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表4 添加物存在下での結晶化実験結果

PEG濃度、結晶化結果 添加物 α3β3

       O. 5mm

図20D T rlmMとEDTAO.1mMを加えたときのα3β3複合体結晶(DAll No9)

1−1−4−2.α3β3複合体の寿命について

 これまでの実験で、精製してからの日数がたてば結晶ができにくくなり、α サブユニット、βサブユニット、α3β3複合体が使用できる期間が、約1ヶ月 であることがわかっていた。12)

 そこで、βサブユニットが共通の標記であるZXとYXというα3β3複合体

標品(表5)を使って、α3β3複合体の寿命がどの蛋白質に原因があるかを確 かめるために、SDS電気泳動で蛋白質の様子を比べた。

 蛋白質標品ZXは、αサブユニットの精製、βサブユニットの精製から2週 間程度してα3β3複合体の精製を行ったが、αとβのそれぞれのサブユニット には、他の蛋白質のバンドが見られない。また、α3β3複合体の精製において もα3β3複合体のバンドの下にかすかに他の蛋白質のバンドが見られるぐら いで純度の高い蛋白質であることがわかる(図21)。

 それが、αサブユニットの精製から2ヶ月後、βサブユニットの精製から1 ヶ.月後にα3β3複合体の精製を行った蛋白質標品YXでは、αサブユニットに ついては他の蛋白質のバンドは、ほとんど見ることができなかった。。しかし、

βサブユニットでは、バンドの下の方で他の蛋白質のバンドがはっきり表れて

いる。また、α3β3複合体の精製においてもβサブユニット由来のバンドが表 れていて純度が落ちている(図22)。αサブユニットは、2ヶ月後もほとんど 純度が保たれていることから、βサブユニットの影響によって結晶ができにく

くなってくると考えられる。

表5 各蛋白質の精製日と結晶化実験結果

α精製目 β精製日

α3β3精製日

結晶ができたセット数 結晶数:

ZX

(Z)94。11.16 (X)94.11.11 94.11.29 11セット中6セット 23個

YX (Y)94.10.9

(X)94.11.11 94.12.8

8セット中3セット

6個

マーカー5ug 10ug sug 10ug ZX  36  37  38 39

   一 一

   α(Z)   β(X) フラクンヨン37番〜39番を回収して蛋白質標品ZXにした.

   図21 蛋白質標品ZX精製の電気泳動

マーカー5ug 10ug 5ug lOug YX  38  39  40

  一 一

  α(Y)  β(X)フラクソヨン39番と40番を回収して蛋白質標品YXにした.

 図22 蛋白質標品YX精製の電気泳動

 脱塩・濃縮したα3β3複合体は、その日のうちに結晶化実験に使わないと結 晶ができなかった12)。このα3β3複合体が後日使うことができればより効率 的に結晶化実験ができる。そこで、一80℃で急速冷凍をして、後日解凍して結晶 化実験を行い結晶ができるかどうかを試みた。

表6 −80℃凍結保存蛋白質使用

セットアップ

@No

PEG濃度、結晶化結果 添加物

α3β3

W野

14% 13% 12% 11%

ZX12

1 △ (0.2) △ (0.2) × (0.8) @震

2

△ (0.1) × (0.5) × (1。0) × (0.8)

3

× (1.0)

C

× (1.0)

4

C

X (1.0) × (0.8) DTT  lmM

5

△ (0.1) × (0.5) ⑥奪:i;斗 ;:lEDTA O.1mM

6

△ (0.1) △ (0.1) × (0.7) DTT lmM  EDTA O.1mM

AX11

1 △ (0.2) △ (0.1)

C

2

△ (0.2) △ (0.3) △ (0.2)

3

△ (0.3) △ (0.2) △ (0.2)

4 △ (0.2) △ (0.2) △ (0.2) DTT  lmM

       (PEG20K、 温度15℃、 pH8.0 (Tris−pH8bnffer 50mM) 、 Na2SO4 0.12M)

◎は形のきれいな結晶で結晶の最大辺の長さが0.5㎜以上あるもの

△は形のきれいな結晶で結晶の最大辺の長さがO. 5min以下のもの

×は結晶の大きさに関係なく、岩状・葉状・菱状などものも

 凍結保存した蛋白質での結晶化は、数は少ないが形のきれいな結晶ができ結 晶化実験に使える。また、結晶ができても0.1〜0.3mmくらいの小さな結晶が多

く、葉状の結晶や菱状の結晶も多かった。

 結晶ができるPEG濃度は11%〜13%で、凍結保存をしないときと比べて、1%

低いPEG濃度ででてきた(表6)。

1一・2.安定化溶液

 結晶の成長は、14日〜17日ぐらいで結晶の成長が終わり、3週間目ぐらいか ら結晶にくすみができたり、カビができたりした。また、PEG濃度が低いとこ ろでできた結晶は、くすみやカビができやすかった。そこで、X線回折強度測 定にかけるまで、結晶を安定化溶液の中で保存することが必要であり、安定化

