住所:11576 Santa Monica Blvd. Los Angeles, California
訪問日時 2009年11月13日(金)9:00〜12:00 対応者 Jim Martin
Project Manager, Shell Hydrogen
(1) Shell サンタモニカ水素ステーション
① 設備の設置
• 25 年間運用してきた通常のガソリンスタンドを改造し、水素ステーション
(35MPa充填用)を併設した(図 7-1)。
• 一般のガソリンスタンドであるため、安全には特に気をつけている。これまで に、初期の立ち上げまでのシステム的不具合を除いて、運用面では大きなトラ ブルはない。
• 付近のFCV台数は15〜20台程度。
図 7-1.Shellサンタモニカ水素ステーションの外観
水素の表字
ガソリンスタンドの敷地:
120ft×120ft(36 m×36m)
水素設備はキャノ ピーの上に設置
(約10 m × 5m)
水素ディスペンサ
ガソリンディスペンサ 水素製造・貯蔵設備
② 水素製造・貯蔵設備
• 2年前に改造を開始した。20フィート(約9 m)ほど掘って、ガソリン配管を 切り、水素配管を設置した
• 水素製造・貯蔵装置をキャノピーの上に設置した(図 7-2)。キャノピーの上 の装置は白で塗っているため、あまり外から目立たない。
- キャノピー上に設置したのは、単にスペースに余裕がないため。
- 総重量 4 万ポンド(18 トン)。そのため通常よりも太めの柱でキャノピー を支えている(地震対策でもある)。
• 電解装置はHydrogenics製。
- 水素生産量30 kg/日。
- 電解装置のために480Vが必要で、トランスを設置した(通常ガソリンスタ ンドの電源は240V)。
• 圧縮機には、一般的なPDC製ではなく、PPI製を採用した。
• 蓄圧器はCPI製。
- 13kg×3本(合計約40kg=500 Nm3)。6000 psi(42 MPa)で貯蔵。
- ASME仕様(ステンレス337)。
図 7-2.水素製造・貯蔵設備
制御設備(PLCなど)
冷却装置 圧縮機 水素製造装置
蓄圧器
蓄圧器 制御設備(PLCなど)
③ ディスペンサ
• 35MPa用ディスペンサを1台設置(図 7-3)。ノズルはWEH製TK16で、
有線ケーブルによる通信も可能。
• 水素量的には5台は十分に充填できるが、連続充填は3台まで。35MPa充填 のみなので、プレクールは用いていない。
- 車両との通信(ワイヤ)を採用。車両側の温度、圧力、タンク容量を把握し たのち、充填速度を決定する。その後は蓄圧器から水素を充填するのみで、
充填途中でのコントロールはしていない。最大充填速度は1.2〜1.3 kg/分。
- 車両のタンクがType 3(例.Clarity)であれは「ファーストフィル」をす るが、Type 4であれは、0.7 kg/分程度の「スローフィル」を行う。充填時 間は、ファーストフィルならば4分程度。スローフィルなら10分程度。ま た、コミュニケーションのない車両ならば、必然的にスローフィルとなる。
- 将来的には充填時のタンク温度も計測したい。
• 水素価格表示は5ドル/kgであるが、計量出来ないために実際には課金してい ない(図 7-4)。
図 7-3.35MPa充填用ディスペンサ
図 7-4.水素価格の表示
ランプが緑のと きは使用可能
緊急離脱 カプラ
有線の通信ケ ーブル
WEH製 充填ノズル 水素ディス
ペンサ
• 充填プロセスは以下の通り(図 7-5)。
i) IDとパスワードを入力する。
ii) システムがリークをチェックする
iii) 問題がない場合はコミュニケーションケーブルと充填ノズルを車両に設置する
(アースも設置されているが、利用していない)
iv) 充填が開始される
図 7-5.充填プロセス
• ディスペンサの内部構造を図 7-6に示す。
図 7-6.ディスペンサの内部構造
ディスペンサ内
電子系は防爆ケース 内に設置(UL Class 1 group B)
緊急離脱カプラ(ディス ペンサご
