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H 2 O SiH x

V- 969 た[図③-(1)-2.60]。

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(a) 雰囲気制御評価モデル機の全体写真 (b)ヘッドシールド内配管・配線状態

図③-(1)-2.61 雰囲気制御評価モデル機の全体写真と改造前配管

放電成膜実験の標準手順は、実験終了後に固体SiソースをHF洗浄処理する ために放電ユニットの脱着を行う。その際、装置ガスボックス内の MFC から ヘッドシールド部までの配管とヘッドシールド部からの排気系配管内が大気 解放される。本装置を設置するCR内雰囲気(温度23℃、湿度40%程度)の流 入で水分吸着が起きると考えられる。雰囲気制御エリアの清浄化実現を目指し、

以下の対策を行った。改造後のヘッドシールド内配管・RF 配線状況と配管図 を図③-(1)-2.62に示す。

(1) ヘッドシールド部のガス・排気系配管接続部へのストップバルブ設置 ヘッドシールド部のストップバルブ取付により、実験終了後の供給配管内を 超低露点の超高純度ガスで封止し、配管内の大気開放による水分吸着を回避 (2) 配管材質の変更(テフロンチューブ⇒ステンレスSUS配管)

テフロンは低吸水率でアウトガスも少ない材質あるが、ppm レベルの酸素、

水分の清浄化に向け、樹脂材料から金属材料であるSUSに変更

※RF 給電への影響、安全面から絶縁材のテフロンチューブを多く採用し ていたが、RF 放電への影響のないことを確認して配管を金属(SUS)

配管に交換

(3) 継手の変更:ワンタッチクイック継手、樹脂スリーブの廃止 接続部のキズ、樹脂劣化によるリークの回避

※放電成膜実験の標準手順では、固体 Si ソース交換のため放電ユニット の着脱を毎回行う。この工程作業の利便性から採用していたワンタッチ クイック継手は、繰り返しの着脱によるチューブ表面の傷(特に樹脂チ ューブの場合)や、使用しているテフロンチューブの経年劣化(硬化現 象)で不良(リーク)が生じ易い。メーカー推奨もワンタッチクイック

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継手の脱着は 5 回以下とあり、同様な理由で樹脂スリーブも対応する SUS製に交換した。

雰囲気制御時の排気ラインの酸素濃度の時間変化を図③-(1)-2.63に示す。清 浄化対策により、放電開始の酸素濃度を1桁以上低減させることができ、現行 システムでの酸素濃度計の測定限界となっている。

清浄化対策により酸素濃度は、酸素濃度計の測定限界のppmレベルまで実現 できている。しかし、開放系装置では封止部以外のユニットは日常的に大気に さらされた状態で保持・保管されるため大気中の湿気・水分が多くの表面に吸 着している。真空チャンパーでの真空排気時の残留ガスの主成分が水分(H2O) であることは周知である。これまで局所雰囲気制御内の清浄度は酸素濃度に着 目して行っていたが、水分量の評価が重要であると考え、排気中の残留水分量 のモニタリングを行うために露点計を新たに設置した。設置個所は雰囲気制御 エリアに近いヘッドシールド部の排気系(横)と、全排気系が集約されるドラ イポンプ直前の2か所とした[図③-(1)-2.62]。実験で使用する反応ガスとカー テンガスには、通常入手品で最も低露点の超高純度ガス(純度≧99.9999 %、露 点-80 ℃以下[水分濃度<0.54 ppm])のHeガスとArガスをボンベ供給、H2ガ スは純超高純度水素ガス発生装置(純度≧99.99999 %、水分濃度<1.0 ppm)に よる供給とした。

(a) ストップバルブと露点計、及び配管材変更後のヘッドシールド内配管状態

ストップバルブ

カーテンガス(上) カーテンガス(横) カーテンガス(下) 反応ガ 排気(横) 排気(上) 排気(下)

露点計①

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(b) 配管・RF配線状況

図③-(1)-2.62 改造後の雰囲気制御評価モデル機の配管・RF配線状況

[破線:テフロン配管、実線:フレキシブルSUS配管]

