば、ニュートンは物理学者、数学者、錬金術師、神学者 など多彩な顔を持っており、複数の分野を一人で行うことは 珍しくなかった。
自然科学が諸学問へ分化しだしたのは、学問が精密化・ 巨大化していく19世紀以降の話である。
数学との関連
少なくとも、19世紀までは数学と物理学が不可分な存在として 発展してきており、今なお密接な関連にある。
(物理学者と数学者が同一人物だった) 例
1. 微分積分学 ニュートン, ライプニッツにより発明
2. ベクトル解析 ギブス (統計力学の創始者の一人として有名)
ヘビサイド (マックスウェル方程式のベクトルによる定式化)
3. 一般相対性理論 幾何学者ミンコフスキーは新たな空間(ミンコフスキー空間)を考え、 アインシュタインの特殊相対論の数学的基礎づけを行った。
Sir Issac Newton (1642-1727)
Wikipedia より引用
化学との関連
1. 原子論の実証の初期段階は、化学の実験によってなされた。
2. 化学的性質は、基本的には原子中の電子の性質で決まり、性質は原理的には 量子力学で記述されるはずである。
しかし、多体理論の難しさから数百原子程度までの計算しかできていなかった。 3. 化学は無機化学とより複雑な有機化学に分類される。
有機化学は直接化学工業や生物学につながる。
現在では神戸にある京コンピュータにより数万原子程度の 計算ができるようになった。
創薬や次世代デバイスの開発に期待が寄せられている。 4. 物理化学の発展
熱化学・統計力学・量子化学等、多体計算を効率よくモデル化する学問の発展。
生物学との関連
1. エネルギー保存則は、初め生物学の分野から提唱された。 2. 物理学解析手法 (X線回折) によるDNAの二重螺旋構造の解明 (分子生物学の本格的な始まり、1962 年ノーベル賞)
宇宙分野(天文学・宇宙物理学)との関連
天文学分野は観測天文学と天体物理学に分かれる。
1. 万有引力の発見には、惑星の運動の精密な観測 (ケプラーの法則)が 主要な役割を果たした。
2. ガリレオ・ガリレイは当時開発されたてであった望遠鏡を宇宙に向け、 天文学に革命を起こした。
3. 元素の比率からビックバン元素合成理論の強い証拠が得られた。 等々の関連がある。
Johannes Kepler 1571-1630
Galileo Galilei
1564-1642 Wikipedia からの引用
工学との関係
1. 構造力学、材料力学
建築物、構造物、機械に荷重が加わった時の物体の変形 (破壊) を調べる学問。 力学を学ぶことがその理解の基礎
2. 電気回路理論
電磁気学を学ぶことがその理解の基礎
まとめ
1. 物理学は物質とその相互作用、
さらにその集団効果 (統計力学など) を扱う基礎的な学問
2. 他の学問から着想を得ながら、他の学問を発展させるための技術や考え方を 提供している。
長い時間の測り方
放射性元素(原子核)の崩壊を利用する
原子核は陽子と中性子からできている。
軽い原子核では陽子と中性子が等しくなろうとし (核力: 原子核を構成する粒子の力の性質)、 重い原子核では陽子に比べて中性子が多くなろうとする。
(陽子が多いと、+ の電気同士の反発が目立ってくる)。
その結果ある種の原子核は崩壊反応を起こす (元素の種類が変わる)。 放射性元素は存在する放射性元素の個数に比例して崩壊する。
この様子を数式的に解くと、放射性元素は一定の割合ずつ崩壊する ことがわかる。(指数関数的に減る)
半分になる時間を半減期と呼ぶ。 例.
1. 炭素 14 の半減期 5730 年
考古学に利用 (1000 年前から 数万年前まで測定可能)
2. ウラン 238 の半減期は 45 億年、ウラン 235 の半減期 7 億年 地球の年代測定 (約 45 億年)に利用
画像は Wikipedia
原子核の項目から引用
原子から宇宙まで
第2回 (4/14) 時間と長さについて
訂正 福川のオフィスアワー
3 限終了後 (15:30 — 17:00) の居室
誤: ボアソナードタワー 8 階 0812 号室 (物理学研究室 (2))
正: 0813 号室(物理学研究室(1)、8階の研究室群の一番奥の部屋)
1. 単位とは?
・単位 物の量を測るのに必要な基準を示したもの。 本来測る人によって異なっていてもよい。
例:イギリス・アメリカ ヤード・ポンド法 日本: 尺貫法 太陽暦と太陰暦など
・ただし、人によって使う単位が異なっていると、会話するとき不便。 何か統一された単位系が必要。
SI 単位 (国際単位)が通常使われる
(慣例的な理由により、SI単位系以外の単位が使われることもある)。 仏: Système international d‘unites
英: International System of Unit
SI単位と非 SI 単位
SIの基本単位 --- 基本となる物理量と結びつけよう! 力学でよく出てくる SI 基本単位は 3 つ!
