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Tits 系としての一般線形群

ドキュメント内 Dipper-James 22 7 (ページ 32-38)

一般線形群は簡約線形代数群である.簡約線形代数群の定義はいくつかあり 得るが,簡約線形代数群であることと,Tits系とよばれる公理系を拡張した 簡約BN対の公理系をみたすことは同値であり,一般の簡約線形代数群に対 して成り立つ多くの結果をこの公理をもとに証明することが出来る.

定義 1.18 Gを任意の群とする.Gの部分群の対(B, N)が次の条件 (a) GBN で生成される.

(b) T =B∩NN の正規部分群.

(c) W =N/T は位数2の元の集合{si}i∈I で生成される.

(d) siBsi6=B.

(e) w∈W に対し,siBw⊆BsiwB∪BwB.

をみたすとき,(B, N)をTits系,またはBN対という.

(d)と(e)は正確にはniT =si,nT =wをみたすN の元ni,nに対する 条件niBni6=BniBn⊆BninB∪BnBであるが,これらの条件はninの選び方によらないので,上記のように略記する.

定義 1.19 線形代数群Gの閉部分群の対(B, N)が簡約BN対とは,BN 対であってさらに次の条件をみたすときをいう.

(f) BW の元で共役した部分群wBw−1(w∈W)の共通部分を考えると

\

w∈W

wBw−1=T.

(g) CG(T) =T かつHopf代数として次の同型が存在.

E[T]'E[T1, T1−1,· · ·, Tr, Tr−1] すなわちT '(E×)r

(h) Bの連結閉正規部分群U が存在して次が成立.

(i) BTU の半直積,すなわちB=T U かつU∩T = 1.

(ii) U はベキ単.すなわち,GをGLn(E)の閉部分群として実現した ときすべてのu∈U に対して(u1)n= 0が成立.

ベキ単という性質はGLn(E)の閉部分群としての実現の仕方によらないこと が知られている.さて,Tits系の公理のもっとも重要な帰結はBruhat分解

G= G

w∈W

BwB

である.本書では一般線形群のみを扱うので簡約BN対の公理をもとに理論 展開する必要はなく,本書で必要な性質だけを初等的な方法で証明しておけば 十分である.まずBruhat分解から始めよう.

命題 1.2 SnをGLn(E)およびGLn(q)の部分群とみなすとき次が成立.

(1) GLn(E) = `

w∈Sn

BnwBn. (2) GLn(q) = `

w∈Sn

Bn(q)wBn(q).

証明 証明はまったく同じであるから(2)のみ示す.Bn(q)opを可逆な下 三角行列の全体とし,

GLn(q) = `

w∈Sn

Bn(q)opwBn(q) を示そう.単位行列を(e1,· · ·, en)と書く.

g∈GLn(q)に対して,まず1列目を見る.gの(i,1)成分が1≤i < i1で 0で,i=i1のとき初めて0でない値が成分として現われたとすると,基本 行列







1...

1... ...

λ ··· 1

...1







,





1...

1λ 1...

1





を左からかける行基本変形でg= (ei1 | ∗ · · · ∗)と変形できる.次に基本行列







1...

1 ··· λ

... ...

1...

1







を右からかける列基本変形でさらにi1行目を(1,0,· · · ,0)に出来る.ここで,

列ベクトルの1次独立性に注目すれば,この行列からi1行目と1列目を除い て得られる行列もまた可逆行列であるから,以下同様の操作を繰り返せば,

(ei1 | ∗ · · · ∗)7→(ei1, ei2 | ∗ · · · ∗)7→ · · · 7→(ei1, ei2,· · ·, ein)∈Sn

となり,

GLn(q) = [

w∈Sn

Bn(q)opwBn(q)

である.今,w0を1≤i≤nに対し(i, n+ 1−i)成分が1,それ以外の成分 が0の行列とすると,w0∈SnかつBn(q)op=w−10 Bn(q)w0であるから,

GLn(q) =w0GLn(q) = [

w∈Sn

Bn(q)w0wBn(q)

を得る.ここで,Bn(q)w1Bn(q) =Bn(q)w2Bn(q)としよう.このとき,

w1=g−1w2h (g, h∈Bn(q)) と書けるから,

w−12 gw1ew−1

1 (i)=w2−1gei=w−12 (giiei+· · ·) =giiew−1

2 (i)+· · · つまりhew−1

1 (i)ew−1

2 (i) が現れるのでw−12 (i)≤w−11 (i)である.同様に w1−1g−1w2ew−1

2 (i)=g−1ii ew−1

1 (i)+· · · つまりh−1ew−1

2 (i)ew−1

1 (i)が現れるのでw−11 (i)≤w−12 (i)である.よって

w1=w2となる. ˜

系 1.1 1変数多項式環Z[t]中で次の等式が成立.

