3. ロシアのサイバー空間に関わる体制・能力等の実態
3.6. ロシアのサイバー空間能力等
3.6.1. 主要なサイバーセキュリティ会社と研究機関等(一覧表)
ロシア最大のITセキュリティ会社であるカスペルスキー(Kaspersky Lab)やDr. Webな どのサイバーセキュリティ等の研究・開発で中心的な役割を担っている民間企業、研究機 関および大学とそれらのキーパーソン等について一覧表として以下に整理したい。
【実績のある大手民間企業】
カスペルスキー(Kaspersky Lab ZAO)(http://www.kaspersky.ru)
会社概要 モスクワに本社を置くコンピュータソフトウエアの民間企業(非上場会 社)。ロンドンに持株会社を置く。2015年の年商は約6.2億㌦。
エンドポイント情報セキュリティソリューションでは世界トップクラス。
同社をめぐる疑惑はロシアの国家機関と密接な関係を持っていることに 由来する。
2014年のIDCデータによれば、エンドポイントセキュリティの分野で世界 第4位にランキングされている。
1997年6月に設立し、アンチウィルスで成長。世界32ヵ国37ヵ所の事 業所を持つ。セキュリティソフトウェアでは欧州市場でトップのシェ アを誇り、日本国内においても業界のリーディングカンパニーから官 公庁、公共・教育機関まで幅広く導入されている267。
同社の特色は次の通りである
事業会社の重要インフラを防護し、プロセスの継続性を確保するた め に 「 カ ス ペ ル ス キ ー 産 業 サ イ バ ー セ キ ュ リ テ ィ ( Kaspersky Industrial CyberSecurity)」と称されるソリューションを提供。サ イバーセキュリティ分野における長年の経験、情報システムの脆弱 性の本質に関する深い理解、国内外規制当局との密接な協力関係に 基づく複雑なソリューション機能が搭載されている。
金融機関を標的としたサイバー犯罪組織「Lurk」の捜査でロシア貯 蓄銀行(ズベルバンク)と共同で法執行機関に協力した実績や、産 業CERTを立ち上げて重要インフラ事業者との連携を打ち出すなどの 活動の幅を広げつつある。
加えて、ベンチャー企業の育成支援として、2016年末までに世界の スタートアップ企業に投資すると発表した。各投資規模は5万ドル~
100万ドル。対象分野は、携帯およびクラウドのセキュリティ、IoT、
267 http://www.kaspersky.co.jp/about/about_us
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物理的セキュリティ、機械動作等である。資金提供以外にも、同社 の技術と専門知識による恩恵を受けることができる
2014年にサイバースパイ(Epic Turla)の脅威に関する公開レポー トを公表している。
CIA元職員のエドワード・スノーデンが提示した資料から、米国と英 国の諜報機関がカスペルスキー社(その他の20社以上のアンチウイ ルスソフト開発会社を含む)を標的にしていたことが明らかにされ た。米国ニュースサイト「インターセプト」はNSA(国家安全保障局)
と英国のGSHQ(政府通信本部)がリバースエンジニアリングを行っ てソフトウェアの脆弱性を探りながら撃破を試みたと伝え、「(米英 の)諜報機関は、アンチウイルスソフトをこっそり阻止し、会社か らセキュリティソフトやそのソフトのユーザに関する機密情報を得 るために、時に疑わしい法的権限のもと、ソフトウェア製品のリバ ースエンジニアリングを行い、ウェブと電子メールのトラフィック を監視していた」と記している268。
主要人物 会長兼最高経営責任者:ユージン・カスペルスキー(本名:Yevgeny Valentinovich Kaspersky 。俗称:Eugene Kaspersky)。1965年10月 生まれ。16歳で諜報機関の幹部養成校であるKGB高等教育機関(KGB Higher School)に入学し、1087年に卒業(数学工学とコンピュータ 技術の学士)。諜報機関でソフトウエアエンジニアとして勤務し、1997 年にKaspersky Labを設立し、2007年には、Kaspersky Labの最高経営 責任者(CEO)に任命された。2013年、取締役会長に就任し、現在に 至る269。
CTO:ニキータ・シュベツォフ (Nikita Shvetsov) 。国立モスクワ電 子数学大学でコンピューターサイエンスの学位を取得。2004 年に Kaspersky Lab にウイルスアナリストとして入社、2006 年にシニア 開発者としてヒューリスティックエンジン向けのエミュレータ開発 に従事。2009 年には、アンチマルウェアリサーチ部門のディレクタ ーに就任。
