イマチニブに抵抗性又は不耐容の慢性期慢性骨髄性白血病を対象としたダサチニブの臨床第II 相試験-中間成績-
試験方法の概略を表 2.7-1に示す。
表 2.7-1 試験方法の概略
項目 内容 治験の相 第Ⅱ相 治験の目的 主要目的:
イマチニブに抵抗性の慢性期慢性骨髄性白血病(以下CMLと略す)を対象として、MCyR率 を推定する。
副次目的:
1. イマチニブに不耐容の慢性期CMLにおけるMCyR率を推定する。
2. イマチニブに抵抗性・不耐容別にMCyRの持続期間及びMCyR到達までの期間を評価する。
3. イマチニブ抵抗性・不耐容別に血液学的完全寛解(以下、CHRと略す)率、CHR持続期間、
CHR到達までの期間を評価する。
4. FACT-Gを用いて、Health-related quality of life (HRQoL)を検討する。
5. ダサチニブの安全性及び忍容性を検討する。
治験 デザイン
オープンラベル試験
イマチニブ抵抗性又は不耐容の慢性期CML患者を対象とし、ダサチニブを1回70 mg、1日2回 投与した。また、効果及び安全性に基づき、用量の増減を可能とした。投与は、増悪まで、ある いは耐容不能な有害事象が発現するまでとした。
対象疾患 対象疾患:イマチニブに抵抗性あるいは不耐容の 18 歳以上のフィラデルフィア染色体陽性(以 下、Ph+と略す)慢性期CML患者
選択/除外 基準
選択基準
1. 慢性期CML(基準は、Study CA180-034と同様:表2.4-1参照)。
2. 以下のいずれかに該当するイマチニブ抵抗性又は不耐容の患者
a. 1日600 mgを超えるイマチニブ投与中に増悪した以下に定義する初期又は獲得抵抗性
i) 獲得抵抗性:イマチニブ投与中、増悪前のいずれかの時点でMCyR又はCHRが得られた 以下の症例。
・ MCyRの喪失:MCyR達成後、MCyRの基準を満たさなくなり、イマチニブ投与中に4 週間以上の間隔をおいて実施した2回の細胞遺伝学的検査で、Ph+分裂中期細胞が30%
以上増加した。
・ CHRの喪失:CHR達成後、イマチニブ投与中の連続する2週間以上のすべての観察点 においてCHRの基準を満たさなくなった。
・ 白血球数の増加:イマチニブを最大耐量まで投与してもCHRが得られなかった症例で、
白血球数がnadir値から2倍以上増加して20,000/mm3以上となるか、2週間以上の間隔 の2測定点間で50,000/mm3以上の増加が見られた。
ii) 初期抵抗性:イマチニブの用量を問わずMCyR、CHRが一度も得られておらず、以下に 該当する症例。
・ 少なくとも2週間以上の間隔をおいた2測定点間で白血球数が連続的に増加し、最終測 定時点で白血球数がnadir値から2倍以上増加して20,000/mm3以上となるか、イマチニ ブ投与開始後の最低値から50,000/mm3以上の増加が見られた場合。
・ イマチニブ投与開始後3ヵ月以上経過してもCHRが得られない。
・ イマチニブ投与開始後6ヵ月以上経過してもCCyRが得られない。
・ イマチニブ投与開始後12ヵ月以上経過してもMCyRが得られない。
b. 600 mg/日以下のイマチニブに対して抵抗性で、強い抵抗性に関連したBCR-ABL遺伝子
変異(L248V、G250E、Q252H/R、Y253H/F、E255K/V、T315I/D、F317L、H369P/R)を有 するCML
c. 用量を問わずイマチニブに不耐容:イマチニブの1日800 mg投与に不耐容の場合には、
1日600 mg以下の投与量により増悪あるいは細胞遺伝学的寛解がないことを条件とする。
表 2.7-1 試験方法の概略 (つづき)
項目 内容
選択/除外 基準
イマチニブ不耐容の定義は以下の通り。
・イマチニブに関連したGrade 3以上の非血液毒性。
