(1) 訪問先のまとめ
① カリフォルニア燃料電池パートナーシップ(CaFCP)・カリフォルニア大気資源 局(CARB)・カリフォルニア州南海岸大気保全管理区(SCAQMD)
カリフォルニア州は2050年までにGHG排出量の1990年比80%削減を目指してお り、そのためにはセロエミッション車の普及が抱えないと考えている。また車社会で長距離 の航続距離が必要なカリフォルニアは、本格的な代替自動車として FCV の普及を積極 的に推進している。
CaFCP が 2009 年2月に発表した「Action Plan」では、2012 年までの各社の FCV 導入予定台数をもとに、州内で40箇所のステーションの建設が必要と強調している(ただ し経済危機の影響で、FCV 導入予定数が変わっている可能性があるとのこと)。CaFCP はステーション建設の必要性を強くカリフォルニア州政府に訴えている。
一方、カリフォルニア州政府は、個別の目標は異なるが、ゼロエミッションを目指した ZEV 規制と Zbus 規制、交通部門のGHG 削減を目指した低炭素燃料基準、代替燃料 の販売を義務付けるクリーン燃料販売規制などの各種の規制を実施し、水素・燃料電池 技術の普及を支援している。
もちろん規制だけでなく、各種のファンドも用意しており、2009 年には 70%の補助率
(ただし上上限あり)で水素ステーションの公募を行い、7 件の水素ステーションの建設へ の補助を決定した。
このようにカリフォルニアでは、規制政策と補助金政策の両方で、FCV・FCバスの導入 支援と水素ステーションの普及を目指している。短期的なブームではなく、2050年の低炭 素社会を見据えた取り組みだけに、も今後も水素エネルギーの普及・導入に積極的な政 策が期待される。
② ブリティッシュ・コロンビア州政府(BC州)
一般にカナダ連邦政府は水素・燃料電池にはそれほど積極的ではないが、BC州は非 常に前向きである。
BC 州はウィスラーなどの冬場のリゾート地を抱えるたえめ、温暖化対策には非常に積 極的で、再生可能エネルギーや水素エネルギーの導入に熱心である。特にGHGの削減 では、すでに水力に多くを依存している電力部門での GHG 削減余地が少ないので、交 通部門での削減に力を入れている。その点でも水素エネルギーへの期待は強い。
一般的に BC 州では、温暖化対策(GHG 削減)政策の一環として水素エネルギーの 導入が強調されている。また、バンクーバーを中心とする地域に、FC 産業(Ballard、 AFCCなど)が集積しているため、産業振興の意味合いもある。
今後も、カリフォルニア州とともに、水素エネルギーの導入には積極的な姿勢を維持す ると思われる。
③ BC Transit(カナダ BC州)とAC Transit(米国 カリフォルニア州)
両公共バス会社ともFCバスの運用に熱心であることで知られている。
今回の調査団では完成前のために訪問できなかったが、BC Transitはウィスラーに世 界最大規模の水素ステーションを建設した。また、実証でもウィスラーで稼動する 28 台の ディーゼルバス28台のうちの20台をハイブリッドFCバスで代替し、5年間の実証を行う 予定である。ウィスラーは観光地であり、訪問者はバスを使うしかないので、稼働率もよく、
また PRにもなるとのことである。
AC Transitは現状では3 台のFC バスを有しているが、まもなく新型ハイブリッド FC バス12台を導入し、通常の路線バスとして利用する予定である。また新規にエモリービル にFCバスだけでなくFCVにも利用できる水素ステーションを建設する予定で、現在関係 当局(連邦政府やカリフォルニア政府)やインフラメーカー(Linde)と交渉中である。
両者とも公共バス会社であり、もともとが政府の資金でバスを運用している。また FC バ スの導入に関しても、通常のディーゼルバス相当分の費用しか負担していないため、その モデルがそのまま日本の参考になるわけではない。ただ、連邦政府や州政府と密に連携 し、FCバスの積極PR とシステム実証を行っている点では大いに注目に値する。
④ Shellサンタモニカ水素ステーションとClean Energyステーション
Shell サンタモニカ水素ステーションは、一般用水素ステーション(35MPa 充填用)で
あり、交通量が多く、市民 PR にも適したサンタモニカに設置されている。実際にハリウッド 女優がFCV(ホンダ FCX Clarity)で充填に来るとのことで、市民へのPR効果は高い。
Clean Eenegyステーション(70MPa充填用)は、GMがFCVモニタープログラム用に 建設したステーションである。GM との契約者(契約車両)のみが利用するため、場所も業 務用CNGスタンドの一角に設置されており、PR性は低い。ただ、GMも移行期向けの簡 易(小規模)ステーションの位置づけであることを強調しており、本格普及期にはステーシ ョンを改良、あるいは移設する方針とのことである。
ともにセルフサービスステーションで、水素設備に関しては無人である(サンタモニカ水 素ステーションはガソリンスタンド側に従業員がいるが、水素充填には関与しない)。シス テムはともにリモートで監視されている。すでに一般のガソリン車がセルフで給油されてい るため、高圧水素にも全く違和感なくセルフ充填が受け入れられている。
