• 検索結果がありません。

MEND 改良モデルによる解析

ドキュメント内 JAIST Repository (ページ 79-91)

Synapse

4.3 実験データの素量解析

4.3.3 MEND 改良モデルによる解析

MENDはノイズの影響を積極的に軽減していこうとする手法である。この解析法ではま ずノイズの仮定を行わなければならない。ノイズの扱いについては、統計的分布による推 定がこうした仮定をしないで済むのに対し、MENDは未知であるノイズの分布を仮定しな ければならなず、ノイズの仮定と推定結果にはトレードオフの関係にある。ノイズについ てはシミュレーションの際にも述べたとおり、その仮定は非常に難しい。そこで本研究で は、いくつかのノイズの種類を用意して試してみた。ノイズのバリエーションは標準偏差 と強さ(確率)の調整による。素量解析では、放出サイトの振幅、すなわち各サイトのピー クの振幅を求めることが重要である。したがって、ノイズの分布においてはその標準偏差 が大きな意味を持ってくる。

ここではシミュレーションで仮定したように、ノイズをガウス分布と仮定する。標準偏 差を0.1と、0.2から1.0まで0.2間隔で増やしながらその強さを0.03倍して計算し、違い を確認した。ただし、ここでいう標準偏差は単位の調整を行った値であり、0.1とは通常の 標準偏差1に相当する。これらの結果が図4.8から図4.13である。図から分かるとおり、ノ イズの標準偏差が大きくなるにつれて、その影響を受けて計算結果が滑らかな分布となっ ていく。したがって、実際のノイズの標準偏差が大きかった場合は、MEND(I)(II)およ びMEND改良版による解析は困難になる。しかし、これほどのノイズが本当に発生して いるのならば、実験においてより確実なグラウンドの確保や電磁波等の遮断、あるいはタ イプの異なるノイズフィルタの使用などにより、計算の前処理でノイズを軽減すべきであ る。以降、標準偏差は1(計算上は0.1)として計算を行った。

素量解析は最小の興奮性シナプス後電位(mEPSP)の振幅と平均素量数を求めるもので ある。最小の興奮性シナプス後電位(mEPSP)については計算結果から1番目の山のピー クがもし判明すれば、その振幅値が小胞1個による興奮性シナプス後電位と考えられる。

また平均の素量数(1回のスパイクで放出される素量数)は、振幅値の平均をこの振幅値 で割ることにより算出できる[34]。実験データについて、MEND改良版による計算を行っ た結果をグラフに示す。また同時に区間を変えながら最小振幅qと平均素量数mの値を算 出した。

4.1:,mの値(500件)

section q m average total

500 0.37 1.56 0.58 293.38

4.1500件すべての区間(section)を計算した結果で、q=0.37m=1.56となった。な

totalは振幅値の合計、averageはその平均である(以下同様)。この表より、500回の全

区間において素量1個あたりが後膜におよぼす平均振幅は0.37mVであり、また1回のス パイクによって、平均1.56個の素量(小胞)が前膜からシナプス間隙に放出されたことに なる。この場合、2番目、3番目に現れるピークはそれぞれ0.92mV1.41mVである。小 数点以下2桁を四捨五入すると、1番目と2番目、2番目と3番目の間隔は約0.5mvと等し くなる。素量の考えから、こうした結果からは素量2個目(2倍)、3個目(3倍)といった ことが示唆される。ただしq0.37mVとなるので正確に等倍とはいいきれなく、0.65mV あたりにコブがありさらに細かい山が実在する可能性もある。なお図4.14は、もとのデー タである図4.5に対応する。

500件のデータは測定の順に記録されており、時系列データととらえることができる。そ こでつぎに前半、後半それぞれ250回に分けて計算した(図4.164.17)。前半、後半の 違いを比較するため、図を重ね合わせたものが図4.15である。図4.16においては反応のな かった回である0mV0番目の山とすると、はっきりと6番目の山まで確認することが できる。また1.6mVから1.7mVにかけてコブが発生している。これはシミュレーション による経験から、1.6mVあたりにあるピークによるものかもしれない。