P

w∈Sn

t`(w)= (1 +t)(1 +t+t2)· · ·(1 +t+· · ·+tn−1)

証明 Bn(q)wBn(q)/Bn(q)にはBn(q)が左から作用し,wBn(q)/Bn(q) の固定化群はBn(q)∩wBn(q)w−1だから,b= (bij)1≤i,j≤n ∈Bn(q)が固定 化群に属するのは,i > jのときbw(i)w(j)= 0をみたすときである.よって i < jに対しbij に任意のFq の元を書きこめるのはw−1(i)< w−1(j)のとき であるから,固定化群の位数は

qn(n−1)2 −`(w−1)(q1)n となり,

|Bn(q)wBn(q)/Bn(q)|= qn(n−1)2 (q1)n

qn(n−1)2 −`(w−1)(q1)n =q`(w) を得る.他方

|GLn(q)/Bn(q)|=

qn(n−1)2 Qn

i=1

(qi1) qn(n−1)2 (q1)n = Qn

i=1

qi1 q−1

であるから,Bruhat分解より題意の式にt=qと代入した式を得る.ここで,

qは任意のpベキだったからこれは恒等式である. ˜ 次がBN対の公理の中心をなす性質である.

命題 1.3 siBn(q)w⊆Bn(q)siwBn(q)∪Bn(q)wBn(q)であり,

(1) w−1(i)< w−1(i+ 1)ならば,siBn(q)w⊆Bn(q)siwBn(q).

(2) w−1(i)> w−1(i+ 1)ならば,siBn(q)w∩Bn(q)wBn(q)6=∅.

証明 w(k) = ik と書くことにする.g Bn(q)wのk列目はgek = gw−1ew(k)=gw−1eik よりgw−1∈Bn(q)のik 列目であるから,ik 行目に 0でない成分があり,ik+ 1,· · ·, n行目は0である.また逆にこの条件を満 たせばg∈Bn(q)wである.故に,gのk列目の

³ i行目 i+ 1行目

´ 成分は (1) ik> i+ 1ならば()

(2) ik=i+ 1ならば(∗6=0 ) (3) ik=iならば¡∗6=0

0

¢

(4) ik< iならば(00)

となっている.w(a) =i, w(b) =i+ 1によりa, bを定め,sig∈siBn(q)wの k列目を考えよう.k6=a, bとすると,ik 6=i, i+ 1だから(1)または(4)が 起こり,したがってi行目とi+ 1行目を交換するとsigk列目は,

ik 行目が0でない成分で,

ik+ 1,· · ·, n行目の成分は0 となっている.

次に,k∈ {a, b}つまりik=iまたはik=i+ 1のときを考えよう.ここ で,題意にあるように次の2通りの場合が起こる.

(A)w−1(i)< w−1(i+ 1),つまりa < bならば,

a列目 b列目

i行目 0 ∗ 6= 0

i+ 1行目 ∗ 6= 0

となる.ここで2次行列の積に関して,a126= 0, a216= 0ならば Ã 0 a12

a21 a22

! 

1 −a22

a21

0 1

=

à 0 a12

a21 0

!

となるので,右からBn(q)の元をかけることにより

a列目 b列目

i行目 0 ∗ 6= 0

i+ 1行目 ∗ 6= 0 0

と出来る.k6∈ {a, b}の列に対する最初の考察と併せ考えれば,この最後に得 られた行列はBn(q)siwの元であるから,

siBn(q)w⊆Bn(q)siwBn(q) が示された.

(B)w−1(i)> w−1(i+ 1),つまりa > bならば,

b列目 a列目

i行目 ∗ 6= 0 0

i+ 1行目 ∗ 6= 0

となる.次の2通りに場合分けをしよう.

b列目が¡∗6=0

0

¢のとき.このときは既にBn(q)siwBn(q)の元である.

b列目が

³∗6=0

∗6=0

´

のとき.(1)と同様に2次行列の積を考えると,

a116= 0, a216= 0, a226= 0ならば Ãa11 0

a21 a22

! 

1 −a22

a21

0 1

=

a11 −a11a22

a21

a21 0

なので,右からBn(q)の元をかけることにより

b列目 a列目 i行目 ∗ 6= 0 ∗ 6= 0 i+ 1行目 ∗ 6= 0 0

の形になる.つまりこのときはBn(q)wBn(q)の元になっているので,とくに

siBn(q)w∩Bn(q)wBn(q)6=∅が成立する. ˜

補題1.9より,命題1.3を次のように言い換えてもよい.

命題 1.4

(i) γ(siw) =γ(w) + 1ならばsiBn(q)w⊆Bn(q)siwBn(q).

(ii) γ(siw) =γ(w)−1ならばsiBn(q)w∩Bn(q)wBn(q)6=∅.

また,命題1.3とまったく同じ証明で次が示される.

命題 1.5 siBnw⊆BnsiwBn∪BnwBn であり,

(1) w−1(i)< w−1(i+ 1)ならば,siBnw⊆BnsiwBn. (2) w−1(i)> w−1(i+ 1)ならば,siBnw∩BnwBn6=∅.

ドキュメント内 Dipper-James 22 7 (ページ 32-38)