現状ではまだ水素の計量方法が確立していないために課金が行われていないとのこと であるが、クレジットカードや ID 認証などで、きわめて簡単な認証方法が導入されると思 われる。
(2) ステーションに対する助成のあり方
今回の調査では、各国の水素ステーションの建設・展開に関する政策、特に公的助成 のあり方に関して情報を収集した。水素ステーションは、単なるエネルギー販売ビジネス 拠点ではなく、将来の自動車用エネルギーを支える供給インフラ拠点であり、国家のエネ ルギーにおけるパラダイムシフトの重要な一部である。その点では水素ステーションの建 設・普及に対する各国の政策を把握することは、各国のエネルギーのパラダイムシフトへ の考え方を把握することになる。
公的助成の割合に関する情報を得ることは容易ではない。水素ステーション事業者も できるだけ自己負担を下げるために、様々なファンドを組み合わせている場合もあり、組 合せや助成割合、助成期間もケースバイケースである。
① ドイツ
ドイツは、水素ステーションに対する公的助成の上限が 50%と定められており、欧州連 合や州・市などの助成金を複数得た場合でも、その合計は全コストの50%にとどめなけれ ばならない(ただしコストには、建設コスト以外の人件費・技術費も含んでいる)。ステーショ ンを展開する民間は、最低でも全コストの 50%を自己負担しなければならない。
ただしドイツ(欧州)の場合は、TOTAL、Shell、Vattenfall といった大手の多国籍石 油メジャーがステーション展開を主導しており、体力・資金力にゆとりのある石油企業が、
将来ビジネスの可能性検討と自動車産業との連携の視点から、水素ステーションの展開 を行っている側面が強い。
ドイツH2 Mobility33では今後100〜1000か所のステーションの建設を予定しているが、
助成に関する方針は今後策定する予定とのことである。
② カナダ
カナダは、連邦政府の助成は基本的に30%(最大50%)までで、州や・地域の公的資 金を組み合わせた場合の助成上限は最大 75%である。ただし、オタワで「Hydrogen on the Hill」プロジェクトに利用されている水素ステーションは100%公的資金でファンドされ ており、例外もある。
33 H2 Mobilityは、2015年のFCV普及に向けて、ドイツ国内で水素インフラ整備を進めることを目 的に2009年9月に設立されたコンソーシアムである。参加企業はDaimler、EnBW、Linde、OMV、
Shell、Total、Vattenfall、NOW GmbHだが、基本的にオープンな組織で、ドイツ企業に限定され るものではない。第一フェイズ(2009〜2011年)では、インフラ整備のためのビジネスプラン(共 通ビジネスモデル)を策定する。第二フェイズ(2011年〜)は、インフラ整備に関するビジネスプ ランを実行するものであり、2015年には主要都市間を結ぶコリドーを形成(100〜1000ステーショ ンを予定)するものである。
③ 米国(連邦政府)
米国(連邦政府)の水素ステーションに対する公的助成は50%(コストシェア)が基本で ある(特に、連邦政府が行っているラーニング・デモンストレーションがこれに相当する)。
ただし、他の公的資金との組合せは可能であり、カリフォルニア州やニューヨーク州では 別途ステーション向けの補助金が用意されている。
なお現在米国で展開されている水素ステーションでは、GM や Shell が独自に建設し ている例もある。これは、助成を得るための手続きが面倒であることも一因である。
④ 米国(カリフォルニア州)
カリフォルニア州は、50%補助ではステーションの建設が進まないと考えており、2009 年度のCARB公募ではなどのステーション助成は70%となっている(ただし1700万ドル の上限あり。再生可能エネルギー由来水素を導入する場合は上限が 2700 万ドルに緩 和)。
それでも1700万〜2700万ドルの上限はかなり不十分である。その場合、事業者は他 の助成を組み合わせることも可能であり、カリフォルニア州内でも様々な助成が用意され ている(環境・エネルギー関係以外でも、交通関係の助成も用意されている)。
また州政府が独自に展開しているステーションもある。SCAQMD が「Five Cities Program」で展開している5つのステーションはすべて SCAQMDで負担している。
表 11-1.水素ステーションへの助成 地域 上限 備考
欧州連合 50%
z どのような資金を集めても、公的資金の合計は上限(率)を越しては いけないことになっている(もっとも厳しい)。
z 但し、一旦認められた資金は政権が変わっても保障される。
カナダ 75% z ECと同様のルールがある模様。但し、率の上限はECより緩やか。
z 例外的に100%補助の例もあり。
米国 場合 による
z DOE資金:原則50%
z CARB資金:70%(但し金額上限あり)
z 資金ごとの上限はあるが、組合せに関しての制約はあまりない模様。