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3. ロシアのサイバー空間に関わる体制・能力等の実態

3.2. KGB 系の諜報機関

3.2.1. FSB(連邦保安庁)

連邦保安庁(ロシア略称:FSB。英語:FSS RB-Federal Security Service of the Russian Federation)は、大統領直轄下の連邦行政機関である。旧ソ連の KGB(国家保安委員会)が ロシア KGB、FSK(連邦防諜庁)となり、1995 年 4 月に現在の FSB に再編統合された。プー チンが大統領になる以前に、FSB 長官を務めたこともある。

【連邦保安庁(FSB)の本部183:ルビャンカ 広場(Lubyanka Square)】

旧 KGB 本部及び KGB 刑務所。

住所は、手前の広場の名称を使い、ルビャ ンカ(Лубянка)広場。

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http://www.dia.mil/Portals/27/Documents/News/Military%20Power%20Publications/Russia%20Militar y%20Power%20Report%202017.pdf

182 FOI (Swedish Defence Reseach Agency), Emerging Cyber Threats and Russian Vies on Information Warfare and Information Operations, March 2010

http://www.highseclabs.com/data/foir2970.pdf

183

https://thelibertarianrepublic.com/isis-claims-attack-russian-intelligence-agency-headquarters-three-dead/

92

オリジナルの建物は、1898 年に設立された全ロシア保険会社(All-Russia Insurance Company)の本社ビルであった。連邦保安庁(FSB)の職員数等に関する正式な統計は入手 できていないが、20 万人以上を擁するとの推計値もある184

【連邦保安庁(FSB)長官:アレクサンドル・ボルトニコフ(Alexander Bortnikov185)】

連邦保安庁(FSB)長官(Director of the Federal Security Service)のアレクサンドル・ボルトニコフ(Alexander Bortnikov)

は、2008 年 5 月にメドベージェフ大統領により任命され、今で も長官の職にある186。サンクトペテルブルグ市の FSB 次長を務 めており、プーチンやメドベージェフの側近のひとりである。

1951 年 11 月 15 日生まれ。1973 年に旧 Leningrad Institute of Railway Engineers(現在の St. Petersburg State Transport University)を卒業し、KGB のレニングラード(現在のサンクトペテルブルグ)支部で勤務。2004 年 2 月から FSB の経 済セキュリティサービス部門のトップを務める。セルゲイ・イワノフ(文民出身の元国防 大臣。第一副首相を歴任。大統領府官房長官)、イーゴリ・セーチン(プーチンの子飼い。

ユコス事件の捜査を主導。第一副首相を経てロスネフチの会長)やビクトル・イワノフ(KGB レニングラード支局を経て 1999 年に FSB 次官。2008 年に連邦麻薬取締庁長官に就任)等の 元 KGB レニングラード支局出身者である。シロヴィキ(Siloviki)の一派。シロヴィキと は、政治的信条を同じくする諜報機関や軍部関係の出身者で、極めて影響力の大きいクレ ムリン派閥を意味する。

ロシア連邦 FSB の主な責任と役割は、ロシア国家安全保障であり、対防諜活動、対テロ 対策、犯罪撲滅、情報セキュリティの保障措置、ロシア連邦国境の防護・防衛、管轄海域・

領海・大陸棚、排他的経済研及び天然資源等の防護である187。主な根拠法は、1995 年の連 邦保安庁に関する連邦法第 40 号(Federal Law No. 40-FZ, On the Federal Security Service188)である。

ロシア連邦保安庁(FSB)の基本的な任務は、1)CKP(防諜局)が担う対外防諜防御サー ビス、2)テロ対策局が担うテロ対策、3)組織犯罪撲滅の 3 つである。

184 The Guardian (October 6, 2013) “FSB: Vladimir Putin's immensely powerful modern-day KGB”

https://www.theguardian.com/world/2013/oct/06/fsb-putins-modern-day-kgb

185 http://en.kremlin.ru/catalog/persons/100/events

186 http://en.kremlin.ru/catalog/persons/100/events

187 http://www.fsb.ru/

188

http://www.icla.up.ac.za/images/un/use-of-force/eastern-europe/Russia/Federal%20Law%20on%20Fede ral%20Security%20Service%20Russia%201995.pdf