長さ --- m (メートル meter, 「metron=測る」に由来) 時間 --- s (秒, second)
質量 --- kg (キログラム, kilogram)
電流 --- A (アンペア, Ampere) 電磁気学・回路等で登場 温度 --- K (ケルビン, Kelvin) 熱力学で登場 物質量 --- mol (モル、mole) 原子が何個集まったか? 光度 --- cd (カンデラ)
非SI 単位 SI に属していないが、現在でも慣用的に使われているもの 質量 --- t (トン、ton) 1 t = 1000 kg
注意 !!
異なる物理量(次元)を表す単位を持った量は足し引きできない(掛け算、割り算はOK) (3 kg+5 s や、3 m +5 m2 などの計算は誤りである。)
2. 時間と長さ
時間と長さ → ともに基本的な物理量で、運動は両方の組み合わせで表される。 長さのSI単位は m, 時間の SI 単位は s (second, 秒)
但し、m (分、minute), h (時間、hour), d (日、day) yr (年, year) なども使われる。
2-1 長さ 自然の階層構造 (前回のスライド参照) 世界には様々な長さがある。
短い長さ
素粒子 ∼ 原子核 ∼ 原子・分子 ∼ 細菌 ∼ 人
??? 1/1015 = 10-15 m = 1 fm 1/1010 m =10-10 m = 0.1 nm 1/106 m=10-6 m =1 µm 1 m 肉眼で見える距離: 0.1 mm 位
マイクロメーター等機械を工夫することにより 0.001 mm = 1 µm の精度で可能
画像はWikipedia より引用
光学顕微鏡 光の波長くらいまでの距離までが見える (4 ×10-7 m = 400 nm) 電子顕微鏡 電子線の波長くらいまでの距離 (原子・分子レベルまで測れる)
1927 年に開発、1950 年代から活用 (物体の表面や結晶構造などを調べたりする)
電子顕微鏡で得られた原子の画像
原子核の半径 電子を原子核にぶつけ、その反応確率(散乱断面積)から半径を決定 素粒子の半径 よくわからない
社団法人日本物理学会東北支部
http://www.phys.tohoku.ac.jp/jps/demae/ theme/img/p_11_1.gif
からの引用
1Å= 0.1 nA = 10-10 m = 0.1 nm
数学 (指数)
結合法則 (a×b)×c=a×(b×c)=a×b×c
どこからかけても(通常の)掛け算は同じ結果になる。→ 連続して掛け算ができる。
g×g ×……×g×g = gn 「gのn 乗」 g を n 回 掛ける
n を指数 (power), g を底 (base) と呼ぶ。
例 106 m = 1000000 m = 1 Mm
指数法則 ga+b=ga×gb gnm=(gn)m (h×g)n=hn×gn
指数の拡張
ga+b=ga×gb が負の数にも成り立つと考える
例 25+(-2) = 25-2 = 23 = 8 = 32/4 = 25/22 である。 一般に g-a= 1/ga
例 10-2 m= 1/102 m=1/100 m =1 cm
SI 接頭語
非常に大きい数や、非常に小さな数を表すために 単位の前に桁数を表す名称をつけたもの
例. 1. 東京→ローマの距離は、Expedia によると、 9,904.55 km = 9904550 m 恐らく、m 単位でこの距離を言ってもよいが、言う人は殆どいないだろう。 2. 京コンピュターは 1 秒間に 1016 回=10 P 回の浮動小数点演算ができる。
長い距離の測り方 (宇宙の距離ハシゴ)
三角測量
三角形の性質を利用した測量方法 1. △ (三角点) などで地形測定に活用 2. 月までの距離 (約 37 万 km) の測定
3. 近くの恒星までの距離 (∼100 光年)の測定
光年とparsec 1. 光年
光年= 光が 1 年間 (= 365.25 日) に通過する距離 9.46×1015 m = 9.46 Pm
2. パーセク(pc, parsec)
年周視差が 1 秒(=1/3600 度) になるような距離 1 pc = 3.26 光年 = 30.857 Pm
A B
C
Wikipedia の図を改変
年周視差が 1 秒 地球
太陽 1 pc
遠くの星や銀河の距離の決め方
星の本来の明るさ(絶対等級)を知ることによって、
見かけの明るさ(地上との観測)との比較で距離を決める 1. HR図 (∼数千光年)
星の進化の研究の過程で得られた星の色と明るさの関係から、 星の本来の明るさがわかる。
明るさがよくわかっている明るい天体がある (遠方の銀河の観測) 2. ケフェイド型変光星 (∼ 6000 万光年)
周期と明るさの間に関係があることが知られている 最も近いケフェイド型変光星: 北極星 (約 400 光年) 3. Ia 型超新星 (∼90億光年)
