i PS 細 胞 関 連 技 術 及 び ヒ ト E S 細 胞 関 連 技 術 に 関 す る
特 許 出 願 ・ 論 文 発 表 の 状 況 に つ い て
平 成 21 年 4 月 特 許 庁
1 . i PS 細 胞 関 連 技 術 及 び ヒ ト E S 細 胞 関 連 技 術 の 概 要
i PS 細 胞 は 2006 年 に 京 都 大 学 の 山 中 伸 弥 ら が 体 細 胞 の リ プ ロ グ ラ ミ ン グ に よ り 、世 界
に 先 駆 け て 作 製 に 成 功 し た 幹 細 胞 で あ り 、 ヒ ト E S 細 胞 は 米 国 ・ ウ ィ ス コ ン シ ン 大 学 の
J . A. T hom s on ら が 1998 年 に ヒ ト 胚 の 細 胞 を 基 に 作 製 し た 幹 細 胞 で あ る 。 i PS 細 胞 、 ヒ ト
E S 細 胞 と も に あ ら ゆ る 細 胞 に 分 化 し う る 多 能 性 幹 細 胞 ( 万 能 細 胞 ) で あ り 、 損 な わ れ た
組 織 ・ 器 官 ・ 臓 器 の 機 能 を 修 復 す る 再 生 医 療 や 、 患 者 の 細 胞 か ら i PS 細 胞 を 作 製 し て 疾
患 の メ カ ニ ズ ム を 解 明 す る 研 究 や 、i PS 細 胞 や ヒ ト E S 細 胞 を 分 化 さ せ た 細 胞 を 用 い た 薬
理 ・ 毒 性 試 験 な ど の 医 薬 ス ク リ ー ニ ン グ 等 、 創 薬 ・ 診 断 分 野 で の 利 用 が 大 き な 期 待 を 集
め て い る 。
2 . i PS 細 胞 関 連 技 術 及 び ヒ ト E S 細 胞 関 連 技 術 の 特 許 出 願 ( 公 開 ) 状 況
2- 1 i PS 細 胞 関 連 技 術 の 特 許 出 願 ( 公 開 ) 状 況
i PS 細 胞 関 連 技 術 の う ち 、 「 新 規 な 幹 細 胞 」に 関 す る PCT 出 願 が 7 件 国 際 公 開 さ れ て い
る ( 2009 年 2 月 13 日 時 点 ) 。 図 1 に i PS 細 胞 関 連 技 術 の 出 願 系 統 図 を 示 す 。
図 1 i PS 細 胞 関 連 技 術 の 出 願 系 統 図
2 0 0 5 2 0 0 6 2 0 0 7 2 0 0 8 2 0 0 9
国際出願
国際公開
欧州公開
分割
早期審査
公開
国際公開
米国公開
米国出願
国際出願
国際出願
国際公開
京都大学
(山中伸弥)
Wisc onsin Alumni
R esearc h F oundation
(J .T homson)
Whitehead Institute for
Biomedic al R esearc h
(R .J aenisch)
General Hospital C orp.
国際出願
▲ 優: 2005.12.13
特願2005- 359537
△ : 2006.12.06
特願2007- 550210
△ : 2006.12.06
P C T / J P 2006/ 324881
△ : 2008.05.20
特願2008- 131577
○ : 2008.11.27
特開2008- 283972
◎ : 2008.09.12
特許第4183742
○ : 2007.06.21
WO2007/ 69666
○ : 2008.09.17
E P 1970446A
▲ 優: 2007.03.23(60/ 919687)
▲ 優: 2007.09.25(60/ 974980)
▲ 優: 2007.11.19(60/ 989058)
△ : 2008.03.21
P C T / US 2008/ 57924 ○ : 2008.10.02
WO2008/ 118820
△ : 2008.03.21
12/ 053440
○ : 2008.09.25
US 2008/ 233610A
▲ 優: 2007.04.07(60/ 922121)
▲ 優: 2007.07.12(60/ 959341)
▲ 優: 2008.03.12(61/ 036065)
△ : 2008.04.07
P C T / US 2008/ 4516
○ : 2008.10.16
WO2008/ 124133
▲ 優: 2007.05.30(60/ 932267) △ : 2008.05.30
P C T / US 2008/ 65384
1
2
3
2- 2 ヒ ト E S 細 胞 関 連 技 術 の 特 許 出 願 ( 公 開 ) 状 況
ヒ ト E S 細 胞 関 連 技 術 の 出 願 は 、181 件 が 公 開 さ れ て い る( 2007 年 7 月 公 開 以 降 : 2009