溶液の濃度について検討した。

 DTT lmhCとEDTA O.1mMを入れて結晶を作ったので、安定化溶液の中にも同じ ようにDTT・lmMとEDTA O。1mMを入れたところ、すべての結晶においてくすみが できてたが、DTTとEDTAのない安定化溶液ではくすみはでなかった(表7)。

表7 安定化溶液による結晶の様子

結晶ができた

oEG濃度

安定化溶液濃度 添加物 ヌクレオチド 結晶の様子

12% 15% なし なし 11日後変化なし

11% 14% DTT 1皿M EDTA O.1m騒 なし 4日後くすみ

12% 15% DTT 1通M EDTA O.1皿頚 なし 4日後くすみ

11% 14% DTT lmM EDTA O.1皿M ADP  O.加M 2日後くすみ

12% 15% DTT 1皿M EDTA O.1mM ADP  O.1mM 2日後くすみ

12% 15% DTT 1皿M EDT八0.1皿M ADP  O.1mM 2日後くすみ

11% 14% DTT 1皿M EDTA O.1皿M ATP  O.1mM 7日後くすみ

12% 15% DTT lmM EDTA O.1m瓢 ATP  O.1mM 2日後くすみ

12% 15% DTT lmM EDTA O.1皿M ATP  O.1mM 2日後くすみ

11% 14% DTT 1皿M EDTA O.1皿M TNPATP O.1mM 2日後くすみ

12% 15% DTT 1皿M EDTA O.1m廻 TNPATP O.1mM 2日後くすみ

 次に、結晶ができたPEG濃度より、3%、5%、7%高くした安定化溶液(DTT lmM・EDTA O.1mMは入れない)を使った場合、3%、5%、7%という相対的 な安定化溶液の濃度ではなく、18%以上の濃度にすれば、結晶のくすみを押さ えられることが分かった(表8)。

表8 安定化溶液濃度実験

結晶ができた

oEG濃度

安定化溶液濃度 添加物 ヌクレオチド 結晶の様子

11% 14%(+3%) なし なし 10日後 くすみ

12% 15%(+3%) なし なし 10日後 くすみ

13% 16%(+3%) なし なし 10日後 7個中3個くすみ

13% 18%(+5%) なし なし 10日後 変化なし

13% 20%(+7%) なし なし 10日後 変化なし

1−3.リガンド結合型結晶の作成

 α3β3複合体は、外から加えたATPやADPと結合する性質を持っている。そ こで、各種ヌクレオチドを結合させヌクレオチドがどの部分に結合しているか をX線回折強度測定によって調べるためにリガンド結合型結晶を作った。

 ATPとNBD−Clは、小さなキズが少しだけできたがくすみもなく結晶の状態が 一番良かった。ADPとTNPATPは、キズが大きかったりキズの数が増えたりして、

結晶に対して良くない影響を与えた。一番悪かったのは、AMPPNPで2日目にキ ズができ、キズのあたりが黄色くくすんだようになった。

 また、同じヌクレオチドでもMgが結合したMg−ATPは、キズが増えた。さら にMg−ADPもキズが増えキズのあたりが黄色くくすんだ。その中でも、Mg−AMPPNP は、結晶の状態が一番悪く、小さなキズが多数でき結晶もくすみ10日くらいで 結晶にカビがはえてきた。

 また、同じように安定化溶液の中にPiを入れた場合も結晶は数日でくすみが できた(表9)。

 このようにヌクレオチドが結合した結晶は、なんらかの変化をおこすことが わかったので、リガンド結合型結晶のX線回折強度測定をするときは、ヌクレ オチドを前日に結合させることにした。

表9 リガンド結合型結晶の様子 安定化溶液の濃度(18%)

ヌクレオチド種類 結晶の様子

ATP    O.1mM 5日後 小さなキズができる Mg−ATP  O.1mM 5日後 小さなキズが多数できる ADP    O.1血M 5日後 大きなキズが数本できる Mg−ADP  O。11醐 2日後 小さなキズができる

V日後 キズが増え、キズの部分が黄色みがかる AMPPNP  O.1醐 2日後 キズができ、黄色みがかる

Mg−AMPPNP O.1mM 2日後 小さなキズが多数できる P0日後 カビが生える

TNPATP  O.1mM 2日後 小さなキズができる V日後 キズが増える NBD−Cl  O.掘M 2日後 小さなキズができる Pi     35mM 4日後 結晶にくすみができる

1−4.X線回折強度測定

1−4−1.予備X線回折強度測定

 高エネルギー物理学研究所放射光施設で測定をする前に、予備実験として本 研究室でX線回折強度測定を行い結晶の状態を確認した。

 どの結晶にも小さなキズや表面に溝が入っていたが、X線回折強度測定をす る上ではほとんど影響がなく分解能も4A〜4.6Aくらいのデータをとること ができた(表10)。しかし、Mg−AMPPNPは、結晶の表面がくすんでいて分解能