連星系 (複数の星が互いに束縛して運動している) で 白色矮星 (小さい星の進化の最終形態, VII の領域)に パートナーの星からのガスが降り積もり、
一定の質量を越えると爆発を起こす
ピーク時の絶対的な明るさや暗くなり方が概ね同じ
スペクトル型 絶対等級
HR図
画像はWikipedia より。
普通の星(主系列星)は V の線 に含まれる
ハッブルの法則 (1929年, ∼約130億光年)
天体と地球の距離をD, 天体が地球から遠ざかる速さ(後退速度)を vとすると、概ね、
v = H0 × D
の関係が成り立つ。
H0= 67.15 ± 1.2 km/(s・Mpc)
後退速度は光のドップラー効果 (遠ざかる時波長が長くなり、
近づく時波長が短くなる現象) から割り出すことができる。
ドップラー効果で光の波長が長くなる現象を
赤方偏移と呼ぶ。 宇宙の年齢
宇宙の始まりは全天体が非常に小さい空間に集まった時だと考えられる(ビッグバン宇宙論)。 ハッブル定数が一定だとすると、宇宙の年齢は 1/H0 であると考えられる。
1/H0 = 138 億年 (現在知られている宇宙年齢と偶然一致) 138 億光年が我々の観測の理論的限界 画像はレーザー技術推進センターより引用
plt.or.jp/column/column01/
2-2. 時間
人間の脈拍 … 1日の中で一定ではない (日内変動) 古くからあった計測機器(振り子時計の発明まで) 日時計… 夜や曇りの日は使えない
水時計… 水が凍っている日は使えない
砂時計… 長時間の正確な測定には向かない などの欠点があった。
振り子時計
振り子の等時性 (ガリレオ・ガリレイにより発見) による。
ホイヘンスにより改良、振り子時計が発明される (1657 年頃)。 様々な改良により、精度が劇的に改善
現在の振り子時計での最高精度
「Clock B」5/8 秒の精度で 100日間動いた
(10-7 程度の精度, イギリス グリニッジ天文台 2015 年1 月 - 4 月)
Christiaan Huygens (1629 - 1695) 他にも土星の環の発見、
光の波動説の提唱
(ホイヘンスの原理) などで知られる。 画像は Wikipedia より引用
クォーツ時計
水晶に交流電圧をかけると、一定の周期で規則的に振動 (逆圧電効果)することを利用 1927 年に発明 (アメリカ、ベル研究所)
一般的なクォーツ時計の誤差 (一ヶ月で 15 秒 — 30 秒程度)
高精度なクオーツ時計の誤差 (一年で数秒程度, 10-7程度の精度)
1970 年代にかけて市場を席巻 (従来の機械式時計は売れなくなり、クォーツ危機と呼ばれた)
原子時計
現在最も高精度な時計 (一億年で 1 秒程度, 10-15 程度の精度) 現在のSI の 1 秒の定義
133Cs (セシウム 133) 原子の振動周期の二つの
超微細構造準位の間の遷移に対応する放射の周期の 9192631770 倍の継続時間 現在なおも研究が進められている 「光格子時計」(東大工学部 香取研究室)
イッテルビウム原子とストロンチウム原子を用い、10-17 を超える精度を達成 (昨年 5 月) より短い時間は粒子が飛んだ距離を粒子の速さで割った時間で求める。
人間が現状観察しうる最も短い部類の時間 10-23 秒 (原子核を光が通り過ぎる時間)
原子から宇宙まで I
第 3 回 (4/21)
位置・速度・加速度について
1
前回のアンケートの質問
(問). 振り子の等時性が厳密に成り立っているならば、
振り子はいつまでたっても振動することになるが、何故か? (答え) 実際には空気抵抗があるので、
指数関数的に振り子の振幅自体が減るため (減衰振動)。 数学的には、2 階の微分方程式を解き、
指数関数的に、振幅が減少することがわかる。 実際の振り子時計ではゼンマイなどを用い、 振り子の動力源にしている。
座標 (位置の指定)
位置の指定
位置を指定するには、その位置に名前をつける必要がある。
例. 住所
法政大学市ヶ谷キャンパス 東京都千代田区富士見2-17-1
これでは物体の位置を表現するのにはあまりに不便 点の位置を表すのに、systematic な方法が必要
ある点 O (原点, origin) を基準にし、測定の方法を設定し、
幾つかの数字の組み合わせで位置に名前をつける → 座標の考え方 座標の原点と測り方を合わせて、座標系と呼ぶ。
Rene Descartes (1596-1650) 座標の発明
力学にも大きな影響を与える (機械論的自然観)
哲学者・数学者 (方法序説・哲学原理)
「我思う、ゆえに我あり」(哲学原理)
画像は Wikipedia より引用
数学的な次元の持つ特徴
我々の空間は 3 次元 (時間を合わせると 4 次元 (特殊相対論)) 次元とは何か?