年 2 月 13 日 時 点 ) 。 技 術 区 分 別 で は 、 「 要 素 技 術 」 が 169 件 、 「 応 用 技 術 」 が 12 件 で 、 研
究 開 発 の 中 心 は 「 要 素 技 術 」 で あ り 、 ま だ 技 術 が 確 立 さ れ て い な い こ と が う か が え る 。
中 で も 「 分 化 制 御 」 に 関 す る 出 願 が 「 要 素 技 術 」 の 約 半 数 を 占 め て い る 。 出 願 人 の 国 籍
で は 、 米 国 籍 出 願 人 が 92 件 で 最 も 多 く 、 次 い で 欧 州 国 籍 出 願 人 の 22 件 で あ っ た ( 表 1) 。
表 1 ヒ ト E S 細 胞 関 連 技 術 の 技 術 項 目 別 − 出 願 人 国 籍 別 出 願 件 数 ( 2 0 0 7 . 0 7 公 開 ∼ )
分 類 内 容 日 本 米 国 欧 州 中 国 韓 国 そ の 他 合 計
C. 要 素 C1 . 新 規 な 幹 細 胞 1 1 4 3 0 1 7 2 6
技 術 C2 . 分 離 ・ 精 製 ・ 増 殖 ・
保 存
2 2 0 1 1 3 5 1 2 5 3
C3 . 分 化 制 御 4 4 9 6 2 6 1 8 8 5
C4 . 細 胞 解 析 0 0 0 0 0 1 1
C5 . 細 胞 改 変 0 2 0 0 0 1 3
C6 . そ の 他 の 要 素 技 術 0 0 0 0 1 0 1
D. 応 用 D1 . 再 生 医 療 ・ 細 胞 治 療 1 1 0 0 0 0 2
技 術 D2 . 創 薬 ・ 診 断 0 5 2 0 0 2 9
D3 . そ の 他 の 応 用 技 術 0 1 0 0 0 0 1
小 計 8 9 2 2 2 5 1 3 4 1 1 8 1
( PCT 出 願 は 2 0 0 9 . 0 2 . 1 2 、 W PI NDE X は 2 0 0 9 . 0 1 . 2 9 更 新 ま で を 収 録 )
3 . i PS 細 胞 関 連 技 術 及 び ヒ ト E S 細 胞 関 連 技 術 の 論 文 発 表 状 況
3- 1 i PS 細 胞 関 連 技 術 の 論 文 発 表 状 況
i PS 細 胞 の 作 製 に 関 す る 論 文 、そ の 他 の 細 胞 へ の 分 化 誘 導 に 関 す る 論 文 、i PS 細 胞 の 作
製 効 率 向 上 等 に 関 す る 論 文 、 再 生 医 療 等 へ の 応 用 に 関 す る 論 文 、 そ の 他 i PS 細 胞 作 製 の
過 程 で ど の よ う な 遺 伝 子 発 現 の 変 化 が 起 こ っ て い る か を 解 析 し た 論 文 な ど 、 i PS 細 胞 に
関 連 す る 論 文 に つ い て 、 そ の 発 表 状 況 を 調 査 し た 。
そ の 結 果 、 i PS 細 胞 関 連 技 術 の 論 文 は 67 件 が 発 表 さ れ て い る ( 2009 年 2 月 13 日 時 点 ) 。
2006 年 の 京 都 大 学 ・ 山 中 伸 弥 に よ る 第 一 報 発 表 以 来 、 2007 年 は 12 件 、 2008 年 は 45 件
と 論 文 発 表 件 数 が 増 加 し て い る 。 ま た 、 2009 年 は 2 月 13 日 時 点 で 9 件 が 発 表 さ れ て お
り 、 2008 年 を 上 回 る 勢 い で 論 文 発 表 が 行 な わ れ て い る 。
図 2- 1、 図 2- 2 に i PS 細 胞 関 連 技 術 の 論 文 発 表 の 推 移 を 示 す 。
図 2- 1 i PS 細 胞 関 連 技 術 の 論 文 発 表 の 推 移 ( 2006 . 08 公 表 ∼ ) ( 1 / 2)
8
2006.0 2007.07 2007.12 2008.01 2008.02 2008.03 2008.04 2008.05 2008.06 2008.07 2008.08 2008.09 2008.10 2008.11 2008.12 2009.01 2009.02
T akahashi & Y amanaka C ell (2006) マウスiP S 細胞
Okita et al. Nature (2007) Nanog遺伝子 による選抜
T akahashi et al. C ell (2007) ヒトiP S 細胞
Nakagawa et al. Nat Biotechnol (2007) c- Mycを用いない iPS 細胞(マ ウ ス 、ヒト)
京都大学
Aoi et al. S cience (2008) 分化系列決定細胞 もリプログラム可能
Nakao et al. Bioorg Med C hem L ett
(2008) iP S 細胞利用医薬ア ッセ イ
早稲田、京大、理研