COO:アンドレイ・チーホノフ(Andrey Tikhonov)。キエフ軍事アカ デミーを優秀な成績で卒業後、ロシア連邦軍に所属。最終階級は中佐。
1989年にロシア国防省付属の研究所で勤務を開始し、IT業界に携わ
268 VICTORIA ZAVYALOVA (June 26, 2015) “NSA and GHCQ targeting antivirus developers, say Snowden documents”
http://rbth.com/science_and_tech/2015/06/26/nsa_and_ghcq_targeting_antivirus_developers_say_snow den_docu_47261.html
269 https://www.forbes.com/profile/eugene-kaspersky/
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る。2012年1月にKaspersky Lab の最高執行責任者(COO )に就任。
Dr. Web (http://company.drweb.com/?lng=en)
概要 Doctor Web, Ltd.(ドクターWeb社)は、2003年に設立されたロシアに本 社を置くアンチウィルス開発販売会社。「Dr.Webアンチウイルスソフトウ ェア」のディベロッパーであり、独自のマルウェア検出及び修復テクノロ ジーを有する、世界でも数少ないアンチウイルスベンダーの1つでもある。
主な特色は次の通りである270。
共同創業者兼CTOのイーゴリ・ダニロフ(Igor Daniloff)がDr.Web の商品名を持つアンチウィルスを開発し、1992年に市販開始。
2003年にドクターWeb社を設立した。従業員数は400人強で、そ の半数以上が研究開発部門に所属している。本社はモスクワ。
アンチウィルス研究開発部門はサンクトペテルブルクに設置さ れている。
同社はロシア市場におけるインターネットサービスプロバイダ
(ISP)に対するセキュリティサービスの第一人者として不動の 地位を保っている。
数々の賞を受賞し、情報セキュリティツールに対する連邦技術 輸出管理庁(FSTEC)のライセンス(情報セキュリティツールの 開発に対するロシア連邦の連邦技術・輸出管理サービスのライ センス及び機密情報保護ツールの開発、リリースに対するロシ ア連邦の連邦技術・輸出管理サービスのライセンス)、情報セキ ュリティツールの開発に関連した活動に対するロシア国防省の ライセンス、連邦保安庁(FSB)の各種ライセンス、連邦保安庁
(FSB)及び連邦技術・輸出管理庁(FSTEC)の認証証明書を取 得済みで、主要製品であるDr.Webアンチウイルスソリューショ ンを世界各国の企業及びホームユーザーに提供している。
主要人物 CEO:ボリス・シャロフ(Boris Sharof)
共同創業者兼CTO:イーゴリ・ダニロフ(Igor DaniloffまたはIgor Danilov)。
Group-IB (サイバーセキュリティグループ有限会社) (http://www.group-ib.ru)
概要 2003年に創業。サイバー犯罪や詐欺に焦点を当て、サイバー脅威の監視、
ハイテク分野の犯罪捜査への参加、サイバーセキュリティのソフトウェア
270 https://company.drweb.com/?lng=en
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開発を行っている。東欧最大の犯罪科学研究施設であり、「ハイテク犯罪 分野の重要な捜査事案の80%に関与している」。
Group-IBは、決済処理システム「クロノペイ(Chronopay)」の共同 設立者であるパーベル・ブルブレフスキー(Pavel Vrublevsky)が アエロフロート(Aeroflot)のウェブサイトにDDoS攻撃を仕掛けた 刑事事件で専門組織として参加を要請されたことで著名になった。
また同社は、詐欺的なウェブサイトの調査でQiwi社を支援し、アメ ディア(Amedia)と共同でアメディアの動画やシリーズ物への不正 なハイパーリンクのロックに参加した実績もある。
2015年末、Fox-IT社と共にロシアの銀行部門でサイバー犯罪による 惨事を引き起こしたとされるハッカー集団、アヌナク・ギャング
(Anunak gang)について詳述した報告書を発表している。
同社の脅威防止調査担当部長であるドミトリー・ヴォルコフ(Dmitry Volkov)は、ロシアのサイバー犯罪に関するエキスパートとしての 同社の地位を築いた著名な専門家である。
