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気象庁降水量データから 1 分間降雨強度 CDF を精度良く 得る手法  −10 分間&1 時間降水量データから−

[異積分時間降雨強度確率分布変換手法]

AMeDASは、先に示したように、1時間降水量データが最長1976年から、また10分間

降水量データが最長 1994年から取得されており、より長期間のデータに基づく降雨減衰 確率に関する検討を可能とするには、1時間降水量データを用いた1分間降雨強度の確率 分布の精度良い推定を可能とすることが必須である。また、10 分間降水量データが得ら れている地点においては、精度的には、より積分時間の短い10 分間降水量データを用い ることが有効であると考えられる。本章では、10 分間及び 1 時間降水量データから精度 良く1 分間降雨強度CDFを得るための異積分時間降雨強度確率分布変換について検討し た結果を示す。

7.1  検討に用いたデータ

全国148地点のAMeDASにより得られた最長1996年から2002年までの1分間、10分

間及び1時間降水量データを入手し、うち1年以上の期間に対して解析可能なデータが得 られた136地点分のデータを解析に用いた。

AMeDASの1分間降水量観測は1995年から導入され、早いものは1996年からデータが

得られているが、5.1 節に示したように、1 年間通してのデータを用いて解析する場合に は1996 年からのデータが使用できるケースはなく、解析可能なデータが得られた年数の 最長は6年(1997年〜2002年)であった。一方、本章では、豪雪地域においては豪雪期 間を除く7ヶ月(4〜10月)のデータを用いた解析も行われているが、1996年においても 4月以降であればデータが正常である地点があったため、この場合の解析可能なデータが 得られた年数の最長は7年(1996年〜2002年)であった。

これらのデータを用い、1 分間降水量データに対しては、第4 章に示した乱数補正秒単 位均し分配処理を施し1分間降雨強度CDFを求めたものと、10分間及び1時間降水量デ ータからそのまま CDF を求めたものを、以降に示す検討に用いた。なお、1 分間降水量 データから1分間降雨強度CDF を得る際に用いた乱数補正秒単位均し分配処理は、最大 均し時間を、第4 章に示した内容に基づき、60分とするとともに、10個の乱数パターン

(初期値を変えた)を用いた秒単位均し分配処理により CDF を求め、その平均値カーブ を求める、という処理を行っている。

7.2  既存の異積分時間降雨強度確率分布変換手法の変換精度 7.2.1  既存の変換手法

2.4.1 節に示したように、既存降雨減衰推定法に用いているパラメータである強雨期 3

ケ月の 1 分間降雨量の 0.0075%値は、旧日本電信電話公社(現日本電信電話(株))が、

1940〜1950 年代に気象庁の観測システムにおいて自記記録紙に記録された降雨量データ

から、強雨期3ヶ月(7〜9月)等における10分間降雨量及び/または総降雨量などを読 み取るとともに、総降雨量と10分間降雨量の0.0075%値との関係を求め、また、10分間 降雨量と1 分間降雨強度の自己相関に関する研究結果に基づき10 分間降雨量の0.0075%

値と1 分間降雨強度の同%値との関係を求めるなどし、とりまとめたものであるが[2]、こ の研究では1時間降雨量から1分間降雨強度CDFを求める手法は示していない。

10分間及び1時間降水量データのいずれからも1分間降雨強度CDFを得ることができ る異積分時間降雨強度確率分布変換手法で、既に提案されているものとしては、以下に示 す細矢が提案した M分布を用いる手法[12](以下、細矢法という)及びその応用である秋 元他が提案した手法[14](以下、秋元他法という)をあげることができ、これらについて検 討した結果を以下に示す。

7.2.1.1  細矢法[12]

1 分間降雨強度及び N分間降雨強度の確率分布が M分布に従うものとする。M変量 R の確率密度関数 f(R)及び Riから無限大までの累積確率F(Ri)は、式(2-7)及び(2-8)で与えら れる。

M分布に従う1分間降雨強度の確率分布の平均値μM1m、標準偏差σM1mと、同N分間 降雨強度の確率分布の平均値μMNm、標準偏差σMNmの関係が次式で与えられ、N 分間降 雨強度の確率分布が与えられれば、1分間降雨強度の確率分布を得ることができる。

N

MNm m

1 M

m = m (7-1)

( ) ( )

ú

û ê ù

ë

é +

-=

å

-= 1 N

1 t

2 MNm 2

m 1 M

t t N 2

N r

s s (7-2)

ただし、μM1m、σM1m及びμMNm、σMNmは1分間及びN分間降雨量の単位で表したもの であり、それぞれ[mm/min]及び[mm/N min]であり、降雨強度[mm/h]で扱う場合には単位換 算が必要であることに注意を要する。また、ρ(t)は1分間降雨強度の自己相関特性であり、

( )

t =

r e-h t (7-3)

の関係を満たすものとし、ηについては、国内の代表的な8地点における検証に基づく実

効的な値として0.247を用いることが適当としている。

7.2.1.2  秋元他法[14]

