図5.4: テスト刺激とパターン刺激
5.5.4
パッチクランプ
本実験ではプルキンエ細胞に対してパッチクランプ法による電流記録を行う。パッチク ランプ法[54]は、細胞膜にガラス管でできた微小電極を密着させ、その部分にあるイオン チャネルを流れる電流を測定するものである。また、密着した部分を吸引することにより 細胞膜を破り、細胞内とガラス管内部を貫通させて細胞内外の電流の流れを測定するとい う全細胞記録(whole-cell recording)が可能である。細胞膜を破る際は、膜との抵抗がギガ オームの大きさになるまで密着させて行う。
による全細胞記録を行う。ここで電圧固定とは、細胞内の電圧を固定したまま、細胞膜を流 れる電流を測定するものである。これに対して電流固定は細胞膜を通過する電流を一定に 固定し、電圧の変化を測定するものである。本実験では細胞内の電圧に変動が起きにくい 電圧固定モードを用いる。その理由は静止電位を保った状態で、AMPA受容体(
-Amino-3-hydroxy-5-methyl-4-isoxazolepropionatereceptor)によるプルキンエ細胞の応答を測定す るためである。このモードでは、細胞膜をコンデンサととらえることにより、抵抗成分と 合わせた等価回路として実験系をとらえることができる。実際の測定では特殊なオペアン プを用いた高性能プローブに電極を接続し、微小な電流を計測する。なお、このときガラ ス電極の内部は細胞内に近い組成の内液を充填し、細胞内部と同一の電位が保たれる。
5.5.5
電気生理実験
実験の概要はつぎのとおりである。図5.6にはスライス作成からパッチクランプまでの 過程を示す。まずラット(wistar系 1〜3週齢)の小脳を用いてスライス(矢状断、厚さ 約200m)を作成する。スライサーはバイブレーション方式のDTK-3000(DSK社製)を 用いる。つぎに、スライスは37℃の潅流液(Ringer) 中で1時間以上維持した後で実験に 用いる。実験は顕微鏡(Zeiss社製AXIOSCOPE)下で、つねに32℃の潅流液が2ml/min の流速で流れている条件で行う。パッチクランプとその記録にはEPC-9 PATCHCLAMP
AMPLIFIER およびPULSE PROGRAM(ともにHEKA社製)を用いる。
パッチクランプは先端口径3m程度(電極抵抗は3-6M)のピペットにピペット内液 を装填したものを用い、スライス表面のプルキンエ細胞において全細胞記録(whole cell
recording)を行う。刺激には先端口径5m程度のピペットに潅流液(Ringer)を装填した
ものを用いて、分子層の軟膜に近い部分のスライス表面を局所的に刺激して平行線維刺激
(Parallel ber stimulation)を行う[55]。刺激パルスは観察される興奮性シナプス後電流
(EPSCs:Excitatory Post Synaptic Currents)が200pA程度になるような5〜50Aの電流 を、刺激時間約100sのスクエアパルスで図5.7に示す平行線維に与えるものである。刺激 の手順は図5.5に示す。以下に実験手順および使用した潅流液、ピペット内液を示す[56]。
1. Dissect out the cerebellum from rat brain.
2. Make brain slices with a vibrating slicer.
4. Move a slice to the recording chamber.
3. Incubate at 37 degrees C. more than 1h. before recording.
5. Put the parallel fibre-stimulating electrode on the molecule layer.
7. Whole-cell patch-clamp.
8. Stimulate parallel fibres and record EPSCs from the Purkinje cell.
6. Make the formation of a giga seal on a Purkinje cell.
図5.5: 実験手順の概要