図③-(1)-2.63 雰囲気制御時の排気ラインの酸素濃度

上述の雰囲気制御エリアの清浄化対策は、同時期にではなく装置構造を確認 しながら断続的に実施した。清浄化対策により、放電実験後に基板(4 インチ Siウエハ)上に全く変化がなかった状況から、徐々に干渉色の膜(酸化膜)の 形成、さらには Si 膜形成を実現することができた[図③-(1)-2.64]。Si 成膜サ ンプルと干渉膜(NG サンプル)形成時の放電開始後の露点計①における露点

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温度の時間変化を図③-(1)-2.65に示す。NGサンプル(Sample A1, A2)では放 電開始後の露点温度上昇が大きく、放電中には露点温度が-50℃以上(水分濃度

50ppm以上)に達している。Sample A2は露点温度の上昇が著しく、Si成膜は

不可と判断して放電時間60分で放電を中止した。一方、Si成膜サンプル(Sample B)の露点温度は、放電開始時の-63℃(水分濃度7 ppm)から-57℃(水分濃度

16 ppm)とNGサンプルに比べ低い値であった。Sample A1と他のサンプルと

の放電開始時の露点温度差(7~8℃)は、清浄化対策の効果である。Si成膜サ ンプルでの放電中の露点温度上昇は、使用しているガス(He、Ar)が低露点で あることから雰囲気制御エリア付近より水分放出があることを示している。こ の水分と大気圧プラズマにて生成されるSiHxが反応し、Si成膜エリア周囲に干 渉縞(SiO2)が形成されると推測している。ガスカーテン構造により外部空気 流入の遮断と高純度ガスにより放電ユニット内のガス・排気系流路にある Cu 電極とSi固体ソース表面は脱気され清浄化されるものの、現構造ではその他の 放電ユニット表面に吸着した水分は除去できない部分[図③-(1)-2.66 図中の赤 線]がある。放電による温度上昇とラジカル生成により、この部分からの水分 放出が生じて露点温度の上昇に至ったと推測している。干渉縞除去には、放電 前にこの雰囲気制御エリアの脱気可能な構造、または放電ユニットの脱着が不 要な(水分吸着部する面がない)構造とすることが必要である。

(a) 干渉膜サンプル

(b) Si膜形成サンプル[Sample B]

図③-(1)-2.64 開放型機による成膜サンプル

Sample A1 Sample A2

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図③-(1)-2.65 放電開始後の露点温度の時間変化[露点計①]

図③-(1)-2.66 雰囲気制御ヘッド[赤線:水分吸着残留部、青線:ガスケット]

b. 開放型大気圧プラズマSi膜の特性

放電エリアの清浄化(低露点化)により開放系の雰囲気制御モデル機で Si 成膜を実現した。まず、放電条件の一つである水素濃度依存性の評価を行った。

熱酸化膜付Siウェハに、H2濃度CH2=8,15,21%で成膜した Si膜のSEM写真を 図③-(1)-2.67に、成膜条件を表③-(1)-2.2に示す。

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図③-(1)-2.67水素濃度CH2=8,15,21%のSi膜のSEM写真

表③-(1)-2.2 成膜条件

周波数 13.56 MHz

基板加熱ヒータ設定温度 375℃

固体Siソース/基板間ギャップ 2.3 mm 反応ガス流量(H2+He) 1.0 slm

カーテンガス流量(Ar) 上流/下流/横:0.25/0.25/0.39 slm 排気流量 上流/下流/横:0.18/0.18/0.25 slm

放電開始から異常放電に移行する放電上限パワーまでの安定放電が得られ る範囲は CH2に依存し、CH2 が高くなるほど高パワー側にシフトする[図③ -(1)-2.68]。水素濃度依存性評価では放電パワー400Wを標準としたが、CH2=8%

では放電上限パワーを超えるため300Wである。基板加熱ヒータ設定温度THeater

=375℃(基板温度は THeaterより 25℃低い 350℃)とした。図③-(1)-2.69 に示す CH2=8,15,21%のSi膜のSEM観察写真より、開放型大気圧プラズマSi膜も密閉 型機でのSi膜と同様に角状のモフォロジーである。粒子サイズはCH2が高くな るほど大きくなる。