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サイバーセキュリティについては、連邦法第 40 号第 8 条が情報セキュリティ分野におけ る情報及び通信システム、暗号化された情報の伝達に使う特殊通信ネットワーク等のセキ ュリティを確保することを連邦保安庁(FSB)の任務のひとつとして義務づけている。

FSB(連邦保安庁)長官官房内に設置された電子通信監視センター(TSRRSS-Center for Electronic Surveillance of Communications。別名:第 16 総局/第 71330 軍事部隊)は、

電子通信の遮断、暗号解読、情報処理などを担当しており189、ロシアのハッカー予備軍をコ ントロールしているとみられている190。加えて、大規模なテロ発生時には、各連邦管区に設 置されている反テロ委員会(NAK)を通じて管轄区域内の軍・治安機関を指揮する権限を持 つため、FSB(連邦保安庁)は大規模サイバーテロ等に対しても中心的な役割を果たすこと になろう191

連邦保安庁(FSB)は、政府ネットワーク向けのサイバーセキュリティ及びインシデント 対応センター(国際名称は GOV-CERT.RU)の運用、国家 DPCA システム(GosSOPKA:コンピ ュータインシデントにおける国家調整センターを含む)の構築・運用も担っている192

以下は、情報セキュリティ関連の役割を担う連邦保安庁(FSB)の主な部署である 1)情報 セキュリティセンター、2)暗号・通信・コンピュータ科学研究所(IKSI)、3)第 18 総局・

サイバーセキュリティセンターの概要を示した表である。

【FSB 内の主な情報セキュリティ対応部署】

 情報セキュリティセンター(TsIB: FSB Information Security Center )。別名:第 64829 軍事部隊(Military Unit (Vch) 64829193)。本部は連邦保安庁本部に隣接した Butchers 通りに立地194

189 A TAIA GLOBAL REPORT (2015) “Russian Federal Security Service (FSB) Internet Operations Against Ukraine”

http://docplayer.net/15126233-Russian-federal-security-service-fsb-internet-operations-against-ukrain e-a-taia-global-report.html

190 K. Mshvidobadze, “The Battlefield On Your Laptop”, Radio Free Europe/Radio Liberty 21 March 2011. http://www.rferl.org/articleprintview/2345202.html

191 http://www.nisc.go.jp/inquiry/pdf/fy21-brics.pdf

192 (Novermber 17, 2016) “In 2017, the FSB will start the exchange of information on cyber attacks GosSOPKA system”

http://soc-forum.ib-bank.ru/

http://www.startlr.com/in-2017-the-fsb-will-start-the-exchange-of-information-on-cyber-attacks-gossop ka-system/

193 A TAIA GLOBAL REPORT (2015) “Russian Federal Security Service (FSB) Internet Operations Against Ukraine”

194 A TAIA GLOBAL REPORT (2015) “Russian Federal Security Service (FSB) Internet Operations Against Ukraine”

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 情報セキュリティセンター(TsIB)の主な任務は、諜報活動用システム(SORM-)を 利用したインターネット(RuNET)の監視と、脅威特定のためのインターネットコン テンツの分析等195

 1990 年代に初めて構築された SORM は、電話回線検閲システムの SORM-1 とインター ネット回線検閲システムの SORM-2 から構成される。

 ロシアでは、「通信法」によって情報機関や捜査機関が一般の通信を傍受することが 認められている。FSB の要請を受けて、ロシアで操業するあらゆる通信事業者は、

SORM に関連する機器やソフトウェアを自社通信システムに導入することを義務づ けられている196

 また連邦法第 64 条で、通信事業者が利用者に関する情報を政府機関に通知する義務 や政府機関が機動捜査活動を行えるようにする義務などが規定されている197。

出所:Infosec Institute “How Russia Control the Internet” 198

 連邦保安庁(FSB)の情報セキュリティセンター(ISC)は、SORM の運用を担ってお り、内務省 K 局(後述)との密接な協力関係の下で、インターネット事業者(IPS)