1. 点 (0次元) が動いたら直線 (1 次元) → 直線が動いたら平面 (2 次元)
→ 平面が動いたら立体 (3 次元)…
として、4 次元以上の空間に住む生物から見ると、 立体が動けば、何か 4 次元の図形ができるはず。 (物理では通常 3 次元空間まで扱うが、数学的には、
いくらでも多くの次元が考えられる。)
n 次元空間上の点は n 個の数の組みで表される (次ページ) 2. 3次元の人は、2次元平面内の点から点に移動する時、
平面外を通って移動できるが、平面上の生物は、 平面を通ってしか移動できない。
例. 時間が経過する時、
我々はその間の全ての時刻を経験 → 時間は一次元
座標系の例 1.
直交座標系
(デカルト座標系、Cartesian coordinate)1次元
-3 -2 -1 0 1 2 3
原点からの距離と符合で (1個の数で)表現
2次元 (平面座標) 3次元 (空間座標) x
O x y
ax
ay A(ax,ay)
2つの直交する軸を用いて
一次元の座標を二つ組み合わせる
→ 点の位置を2つの数で指定する
O y
z
ay az
A(ax,ay,az)
x ax
空間の点は、3 つの数字の組みで 表すことができる。
注: 座標系は人間が問題を見やすいように設定してやれば良い
・極座標系と呼ばれる他の座標系もある (円運動の時に後述する)
(速度の前に)関数とは?
「運動学」物体の運動を調べる … 物理的な記述の基礎
各時刻での位置と速度 (次ページ以降で説明)がわかれば、 物体の運動が決まる。
時刻と位置や速度を対応させる必要がある。
関数 (function)は通常のレベルでは、 数と数との対応関係と思えば良い。 例. x=x(t)= 4.9t2
(物理学では x 座標の値について、
よくx=f(t)ではなく、x=x(t)という書き方をする。) 具体的には、以下のような表を作り、グラフ上に座標を設定し点を打ち、 点同士を適当な線で結ぶ。
t [s] x [m] 0.1 0.049 0.2 0.196 0.3 0.441 0.4 0.784 0.5 1.225 0.6 1.764 0.7 2.401 0.8 3.136 0.9 3.969 1.0 4.900
合成関数
u = u(x), x=x(t) の時 u=u(x(t)) を u と x の合成関数という。
例 u(x)=x3, x(t)=2t+1 の時、u(x(t))=(2t+1)3
微分積分学を創った人々 (ほんの一部)
古代ギリシアの時代
・取り尽くし法による立体の体積の計算、πの計算 Eudoxos (B.C. 408 - B.C. 355),
Archimedes (B.C. 287 - B.C. 215) 関孝和 (1642 - 1708)
当時は微分法と積分法は結びついてはいなかった
・微分法と積分法の統合
John Wallis (1616 - 1703) 種々の曲線の長さを求める Issac Barrow (1630 -1677) 微積分学の基本定理の証明 (Newton の指導教員)
他にも Pascal, Fermat, Descartes, Cavalieri, Torricelli, Gregory 等の先駆的業績 (17世紀前半から中頃)
・微分と積分を統合した上で、一般的な問題への応用 (微積分の創始、幾何学との分離)
Issac Newton (1642-1727) 物理学への応用 Gottfried Leibniz (1646-1716)
現在の微分記号や積分記号の多くを導入
Archimedes
Leibniz
画像はWikipediaより引用
速度 (velocity) (高校の復習)
・以下では、簡単のため一次元の運動を考える。 (2次元以上の場合ベクトルの概念が必要)
・速度は (量子力学的なことを考えなければ) 素朴な定義で良い。
・速度が一定の場合 (速度)=(位置の変化)/(時間) 単位は[m/s]
・速度と速さ
速度 … 負の方向に動くと マイナスの速度になる。 速さ … 速度の大きさ (絶対 0 以上)
問. t = 2 s に x = 5 m にいた物体が、t = 5 s に x = -4 m に移動した。 速さと速度は?
