岳6 鼻
N. 討論
1.リガンド結合型α3β3複合体 1−1.サブnニットの精製
精製方法については、DEAEイオン交換カラム,HW65疎水カラムクロマトグラフ ィによる方法で問題はなく、α、βサブユニットの純度を上げることである。
これは、SDS電気泳動で各フラクションを調べ、不純物の少ないフラクションを 回収することにより解決することができた。それは、αサブユニットとβサブ ユニット共に精製では、DEAEカラム後のフラクションを回収するとき蛋白質溶 出濃度の高い部分でピークより前のフラクションは回収せず、ピークから後ろ の部分だけを回収する。HW65疎水カラム後も同様に蛋白質溶出濃度の高い部分 でピークから後の部分だけを回収するようにする。このようにしてα、βサブ ユニットの純度を上げることができた。このサブユニットを使ってα3β3複合 体の再構成・精製を行い、HW65疎水カラム後も同様に蛋白質溶出濃度の高い部 分でピークから後の部分だけを回収する。この方法で、常に純度の高い蛋白質 標品を得ることができ、これを結晶化実験に用いると必ず結晶が得られた。
1−2.結晶化
昨年までの研究で、結晶化条件についてはすでに確立していた12)。残ってい た課題として、再現性とX線回折強度測定にかけられる大きさの結晶(0.5mm以 上)を確実に作ることであった。再現性については、精製方法の改良により純度 の高い蛋白質を得ることができ解決することができた。結晶の大きさについて は、セットアップのときに、添加物としてDTT lmMとEDTA O.1mMを加えることに
より0.5mm以上の結晶を確実に作ることができ、これらの添加物が有効であるこ とがわかった。
結晶化実験に使うαサブユニット、βサブユニット、α3β3複合体の蛋白質 標品は、硫安で沈殿させて低温保存をしている。この蛋白質は、精製された日
から約1ヶ月間は結晶化実験に使える。この原因を調べるためにSDS電気泳動に 各蛋白質をかけてみるとβサブユニットが精製された直後では、不純物も少な ぐ純度の高い蛋白質であるが、1ヶ月後には他の蛋白質のバンドが見えてきて 純度の落ちた蛋白質になっていた。これを使ってα3β3複合体の再構成を行う
とβサブユニットからの不純物がα3β3複合体のバンドの中に見られる。この
また、α(Y)は、精製された日から2ゲ月もたっているのにSDS電気泳動で 見る限り純度の低下は見られなかった。このことから、βサブユニットはαサ ブユニットと比べて分解されやすい性質を持っていると考えられる。
1一一3.X線回折強度測定
X線結晶構造解析に用いることができる良質な結晶を、再現性よく得ること ができ、形の良い結晶も効率よく作れるようになった。
X線回折強度測定に使用するリガンド結合型結晶は、安定化溶液の中にリガ ンドを加えた溶液に結晶を入れて作った。本研究室で作った場合には、数日か
ら1週間くらいは結晶にひび割れば起こっていなかった。しかし、高エネ研の 放射光施設でX線回折強度測定をするために本研究室でリガンド結合型結晶を 作り放射光施設に持っていくと次の目には、結晶にひび割れが生じた。この理
由については、調べてみたが特定することができなかった。それで、放射光施 設でリガンド結合型結晶を作くりX線回折強度測定をすることにした。
放射光でのX線回折強度測定では、NBD−C1を除いて各ヌクレオチドともに分 解能が3.1〜3.6Aのデータを得ることができた。これらのデータを解析した結 果AMPPNP、 Mg−ADP、 Piについては、α3β3複合体に結合して、結晶に構造変化
を与えていることがわかったので、さらに詳しい解析をしていく必要がある。
2.α3β3γ複合体の結晶化実験 2−1.サブユニットの精製
当初は、東工大から精製されたものを結晶化実験に追いていたが、結晶化条 件に細紐性がなかった。精製された蛋白質の純度に問題があると考えて本研究
室で菌(JM103△(uncB−uncD>/pKABG1)の培養をして、精製を行うようにした。
精製は、DEAEカラムとBUTYLカラムを用いて行った。蛋白質の純度については、
それぞれのカラムにおいて、蛋白質溶出濃度の高いところでピークより後のも のを数本回収することで純度の高いものを得ることができた。
しかし、SDS電気泳動で、各フラクションの様子を調べてみるとBUTYLカラム において、α3β3のバンドがある上部に他の蛋白質のバンドがはっきり見える。
蛋白質の純度をより上げるために、精製方法を改良してこの部分の蛋白質を除 去していかなくてはならない。
2−2.結晶化