(a) CH2=8%

H2/He=0.08/0.92 slm Pf=RF300 W

T=180 min

(b) CH2=15%

H2/He=0.15/0.85 slm Pf=RF400 W

T=190 min

(c) CH2=21%

H2/He=0.21/0.79 slm Pf=RF400 W

T=180 min

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膜の結晶性について XRD(X-ray Diffraction)を用いて評価を行った。図③ -(1)-2.69より、CH2=8~21%の何れの膜も結晶方位(111)、(220)、(311)のピー クを示し、多結晶 Si膜であることがわかる。CH2=15%での Si膜は、他の条件 に比べ膜厚が厚く結晶性が進んだため(220)ピークがやや大きくなっている。

次に膜中不純部をSIMS(Secondary Ion Mass Spectrometry)により分析した。

図③-(1)-2.70に膜厚で規格化したCH2=8~21%でのSi膜中の酸素濃度の膜深さ依 存を示す。CH2が低いほど膜界面まで酸素が高くなっていることがわかる。図

③-(1)-2.71はCH2=8~21%でのSi膜中(基板界面から0.2 mm位置)の水素、酸 素、窒素、及び炭素濃度の膜深さ依存であるが、酸素、窒素、及び炭素の不純 物元素はCH2が高くなるほど膜中濃度が減少している。

図③-(1)-2.68 放電上限パワーの水素濃度依存性

図③-(1)-2.69 XRD測定結果

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図③-(1)-2.70 水素濃度CH2=8~21%のSi膜中酸素濃度の膜深さ依存性比較

図③-(1)-2.71 Si膜中の水素、酸素、窒素、及び炭素の膜中濃度の

水素濃度依存性[評価位置:基板界面から0.2 μm]

図③-(1)-2.72にSEM断面写真とSIMS測定からの推定値から算出した放電電

力400 W(18.8 W/cm2)での成膜速度の水素濃度依存性を示す。CH2=8%におい て放電電力400 Wは異常放電となる上限パワーを超えるため放電電力300 Wで 成膜している。そのため成膜速度は電力比換算(4/3 倍)してプロットしてい る。水素濃度依存は小さく、成膜速度は約7 nm/minと密閉型機での値と同等で あった。

次に、ヒータ温度依存性について評価を行った。図③-(1)-2.73にCH2=18%に おける放電サイズの放電電力依存性を示す。放電は固体ソース中央部から始ま り、電力の同大とともに拡大してSi固体体ソース径(φ52 mm)まで広がる。

ヒータ温度が低いほど熱的アシストが小さいため放電に必要な電力が高くな るとともに、高パワーにおいても放電エリアの広がりが小さい。

図③-(1)-2.74にCH2=18%、放電電力400Wにおける成膜速度のヒータ温度依 存性を示す。ヒータ温度 125℃と 175℃は十分に放電エリアが広がる放電電力 500Wであるため電力比換算(4/5倍)してプロットしている。ヒータ温度の上 昇とともに成膜速度は増大し、325℃以上ではほぼ一定であった。

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図③-(1)-2.72 成膜速度の水素濃度依存性[(○)SIMS、(□)SEM観察から算出]

図③-(1)-2.73 放電サイズの電力依存性[水素濃度CH2=18%]

図③-(1)-2.74 成膜速度のヒータ温度依存性[(○)SIMS、(□)SEM観察値]

図③-(1)-2.75にヒータ温度THeater=125, 225, 375℃のSi膜のXRD測定結果、

図③-(1)-2.76にSEM写真を示す。XRD結果とSEM写真からTHeater=125~375℃ で多結晶Si膜であることがわかる。また、粒子サイズはTHeaterが高くなるほど 大きくなっている。

図③-(1)-2.77にCH2=18%、ヒータ温度THeater=125~425 ℃のSi膜のSIMS分 析結果について、膜厚で規格化した膜中酸素濃度の挙動を示す。Si膜中の膜中 酸素濃度は、THeaterが低いほど膜界面での酸素濃度が高く、THeater=125 ℃では膜 表面からほぼ均一な濃度分布となっている。図③-(1)-2.78はTHeater=125~425 ℃

※THeater=125,175℃

電力比換算(4/5倍)

※水素濃度CH2=8%は 電力比換算(4/3倍)