t x
O
x-t グラフ
x=v0t (直線の式) 傾きが速度 v0
t t v
v0
O
v-t グラフ
(
時刻 t までの移動距離 v0t)
= (四角形の面積)
速度 (続き)
疑問: 速さが一定と見なせない場合にはどのようにすれば良いか? 答え: 速さが一定と見なせる (一定の場合と識別できないくらいに) 程度に時間を細かくわける → 微積分の考え方
時間をn 等分した場合
t [s] x [m] t0=0 x0 t1=Δt x1 t2=2Δt x2
(n-1)Δt xn-1 tn=nΔt xn
v [m/s] v1
v2
vn
微小な物理量は物理量の前にΔ (デルタ, delta)をつけて表す (Δt, Δx 等) 注意: Δt はΔ t ではない!! ( f(x) が f x でないのと同じ)
(進んだ距離)=(大体青い短冊の面積の和) 極限まで刻み幅を細かくすると厳密に
v=v(t)とt軸で囲まれた図形の面積
(定積分そのもの)
t t
v
O
平均速度と瞬間速度 (微分の定義)
平均速度 v = Δx/Δt
Δt は小さければ小さいほど良い。 (沢山位置を測定した方が良い)
Δt は 0 にはできないが、頭の中では
「0 にいくらでも近づける」ことができる。
「」の中の操作を Δt → 0の極限 (limit)をとる と呼び、 と書く。
瞬間速度:
最後の定義式は教科書に出てくる微分の定義
脚注: 横三本線は右辺で左辺を定義するという意味
t [s] x [m]
t x
t+Δt x+Δx
v [m/s] Δx/Δv
∆t→0
lim
v ≡ lim
∆t→0
∆x
∆t = lim∆t→0
x(t + ∆t) − x(t) (t + ∆t) − t
= lim
∆t→0
x(t + ∆t) − x(t)
∆t ≡
dx
dt 微分結果をtの関数として意識する時は dx/dt(t) とも書く。
微分の意味
前のスライドの微分の定義式で、Δt → 0 を忘れると、
(二重の∼は近似的に成り立つという意味) x-t グラフを拡大すると、直線に近づく。
x(t + ∆t) ≈ x(t) + dx
dt ∆t = x(t) + v(t)∆t
t x
O t t+Δt
dx
dt (t)∆t
= v(t)∆t x(t) Δt
x(t+Δt)
1 階微分 (1 回微分することをこう呼ぶ)は 関数を 1 次関数で微分することに対応
(速度はグラフの傾きに対応)
= (赤い直線は x=x(t) のグラフの傾き)
地球は狭い生活範囲では ほぼ平らと見なせる
加速度 (acceleration)
(加速度)=(速度の変化)/(時間) 単位は[m/s2]
Newton の運動の法則によると、力が加速度を生じる。 (何週か後に紹介する)
注意: 減速していても、加速度と呼ぶ。
数学的には、速度と位置の場合と同様に考えて、
と定義される。
ここで、速度は位置を時間微分したものであるので ( ), 加速度は位置を 2回連続で微分したものになる。
このことを位置は加速度の 2階微分 (second derivative) であると呼ぶ。 2階微分 (一般には n 階微分の書き方)
a(t) = lim
∆t→0
∆v
∆t
= lim
∆t→0
v(t + ∆t) − v(t)
∆t =
dv dt
v(t) = dx dt
a(t) = dv
dt = d dt
! dx dt
"
= d
2x
dt2 2階微分は近くの関数を2次関数で 表していることに対応
原子から宇宙まで 第4回 (4/28)
・前回の復習 (速度・加速度)
・積分と微分の関係
・ガリレオの考えた物理 - ガリレオの生涯
- 落体の物理
自由落下運動…地球からの重力だけで物体を落下させる 以下次回 (GW明け)
- 慣性の法則
- スケーリング則
前回の復習 (詳しくは前回のスライドを参照すること)
・
速度の定義 v= (位置の変化)/(時間)=Δx/Δt その時刻の速度を考えるには (瞬間速度)、仮想的にΔt → 0 の極限をとればよい。
・
加速度の定義 a= (速度の変化)/(時間)=Δv/Δtv ≡ lim
∆t→0
∆x
∆t = lim∆t→0
x(t + ∆t) − x(t) (t + ∆t) − t
= lim
∆t→0
x(t + ∆t) − x(t)
∆t ≡
dx dt
1 階微分は関数を 1 次関数で近似 することに対応
a(t) = lim
∆t→0
∆v
∆t
= lim
∆t→0
v(t + ∆t) − v(t)
∆t = dv
dt
a(t) = dv dt =
d dt
! dx dt
"
= d
2x dt2
x(t + ∆t) ≈ x(t) + dx
dt ∆t = x(t) + v(t)∆t
多項式の微分
例. x(t)=t2 の時の v(t)= dx/dt 微分の定義に従って計算する。
STEP I. まず Δx = x(t+Δt)-x(t) を計算する。
(分配法則を用いて展開)
STEP II. 次に Δt で割る。
STEP III. 最後にΔt → 0 の極限をとる。
∆x
∆t = 2t + ∆t
∆x = (t + ∆t)(t + ∆t) − t
2= t(t + ∆t) + ∆t(t + ∆t) − t
2= t
2+ t∆t + ∆t × t + (∆t)
2− t
2= 2t∆t + (∆t)
2v(t) = dx
dt = lim∆t→0
∆x
∆t = 2t
微分の公式
f(t), g(t) を t の関数として、一般に以下の公式が成り立つ (1,3,4,5 については別紙参照)。
1. (微分の足し算・引き算) (a,b は定数) 2. (tnの 微分)
3. (積の微分公式) 4. (商の微分公式)
5. (合成関数の微分公式)
例. u(x)=x3, x(t)=2t+1の時、u(x(t))=(2t+1)3 であり、 なので、
d(af + bg)
dt = a df
dt + b dg
dt
d(f g)
dt = f
dg dt +
! df dt
" g
d(f /g) dt =
!dg dt
"
f − !dfdt" g f2
du dt =
du df
df dt
d(tn)
dt = nt
n−1
du
dx = 3x
