第 5 章 指標理論と既約 cuspidal 加群の構成 168
5.2 GL n (q) の一般指標 χ n,r の構成
有理整数環Zの素点pによる局所化をQp0 とする.すなわち Qp0 =na
b ∈Q|a, b∈Z, pとbは互いに素 o
である.このとき次が成立する.
補題 5.4 群同型Qp0/Z'E× が存在する.また,同型Qp0/Z'E×を 与えることと単射準同型θ:E×,→C× を与えることは同値である.
証明 ni= (i!)p0 とおき,Eに値をとる数列(ξi)i≥1であって,
(a) ξi6= 0ならばξiは1の原始ni乗根,
(b) i < jかつξi6= 0,ξj 6= 0ならばξjnj/ni =ξi,
をみたすもの全体のなす集合をS とする.また,ξ= (ξi)i≥1∈ Sに対し,
Supp(ξ) ={i∈Z≥1|ξi6= 0}
とする.このとき,ξ≤ηを
Supp(ξ)⊆Supp(η)かつi∈Supp(ξ)ならばξi=ηi
と定めることによりS は帰納的半順序集合である.実際,
ξ(1)≤ξ(2)≤ · · · ならば,ξ= (ξi)i≥1∈ Sを
ξi =
ξi(k) (i∈ ∪k≥1Supp(ξ(k))) 0 (i6∈ ∪k≥1Supp(ξ(k))) で定めれば任意のkについてξ(k)≤ξである.
故に,Zornの補題より極大元ξmax= (ξi)i≥1が存在するから,
Supp(ξmax)6=Z≥1
として矛盾を導こう.
a= min{x∈Z≥1|x6∈Supp(ξmax)}
とする.もしSupp(ξmax) ={1,2,· · ·, a−1}ならば,ξa0 ∈E× を (ξ0a)na/na−1 =ξa−1
をみたすように選び,
ξ0= (ξ1, ξ2,· · · , ξa−1, ξ0a,0,0,· · ·) とおけば,ξa0 は原始na 乗根であり,i < aならば
(ξ0a)ni/na = (ξ0a)na−1na na−1ni =ξna−1i/na−1 =ξi
が成り立つからξ0 ∈ Sである.しかし,ξmax< ξ0 であるからこれはξmaxの 極大性に反する.故に{x∈Z≥1|x > a, x∈Supp(ξmax)} 6=∅としてよく,
b= min{x∈Z≥1|x > a, x∈Supp(ξmax)}
が定義できる.ξa0 =ξbnb/na とおくと任意のi∈Supp(ξmax)について,
• i < aならば,(ξ0a)na/ni =ξ
nbnana ni
b =ξbnb/ni=ξi
• i > aならば,i≥bに注意して,ξini/na =ξ
nbninb na
i =ξbnb/na =ξa0 となり,ξaをξa0 に変えたものをξ0とすれば,やはりξ0 ∈ S かつξmax< ξ0 となって矛盾する.以上からSupp(ξmax) =Z≥1である.
ξmax= (ξi)i≥1を用いて群準同型Qp0/Z→E× をs/ni 7→ξisで定めること ができる.s/ni6∈Zならば,ξi が1の原始ni乗根故ξis6= 1であるからこの 写像は単射である.他方,E×の元はすべて1のベキ根であるからこの写像が 全射であることは明らかである.以上から群同型Qp0/Z'E× が得られた.
単射群準同型θ:E× ,→C× が与えられたとすると,対数写像と合成して 1
2π√
−1log◦θ:E×,→C×'C/Z
が得られるが,この写像はQp0/Zを経由し同型E×'Qp0/Zを与える.逆に 同型E×'Qp0/Zが与えられたとすると,指数写像と合成して
E×'Qp0/Z,→C/Z'C×
によりE×,→C×が得られる. ˜ Gを有限群とし,準同型θ:E× ,→C× をひとつ固定する.
定理 5.5 V をEG-加群,ρ: G→GL(V)をV の表現とする.g ∈ G に対してρ(g)の固有値がλ1,· · ·, λnのときr次基本対称式erを用いて
χr(g) =er(θ(λ1),· · ·, θ(λn)) と定める.このとき,χr:G→Cは一般指標である.
証明 ∧rV もGの表現であり,gの∧rV における固有値は {λi1· · ·λir |1≤i1<· · ·< ir≤n}
だから,∧rV に対するχ1がχrに等しい.よってr= 1として一般性を失わ ない.H =P ×CをGのp-基本部分群とすると,h∈H はh=g1g2と書 けてg1g2=g2g1かつg1はp-元,g2はp-正則元である.すると,V 上での g1の固有値がすべて1であることと併せてχ1(h) =χ1(g2)を得るが,他方 Cは位数がpと素な巡回群だからχ1|CはCの一般指標であり,
χ1|H =(P の単位指標)⊗χ1|C
はH の一般指標であるから,定理5.3よりχ1はGの一般指標である. ˜ 以下,G= GLn(q)として定理5.5を適用しよう.
定義 5.10 GLn(E)の定義加群V =EnをGLn(q)へ制限してEGLn (q)-加群とみなす.この表現に対して定理5.5で定めた一般指標をχn,r と書く.
第3章の設定に戻り,AをHall代数,Bを{en(f)}n≥1,f∈F で生成される C上の多項式環とする.定理3.2で示したように,
πn(f)7→q−degfn(n−1)2 en(f) により計量同型ψ:A'Bが定まるのであった.