・イマチニブに関連した7日間以上持続するGrade 4以上の血液毒性。
他の選択基準及び除外基準(Study CA180-034と同様:表2.4-1参照)。
被験者数 424例が登録され、387例がダサチニブの投与を受けた。20 年 月 日以前に登録され、
月 日までにダサチニブの投与を開始した186例を本中間解析の対象とした。
投与方法 1. 使用薬剤
ダサチニブ錠:20 mg錠及び50 mg錠 2. 用法・用量及び投与期間
開始用量はダサチニブ1回70 mg、1日2回投与とした。疾患の増悪がみられた場合は1 回90 mg、1日2回投与への増量を可とし、有害事象がみられた場合は2段階(1回50 mg
及び40 mg、いずれも1日2回投与)の減量を可とした。投与は用量調節でコントロー
ルできない疾患の増悪または有害事象がみられるまで、あるいは中止基準に該当するま で行った。
有効性・安全 性の評価項目
有効性:
主要評価項目:細胞遺伝学的効果(MCyR率)
細胞遺伝学的効果の基準はStudy CA180-002と同様(表2.6-1参照)。
副次評価項目:細胞遺伝学的効果、分子生物学的効果及び血液学的効果並びに細胞遺伝学的 寛解、血液学的寛解到達までの期間及び持続期間
血液学的効果の基準はStudy CA180-002と同様(表2.6-1参照)。
分子生物学的効果
CCyRが得られた症例のうち、BCR-ABLの発現量が、標準化したBCR-ABL/BCR比から3 log 以上減少した症例の割合を主要分子生物学的効果とする。
安全性:
安全性は有害事象の調査、臨床検査値、心電図所見により評価した。有害事象の重症度はCTC
Gradeを用いて判定した。
解析方法 全投与症例、及びイマチニブ抵抗性、イマチニブ不耐容別に解析した。
患者背景は要約統計量を算出した。
有効性(血液学的及び細胞遺伝学的効果)は血液検査結果、骨髄検査結果及び髄外浸潤の有無に より判定し、寛解率を算出した。MCyR及びCHR到達期間の中央値並びに持続期間について は、Kaplan-Meier法を用いて推定した。
安全性は有害事象の発現頻度、重篤な有害事象、死亡、投与中止、臨床検査値異常について 解析した。
治験期間 2005年2月4日から(データ締切日:有効性 観察期間が8ヵ月以上になった時点*、安全性
治験開始8ヵ月後*)
20 年 月 日までに組み入れられ、 月 日までにダサチニブの投与を開始した186例の症 例を対象として中間解析を行った。なお、有効性については観察期間が8ヵ月以上になった*デー タ締切日まで、安全性については治験開始8ヵ月後*のデータ締切日までのデータを解析に用いた。
20 年 月 日の登録締め切り日までに計424例が組み入れられ、387例がダサチニブの投与を 受けている。
2.7.1 症例の内訳
症例の内訳を図 2.7-1に、投与状況について表 2.7-2に示す。
*新薬承認情報提供時に置き換え
図 2.7-1 症例の内訳
組み入れ症例数 N = 201
20 年 月 日以降に投与開始 N = 3
未投与 N = 12
投与例 N = 186 選択/除外基準10例、
同意の撤回1例
有害事象1例 イマチニブ抵抗性 イマチニブ不耐容
N = 127 N = 59
投与中 投与終了・中止 投与中 投与終了・中止
N = 91 N = 36 N = 52 N = 7
表 2.7-2 投与状況
症例数(%)
イマチニブ不耐容 イマチニブ抵抗性 合計
N = 59 N = 127 N = 186
投与中 52 (88.1) 91 (71.7) 143 (76.9)
投与中止 7 (11.9) 36 (28.3) 43 (23.1) 原疾患の増悪 1 ( 1.7) 11 ( 8.7) 12 ( 6.5) 副作用 4 ( 6.8) 12 ( 9.4) 16 ( 8.6) 治験薬との因果関係のない有害事