2 = 3(2t + 1)2, dx
dt = 2
du
dx =
du dx
dx
dt = 6(2t + 1)2
微分と積分の関係
近似式 を t=t0 から t=tn まで足し合わせる。
x(t1)-x(t0) dx/dt(t0) Δt x(t2)-x(t1) dx/dt(t1) Δt
x(tn-1)-x(tn-2) dx/dt(tn-2) Δt x(tn)-x(tn-1) dx/dt(tn-1) Δt
x(tn)-x(t0) (Σi=0(dx/dt)(ti))Δt
t t
v
O
x(t + ∆t) ≈ x(t) + dx
dt ∆t = x(t) + v(t)∆t
t [s] x [m] a=t0=0 x0
t1=Δt x1 t2=2Δt x2
(n-1)Δt xn-1 b=tn=nΔt xn
v [m/s] v1
v2
vn
+
脚注 Σは添字 (この場合は i) を変化 させて足し合わせるという意味の記号 移動距離は速度 時間を細かく
足し合わせたもの
微分と積分の関係 (続き)
前のページの式 x(tn)-x(t0) (Σi=0(dx/dt)(ti))Δt
Δt → 0 の極限をとると、近似式は厳密な等式になる。
この左辺の無限和は積分を表し、
(インテグラル、integral)という記号で表す。(integrate: 統合する) 従って、積分記号を使って上の式を書き表すと、
と書ける。
このことは、微分と積分が逆演算の関係にあることを表している。
(微分積分学の基本定理)
右辺は、「v(t) の t=a から t=b の 定積分 」と呼ぶ。
x(tn→∞) − x(t0) = lim
∆t→0
!
"
i=0
dx
dt (ti)
#
∆t
∆t → dt, !
i=0
→
" tn→∞=b t0=a
x(b) − x(a) =
!
b adx
dt (t) dt =
!
b av(t) dt
速度から位置を求める方法 (微分方程式の解き方)
STEP I. 運動が始まる時の位置 x(a) (初期条件と呼ぶ)を知っておく。 STEP II. 3ページ前の微分の公式を用いて、微分して v(t) になる関数 V(t)(原始関数)を探す。(x(t) は v(t)
の
原始関数の一つ)原始関数を求める操作を不定積分と呼び、上下に数字がない積分記号
(integral) で表す。原始関数に定数を足しても、微分
すると変わらない
。 この定数を積分定数と呼び、通常 C で表す。例1 v(t) = tn の時、V(t)=(1/(n+1))tn+1+C (その他の積分の公式は別紙参照)
STEP III. 任意の原始関数をV(t)とすると、
(証明を要する事実) 計算しやすい V(t) から V(b)-V(a) を求め、それと x(a)から x(b) が求まる。
x(b) − x(a) =
!
b adx
dt (t) dt =
!
b av(t) dt
! b a
v(t) dt = V (b) − V (a) = x(b) − x(a)
ガリレオ・ガリレイ
足跡 (画像とともにWikipedia より一部引用)
1564 年 Pisa で誕生 (父親はリュート奏者で音響学者) 1581 年 Pisa 大学に入学 (1585 年に中退)
途中からOstilio Ricci に師事し、幾何学を学ぶ。 1589 年 Pisa 大学数学講師
1592 年 Padova 大学教授 (数学、物理学、哲学、1610 年まで) このころ落体の研究
1609 年 - 1610年
当時の最新機器であった天体望遠鏡を自作し、様々な天体を観測。 天文学に革命を与える。
・「星界の報告」(1610 年) 同じ年、Kepler 「星界の報告者との対話」出版 1. 月のクレーター (凹凸) 2. 木星の衛星を 4 つ発見 (ガリレオ衛星)
・「太陽黒点論」(1613 年) 3. 太陽に黒点を発見
他にも、 土星を観測 (3つの星と観測 没後に Huygens により環であることが判明) 金星の満ち欠けの観測、天の川の観測、星雲の観測
当時、天体は完全な球体と思われていたが、ガリレオは天体が地球と同様に 変化に富んだものであることを示した (地動説への確信)。
宇宙が無数の天体で構成されており、
これまで考えていたよりはるかに巨大であることを発見
Galileo Galilei (1564 ̶1642)
1610 年 Firenze に戻る
1611 年 リンチェイ・アカデミーに入会
(Federico Cesi (1585-1630) により1603 年に設立、山猫学会とも) 1616 年 第一回宗教裁判 (異端審問所審査)
地動説を絶対的な真理として唱えないよう注意を受ける 1632 年 「天文対話」の出版 (Firenze)
(Dialogue Concerning the Two Chief World Systems) 天動説支持派と地動説支持派、中立派による 3 人の対話集 1633 年 第二回宗教裁判
Firenze 郊外のアルチェトリに自宅軟禁処分・「天文対話」の出版禁止処分 (1992 年に名誉回復)
1638 年 「新科学対話」の出版 (ただしオランダで)
運動学 (振り子、等速直線運動、等加速度運動、放物運動)と 材料力学 (スケーリング則) の基礎
1638 年 両目を失明
1642 年 アルチェトリにて没
画像はガリレオ博物館カタログ
catalogue.museogalileo.it/object/GalileosTelescope.html/
より引用
ガリレオの望遠鏡
ガリレオの主な弟子
Evangelista Torricelli
(1608 - 1647, 水銀気圧計の発明、トリチェリの定理 (流体力学)) Francesco Bonaventura Cavalieri
(1598 - 1647, 微積分学、カヴァリエリの原理) Vincenzo Viviani
(1622 - 1703, 音速の測定 350 m/s, ガリレオの伝記執筆、Isaac Barrow の師匠)
ガリレオのその他の業績
・ガリレオの比例コンパス
様々な用途に使うことができた 1. 高さの測定
2. 平方根、立方根を求める
3. 砲弾にどの程度火薬を詰めれば良いか?