がインストールしているハードウェア及びソフトウェア、インターネット接続ポイ ント及びインターネット相互接続点を利用して、インターネットの監視を行ってい る。同センターでは、2007~2008 年に大規模アップグレードを行い、FSB ISC 本部 の建物から、インターネット監視システムの遠隔操作とオフラインでの情報分析を 行う能力を拡大している199

195 Infosec Institute “How Russia Control the Internet”

http://resources.infosecinstitute.com/russia-controls-internet/

196 Приказ Минсвязи РФ N 130, О порядке внедрения системы технических средств по обеспечению оперативно-розыскных мероприятий на сетях телефонной, подвижной и беспроводной связи и персонального радиовызова общего пользования.(2000725日)

197 小泉悠 (2014)『ロシアにおける情報安全保障政策とインターネット規制』「外国の立法 262(2014.12) http://dl.ndl.go.jp/view/download/digidepo_8841952_po_02620006.pdf?contentNo=1

198 Infosec Institute “How Russia Control the Internet”

http://resources.infosecinstitute.com/russia-controls-internet/

199 A TAIA GLOBAL REPORT (2015) “Russian Federal Security Service (FSB) Internet Operations Against Ukraine”

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 暗号通信コンピュータ科学研究所(IKSI)

 IKSI (暗号通信コンピュータ科学研究所)は暗号解読に取り組んでいたが、現在は 情報セキュリティを専門としている。現在、200 人以上の教授が在籍し、コンピュ ータシステムとセキュリティについて学生を指導している。優れたコンピュータ能 力を有する学生にとって唯一の難点は、連邦保安庁の給料が主要な技術系企業の給 料よりも遥かに低い点にある200

 第 18 総局サイバーセキュリティセンター

 第 18 総局サイバーセキュリティセンター(Cybersecurity Center N18)は、サイバ ーセキュリティで主導的な役割を果たしている。秘密防衛サービス部のコンピュー タ・情報セキュリティ課の傘下に置かれている。センター長は Andrey V. Gerasimov。

旧 KGB のコンピューターセンターとして使用されていた建物内に立地している。同センター に関する情報は、ほとんどが機密扱いとなっており、ロシア国内からもアクセスできない。

得られた情報の範囲では、同センターには、情報技術オフィス(専門家ユニット)と運転管 理ユニットが含まれている。

出所:各種資料に基づいて IBT にて作成。

サイバーセキュリティ関連では、FSB(連邦保安庁)の 2 名の職員とモスクワに本拠を構 える世界的なセキュリティ会社のカスペルスキー(Kaspersky Lab)の社員がロシア当局に より米国の利益につながる反逆を犯した容疑でロシア当局によって拘束されたと、2017 年 2 月 1 日のロイター(モスクワ201)が報じた。カスペルスキーの社員はコンピュータインシ デント調査チームの責任者のRuslan Stoyanov で、FSB の公務員は情報セキュリティセンタ ー(TsIB)で勤務する Sergei Mikhailov と Dmitry Dokuchayev であり、米国の諜報機関に 協力した国家反逆罪で拘束されたと、カスペルスキーの弁護士である Ivan Pavlov が明ら かにした。ロシアが米国の大統領選でトランプ候補に有利なハッカー行為を行ったロシア 人を告発した直後の米ロ間の緊張が高まっていたタイミングでの事件であった。Ruslan Stoyanov がヘッドを務めるカスペルスキーのコンピュータインシデント調査チームは 2013 年から FSB の依頼でサイバー犯罪事例の分析を行っていたようである。拘束されたStoyanov チーム長がカスペルスキーに入社したのは 2012 年のことで、今回の容疑は彼が入社する前 の出来事であると会社側はコメントしている。クレムリンはメディア報道でこのニュース を知っているものの、事件に関するコメントを差し控えている。

http://docplayer.net/15126233-Russian-federal-security-service-fsb-internet-operations-against-ukrain e-a-taia-global-report.html

200 The Guardian (October 6, 2013) “FSB: Vladimir Putin's immensely powerful modern-day KGB”

https://www.theguardian.com/world/2013/oct/06/fsb-putins-modern-day-kgb

201

https://www.reuters.com/article/us-russia-cyber-arrests/russia-charges-cyber-security-expert-fsb-office rs-with-treason-lawyer-idUSKBN15G43Y