25 カ 国 以 上 に 顧 客 を 持 つ 。 SPARK-Interfax の デ ー タ に よ れ ば 、 Group-IBの2013年度の利益は8,660万ルーブル、純利益は82万4,000 ルーブルだった。イリヤ・サチコフ(Ilya Sachkov)は、利益の90%
は民間企業への商業サービスによってもたらされ、残り10%は政府 の注文によると述べている。
主要人物 創業者兼CEO:Ilya Sachkov
脅威防止調査部:Dmitry Volkov
Experimental Design Office (EDO) SAPR (www.okbsapr.ru)
概要 暗号化機構を含む不正アクセスからの情報保護を目的とするハードウェア やソフトウェアの設計会社で、20年以上の歴史がある(1989年設立)。 主要人物 最高責任者(DG):Yury N. Veprov氏
Informzaschita Group of Companies (http://www.infosec.ru)
概要 インフォルムザシタ(Informzaschita)企業グループは、自動制御システ ムにおける情報セキュリティ確保を専門としており、18年以上ロシア市場 でトップの座を維持している。同グループは現在、システムインテグレー ターのほか、セキュリティ・コード、トラストバース、ナショナル・アテ ステーション・センター(National Attestation Center)、インフォルム ザシタ・トレーニング・センターの4社で構成されている。
同グループの企業は、世界有数のセキュリティソリューションプロバ
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イダーであるIBMインターネットセキュリティシステムズ(IBM ISS)、
カ ス ペ ル ス キ ー 、 ポ ジ テ ィ ブ ・ テ ク ノ ロ ジ ー ズ ( Positive Technologies)、チェック・ポイント・ソフトウェア・テクノロジー ズ・リミテッド、HPアークサイト(HP Arc Sight)、シスコ・システ ム ズ 、 Stonesoft 、 フ ォ ー テ ィ ネ ッ ト ( Fortinet )、 イ ン パ ー バ
(Imperva)、インフォウォッチ(InfoWatch)、CryptoPro、ウェブセ ンス(Websense)などの認定パートナーである。
また、決済システムのセキュリティ要件の国際標準化団体であるPCI セ キュリテ ィスタン ダード カウンシ ル( PCI Security Standards Council)との提携に基づき、PCI DSS国際基準の遵守に関する監査の 実施を認められている。
主要人物 共同創業者兼社長兼CEO:Peter Efimov
副社長、専務理事:Leonid Ukhlinov(2009~2013年まで、JSC Sirius Concern社 (Rostec Corporation)の設立に貢献。工学博士号取得。)
InfoWatch (https://www.infowatch.ru)
概要 インフォウォッチ(InfoWatch)は数社から成る企業グループで、組織の 情報セキュリティを確保し、外部・内部のセキュリティ脅威を防止するソ フトウェア製品や統合ソリューションを開発している。
インフォウォッチ・グループはロシア、ドイツ、ベラルーシ、マレー シアに22の営業所を有する。モスクワにある中核的研究開発所では、
300人以上のスペシャリストや専門家が独自製品・技術の開発・導入・
促進に携わっている。
ITセキュリティを手掛けるインフォウォッチ・グループは2016年に
「シールド」製品の販売を開始する予定である。これは、国立原子力 研究大学(National Research Nuclear University)MEPhIの専門家 が開発したソフトウェア/ハードウェアの総合製品で、ロシア及び国 外(主にBRICS諸国)においてサイバー攻撃から製造会社の自動化機 器を保護するために使用できる。
主要人物 CEO:Natalya Kaspersky(カスペルスキー社の共同創業者)
ICL-KME CS (http://www.icl.ru)
概要 ロシア最大のシステムインテグレーター。ICL-KME CSは、カザン・マニュ ファクチャリング・エンタープライズ・オブ・コンピューター・システム ズ(Kazan Manufacturing Enterprise of Computer Systems:KME CS)と 英国のインターナショナル・コンピューターズ・リミテッド(International