4.8: ノイズの標準偏差=1

4.9: ノイズの標準偏差=2

4.10: ノイズの標準偏差=4

つぎに後半を見てみると、今度は6個のピークが確認でき、同様に2.1mVあたりにピー クを示唆するコブが見られる。また図4.164.17は図4.64.7とそれぞれ対応する。これ らからは1番目から3番目の山が約0.1mV の誤差でほぼ同じ振幅に位置することが分か り、かなり良好な結果を得ることができた。qmの値は表4.2のとおり、それぞれ前半が

0.34mV、1.82個、後半が0.38mV1.42個となった。この結果からは前半、後半でのqの 値がそれほど変化しない割にmの減少がやや目だっていることが分かる。

さらに、実験データを用いた推定結果から変曲点を求めたものを図4.18に示す。この結 果により、推定結果だけでははっきりしなかった、失敗を除いた2つ目のピーク(0.65mV

4.2:,mの値(250件ごと)

section q m average total

1-250 0.34 1.82 0.62 157.44

251-500 0.38 1.42 0.54 135.94

4.11: ノイズの標準偏差=6

前後)の存在が明らかとなった。ここで比較的データ件数の多いはじめの数個の山は重要 な情報であり、特に1つ目と2つ目、3つ目のピークの値およびそれらの間隔が、シナプ ス前膜、後膜のはたらきを明らかにする上でのポイントとなる。

また計算の区間を縮めた場合について考察を行う。区間を減少させた場合は、ノイズの 仮定がより大きな意味を持ってくる。これはより1件あたりのデータが強調され、ノイズ の振幅によって推定結果の形がかなり変わってしまうからである。はっきりとしたノイズ の分布が分かっていない以上短い区間での厳密な検討はできないが、qmの変化を見る ことは、測定中のシナプスの状態がどう変化したかを知る上で重要である。そこでさらに

100回ごと、50回ごとに間隔を区切った計算結果が表4.34.4である。ここでqの値は各

1番目のピークの値からのものであり、また表どうしでのmの値の合計は異なる。

これらの表には興味深い内容がある。それは、qmの推移をみると、図4.19qには それほど大きな変化が見られないのに対し、他の図(図4.204.22)におけるqmには かなりばらつきがあることである。前半、後半に2分した場合は、後半のmが減少してい ることを示唆するものと思われた。しかしその内訳として細かく分割したものからは、そ

4.12: ノイズの標準偏差=8

ういった傾向は見られない。この原因はどこにあるのだろうか。その理由としては、各区 間のqの値が区間ごとに微妙に変化することにより、mの変化が単調に減少しないことが 考えられる。2分割ではqを前半、後半で固定しているため、250回の合計としては後半の

mが減少していることになる。こうした結果は、前に述べたとおりノイズの仮定によって かなり左右される。しかし、このデータの場合、qが一定でmが減少したとはいえない場 合も存在することを示唆する結果となった。前に述べたとおり、今回使用したデータは長 期増強の基礎実験によるもので、長期増強は起きていない。したがって前半、後半の変化 は長期増強によるものではない。

4.13: ノイズの標準偏差=10

4.14: 500件

4.15: 前半・後半の分布

4.16: 前半250件

4.17: 後半250件

4.18: 変曲点(実験データ)

4.3:,mの値(100件ごと)

section q m average total

1-100 0.36 1.52 0.55 55.37

101-200 0.35 1.71 0.60 60.38

201-300 0.36 1.83 0.66 66.06

301-400 0.33 1.48 0.49 49.73

401-500 0.29 2.10 0.61 61.83

4.4:,mの値(50件ごと)

section q m average total

1-50 0.27 1.77 0.48 24.46

51-100 0.46 1.32 0.61 30.90

101-150 0.32 2.12 0.68 34.40

151-200 0.49 1.04 0.51 25.98

201-250 0.30 2.76 0.83 41.68

251-300 0.49 0.97 0.48 24.37

301-350 0.38 1.23 0.47 23.80

351-400 0.33 1.54 0.51 25.92

401-450 0.34 2.11 0.72 36.05

451-500 0.28 1.82 0.51 25.77

4.19: qの変化(100件ごと)

4.20: mの変化(100件ごと)

4.21: qの変化(50件ごと)

4.22: mの変化(50件ごと)

ドキュメント内 JAIST Repository (ページ 79-91)