(当時、ヨーロッパでは17世紀の危機と呼ばれる戦争の時代であった)
画像は www.museumsinflorence/musei/ History_of_Science_museum.html より引用
落体の物理
Galileo Galilei 以前の一般的な考え方
・Aristoteles (B.C. 384 B.C. 322、Plato の弟子) による 博物学者 「万学の祖」と呼ばれる
論理学 (三段論法)、物理学、生物学、形而上学、倫理学、政治学、文学等 Plato が数学・幾何学を重視したのとは対照的に、経験・観察を重視。
・物事の本質的な姿とは何か? Platoの考え
人間は idea を想起 (アナムネーシス)することにより、 事物を真に認識する (善の idea が人間の最重要徳目) Aristotelesの考え
1. その物事になる可能性があるもの(可能態)が、発展することで 現実世界の現象(現実態)となる。
2. 純粋可能態は(全ての始まりの形)「火・空気・水・土」からなる。
(四元素説、Empedocles (B.C. 490頃 ̶ B.C. 430頃に始まる)) 3. 物事は純粋可動態から純粋現実態(完全な最終形態)へと動く。
例. 1. 種子 (可能態) が花 (現実態) になる
2. 高い所の物質(可能態)は、本来あるべき固有の場所(現実態) に移動する。重いものほど下に行く。
Aristoteles の力と運動に対する考え方
Aristoteles は、定性的 (性質的な) 観察から、物体は力を得ること
によって速度を得て、空気抵抗などの抵抗力によって速度が減ずるとし、 以下の式を提唱した。
(真ん中の記号は比例の意味)
1. 真空だと、物体の抵抗力が 0 になるので、 速度は無限大になる (真空の否定)
2. 物体の質量は運動を引き起こす力に比例するので、 重いものほど速く落ちる。
Galileo の先駆者達
1543年 Niccolo Fontana Tartaglia (1500頃 - 1557)による
ユークリッド原論のイタリア語訳 (弾道学や三次方程式の解法の研究でも有名) これ以降ギリシャ数学がヨーロッパ大陸に輸入
1585年 Giambattista Benedetti (1530-1590, イタリアの数学者・音響学者) 1586年 Simon Stevin (1548 - 1620, ベルギーの数学者・物理学者・工学者) の二人が重さの異なる物体でも同じ速度で落ちると主張
v ∝
運動を引き起こす力抵抗力
Aristoteles
(B.C.384 - B.C.322)
画像はWikipediaより引用
Benedetti による思考実験
1. 同じ重さの物体を同じ高さから自由落下させると、 同じ時間に地面に到達
2つの物体を長い糸で結んでも、運動には影響ないはず。 糸の長さを短くしていっても、運動には影響ないはず。 2. 糸の長さを 0 にすると、2つの物体はくっつく。
Aristoteles の考え方が正しければ、
物体をくっつければ、物体は速く地面に落ちる。
3. Aristoteles の考え方を推し進めると、同じ重さの物体を
3 個、4 個 … と積み重ねていくと、どんどん落下の速さは速くなる。 4. でも 1. の議論から思考すると、物体が落ちる速さは重さによらない
現実には何が起こっているか? → 4. の結論が正しいように思える
この議論から、Benedetti は Aristoteles の考え方には修正が必要で、 重さの異なる物体でも、落ちる速さは同じになると主張 ガリレオもこの議論を受け継ぐ
ガリレオの観察と実験による自由落下運動の記述
思考実験: 物体の落ち方は (空気抵抗を無視すれば) 重さによらず同じ 観察事実: 落下中の物体の速度は段々速くなっていくように見える。 どのような関数系で記述されるか ?