基本的な手法としては細矢法と同様であるが、細矢法が自己相関特性ρ(t)を表す指数関 数の係数ηとして固定値0.247を用いることとしているのに対し、M分布に従う2種類の 積分時間降雨強度(例えば、10 分間及び 1 時間降雨強度)の確率分布の標準偏差が得ら れれば、式(7-2)及び(7-3)を用い、いずれの積分時間降雨強度からも同一値のσM1mが得ら れ、また、その場合のηは等しいものとして、地点ごとのηを求めることができ、得られ たηを用いて、M分布に従う1分間降雨強度の確率分布の標準偏差を、地点ごとに得るこ とを提案している。

7.2.2  既存の変換手法の変換精度

細矢法は、先に示したように、自己相関特性ρ(t)を表す指数関数の係数ηとして固定

値0.247を用いることとしているが、雨の降り方は地域によって異なり、自己相関特性も

一様ではないと考えられ、これが変換精度に影響を与える可能性が考えられる。また、細 矢法、秋元他法に共通するものとして、確率分布を M 分布で表す場合の近似精度につい ても、変換精度に影響を与える可能性が考えられる。7.1 節に示した、1 年以上の期間に 対して解析可能なAMeDASの1分間、10分間及び1時間降水量データが得られた全国136 地点における最長6 年分のデータを用い、単年及び複数年、計617のサンプルに対して、

上記、細矢法、秋元他法を適用し、変換精度について検討を行った。

7.2.2.1  細矢法

まず、全国136地点における10分間及び1時間降水量データからCDFを求めたもの、

各617サンプルに対し、M分布近似を行い、M分布パラメータu、pを求め、さらに、u、

p から平均値、標準偏差を求めた(式(2-9)及び(2-10))。得られた平均値、標準偏差から、

細矢法に基づき、1 分間降雨強度の平均値、標準偏差を求め(式(7-1)〜(7-3))、続いて、

これらからM分布パラメータを求め(式(2-11)及び(2-12))、M分布により与えられる1分 間降雨強度CDFを得た。また、同地点、同年の1 分間降水量データに対し乱数補正秒単 位均し分配処理を施して得た1分間降雨強度CDF、617サンプルに対し、M分布近似を行 い、M分布で表される1分間降雨強度CDFを得た。

図7-1に、標準的ケースとして、名古屋の複数年(1997〜2002年)のケースについて、

1分間降水量データから求めた1分間降雨強度CDF及びそのM分布近似により得られた CDFと、10分間及び1時間降水量データから細矢法に基づき得られた1分間降雨強度CDF

を比較したものを示す。

図7-1 10 分間・1 時間降水量データから細矢法を用いて得られた 1 分間降雨強度 CDF と 1

分間降水量データから得られた1分間降雨強度CDF及びそのM分布近似の関係

[名古屋 (1997〜2002年)の例]

また、図 7-2 に、全国の 617 サンプルについて、1 分間降水量データから得られた M 分布近似後の1分間降雨強度CDFに対する、10分間及び1時間降水量データから細矢法 に基づき得られた1分間降雨強度CDFの誤差を、前者の累積確率0.01〜0.0001%の範囲に おいて、累積確率の対数値の RMSE の形で求め、度数分布として示した。累積確率 0.01

〜0.0001%の範囲としたのは、回線設計等における品質目標設定などで対象となる可能性 の高い範囲を想定したものである。なお、度数分布は横軸の各0.1幅に含まれる頻度(厳 密には、各 0.1 幅の小さい側の値以上、大きい側の値未満 に含まれる頻度)を示してい る。ちなみに、図 7-1 の名古屋の例の場合のRMSE は、10分間降水量データからの変換

の場合は0.341、1時間降水量データからの変換の場合は0.592である。

10

‑5

0.0001 0.001 0.01 0.1 1 10 100

0 50 100 150 200

1分間降水量データ→1分間降雨強度CDF 上記CDFのM分布近似

10分間降水量データ→1分間降雨強度CDF:細矢法 1時間降水量データ→1分間降雨強度CDF:細矢法

1分間降雨強度 [mm/h]

図7-2 1分間降水量データから得られた1分間降雨強度CDF(M分布近似後)に対する10分 間・1時間降水量データから細矢法を用いて得られた同CDFの誤差

(全国136地点617サンプル/0.01〜0.0001%における累積確率の対数値のRMSE)

図7-2 の横軸は、累積確率の対数値のRMSE を示しているが、誤差の大きさが直感的 にわかりにくいため、この値が累積確率を対数目盛で表した場合にどのようになるかを、

図5-3と同様な考え方で、示したものが図7-3である。

図7-3  累積確率の対数値のRMSEの大きさをわかりやすく示した例

より長期間のデータに基づく降雨減衰確率に関する検討を可能とするには、1時間降水 量データを用いた 1 分間降雨強度の確率分布の精度良い推定を可能とすることが必須で ある。しかしながら、図7-3 を参照しつつ図7-2を見た場合、1 時間降水量データからの 変換における RMSE には大きい値が多数含まれ、改善が必要と考えられた。自然の振る 舞いである降雨の確率分布の近似が処理のベースとなっており、近似誤差に伴う変換誤差 は避けられないと考えられたが、誤差をどこまで追い込めるかを予見することは困難であ

0 50 100 150 200

0 0.5 1 1.5 2

10分間降水量データ→1分間降雨強度CDF:細矢法

1時間降水量データ→1分間降雨強度CDF:細矢法