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Hall 代数

ドキュメント内 Dipper-James 22 7 (ページ 94-97)

第 3 章 Hall 代数と対称関数環 81

3.2 Hall 代数

GLn(q)のBrauer指標を知るためには,まずは通常指標の理論を知らねば

ならない.GLn(q)の既約通常指標はJ. A. Greenによって始めて構成された が,のちにI. G. Macdonaldにより完全に初等的な対称式の理論として書き 直された.しかしMacdonaldは組合せ論的すぎるので本書ではMacdonald にしたがいつつも,現代表現論の視点から解説する.GLn(q)の既約通常指標 を導く最初の鍵となるのが対称関数環とHall代数の計量同型である.本節で はまずHall代数を導入しよう.

GLn(q)の共役類は(n,0)-indexで分類されるが前節で注意したように (n,0)-indexを

P

f∈F

deg(f)|µ(f)|=n

をみたす写像µ:F → P と思い,対応するGLn(q)の共役類をCµと書く.

g∈Cµ なら,X7→gによりFnq をFq[X]-加群とみなせば µ(f) = (µ(f)1,µ(f)2,· · ·) として

Fnq 'M

f∈F

³

Fq[X]/(fµ(f)1)Fq[X]/(fµ(f)2)⊕ · · ·

´

である.

定義 3.11 GLn(q)上の複素数値関数πµ

πµ(g) =



1 (g∈Cµ) 0 (g6∈Cµ) で定め,Cµ の特性関数とよぶ.また,

Vµ =M

f∈F

³

Fq[X]/(fµ(f)1)Fq[X]/(fµ(f)2)⊕ · · ·

´

によりFq[X]-加群Vµを定める.

πµは類関数である.すなわち,共役類の上で一定の値をとる関数である.

そこでGLn(q)上の複素数値類関数のなすベクトル空間をAnとする.ただし A0=Cと考える.A=M

n≥0

An とする.Aは

µ:F → P}

を基底にもつ.Aに積を定義しよう.

定義 3.12 f1∈An1, f2∈An2 のとき,標準放物型部分群

P(n1,n2)(q) =

Ã←n→1 ←n→2

0

!

上の類関数f1£f2:P(n1,n2)(q)Cを

f1£f2(

Ãg1 0 g2

!

) =f1(g1)f2(g2)

で定め,

f1◦f2(g) = 1

|P(n1,n2)(q)|

P

h∈GLn1+n2(q) h−1gh∈P(n1,n2)(q)

f1£f2(h−1gh)

とおく.

Gを有限群,H をGの部分群,V をCH-加群とする.χV :H CをV の指標としよう.すなわち,V の基底をひとつ固定してh∈H の作用を行列 表示すると,この行列の対角成分の和がχV(h)である.χVH 上の類関数 であり,

x7→ 1

|H| P

g∈G g−1xg∈H

χV(g−1xg) (x∈G)

はIndGH(V)の指標である.故に,f1◦f2はHarish-Chandra誘導 RLG= IndGLP n1+n2(q)

(n1,n2)(q) InflPL(n1,n2)(q)

(n1,n2)(q)

を指標で考えたものである.このことからとくに,Aは単位的結合C-代数で あることがわかる.AをHall代数とよぶ.

定義 3.13 非負整数gλµνVλの部分Fq[X]-加群U であって U 'Vµ, Vλ/U'Vν

をみたすものの個数とする.

命題 3.2 πµ, πν∈Aに対し次の積公式が成立.

πµ◦πν=P

λ

gλµνπλ

証明 x∈Cλを固定しπµ◦πν(x) =gµνλ を示す.n=|λ|とし,いつも のようにX 7→xによりFnq をFq[X]-加群とみなすとFnq 'Vλである.

次にn1=|µ|としてFnq1 を最初のn1成分以外は0であるベクトルのなす Fnq の部分空間とする.n2=n−n1とし,

GLn(q)/P(n1,n2)(q) = GN

i=1

giP(n1,n2)(q)

を左剰余類分解とすると,{giFnq1}1≤i≤Nn1次元部分空間の完全代表系で

ある.U =giFnq1

U 'Vµ, Vλ/U'Vν

をみたすための必要十分条件は gi−1xgi=

Ãx0 0 x00

!

∈P(n1,n2)(q)

かつx0∈Cµ, x00∈Cνが成り立つことである.つまり gλµν= P

g−1i xgi∈P(n1,n2)(q)

πµ£πν(g−1i xgi)

であるから,gλµν =πµ◦πν(x)を得る. ˜ C-代数Aにはπµ による基底とGLn(q)(n= 0,1,· · ·)の既約通常指標の なす基底があるが,各既約通常指標をπµ の一次結合で表すと,係数は代数的 整数であり,これらの係数は指標表の成分に他ならない.

類関数のなす空間の基底がわかっただけでは既約通常指標を計算することは できない.今の場合では基底πµがわかっていてもこれだけから既約通常指標 を計算することはできない.類関数がさらに既約通常指標のZ-係数で書ける ことがわかってはじめて指標理論が使えるからである.であるから,GLn(q) の既約通常指標が求まったのは大きな進展であり,Deligne-Lusztigに始まり,

Lusztig, Shojiによるより一般のLie型有限群の既約通常指標の決定に理論は 発展していくのである.そこでは既約通常指標のZ-係数で書けることを示す のにDeligne-Lusztig多様体の`-進コホモロジー群が使われ,有限群の表現論 の大きな転機となった.

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