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3. ロシアのサイバー空間に関わる体制・能力等の実態

3.2. KGB 系の諜報機関

3.2.2. SVR(対外情報庁)

SVR(対外情報庁。英語名:Foreign Intelligence Service)は、旧 KGB の分割により、

KGB 第一総局を継承して 1991 年 12 月 18 日に設置された。FSB(連邦保安庁)と協力して対 外諜報活動を行い、機密情報の分析結果を大統領に報告する大統領傘下の行政機関である206

ソ連では、1920 年 12 月 20 日に設置された Cheka(チェーカ)との略称で呼ばれた秘密 組織が初めて国土安全保障の脅威に関する諜報活動を展開した。特に世界大戦では、核兵 器開発を含む対外諜報活動で収集した軍事戦略に関する詳細情報を指導部に提供した実績 を有している。ロシア対外情報庁(SVR)の Website207には過去の詳細な活動内容が記載さ れている。

現在の長官は、2016 年 10 月 5 日に就任したセルゲイ・ナルイシキン(Sergey Naryshkin)

である。2011 年 11 月に就任した下院議長を 2016 年 10 月に辞職している。

1954 年 10 月 27 日にレニングラード(現在のサンクトペテル ブルグ)で生まれる。1978 年にレニングラード機械大学(無線機 械技師専攻)を卒業し、サンクトペテルブルグ国際経営学院でエ コノミストの学位を取得。

レニングラードポリテクニック研究所(LPI)国際関係部門で 部門長補佐になり、国家科学技術委員会の専門官、ベルギー大使 館経済諮問スタッフを経て、レニングラードポリテクニック研究 所(LPI)対外経済関係学部の副学部長に就任。

ベルギー大使館に派遣される前に KGB のスタッフであったと報じるメディアもある。

1992~1995 年、サンクトペテルブルグ市長管轄の経済発展委員会および経済財政委員会の 委員長となり、プーチンと親交を深める。1998 年にレニングラード州政府対外経済国際関 係委員会の委員長に就任208

プーチン大統領の招聘により、2004 年 2 月に大統領府経済ガバナンス局副局長に任命さ れ、2004 年 9 月 14 日にロシア連邦政府官房長官に就任。行政改革、公共サービス、産業政 策を担当し、2005 年 7 月に行政改革委員会の委員長、2006 年 7 月に大統領管轄の国家重点 事業協議会のメンバーとなり、2007 年 2 月 15 日に副首相に就任し、CIS 関連の対外経済を 担い、メドベージェフ、セルゲイ・イワノフに並ぶ有力者となる。2008 年 5 月 7 日にメド

206 http://government.ru/en/department/112/

207 http://svr.gov.ru/

208 http://www.ladno.ru/person/naryshkin/bio/

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ベージェフが大統領に就任すると、新閣僚人事で大統領府官房長官に任命された。2005~

2009 年、JSC First One の取締役会会長とロスネフチ取締役を兼務し、2008 年には造船会 社の SCF の会長に就任(2011 年 10 月まで)。

統一ロシアの候補として 2011 年 12 月の下院選に立候補し、2011 年 12 月 21 日に下院議 長に選出209。2012 年 6 月 11 日、横路孝弘衆議院議長の招待で来日し、野田首相、玄葉外相、

前原民主党政調会長らと会談。玄葉外相との会談では、シベリア・極東における開発プロ ジェクトへの日本企業の参加への期待を表明した。これに対し、玄葉外相は、日露経済関 係の潜在性の蓋を開けたいと述べつつ、ロシアの投資環境の改善につきロシア議会関係者 の努力を求めた。また、北方領土問題やアジア太平洋地域における日露協力について言及 された210。このほか、官房長官時代にもロシア文化フェスティバル関係などでたびたび来日 している211

2016 年 9 月 22 日、プーチン大統領によりロシア対外情報庁(SVR)長官に任命され、同 年 10 月 5 日に下院議長を辞職し、SVR 長官に就任。妻と 2 人の子供の 4 人家族である。ス ポーツマンでロシア水泳連盟(All-Russian Swimming Federation)の会長を務める。英語 とフランス語を話す。

GRU(連邦参謀情報総局)が軍事マターにフォーカスするのに対して、 SVR(対外情報庁)

は主に民生マターに特化した諜報活動を展開している。連邦法で定められた SVR の主な任 務は次の通りである212

 ロシアの安全保障に確保につながる虚偽情報やプロパガンダ等の積極的な情報捜査 活動を実施すること。

 軍事・戦略・経済・科学・技術等のスパイ行為の履行。

 ロシアの海外機関の職員と家族を保護すること。

 ロシア政府の公務員とその家族の安全を確保すること。

 諸外国の諜報機関と共同作戦を展開すること。

 諸外国において電子監視を実行すること。

NATO(北大西洋条約機構)の見方によると、SVR(対外情報庁)は、米国の CIA、英国の SIS(秘密情報部。通称“MI6”)、フランスの DGSE(対外治安総局)等に匹敵するエージェ

209 http://state.kremlin.ru/persons/1

210 http://www.mofa.go.jp/mofaj/press/release/24/6/0611_02.html

211 http://english.ruvr.ru/2012_06_12/77883318/

212 Littell, Jonathan. The Security Organs of the Russian Federation. A Brief History 1991–2004. Psan Publishing House, 2006.