象 1 ( 1.7) 5 ( 3.9) 6 ( 3.2)
患者の希望 1 ( 1.7) 3 ( 2.4) 4 ( 2.2) 死亡 0 2 ( 1.6) 2 ( 1.1) その他 0 3 ( 2.4) 3 ( 1.6) データ締切日:観察期間が8ヵ月以上になった時点*
20 年 月 日までに201例が組み入れられたが、うち3例は投与開始が 月 日以降であっ たため、今回の有効性、安全性の解析には加えていない。今回集計を行った198例中、186例(イ マチニブ抵抗性127例及びイマチニブ不耐容59例)に20 年 月 日以前に投与が開始された。
他の12例では、選択基準に合致しない/除外基準に抵触する(10例)、同意の撤回(1例)、投与 開始前の有害事象(1 例)により投与が行われなかった。186 例中、43 例(23%)では、副作用
(16例)、原疾患の増悪(12例)、ダサチニブとの因果関係のない有害事象(6 例)、患者の希望
(4例)、死亡(2例)、その他(3例)により投与を中止している。
2.7.2 人口統計学的特性
人口統計学的特性を表 2.7-3に示す。
*新薬承認情報提供時に置き換え
表 2.7-3 人口統計学的特性
症例数(%)
イマチニブ不耐容 イマチニブ抵抗性 合計
N=59 N=127 N=186
年齢 平均(歳) 56.0 56.7 56.5
中央値 59.0 59.0 59.0
最小-最大 24.0-79.0 24.0-79.0 24.0-79.0
SD 12.1 12.6 12.4
21-45歳 12 (20.3) 31 (24.4) 43 (23.1)
46-65歳 35 (59.3) 59 (46.5) 94 (50.5)
66-75歳 10 (16.9) 33 (26.0) 43 (23.1)
>75歳 2 ( 3.4) 4 ( 3.1) 6 ( 3.2)
性別 男性 26 (44.1) 60 (47.2) 86 (46.2)
女性 33 (55.9) 67 (52.8) 100 (53.8)
人種 白人 56 (94.9) 117 (92.1) 173 (93.0)
黒人(African American含む) 1 ( 1.7) 7 ( 5.5) 8 ( 4.3) アジア人 1 ( 1.7) 2 ( 1.6) 3 ( 1.6)
その他 1 ( 1.7) 1 ( 0.8) 2 ( 1.1)
ECOG 0 42 (71.2) 94 (74.0) 136 (73.1)
PS 1 17 (28.8) 31 (24.4) 48 (25.8)
2 0 2 ( 1.6) 2 ( 1.1)
白人が93%を占め、年齢は24歳~79歳の範囲で中央値は59歳、性別では男性46%、女性54%
とほぼ同数であった。ECOGのPSは、73%が0であった。また、イマチニブ抵抗性例と不耐容例 では同様の背景であった。
現病歴・前治療・登録時の病態に関し、表 2.7-4に示す。
表 2.7-4 現病歴・前治療・登録時の病態
症例数(%)
イマチニブ不耐容 イマチニブ抵抗性 合計
N = 59 N = 127 N = 186
病歴 初診からの期間(月), 中央値(最小-最大)
26.3 ( 4.4 - 144.5)
76.6 ( 4.1 - 250.5)
63.8 ( 4.1 - 250.5)
移植 4 ( 6.8) 13 (10.2) 17 ( 9.1)
放射線療法 1 ( 1.7) 2 ( 1.6) 3 ( 1.6)
薬剤 47 (79.7) 125 (98.4) 172 (92.5)
化学療法 15 (25.4) 64 (50.4) 79 (42.5) インターフェロン 32 (54.2) 98 (77.2) 130 (69.9) イ マ チ ニ
ブ 以 外 の 前治療
ヒドロキシカルバミ ド/anagrelide