補題 5.5 対称関数環Λ中で次の等式が成立.
hn = P
µ`n
Peµ(q)
証明 ψ:A'Bはf ∈ F ごとに定まる計量同型ψf :A(f)'B(f)から 得られるのであった.ここでFq[X]-加群{Vλ(f)}λ∈P を
Vλ(f) =M
i≥1
Fq[X]/(fλi) で定め,Vλ(f)の部分加群U であって
U 'Vµ(f), Vλ(f)/U 'Vν(f) をみたすものの個数をgµνλ (f)とおくとき,C-代数A(f)は
A(f) =M
λ∈P
Cuλ
にuµuν =P
gλµν(f)uλで積を定めたものであり,B(f)は多項式環 B(f) =C[e1(f), e2(f),· · ·]
である.また同型写像ψf は
ψf :u(1n)7→q−degfn(n−1)2 en(f)
で与えられる.A(f)は可換環でgµνλ (f) =gλνµ(f)が成り立つ.
そこで,f =X−1とし,cλ∈Zを ÃP
µ`a
uµ
!
u(1b)= P
λ`a+b
cλuλ
により定めると,既約Fq[X]-加群S=Fq[X]/(X−1)を用いて cλ= P
µ`a
#{U ⊆Vλ|U 'S⊕b, Vλ/U 'Vµ}
であるが,µ`aで和をとるということはVλ/U がどうなるかは気にしないで U を考えるということであるから,SocVλのb次元部分空間を数えればよく,
cλ=
·`(λ) b
¸
q
= Qb
i=1
q`(λ)−i+1−1 qb−i+1−1
を得る.ただし,λ= (λ1, λ2,· · ·)に対し`(λ) = max{i∈Z≥1 |λi >0}で ある.この計算からとくに
P
a+b=m
(−1)b P
µ`a
uµu(1b)= P
λ`m
`(λ)P
b=0
(−1)b
·`(λ) b
¸
q
uλ
であるから,定理3.1(2)とその証明より,ψf を施して P
a+b=m
(−1)b P
µ`a
Peµ(q)eb = P
λ`m
`(λ)P
b=0
(−1)bqb(b−1)2
·`(λ) b
¸
q
Peλ(q) が成り立つ.ここで
Pl b=0
qb(b−1)2
·l b
¸
q
tb=l−1Q
i=0
(1 +qit) だから,t=−1, l=`(λ)として,`(λ)>0ならば
`(λ)P
b=0
(−1)bqb(b−1)2
·`(λ) b
¸
q
=
`(λ)−1Q
i=0
(1−qi) = 0
であることに注意すると.m≥1のとき P
a+b=m
(−1)b P
µ`a
Peµ(q)eb= 0 とわかる.他方,対称関数h0= 1, h1, h2,· · · は漸化式
P
a+b=m
(−1)bhaeb = 0 (m≥1) から定まるので,題意の P
µ`n
Peµ(q) =hnを得る. ˜
定義 5.11 f ∈ Fに対し,f の固有値が{λ1,· · · , λd}のときθ( ˜f)∈C[T] を
θ( ˜f) = (1 +θ(λ1)T)· · ·(1 +θ(λd)T) で定める.
無限級数H(T, Y)を次のように定義しよう.ただし,Xi,f のn次基本対称 関数がen(f)である.
定義 5.12 H(T, Y) = Q
f∈F
Q
i≥1
(1−Xi,fθ( ˜f)Ydegf)−1∈B[[T, Y]]
このとき,ψ(χn,r)は次の公式で計算できる.
命題 5.2 H(T, Y) = P
n≥0
Pn
r=0ψ(χn,r)TrYnが成立.
証明 µ`nの定めるGLn(q)の共役類をCµとし,指標χn,r がCµで とる値をχn,r(Cµ)と書くとき,
χn,r= P
µ`n
χn,r(Cµ)πµ であるから,定理3.1(2)より
ψ(χn,r) = P
µ`n
χn,r(Cµ)Peµ(q)
である.ここで,g∈Cµ の固有値をλ1,· · · , λn とすると,χn,r の定義より Pn
r=0
χn,r(g)Tr= Qn
i=1
(1 +θ(λi)T) であるから,g∈Cµ の固有多項式が
(T−λ1)· · ·(T−λn) = Q
f∈F
f|µ(f)|
と既約分解されることに注意すれば Pn
r=0
χn,r(Cµ)Tr= Q
f∈F
θ(fe)|µ(f)|
を得る.故に Pn r=0
ψ(χn,r)Tr= Pn
r=0
P
µ`n
χn,r(Cµ)Peµ(q)Tr
= P
µ`n
µ n P
r=0
χn,r(Cµ)Tr
¶ Peµ(q)
= P
µ`n
Q
f∈F
θ(fe)|µ(f)|Peµ(q) となるから,α:F →Z≥0に対し
Pα={µ:F → P | |µ(f)|=α(f) (f ∈ F)}
と定義すれば P
n≥0
Pn r=0
ψ(χn,r)TrYn = P
n≥0
P
µ`n
Q
f∈F
θ(fe)|µ(f)|Peµ(q)Yn
=P
α
P
µ∈Pα
Q
f∈F
(θ(fe)Ydegf)α(f)Peµ(q)
=P
α
( P
µ∈Pα
Peµ(q)) Q
f∈F
(θ(fe)Ydegf)α(f) となるので,補題5.5より
P
µ∈Pα
Peµ(q) = Q
f∈F
hα(f)(f)
となることを用いれば P
n≥0
Pn r=0
ψ(χn,r)TrYn=P
α
Q
f∈F
hα(f)(f) Q
f∈F
(θ(fe)Ydegf)α(f)
= Q
f∈F
( P∞
α(f)=0
hα(f)(f)(θ(f)Ye degf)α(f)
= Q
f∈F
Q
i≥1
(1−Xi,fθ(fe)Ydegf)−1=H(T, Y)
となって題意の式が示された. ˜