と破壊さ れる事態 に備えて)
感振センサ
配管は、
外径0.375インチ(0.953 cm)
肉厚0.068インチ(0.173 cm)
フィルタ(5μm)
1万psi
④ バックヤード設備
• バックヤードには、電解用水処理関連の装置や、トランスが設置されている。
図 7-7.バックヤード設備
⑤ 管理
• 基本的に24時間オープンの無人ステーション。
- ガソリンスタンドには業務員が2名いるが、水素設備は直接管理していない。
- ステーションはリモートで監視している(リモート監視のみで、リモート制 御はしていない)。問題が発生した場合には、スタッフ(5 人)に E-mail が送られてくる。リモート監視は専用ネットではなくインターネットを利用。
冷却装置
パージ用窒素 水脱イオン化装置 廃水処理装置
トランス(水電解装置用 に昇圧、240V→480V)
冷却装置
パージ用窒素 水脱イオン化装置 廃水処理装置
- 夜間に問題が起きた時は、ディスペンサの問題ならばすぐに対応するが、そ のほかの問題(圧縮機など)ならば、翌朝に対応する(蓄圧器に水素が貯蔵 されているので、顧客には迷惑がかからないと考えている)。
- ステーションのメンテナンスは、1カ月に1回程度(おもに水素製造装置関 係)。また緊急離脱カプラ(作動重量70 kg)のメンテナンスは1年に1回 程度である。
• 水素充填式はセルフ方式。
- ドライバーには簡単な充填トレーニングを受けてもらい、ID とパスワード を発行する。
- デモンストレーション用ステーションであり、1 日の利用は 3〜5 台。GM Equinox、トヨタFCHV、ホンダClarityなど。
- ホンダは、南カリフォルニアで100台程度のFCX Clarityをリースする計 画であり、サンタモニカ周辺でも有名人が所有している(ジェイミー・リー・
カーティスなどは、よく訪れる)。そのためよい宣伝になっている。シュワ ルツネッガー知事も3カ月前に訪問し、スピーチを行った。また公的機関が 所有しているFCVも充填にくる。
- 水素充填量は2〜4 kg/台程度。
• このステーションはデモ用であり、3〜5 年後には撤去する。商業用に拡充は しない(スペースに余裕がない)。商業用には、最低でも500〜1000 kg/日の 容量が必要。
• 水素ガス装置間の離隔距離の規制はあるが、ガソリンディスペンサーとの間の 離隔距離規制はない。
⑥ ステーションのコスト
• サンタモニカ水素ステーションの建設費は、通常のガソリンスタンドからの改 造費や展示スペース・管理室の設置を含めて500万ドル。
• すべて Shell が負担している。DOE などの公的なファンドは得ていない(書
類作業が煩雑で、またデータ提供の義務があるため)。ただし、充填回数・量 などの基本データは、自主的にDOEに提供している。
• 水素ステーション部分はおそらく350万ドル程度。内訳は 電解装置:600〜100万ドル
圧縮機: 10〜20万ドル 蓄圧器: 160,000ドル/kg
ディスペンサ: 8〜12万ドル/ユニット
(2) ディスカッション
• 現在Shellは、4つのステーションを建設・運用中。
- サンタモニカ水素ステーション(水電解)
- カルバーシティー(高圧水素輸送、コンポジット製蓄圧器)
- トーランスステーション(ディスペンサ2台、高圧パイプライン)
- ニューポートビーチステーション(SMR、100 kg/日)
• 商業ステーションのあり方:
- 水素ディスペンサとガソリンディスペンサとの離隔距離は特に規制はない。
- 商業ステーションは、最低でも500〜1000 kg/日の容量が必要で、液体水素 貯蔵となる。
- 可能であればコンポジット容器を使いたい。コンポジット容器は、カリフォ ルニア州政府が使用を許可しているので、地元自治体から許可を得れば使用 可能であるが、サンタモニカ水素ステーションでは、地元自治体の許可が得 られなかったため鋼製容器となった。なお、コンポジット容器には NGV2 基準が定められている。