44 (74.6) 115 (90.6) 159 (85.5) 1年未満 32 (54.2) 6 ( 4.7) 38 (20.4) 1 - 3年 18 (30.5) 30 (23.6) 48 (25.8) 前 イ マ チ
ニブ治療
投与期間
3年超 9 (15.3) 91 (71.7) 100 (53.8)
表 2.7-4 現病歴・前治療・登録時の病態 (つづき)
症例数(%)
イマチニブ不耐容 イマチニブ抵抗性 合計
N = 59 N = 127 N = 186
400 mg未満 0 0 0
400 - 600 mg 54 (91.5) 35 (27.6) 89 (47.8) 投与量
600 mg超 5 ( 8.5) 92 (72.4) 97 (52.2) CHR 45 (76.3) 115 (90.6) 160 (86.0) 不変 7 (11.9) 7 ( 5.5) 14 ( 7.5) 増悪 0 3 ( 2.4) 3 ( 1.6) 評価不能 6 (10.2) 2 ( 1.6) 8 ( 4.3) 最 良 血
液 学 的 効果
不明 1 ( 1.7) 0 1 ( 0.5) 完全寛解 14 (23.7) 18 (14.2) 32 (17.2) 部分寛解 10 (16.9) 20 (15.7) 30 (16.1) その他 34 (57.6) 89 (70.1) 123 (66.1) 前 イ マ チ
ニブ治療
最 良 細 胞 遺 伝 学 的 効
果 不明 1 ( 1.7) 0 1 ( 0.5)
脾 0 11 ( 8.7) 11 ( 5.9)
肝 0 1 ( 0.8) 1 ( 0.5)
リンパ節 0 0 0
髄外浸潤
脾・肝・リンパ節以外 0 0 0
症例数 59 (100) 126 (99.2) 185 (99.5)
中央値 7,400 11,700 9,900
最小 - 最大 2,000 - 182,700 400 - 196,500 400 - 196,500
<20,000/mm3 51 (86.4) 78 (61.4) 129 (69.4) 白血球数
≥20,000/mm3 8 (13.6) 48 (37.8) 56 (30.1)
症例数 59 (100) 126 (99.2) 185 (99.5)
中央値 254,000 299,500 286,000
血小板数
最小 - 最大 61,000 - 1,165,000
24,000 - 1,912,000 24,000 - 1,912,000
症例数 43 (72.9) 84 (66.1) 127 (68.3)
中央値 1.0 3.0 2.0
末 梢 血 中 好塩基球
(%) 最小 - 最大 0.0 - 19.0 0.0 - 18.0 0.0 - 19.0
症例数 59 (100) 126 (99.2) 185 (99.5)
中央値 13.2 11.7 12.0
Hb(g/dL)
最小 - 最大 8.3 - 16.0 6.5 - 15.5 6.5 - 16.0 本治験に組み入れられた CML 患者は、長期間の病歴を有し、強力な前治療を受けていた。診 断からダサチニブ投与開始までの期間の中央値は64ヵ月(4~251ヵ月)であったが、イマチニ ブ抵抗性例では77ヵ月(4~251ヵ月)とイマチニブ不耐容例の26ヵ月(4~145ヵ月)よりも長 期間であった。
イマチニブ以外の前治療が92%に行われており、前治療はヒドロキシカルバミド又はanagrelide
が85%、インターフェロンが70%、化学療法が42%であった。シタラビンは 60例(32%)に投
与されていた。骨髄移植は 17例(9%)、放射線療法は 3例(2%)と少数例であった。イマチニ ブ抵抗性例の方がイマチニブ不耐容例よりもこれらの前治療を受けていた割合が高かった。
全例がイマチニブの投与を受けており、各症例イマチニブの治療歴及び効果により抵抗性又は