住所:10400 Aviation Boulevard, Los Angeles, CA 90045
訪問日時 2009年11月16日(月)14:00〜15:30
Daniel B. O’Connell
Director, Global Field Service, Support and Infrastructure Alexander Keros
Senior Project Engineer, Hydrogen Infrastructure, Field Service & Support
(1) Clean Energy ステーションの概要
• Clean EnergyのCNGスタンドに水素充填設備を設置した(図 9-1)。
- 2008年9 月から稼働。基本的に無人ステーション(セルフ充填ステーショ ン)で、24時間使用可能。充填は70 MPaのみ。
- 基本的に GM のモニタープログラム用に建設した。付近には GM FC Equinoxのモニター車29が5〜6台ある。利用は1〜3台/日。
図 9-1.Clean Energyの水素ステーション
29 GMはFCV(Equinox)のリースプログラムを実施しており、すでに1万人以上の人が経験をして いるとのこと。
プレクーラー 稼働式集結容器
(低圧、15MPa)
中圧蓄圧器
(40MPa)
高圧蓄圧器
(90MPa)
液体窒素タンク 圧縮機
ディスペンサ 天然ガススタンド
水素ディスペンサ 水素設備
30フィート(9 m) 40フィート
(12 m)
(2) ステーション技術
• ステーションの構成と部品を図 9-2、図 9-3に示す。
• 水素供給能力は30〜40 kg/日。FC Equinox(3.5 kg)で約10〜20台分。
- 水素は 50 マイル離れた PRAXIAIR の工場からトレーラーで輸送(天然ガ ス由来水素)。
- 敷地内には長尺容器2台分が駐車可能。水素貯蔵量に応じて交換する。
• 蓄圧器は、牽引式長尺容器(15MPa)、中圧蓄圧器(40MPa)、高圧蓄圧器
(90MPa)の3段階。
- 長尺容器(15MPa)の水素量は200 kg。そのうち150kgまでは使用できる。
- 中圧蓄圧器(40MPa用)はシームレス鋼製4本で、ASME372に準拠。6600psi
(=46MPa)まで蓄圧が可能。
- 高圧蓄圧器(90MPa用)は、機械加工(くり抜き)鋼製4本で、ASMEに 準拠している。材質はSA-372。
• 低圧から中圧、中圧から高圧への昇圧は、同じ圧縮機で行っている。
- MaxiPro社製Maximator(型番DLE75-230の改良型)3台を平行に連結。
個別に稼働することも可能。圧縮率は1:20。
- ダイアフラム型圧縮機は耐久性が高いが、簡易性や拡大性(ユニットを追加 できる)を考えて、ブースター型圧縮機を採用した。その代り加熱のために 連続運転はできない(4時間稼働して4時間休む)。
- 計装用エアで駆動(エアに潤滑油を添加)。プレクール用の液体窒素のガス も利用可能。
• プレクーラーはAir Liquide製(ブラックボックスで詳細は不明。コイル状に なっている)。冷却は液体窒素を利用し-40℃までの冷却が可能(しかし現状 では通信充填を利用しているため-25℃に設定している)。
• 配管には、PDC製継ぎ手とHIP製継ぎ手、Swagelock製バルブを使用。
- 配管の一部にSUS 316Lを使用。外径0.375インチ、内径0.203インチ。
- フローメーターはFlowserve製。
• 充填充填はカスケード(5バンク)で行う。充填速度は1 kg/分。
- 3台まで連続充填可能。ただし3台目は圧縮機からの直接充填が必要になる。
- 全体の制御はPLC(プログラマブルロジックコントローラ)で行っている。
30 DLE75-2自体は1段圧縮120 L/min(700 bar)であるが、ステーションに合わせて改良を行って いるとのこと。
図 9-2.ステーションのシステム構成図
図 9-3.ステーションの構成部品
PLC
中圧蓄圧器(40MPa)
4本(2バンク)
高圧蓄圧器(90MPa)
4本(2バンク)
長尺蓄圧器(15MPa)
中圧(40MPa)
バンク1 バンク2 バンク3 バンク4
バンク5 液体窒素 利用プレ クーラー
コンテナに一体型
圧縮機 直充填 高圧(90MPa)
圧縮機 低圧(15MPa)
コンテナ設備
(中圧蓄圧器・高圧蓄圧器、圧縮機、PLC、プレクーラー)
圧縮機3台
(Maximator DLE75-2)
フローメータ―
(Flowserve製)
プレクーラー 高圧蓄圧器用圧
力計(2 バンク、
表字は930bar)
中圧蓄圧器用圧 力計(2 バンク、
表字は430 bar)
(3) ディスペンサと充填プロセス
• ディスペンサはAir Liquide製(図 9-4)。表字部はタッチパネル式で、充填 プロセスから、水素システムの管理(スタート・ストップ、緊急停止・復旧な ど)ができるようになっている。
• 充填ノズルはWEH製TK17(70MPa用)。
- 通信はSAE J2601に準拠(タンク内圧、体積、タンク種類、温度などの情
報を取得)。
- ノズルに内蔵したIR 通信(デジタル)を利用。ただし通信用ケーブルもデ ィスペンサに用意されている(その場合はアナログ通信)。
図 9-4.Air Liquide製ディスペンサ
緊急離脱カプラ
WEH製TK17 通信ケーブル
(優先の場合)