垂直に物体を落とすと速すぎて測定が困難。
そこで、ガリレオは斜面を使った実験を行った。
Pisaの斜塔
http://catalogue.museogalileo.it/object/InclinedPlane.html
画像はガリレオ博物館カタログから引用
画像はWikipediaより引用
ガリレオは、斜面の角度を色々と変え、
物体の落下速度を変えながら実験を行って、以下の結果を得た。 物体の落下する移動距離は、時間の 2 乗に比例する。
速度を計算すると、段々速度が一定に増えていく (加速度を実験で認識)。 加速度の単位 Gal に名前を残している。 1 Gal = 0.01 m/s2
t x Δx/Δt 1 12=1 1
2 22=4 3 3 32=9 5 4 42=16 7
ガリレオによる説明
(移動距離) = 1/2 (加速度 a) (時間)2
v
t
O
v
t
O
at
(1/2)at
(移動距離)=(青い三角形の面積)=(赤い長方形の面積)=(1/2)at2
ガリレオは斜面の角度が90度 (地面に垂直)の時にも同じ形の式が 成り立つと考え、事実成り立っている。
自由落下の場合の式 x=(1/2)gt2, v = gt
(v=dx/dt となっていることに注意) g は重力加速度と呼ばれる定数で、
約 9.8 m/s2 (遠心力のため、場所により微妙に異なる)。
原子から宇宙まで第 5 回 (5/12)
・レポート問題の解説
ガリレオの物理
・自由落下運動 (前回の復習)
・放物運動 (2次元の運動)
・ガリレオの慣性の法則
・スケーリング則 (材料力学の基礎)
v
O t
前回の復習 (自由落下運動)
アリストテレス … 物体の状態には現実態と可能態があり、
重いものほど下に向かって早く落下していく。
例. 地上での馬車の運動
ガリレオ以降 … 重いものも軽いものも空気抵抗がない条件下では、 同じ速さで落ちる。
物体が落下するときの移動距離は時間の2 乗に比例 x=(1/2)gt2, v = gt
等加速度直線運動
g は重力加速度と呼ばれる定数で、約 9.8 m/s2
v ∝
運動を引き起こす力抵抗力
gt
ガリレオの慣性の法則
物体に力が働かないとき、
静止している物体は静止したままであり、
動いている物体は、一定の速度で一直線上を動き続ける。 斜面での実験 (1)
慣性の法則の具体例
摩擦の少ない平面 …カーリング、エアホッケーなど 上り坂だと物体は減速
(加速度は進行方向に 向かってマイナス)
上り坂だと物体は加速 (加速度は進行方向に 向かってプラス)
物体の速度は
どう変化するか?
地球からの重力の影響
画像は Wikipedia より引用
x=vt
斜面での実験(2)
斜面を組み合わせて、上のような面を作ると、左から転がした物体は ほぼ物体の元いた高さである A, B, C まで到達する。
そのとき物体が移動した距離は長くなっている。 では、水平面上を転がせばどうなるか?
A B C
⇨ 無限に長い距離を移動できるはず
放物体の運動
アリストテレス(以降ガリレオ以前まで)の時代
水平方向にものを投げると、物体は空気の力を受けて、 斜めの方向に一直線に落ちると信じられてきた。
(事実、短い距離の場合はほとんど正しい。) ガリレオ以降の時代
ガリレオは注意深い実験と観察によって、
物体の運動が、放物運動であることを確かめた。
Galileo の自筆ノート
米 Rice 大学の Galileo Project のサイトから引用 http://galileo.rice.edu/lib/student_work/
experiment95/paraintr.html
放物運動の例 スキーのジャンプ
https://www.thinglink.com/scene/513712392413118465 より引用
放物運動の説明
水平方向についての慣性の法則
力が働かないとき、動いている物体は、一定速度で一直線上を動き続ける。 x=vxt
鉛直方向についての自由落下運動 (等加速度運動)
この 2 種類の運動の組み合わせで放物運動が説明できる。 x, y の式から t を消去すると、
y=-(1/2)gt2, vy =gt
0 2 4 6 8
−400
−200 0
y [m]
x [m]
1 s 2 s 3 s
4 s 5 s
6 s
7 s
8 s
y = − g
2vx2 x
2
(放物線の運動, yはxの2次関数)
vx=1[m/s], g=9.8 [m/s2] の場合
ガリレオと材料力学
ガリレオは建物の部材の耐久強度の研究を行い、 これまで、職人たちが経験的に知っていた、
建築物が壊れないための原理を考えた。(「新科学対話」, 1638 年)
⇨ 現在の材料力学や構造力学の基礎をなしている。
例. 各々の建築物の長さ全てをその密度を変えずに 2 倍にするとする。 材料の強度は何倍であるべきか?
A. 1倍 B. 2倍 D. 4 倍 E. 8 倍 答え: 材料の強度は面に対してかかる圧力
(その面にかかっている力を面積で割ったもの)によってきまる。 この場合、かかる力は 23 =8倍になり、面積は22=4倍になる。 よって材料強度は下の 2 倍必要になる。
もし、材料強度自身を変えずに 23倍 = 8 倍の重さを支えるなら 各部品はもとの 23 = 約 2.8 倍の太さが必要である。