も7.8Aしか得られず、回折パターンも格子状になって良くなかった(図27)。

 また、NBD−Clは、結晶の様子はあまり悪くはなかったが、1っは回折パター ンがなく(図29)分解能を測定することができなかった。もう1つは、回折パ

タ・一一・・ンが弱く (図30)分解能もloAくらいしがなかった(表10)。NBD−Clは、

結晶構造に良くない影響を与えているとがわかった。

 ヌクレオチドとMgの両方が結晶に結びついた揚合は、 Mg−ATP(図24)や Mg−AMPPNPの例が示すように分解能が悪くなり、回折パターンにも格子状のも

のが見られるようになった。

表10 予備X線回折強度測定

ヌクレオチド種類

分解能 回折パターン 結晶の様子 結晶のサイズ(㎜)

ATP 1

4.3A 良い 表面に小さなキズ 0.7xO.5xO.4

23

ATP 2

4.IA 良い 表面に小さなキズ 0.6xO.6xO,4

Mg−ATP 1

4.6A やや悪い 表面に溝、キズ 0.8xO.5xO.3

Mg−ATP 2

4.5A やや悪い キズが1本 0.5xO.4xO.3

24

Mg−ADP 1

4.oA 良い 表面に溝が多い、大きなキズ 0.8xO.4xO.8

25

Mg−ADP 2

4.1A 良い キズが1本 0.7xO.6xO.3

AMPPNP

4.1A 良い 表面に大きなキズ 0.7xO.6xO.4

26 Mg−AMPPNP

7.8A 悪い 表面にくすみ 0.8xO.4xO.8

27

TNPATP

4.3A 良い 黄色、表面でこぼこ 0.6xO.5xO.6

28

NBD−C1 1

測定不能

回折パターンなし

オレンジ色、表面に溝、キズ 0。6xO.4xO.5

29

NBD−Cl 2

10.3A

回折パターン弱い

オレンジ色だがくすみはない 0.3xO.3xO.2

30

図23ATP 1の回折パターン

図24Mg−ATP 2の回折パターン

麟・

 韮 偽ti

譲譲譲適齢

臨鯉

 が聯グ.

 映キ 駕.

・麟謬

  縫二

纐鯵霧

麟鑛

図25Mg−ADPの回折パターン

巨啄」

糠糠

 龍

薄』

図26AMPPNPの回折パターン

      ドヒ ハ        

 1麟灘欝欝購灘灘轟難諺灘鑛鑛羅i_懸盤鱗

リ ドゆ ぶゼがおやまお た のピ         ほるに  ぴ に      ゼ      

  図27Mg−AMPPNPの回折パターン

   灘     。..E emePt. q 再。 . 。,,  .鱈 喝       . ek漁

   図28 TNPATPの回折パターン

犠 繰 鐵。 . k 、 _..馨・ ・ ・    。。.、,;t: ・ ・

  図29 NBD−C11の回折パターン

図30 NBD−C12の回折パターン

1−4−2。放射光でのX線回折強度測定

 リガンド結合型の結晶実験(表9)や予備X線回折強度測定実験より、ヌク レオチドが結合した結晶は時間が経つにつれてヌクレオチドの影響が受けるこ とがわかったので、放射光での実験では、測定をする前日にヌクレオチドを含 む溶液に移し、放射光施設ビームライン18BのワイゼンベルグカメラでX線回 折強度測定をした。

 実験に使った結晶の大きさも0.5mm以上あり厚さも0.4mmと十分野あったの で、ほとんどの結晶で分解能も3.1A〜3.6Aくらいのデータを得ることができ

た。

 放射光での実験でも同様に、Mgが結びついたものはMg−ATPやMg−ADPのよう に分解能はATPやADPと比べて変化はなかったが、回折パターンは少し悪くな った。Mg−TNPPNPは、回折パターンは良かったが分解能は他のヌクレオチドと 比べて若干下がった。これらのことから、Mgが結びつくと結晶に何らかの影響

を与えることが再度確認することができた。

 NBD−C1は、結晶の表面に小さなキズがあっただけだったが、回折パタv一一一・ンに 乱れがありよくなかった(表11)。

表11放射光X線回折強度測定

ヌクレオチド種類

分解能 回折パターン 結晶の様子 結晶のサイズ(皿m)

ATP

3.1〜3.5A 良い 良い 1.OxO.8xO.4

Mg−ATP

3.1〜3.5A やや良い 良い 0.7xO.6xO.3

ADP

3.3〜3.5A 良い 表面がでこぼこ 0.8xO.5xO.4

Mg−ADP

3.1〜3.5A やや悪い キズが1本 0.8xO.7xO.4

AMPPNP

3.1〜3.3A 良い キズが1本 0.6xO.6xO.4

Mg−TNPATP

3.3〜3.6A 良い 花びら状結晶 0.8xO.7xO.4

NBD−C1

測定不能 回折パターンに乱れ 表面に小さなキズ 0.6xO.6xO.4

Pi

3.1〜3.5A 良い 表面に溝が多い 0.7xO.6xO.4

 ヌクレオチドが結合することによって、結晶にひびがはいったりするものが できたが、予備X線四十強度測定と放射光でのX線型析強度測定によって、分 解能と回折パターンを見る限り影響がないことが分かった。

ドキュメント内 好熱菌F1-ATPaseのα3β3複合体の構造解析 (ページ 46-65)

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