図7-2 1分間降水量データから得られた1分間降雨強度CDF(M分布近似後)に対する10分 間・1時間降水量データから細矢法を用いて得られた同CDFの誤差
(全国136地点617サンプル/0.01〜0.0001%における累積確率の対数値のRMSE)
図7-2 の横軸は、累積確率の対数値のRMSE を示しているが、誤差の大きさが直感的 にわかりにくいため、この値が累積確率を対数目盛で表した場合にどのようになるかを、
図5-3と同様な考え方で、示したものが図7-3である。
図7-3 累積確率の対数値のRMSEの大きさをわかりやすく示した例
より長期間のデータに基づく降雨減衰確率に関する検討を可能とするには、1時間降水 量データを用いた 1 分間降雨強度の確率分布の精度良い推定を可能とすることが必須で ある。しかしながら、図7-3 を参照しつつ図7-2を見た場合、1 時間降水量データからの 変換における RMSE には大きい値が多数含まれ、改善が必要と考えられた。自然の振る 舞いである降雨の確率分布の近似が処理のベースとなっており、近似誤差に伴う変換誤差 は避けられないと考えられたが、誤差をどこまで追い込めるかを予見することは困難であ
0 50 100 150 200
0 0.5 1 1.5 2
10分間降水量データ→1分間降雨強度CDF:細矢法
1時間降水量データ→1分間降雨強度CDF:細矢法
った。一方、同様に近似誤差がある中で、10分間降水量データからの変換におけるRMSE は比較的良い分布となっており、実現可能な目標として、これと同等程度にまで改善する ことを目指すことが適当であると考えられた。具体的には、10 分間降水量データからの 変換の場合のRMSEの多くは0.5以下(92.4%)であり、また0.5は切りが良い値でもあるこ とから、1時間降水量データからの変換の場合における改善の目安として適当と考えられ、
これを越える部分に存在する多数のサンプルを極力少なくすることを目指すこととした。
7.2.2.2 秋元他法
7.2.2.1節と同様に、全国の10分間及び1時間降水量データから秋元他法に基づき得
られた1 分間降雨強度の CDF、と同地点、同年の 1 分間降水量データに対し乱数補正秒 単位均し分配処理を施して得られたM分布近似後の 1 分間降雨強度 CDF、との比較を行 った。
名古屋の複数年(1997〜2002年)のケースについて図7-1と同様の関係を求めたものを 図7-4に、また、全国のデータについて図7-2と同様の関係を求めたものを図7-5に示す。
ちなみに、図7-4の名古屋の例の場合の RMSEは、10分間降水量データからの変換の場
合は0.369、1時間降水量データからの変換の場合は0.634である。
図7-4 10分間・1時間降水量データから秋元他法を用いて得られた1分間降雨強度CDFと
1分間降水量データから得られた1分間降雨強度CDF及びそのM分布近似との関係
[名古屋(1997〜2002年)の例]
10
‑50.0001 0.001 0.01 0.1 1 10 100
0 50 100 150 200
1分間降水量データ→1分間降雨強度CDF 上記CDFのM分布近似
10分間降水量データ→1分間降雨強度CDF:秋元他法 1時間降水量データ→1分間降雨強度CDF:秋元他法
1分間降雨強度 [mm/h]
図7-5 1分間降水量データから得られた1分間降雨強度CDF(M分布近似後)に対する10分 間・1時間降水量データから秋元他法を用いて得られた同CDFの誤差(図7-2と同様 条件)
図7-5は、図7-2との比較という点で見た場合、10分間降水量データからの変換におい ては、特段の優位性は見られないが、1時間降水量データからの変換においては、若干精 度が良くなっていると考えられる。しかしながら、後者の場合において、依然として、
RMSEが0.5を越える部分にも多数のサンプルが存在している。
7.2.2.3 2つの変換手法の変換精度に関する考察
7.2.2.1節、7.2.2.2節の結果を踏まえ、細矢法、秋元他法ともに、特に1時間降水量
