-1 0 1 50%
100%
150%
Coefficient of
-1 0 1 50%
100%
150%
Coefficient of Correlation Change of
EPSCs (%)
図6.25: 相関係数と応答強度の割合における想定した変化の関係
6.6
時間刺激によるシナプス可塑性機序の仮説
6.6.1
シナプス可塑性を生ずる要因
前節で各パターン刺激ごとの応答波形を見てきた。その結果、パターンによって特徴的 な応答状況があることが明らかとなった。これはパターン刺激後の応答変化の機序を考え る上で、特に参考となる特性である。すなわち、時間パターンが作り出す刺激パルス列が、
頻度の高い部分の繰り返し回数や高い部分どうしの間隔によって、応答に微妙な変化を生 み出す原因となっていることが示唆されたことになる。本研究では、こうした現象が起き る要因として、つぎの4点を仮定する。これ以降は仮定の域を出ないものであるが、一仮説 としてこれらを定義し、時間パターン刺激によるシナプス可塑性現象の妥当性を検討する。
前膜における素量放出量のばらつき:
第3章において明らかとなったとおり、素量の放出には可塑性に関係なくばらつきが ある。これにより、ある確率で異シナプス性の減弱がシナプスのアクティブゾーン、
さらにはシナプス全体で起こる場合が考えられる。
高頻度の刺激による素量放出の増加:
テタヌス刺激などの高頻度刺激で素量の放出が増加するのは妥当な考えであるが、本 実験で用いた(テタヌスに比べて)低頻度のパターン刺激であっても、時間間隔の 短い(テタヌスに比べると非常に低頻度である)部分では似たような現象が考えら れる。
後膜における高頻度の刺激による代謝型グルタミン酸受容体の働き:
数十Hz以上での刺激頻度がシナプスにおける代謝型グルタミン酸受容体を活性させ ることは、実験的に報告例がある[58, 59]。本実験での短い刺激間隔の部分は20Hz に相当する頻度であるが、代謝型グルタミン酸受容体の活性が起きることは十分考え られる。
異シナプス性減弱機構:
前膜における素量放出量のばらつきと関連して、素量の放出が一時的に減少すると、
瞬間的に減弱傾向となったアクティブゾーンないしはシナプスがまれに発生する可能
性がある。そしてさらにこのシナプスの状態がある確率で連続で起きた場合、これは 本格的に減弱傾向をたどるシナプスとして固定される可能性がある。
図6.26は以上のシナプス前膜についての知見から、確率的に前膜の状態が変わりうるこ とを示す。図における3種類のシナプスの状態線維はつぎのとおりである。Ready(実行 可能)は活性状態で放出が起きているものである。Wait(待機)はまさに放出可能な状態 に遷移が移行したものの、実際はタイミングのずれなどで放出は起きていない。またStop
(停止)はなんらかの原因でその瞬間に放出が不可能な状態にあるものを意味する。Wait
(待機)あるいはStop(停止)状態のシナプスが同じ神経線維上にある場合、そのシナプ
スはReady(実行可能)のシナプスとの相関関係により、確率的に異シナプス性減弱が起
きる可能性が高くなる。また少ない確率であると思われるが、その状態が連続した場合は 本格的な抑制へと移行することも考えられる。