Nakatsuji et al. Nature Biotec hnol
(2008) 日本人向けiP S 細胞バンク試算
Narazaki et al. C irc ulation (2008) 心筋細胞への分化
Okita et al. S cience (2008) プラスミド利用 iP S 細胞作製
1 3 8
10
16 31
19
34
46
Masaki et al. S tem C ell R es (2008) ヒトiPS 細胞作製 桜田
14
Mauritz et al. C irc ulation (2008) 心筋細胞への分化
Hannover:Martinグループ
33 Aasen et al. Nature Biotechnol
(2008) ケラチノサイト 由来iPS 細胞
スペイン:Belmonteグループ 48
Duinsberg et al. E xp C ell R es (2008)
S ox2抜きで神経 幹細胞からiPS 細胞
作製
L eiden:Mikkersグループ 32
Di S tefano et al. S tem C ells Dev (2008)
Oc t4とK lf4で神経幹 細胞からiP S 細胞作製
S an R affaele:Broccoliグループ 39
V aras et al. S tem C ells (2008) ウイルスの挿入部位
はiPS 化に無関係
スペイン:Grafグループ 52
Marion et al. C ell S tem C ell (2009)
iPS 細胞とテロメア
スペイン:Blascoグループ 66 Kim et al.
Nature (2008) マウス神経幹細胞に2 遺伝子導入でiPS 細胞
Max P lanck:S c holerグループ 29
Qin et al. C ell R es (2007) 細胞形態観 察による選抜
中国
P eiグループ(広州)
L iao et al. C ell R es (2008)
6遺伝子利用 作製効率向上 X iaoグループ(上海)
Qin et al. J Biol C hem
(2008) 髄膜細胞から iPS 細胞作製 P eiグループ(広州)
Z hao et al. C ell S tem C ell (2008)
追加2因子による
iP S 細胞作製効率向上 Dengグループ(北京)
Liu et al. C ell S tem C ell
(2008) サルiPS 細胞 X iaoグループ(上海)
L iao et al. C ell S tem C ell
(2008) ラットiPS 細胞 7
21 45
51
53 54
S ilva et al. P LoS Biol (2008) 信号伝達阻害による
iP S 細胞作製
Univ C ambridge:S mithグループ 49
F eng et al. Nat C ell Biol (2009)
E srrb利用iPS 細胞
Genome Inst S G:Ngグループ 61
Kim et al. C ell (2009)
神経幹細胞に1遺伝子
導入でiP S 細胞作製
Max Planck:S cholerグループ 65
シンガポール
欧 州
日 本国
国
ドイツ
ンダ
イタリア
スペイン
イギリス
米
中
オラ
シンガポール
米 国 は M I T あ る い は Ha r v a r d Uni v . と そ の 連 携 研 究 機 関 の 研 究 者 に よ る 論 文 発 表 が 急
激 に 増 加 し 、 東 部 ボ ス ト ン 地 区 が i PS 細 胞 研 究 の 牽 引 役 と な っ て い る 。
図 2- 2 i PS 細 胞 関 連 技 術 の 論 文 発 表 と そ の 推 移 ( 2006 . 08 公 表 ∼ ) ( 2/ 2 )
8
2006.0 2007.07 2007.12 2008.01 2008.02 2008.03 2008.04 2008.05 2008.06 2008.07 2008.08 2008.09 2008.10 2008.11 2008.12 2009.01 2009.02
日本
米国
中国
ド イツ
オランダ
イタリ ア
スペイン
イギリ ス
シンガポール
C hoi et al. S tem C ells (2009) iP S 細胞の造血/
内皮細胞分化
Wisconsin:S lukvinグループ 60
Blelloch et al. C ell S tem C ell (2007) n- Mycの利用
UC S F :R amalho- S antosグループ
6 Y u et al.
S cience (2007) ヒトiP S 細胞作製
Wisconsin:T homsonグループ 9 L owry et al.