データからの変換においてRMSEが0.5を越える部分にも多数のサンプルが存在している 点について着目し、精度向上の可能性について検討を行った。
7.2.2.3.1 平均値、標準偏差の誤差と変換精度との関係
まず、全国の1分間降水量データから乱数補正秒単位均し分配処理を施して得られた1 分間降雨強度CDFのM分布(近似)パラメータu、pから求めた平均値、標準偏差(式(2-9) 及び(2-10))と、同地点、同年の10分間及び1時間降水量データから得たCDFのM分布
(近似)パラメータu、pから求めた平均値、標準偏差(式(2-9)及び(2-10))から細矢法、秋
元他法に基づき 1 分間降雨強度CDF(M 分布)を得るための平均値及び標準偏差を求め た(式(7-1)〜(7-3))ものとの比較を行った。平均値について示したものが図 7-6、標準偏 差について示したものが図7-7である。
0 50 100 150 200
0 0.5 1 1.5 2
10分間降水量データ→1分間降雨強度CDF:秋元他法 1時間降水量データ→1分間降雨強度CDF:秋元他法
RMSE
(①)10分間降水量データからの変換における平均値との関係
(②) 1時間降水量データからの変換における平均値との関係
図7-6 1分間降水量データから得られた1分間降雨強度CDFのM分布(近似)パラメータから求 められた平均値と 10 分間・1 時間降水量データから細矢法により 1 分間降雨強度 CDFへの変換において得られた平均値との関係
0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.2 1.4
0 0.2 0.4 0.6 0.8 1
相関係数=0.873
1分間降水量データ→1分間降雨強度CDF において得られた平均値 [mm/h]
0 0.2 0.4 0.6 0.8 1
0 0.2 0.4 0.6 0.8 1
相関係数=0.914
1分間降水量データ→1分間降雨強度CDF において得られた平均値 [mm/h]
(a−①) 細矢法を用いた10分間降水量データからの変換における標準偏差との関係
(a−②) 細矢法を用いた1時間降水量データからの変換における標準偏差との関係
(b) 秋元他法を用いた10分間・1時間降水量データからの変換における標準偏差との関係
0
1 2 3 4 5
0 1 2 3 4
相関係数=0.976
1分間降水量データ→1分間降雨強度CDF において得られた標準偏差 [mm/h]
0 1 2 3 4 5 6
0 1 2 3 4
相関係数=0.953
1分間降水量データ→1分間降雨強度CDF において得られた標準偏差 [mm/h]
0 1 2 3 4 5
0 1 2 3 4
相関係数=0.966
1分間降水量データ→1分間降雨強度CDF において得られた標準偏差 [mm/h]
図7-7 1分間降水量データから得られた1分間降雨強度CDFのM分布(近似)パラメータから求め
られた標準偏差と 10分間・1 時間降水量データから細矢法及び秋元他法により1分間 降雨強度 への変換において得られた標準偏差との関係
図7-6の平均値については、細矢法と秋元他法で違いがないため、分けて示すことはし ていないが、図7-7の標準偏差については、(a)が細矢法を用いた場合について、(b)が秋元 他法を用いた場合について、それぞれ示している。また、図7-6及び7-7(a)は、10分間降 水量データからの変換の場合と 1 時間降水量データからの変換の場合で分けて示してい
るが、図7-7(b)の秋元他法の場合は、式(7-2)及び(7-3)において、10分間及び1時間降水量
データから得られる標準偏差σM10m及びσM60mに対し、式(7-2)の左辺の、得られるべき 1 分間降雨強度の標準偏差σM1mが同一値であるとして、また、式(7-3)のηも同一値である として求め、最終的に、得られたηを用いて、σM1mを求めることから、σM10m、σM60m のいずれに対してもσM1mの値は一致することになるため、区別せずに示している。図7-6 及び7-7において、一点鎖線は、縦軸と横軸の値が一致するとした場合の関係を示す。ま た、実線は全サンプルに対する回帰直線であり、相関係数は回帰直線に対する相関を示す。
