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図③-(2)-1.19 ダイス分割形状の変更によるギャップ変化

Die1:ダイス分割面の塗布面に対する傾斜45°,

Die2:ダイス分割面の塗布面に対する傾斜0°

(2)-1-3-2 リールツーリール成膜システムの構築による高速成膜の実証

考案した長尺フレキシブル基材への塗布成膜技術について連続プロセス下での 試験を行うためには図③-(2)-1.2 に示したようなリールツーリールプロセスの構築 が必要となる。また、特に塗膜の乾燥を行う熱処理部は成膜速度を制限するする 重要な部分である。そこで、開発の中でダイコーティングを含む成膜に必要な一 連の工程を一つのパッケージとしたリールツーリール成膜システムを構築し、こ れを用いて各成膜種について高速成膜実験を行った。以下、作製した成膜装置に 導入した各構成要素と、高速成膜実験の結果を記す。

基材搬送部を構成する搬送装置は繊維状基材の巻き出し・巻き取り機構を備え、

これら巻出しの後段から巻取りの前段に渡って一定のパスラインで基材を搬送す

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る(図③-(2)-1.20)。搬送装置の仕様決定にあたっては汎用性を考慮し、また塗布成

膜プロセスについて実際のデバイス製造での利用に近い状態で連続的動作の実証、

課題抽出が行えるよう、産業用に近い形態で検討した。具体的な仕様として基材 線速は 1~200m/min、張力は 1~10N とし、断面が円状のファイバ材料(φ125μm) および幅2mm、5mm、10mm、20mmのテープ状フレキシブル基材を搬送可能とし た。搬送材料の変更は各部ローラーの交換で行う。また、装置の特徴として巻き 出し・巻き取り部を同一の筐体に収め、キャプスタンでの折り返しを行うことで プロセス全体の省スペース化を図った点、基材が掛かる各部ローラーの直径を200 mm以上とし、フレキシブル基材上のITO層や成膜後の薄膜に過度の曲げを加えな いよう配慮した点にも特徴を持つ。また、基材線速信号については出力を可能と し、塗布成膜および熱処理プロセスにおいてこの信号を基に各装置の動作を基材 線速と連動させた。

Process area

Substrate supplier

winder Path of Substrate

図③-(2)-1.20 基材搬送装置

基材前処理部としては搬送される基材の成膜面に対して洗浄、親水化の処理を 順に行う。具体的な装置としては基材表面のパーティクルの除去を目的とする流 水式洗浄機(本多電子, W-357-1MPD)、基材表面の親水性向上を目的とした大気圧プ ラズマ照射装置(平行流型プラズマヘッド、東京ハイパワー, 高周波電源RF50-450)、 を塗布ヘッドの前段に導入した。

熱処理部は高温雰囲気もしくは基材の直接加熱などにより塗膜を乾燥する部分

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であり、可能な加工速度を決定する要素の一つとなる。図③-(2)-1.21に熱処理部の 概略を示す。基本は塗布溶液の予備加熱と塗膜形成後基材の雰囲気加熱を 1 組と している。予備加熱は塗布ダイのキャビティ内で材料溶液を加熱するもので、熱 源としてカートリッジヒータ(ミスミ, MCHK: φ6mm × L 50mm, 100V, 100W)用い、

固定具により塗布ダイ上面に固定した。予備加熱の温度は溶液圧力による塗膜厚 制御の妨げとならないように溶媒の沸点以下に設定する。また、塗布材料に応じ て加熱による劣化や変性を考慮した温度とする必要がある。キャビティ内での予 備加熱の効果としては、後の乾燥の助けとなる他に塗布前の溶液温度を一定に保 つことで塗膜厚制御の精度が向上できると考えられる。材料溶液の温度管理が無 い状態では粘度が温度に依存して変化し、塗膜厚tと溶液圧力Pの相関は一定のも のではなくなってしまうため、溶液圧力を基準とした塗膜厚の制御が困難となる からである。熱風加熱の熱源として図③-(2)-1.22に示すライン加熱用の赤外線ゴー ルドイメージ炉(アルバック理工, RHL-P68C)およびコントローラ(アルバック理工, TPC5000-62-1)を用いた。この炉の中央に石英ガラス管(長さ500mm、内径 21mm、

外径 24mm)を配置した。基材のパスラインを石英管で覆うことで溶剤等のランプ

への付着を防ぐとともに、管内にサセプタを配置してランプより放射される近赤 外線を吸収させる。サセプタにはカーボン製の筒(長さ 100mm、内径15mm、外径 20mm)を用い、炉の加熱長の中央に位置するよう配置した。また、ガラス管の基材 導入側から50mmの位置からは基材進行方向と垂直に内径4mmの枝管が伸びてお り、ここから窒素などの不活性ガスを導入する。熱処理時、まずゴールドイメー ジ炉からの赤外線によってカーボンサセプタが加熱され、サセプタからの伝熱に より管内に流れるガスが加熱される。この熱風中を基材が通過することで、基材 および塗膜が熱を受け、塗膜表面から溶媒が蒸発する。不活性ガスの導入は熱風 による基材への伝熱の他にカーボンサセプタの劣化防止の役割も持つ。熱風加熱 は塗布された溶液の溶媒を蒸発させて固体の薄膜を得るために用いる他、成膜後 の薄膜に対してアニール処理を行う際にも用いることができる。成膜システム内 には、赤外線イメージ炉を用いた熱処理部を溶液塗布部と対を成すように 4 組設 けた。これらの熱処理部はそれぞれ塗布部と独立して使用することが可能であり、

例えば1層の塗布成膜のための熱処理を2段階で行って加熱距離を伸ばすことや、

乾燥後の薄膜について次段の熱処理部を用いてアニール処理することなどが可能 である。

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