ディスペンサの表字部
中圧バンクから高圧バ ンクへの加圧・充填時 の画面
中圧バンクは395 bar と391 bar、高圧バンク は870 barと948 bar が表示されている。
圧縮機の入口圧力は 394 bar(中圧バンクか ら)、出口圧力は881 bar(高圧バンクへ)
• 通信があればファーストフィル(1kg/分)でタンク容量の 98%まで充填可能
(図 9-5)。
- 充填時間は3 分程度で、全てのプロセス(ID 入力、リークチェック、ノズ ル接続、充填、ノズル取り外し)は5分程度で終了。通信がない場合はスロ ーフィルとなり、85〜90%までの充填となる。例えばトヨタFCHVならば 充填に15分かかる。
- 充填中の車の誤発進を防止するため、通信によりエンジンがかからないよう インターロックを設けている。
- 35MPaの充填には対応していない(ホンダFCXクラリティは充填不可)。
図 9-5.IR通信(ノズル、レセプタクル)
• 充填プロセスは以下のとおり(図 9-6):
① IDを入力
② ディスペンサがリークチェック
③ ノズルを車両に接続
④ 車両との接続を確認、リークチェック
⑤ ハンドルを握って充填開始
⑥ 充填はディスペンサでモニター(タンク圧力、温度、使用しているバンク)
図 9-6.充填プロセス
表字部
レセプタクル ノズル
通信部(IR)
通信(IR)
車両車両側側 ノノズズルル側側
• ディスペンサは現在1台であるが、もう 1 台追加することは可能である(図 9-7)。
図 9-7.ディスペンサ設置場所
(4) ステーションのシステム
• 無人ステーションのため、データは遠隔でモニターしている(0.5 秒ごろに記 録)。
• ステーションコストは 150〜200万ドル。Air Liquide に一括で発注したので 内訳は不明だが、おそらく蓄圧器が最も高コストである。
• 本ステーションは、水素ステーションが安価で容易に設置できることを目指し た。
- GMは基本的にはステーションを商売にしているわけではないので、将来の ステーションの在り方(水素製造技術)については分からない。ただし、デ ィスペンサは統一されているのがよい。
- 本ステーションは数台規模のモニター用なので、圧縮水素のトレーラー輸送 のレベルで十分である。
• 畜圧器(特にコンポジット容器)は米国では認可が厳しい。
- 将来的には、複合容器の蓄圧器を使用したい(すでにCulverステーション で使用している。Air Liquide製システム)。軽量でよい。
ディスペンサ下部
将来のディスペ ンサ設置場所
(5) ディスカッション
① ステーション関係
• 建設期間は許認可プロセスを含めて5カ月で、非常に短期間で水素ステーショ ンを設置できた。
- ロサンゼルスにはすでに水素ステーションが複数あり、またロサンゼルス空 港横にも既存水素ステーション(BPが設置した水素ステーション)がある。
そのため、設置許可の取得は容易であった。
- 水素ステーションの建設には1〜2年かかるというイメージがあるが、簡単 に設置・建設できることを証明したかった。
• 商用ステーションのあり方:
- 水素需要が増えた場合は、天然ガス改質装置(100kg/日レベル)を設置する
(本来的にCNGステーション)。その場合は、現在のコンテナ一体型シス テムは、別の場所に移設したい。
- ステーションの技術(水素供給技術)は、水素需要に合わせてきめればよい。
ただし、広く一般の人が使用するため、ユーザーが混乱しないようにディス ペンサのマンマシンインターフェース(画面)は統一しておくことが大切で ある。
• 現在はGM車両のみだが、他社の車両にも充填させることも検討してもよい。
その場合は何らかのトレードがあるべきだ(現在、GMは水素ステーションを 自費で設置している)。
② 水素充填・価格
• 夏の熱い日に、長く直射日光に放置された車両に水素充填する場合にはタンク 温度が規格の上限の 85℃に達することもあろうが、それは極めて例外的であ る。
• 現在は、水素は無料(カリフォルニア州法で、正確に計量できないものは販売 できない)。
• カリフォルニアには大規模製油所が多いので、水素調達コストも安価。水素製 造コストは0.75〜1.5ドル/kg程度である。
(6) その他
• 基本的にディスぺンサのタッチパネルで水素関連装置の制御が可能。見学中も、
タッチパネルから、バルブや圧縮機の制御を行っていた(図 9-8)。
• ディスぺンサに設置されている緊急停止ボタンを押して、システム全体を緊急 停止させ、その直後にシステムを復旧させる操作を行っていた。
• 車両への充填では、充填途中から複雑に圧縮機が動き、車への充填とバンク充 填を並行で作業し、充填終了後も圧縮機は稼働を続けていた(充填時間時計も 液晶表示)。
- 見学では、66.7 MPa 付近で差圧充填から直接充填に切り替わり、76MPa まで充填を行った(画面表示にも直接充填に切り替わったことが表示され る)。最後の10MPa分は非常にレートを下げて充填を行っている。
- ディスペンサ圧力、蓄圧器圧力、車両圧力などを監視しながら、流量・バン ク切り替えを複雑に行うPLCプログラムを組んでいると思われる31。
図 9-8.緊急停止からの復旧作業
31 このPLCのプログラムは、ウィスラー水素ステーションと同じAir Liquideの技術者が設計したも ので、差圧充填におけるバンクの切り替えが巧妙に設計されているとのこと。