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ンシーである。ロシアの FSB(連邦保安庁)は、米国の FBI やドイツの BfV (連邦憲法擁 護庁)に類似した機関である。他方、連邦参謀情報総局(GRU)は NATO の対抗機関である213

スウェーデン国防省傘下の FOI(防衛調査機関)によると、SVR(対外情報庁)は主に敵 対者等のヒトに対する諜報活動を行うが、暗号や信号等の通信防諜、軍事用および民生用 衛星システムと有線系と無線系の通信システムなどの管理能力を有している214

2015 年に米国 DNC(民主党全国委員会)のサーバに侵入したハッカー集団の Cozy Bear

(別名、(Office Monkeys, CozyCar、CozyDuke または APT-29)は SVR(対外情報庁)とつな がっているとみられる。

オランダの日刊紙であるフォルクスラント(de Volkskrant)の 2018 年 1 月 25 日のニュ ース記事215では、オランダの諜報機関である AIVD(総合諜報保安庁)が米国の FBI に対し て 2016 年の米国大統領選キャンペーンにロシアのハッカー集団が関与したという「決定的 証拠」を提供したと報じている。この記事の概要は次の通りである216

 2014 年の夏、オランダの AIVD(総合諜報保安庁:Algemene Inlichtingen- en Veiligheidsdienst)のひとりのハッカーがモスクワの「赤の広場(Red Square)」

に隣接する大学のコンピュータネットワークに侵入したところ、それが Cozy Bear

(コージーベア)のネットワークであると判明。

 AIVD は、大学の建物内にいる 10 名前後の Cozy Bear(コージーベア)がハッキ ングを行っていた部屋を監視する防犯カメラのアクセスを得たうえで、出入り する人物も特定し、ロシア人が何をしていたかも確認したようである。

 AIVD は 2015 年に Cozy Bear(コージーベア)が民主党首脳のコンピュータに侵 入し、大量の電子メールや文書を移動させるのを目の当たりにしたと FBI に通 報した。しかし、米国側が「このハッキングによってロシアが米大統領選に介 入し、AIVD のエージェントがまさにその現場を目撃していた」ということを理 解するまでに数か月かかったという。

 Cozy Bear(コージーベア)の米国に対するハッカー攻撃は 24 時間にわたるサ

213

https://www.nato.int/docu/review/2017/Also-in-2017/russian-intelligence-political-war-security/EN/ind ex.htm

214 http://www.highseclabs.com/data/foir2970.pdf

215

https://www.volkskrant.nl/tech/dutch-agencies-provide-crucial-intel-about-russia-s-interference-in-us-elections~a4561913

216 2018128日のAFP日本語ニュースで補足する。

http://www.afpbb.com/articles/-/3160177?cx_position=3

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イバー戦の末に阻止されたものの、「トロイの木馬(Trojan Horse)」と呼ばれ るマルウェア(悪意のあるソフトウェア)を仕掛けられた電子メール 1 通が守 りを突破し、コージーベアにホワイトハウスへのアクセスを許したようである。

 フォルクスラント(de Volkskrant)によると、米国の諜報機関がロシアのハッ カー活動に対する備えがなく、予想外の驚きでとらえたと報じている。例えば、

2017 年 8 月に退任した国務省のサイバー政策のトップであった Chris Painter もロシア人が米国の致命的に重大なインフラを攻撃し、米国のデモクラシーを 損なうことになるとは予想もしなかったとコメントしている。オランダの諜報 機関による重要情報の提供を契機に、米欄の諜報機関の連携により、携帯メー ルですら、ロシア政府が絡むハッキング活動が行われていた事実を把握したよ うである。

 防犯カメラに映った数々の人物からオランダの AIVD(総合諜報保安庁)は、Cozy Bear(コージーベア)の米国大統領選におけるハッキング活動を主導したのは ロシアの SVR(対外情報庁)であるとの推論を下している。

2018 年 2 月 8 日の米国 NBC ニュース217によると、ごく少数のロシア人ハッキング集団が 2016 年の米国大統領選前の複数州の選挙人登録でもハッカー侵入を行っていたと、国土安 全保障省のサイバーセキュリティ責任者のJeanette Manfra は述べている。