PNA S (2008) ヒトiP S 細胞作製
UC L A:P lathグループ
S c henke- L ayland et al. S tem C ells (2008) 心血管/ 造血系への分化
UC L A:MacL ellanグループ UC LA:Plathグループ
S ridharan et al. C ell (2009) iP S 細胞化の
フ ゚ロ セ ス 解析 18
23
64
Mali et al. S tem C ells (2008)
S V 40 large T antigen利用作製効
率向上 J ohns Hopkins:C hengグループ
26
X u et al. PNAS (2009)
血友病A治療
Nevada C anc er Inst:Wardグループ 62 S c ripps R es Inst:Dingグループ
S hi et al. C ell S tem C ell
(2008) 転写因子と化合物 の組合わせによる iP S 細胞作製
S hi et al. C ell S tem C ell
(2008)
2因子と化合物の
組合わせによる iP S 細胞作製
L i et al. C ell S tem C ell
(2008) ラットiP S 細胞 27
50
55
Boston Univ:Mostoslavskyグループ S ommer et al. S tem C ells (2008) 4因子/ 1ベクター
56 Univ North C arolina:Z hangグループ
T ateishi et al. J Biol C hem (2008) インスリン産生細胞 への分化 41
X ie et al. S tem C ells Dev (2008)
iP S 細胞由来 平滑筋細胞の解析
Michigan:Chenグループ 40
E bert et al. Nature (2008)
疾患特異的 iPS 細胞作製
Wisconsin:S vendsenグループ 57
Kitchner et al. Stem Cells Dev
(2009) iPS 細胞解析
S tanford:Wuグループ 59 Maherali et al.
C ell S tem C ell (2007) Nanog遺伝子
による選抜
Harvard: Hochedlingerグループ
P ark et al. Nature (2007) OC T 4とS OX 2 が必須 Harvard:Daleyグループ UC LA:
Plathグループ
S tadtfeld et al. C ell S tem C ell (2008) iPS 細胞作製 プロセス解析
S tadtfeld et al. C urr Biol (2008) 末端分化細胞 からiP S 細胞作製
Mikkelson et al. Nature (2008) iP S 細胞作製 プロセス解析
Harvard Univ
Harvard: Hochedlingerグループ
Harvard:Meissnerグループ
Huangfu et al. Nature Biotechnol
(2008) ハ ゙ル フ ゚ロ 酸利用
Harvard: Meltonグループ
Harvard: Hochedlingerグループ
E minli et al. S tem C ells (2008)
S ox2抜きで神経 前駆細胞から
iP S 細胞作製 Dimos et al. S cience (2008)
A LS 患者より iPS 細胞作製 Harvard: E gganグループ
P ark et al. C ell (2008) 疾患特異的 iPS 細胞10種 作製
Harvard: Daleyグループ
Maherali et al. C ell S tem C ell (2008) 薬剤誘導性シ ス テ ム
によるヒトiP S Harvard:
Hoc hedlinger & C owan
S tadtfeld et al. S ciencel
(2008) アデノウイルス
利用iPS 細胞 Huangfu et al. Nature Biotechnol
(2008) ハ ゙ル フ ゚ロ 酸+2因子
Harvard: Meltonグループ 2
13
17
24
25
28
35
36
38
44
42
47
Harvard: Hochedlingerグループ
MIT : J aenisc hグループ
Wernig et al. Nature(2007) Oc t4または Nanog遺伝子 による選抜
Hanna et al. S cience (2007)
iP S 細胞利用 血液疾患治療 Meissner et al.
Nat Biotec hnol (2007) 細胞形態観察
による選抜 Wernig et al.
C ell S tem C ell (2008) c- Mycは必須でない
Brambrink et al. C ell S tem C ell (2008) iP S 細胞作製 プロセス解析
Wernig et al. PNA S (2008) iP S 細胞利用 神経疾患治療
Hanna et al. C ell (2008) 末端分化細胞 からiPS 細胞作製
Wernig et al. Nature Biotec hnol
(2008)
薬剤誘導性リプロ
グラミングシステム
Marson et al. C ell S tem C ell (2008) Wntシグナリングは iP S 細胞作製促進
Hockemeyer et al. C ell S tem C ell
(2008) 薬剤誘導性システ
ムによるヒトiP S
C arey et al. P NAS (2008) 4因子/ 1ベクター
Markoulaki et al. Nature Biotechonol
(2009) iP S 解析用マウス
4 5
11
12
15 20
22
30 43
37
58
63
Z hang et al. C irc R es (2009) ヒトiP S 細胞由来 心筋細胞
Wisconsin:K ampグループ 67