直感的には、各サンプルの一点鎖線からの離隔の度合いが、図 7-2 及び 7-5 に見られる RMSEの大きさ、即ち変換精度に関係していると考えられた。そのような観点で図7-7を 見ると、標準偏差においては、10 分間降水量データからの変換の場合と 1 時間降水量デ ータからの変換の場合で顕著な差は見られないのに対し、図7-6 の平均値は、①の 10分 間降水量データからの変換の場合の方が②の 1 時間降水量データからの変換の場合より も、一点鎖線からの離隔の度合いが明らかに大きくなっている。これは、図 7-2 及び 7-5 に示されている結果、即ち、1時間降水量データからの変換の場合の方がRMSEが大きい、
という事象とは逆の傾向を示しているように見える。
このように、平均値及び標準偏差がどのように変換精度に影響を与えるかは単純では ないことが明らかとなった。これをさらに分析するために、図7-6及び7-7の平均値及び 標準偏差の一点鎖線からの離隔(以下、単に平均値及び/または標準偏差の離隔という)
と図 7-2 及び 7-5 に示した RMSE との関係について詳細な検討を行った。この結果、10 分間降水量データからの変換の場合と 1 時間降水量データからの変換の場合で特徴的な 違いが見られた。前者は、平均値の離隔が大きいサンプルは標準偏差の離隔も大きく、そ れが RMSE が大きくなるのを抑える、即ち互いに打ち消しあっているように見える傾向 があるのに対し、後者は、そのような傾向が顕著には見られず、結果として後者の方が前 者よりRMSEが大きいサンプルが多くなっているように考えられた。
これについては次のようなことが考えられる。10分間降雨強度の方が1 時間降雨強度 に比べ積分時間が短いため、その確率分布特性は、1分間降雨強度の確率分布特性の情報 をより多く有していることから、平均値と標準偏差、個々には大きい誤差が生じても、確 率分布特性として似た特性が得られるように振舞い、結果として RMSE はあまり大きく はならない、ということである。しかしながら、この振舞いはηの選び方にも関係し、ま
た、細矢法で用いるηと秋元他法におけるηとでは異なっている可能性があると考えられ たため、ηとの関係について確認が必要と考えられた。このため、ηと変換精度の関係、
ηの最適値などについて検討を行った。その結果を次節に示す。
7.2.2.3.2 自己相関特性の係数ηと変換精度の関係
全国各617サンプルの10分間及び1時間降水量データから得られたCDFのM分布(近 似)パラメータu、p から求めた標準偏差σM10m、σM60mと、同地点及び同年の1分間降水 量データから乱数補正秒単位均し分配処理を施して得られた1分間降雨強度CDFのM分 布(近似)パラメータu、pから求めた標準偏差σM1mを用い、細矢法に基づき式(7-2)及び(7-3) の逆算によりηを求め、また秋元他法によりηを求めた。これを度数分布で示したものが 図7-8である。
図7-8 細矢法、秋元他法において得られるηと1分間降水量データから得た1分間降雨強度 時系列データより得られる自己相関特性から得たη(全国136地点/617サンプル)
図7-8において、
① 細矢法に基づきσM60mとσM1mを用い式(7-2)及び(7-3)の逆算により得られるηの分布 は0.15程度が中心となっている。
② 細矢法に基づきσM10mとσM1mを用い式(7-2)及び(7-3)の逆算により得られるηの分布
は0〜0.01に高いピークが存在するようなものとなっている。しかも、0〜0.01の範囲
には、η≧0において式(7-2)及び(7-3)の関係が成立しないが、降雨の自己相関特性にお いてηが負の値となるような特性はありえないためη=0としているものも多く含まれ