α3β3γ複合体は、当初は東工大から精製されたものを用いて結晶化実験を 行った。このときは、PEG20Kを使ったときは、 PEG濃度12〜14%、 pH8、 Na2SO4 濃度0.12M又は0.2M、温度15。C又は25℃で0.1mmの大きさの結晶ができた。 PEG6K
を使ったときはPEG濃度16%、 pH8、 Na2SO4濃度0.12M、温度25QCで0.1㎜の大き さの結晶ができた。
しかし、再現性で問題が残った。この要因を蛋白質の純度にあると考えたの で、本研究室で菌の培養から始めて、それを精製して結晶化実験に用いること にした。PEG20Kを使ったときは、 PEG濃度8%、 pH8、 Na2SO4濃度0.12M、温度15℃
で0.2mmの大きさの結晶ができた。精製方法を変えて蛋白の純度を上げることに よってPEG20Kの濃度が数%下がり結晶化条件に変化があった。
結晶化条件は、α3β3複合体の結晶化条件と比べてPEG20Kの濃度が数%下が った以外はすべて同じであった。しかし、この条件では、結晶は小さなものし か得られず大きく成長はしなかった。また、PEG6Kでの結晶化はしていないので、
この点を含めてよりよい条件を探していかなくてはいけない。
3.βミュータントからのα3β3複合体の結晶化実験 3−1.サブユニットの精製
βE190Q(東工大からの精製)、βY341A(本研究室で培養後精製)、
βY341L(東工大からの精製)の3種類から由来するα3β3複合体の精製を行 った。αサブユニット、βサブユニット、α3β3複合体の精製のときと同様に 各カラムでのフラクションの回収は、蛋白質溶出濃度の高いところでピークよ
り後のものを数本回収することで純度の高いものを得ることができた。
βY341しからのα3β3複合体の純度は、βY341Aからのα3β3複合体と比べて 良くなかった。これは、βY341しの精製後、フラクションの回収の仕方にに問 題があると考えられる。βY341しも菌の培養から始めて上記の方法で精製を行
えばβY341Aと同じくらいの純度の蛋白質が得られα3β3複1合体の精製を行っ たときでも純度の高いものが得られるだろう。
また、βE190Qからのα3β3複合体の純度は、βY341Aのときと同様に良い が、これもβY341しと同様に菌の培養から始めれば、さらに純度の高い蛋白質 を得ることができるだろう。
3−2.結晶化
3種類のミュータントを使って、結晶化実験を行った。現在のところ、まだ 結晶化の条件を探し出す段階で、結晶もなかなかできなかった。
ミュータントにβE190Qを使ったものは、βY341AとβY341しのときと比べ て結晶ができやすかった。形は金平糖状や菱状のものであまり良くなかったが、
0.4mmくらいの大きさになりX線回折強度測定にかけられるものができた。
一番良かった結晶化条件は、pHを7.6にしたときにPEG20K濃度10〜12%、温 度5QC、 Na2SO4濃度0.12Mであった。次の良かったのは、 pHを8にしたときで PEG20K濃度14%、温度15℃、 Na2SO4濃度0,12Mであった。この条件は、ミュs・一・一一
タントを使っていないα3β3複合体の結晶化条件と同じであった。
βY341AとβY341しについては、共にミュータントを使っていないα3β3複 合体の結晶化条件と同じにしたら結晶が出てきたが、この条件では、結晶も大
きくならなかった。
これらのミュータントについては、十分な数の標品で結晶化実験ができてな く結晶化条件も確立したとは言えない。今後も結晶化条件を探していかなくて はいけない。
V.謝辞
この2年間、指導教官の白木原康雄先生には、兵庫教育大学だけでなく遺伝 学研究所へ移られても、日々懇切丁寧な指導をしていただき心から感謝してお
ります。生物物理の世界を通して生命科学の最前線を学ばせていただき、この 兵庫教育大学での貴重な経験は教育現場では得られないものでした。本当にあ
りがとうございました。
主任指導教官の佐藤 光先生、物理研究室の石原 諭先生、また副学長の廣 瀬正美先生には、いろいろな場で貴重な助言や、時には暖かい励ましの言葉を いただきありがとうございました。
講義でご教授いただきました先生方には、新しい知識ならびに奥深い示唆を していただき感謝します。
物理研究室の院生・学部生、その他自然系の院生の皆様には、いろいろな面 でお世話になりました。
高エネルギー物理学研究所の放射光施設では、大変忙しい中で私たちの実験 をサポートしてくださいました渡辺信久氏に心から感謝します。
今後はこの兵庫教育大学で学んだことを教育現場で生かしていきたいと思い
ます。
最後に、このような研究の機会を与えてくださった広島県教育委員会、向島 町教育委員会、向島町立向島中学校の皆様に感謝します。