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第4章  気象庁降水量データから 1 分間降雨強度 CDF を精度良く 得る手法  −1 分間降水量データから−

秒単位 0. 5mm カウント 0.0001

0.001 0.01 0.1 1 10 100

0 50 100 150 200 250

1分間降雨強度 [mm/h]

       

1 分間降水量相当 CDF          分単位均し分配処理 

        秒単位均し分配処理(パルスが均等分布)

       

降雨強度計 CDF

 

×

具体的には、毎分 1 パルスが発生した場合の例であり、時々刻々の秒単位の降雨量の 変化(0.0083mmの1 秒間ごとのカウント数に0.0083mmを乗じたものを3 次元スプライ ン補間して示した)とともに、分単位で 0.5mm を求め、均等分布でパルスを配置(この 例の場合は、各 1 分の中央にパルスを配置)した場合と、秒単位で 0.5mmを求めパルス を配置した場合を、比較する形で示している。この例の場合、分単位で 0.5mm を求め、

均等分布でパルスを配置したものは、パルス間隔は全て同じであるのに対し、秒単位で求

められた 0.5mm パルスの時間間隔はそれぞれ異なる。このため、後者の場合は、秒単位

で均した後に1分間ごとにまとめた降雨量はそれぞれ異なった値を示すのに対し、前者の 場合のそれは、全て同一値を示すこととなり、この例のような場合、前者では均し効果は 得られない。

このように、秒単位均し分配処理を用いるとしても、0.5mm パルスの秒位置を均等分 布として与えるという方法では、1 分間降雨強度 CDF を精度良く得るには、まだ十分で はないことがわかった。これを改善するには、上述の隣接する時刻(分刻み)間のパルス の位置関係が特定の条件に絞られることを避けることが必要であり、そのためには、より 実際の降雨に近い形でパルスの秒位置を与えることが必要であると考えられた。次の節で は、この観点で考えられたパルス位置を一様乱数を用いて与える秒単位均し分配処理につ いて示す。

4.2.2.2  1分間内のパルスの分布がランダムであるとした場合

前節に示した課題を克服するために、パルスが発生した任意の 1 分間におけるパルス 位置を一様乱数を用いて与えるという方法が、時々刻々変化する降雨に対して、1分間ス ケールでの降雨強度の揺らぎを統計的に扱う一つの候補として考えられた。自然界の現象 である各降雨イベントにおいて、いつ降り始めて、どのような強弱の変動で、どの程度継 続するかなどは、それぞれ独立な事象であり、任意の 1 分間内における 0.5mmをカウン トするパルスの発生タイミングはランダムとなる、と仮定したのである。

具体的には、0.5mm パルスが発生した時刻(分刻み)ごとにパルス発生位置を秒単位 でランダムに与え、複数分をまたがって溜まった 0.5mm について、各時刻(分刻み)ご との経過した秒数の割合に応じて 0.5mm を分配するということになるが、実際の処理で は計算を容易にするため、一様乱数を用いて先行するパルスが発生した時刻(分刻み)へ の降雨量の分配量を直接決定した後に補間する、という方法を用いた。図4-6は処理のイ メージを示したものである。

図4-6  乱数補正を用いた秒単位均し分配処理のイメージ図

以下に、図4-6に示した秒単位均し分配処理の考え方を簡単に示す。

− 図4-6は均し分配処理の開始時点、即ち降雨量0の時点から終了時点までを示している。

太線矢印は、瞬間瞬間の累積降雨量を示し、0.5mm パルスが発生した時刻(分刻み)

のみに置かれている。

太線矢印の上にある細線白抜き矢印は、後続する太線矢印がある時刻(分刻み)、即ち

0.5mm パルスが発生した時刻(分刻み)からの分配された降雨量を示し、後続が存在

しない最後の太線矢印には分配が無いため、細線白抜き矢印も無い。

なお、太線矢印の前後にある太い破線は、その部分に太線矢印、即ち0.5mmパルスが 発生した時刻(分刻み)があることを略記している。

− 太線矢印は、0.5mm パルスが発生した時刻(分刻み)において、その直前までの累積 降雨量に当該時刻(分刻み)においてカウントされた降雨量を加算した累積降雨量を 示している。当該時刻(分刻み)でカウントされた降雨量のうち最初の1パルス分0.5mm が、先行する0.5mmパルスが発生した時刻(分刻み)内の最後のパルス発生時点(秒 刻み)以降、複数分をまたがって溜まった降雨量であるため、0.5mm の一部を、先行

する0.5mm パルスが発生した時刻(分刻み)に分配する。具体的には、0.5mmをパル

ス間隔(パルス間隔が最大均し時間を越える場合は最大均し時間を用いる)で除した 値が先行する時刻(分刻み)でとりえる最大値とし、これに一様乱数を係数として乗 じて加算することとし、次式のように与える。

. .

' Rand

t 5 R 0

Ri1 i 1 * + D

=

-- (4-1)

累積雨量 [mm]

tstart

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ti-1 ti ti+1 tend

Ri-1

Ri

Ri+1

時刻(分刻み)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ti−ti-1(ti−ti-1≦td-maxの場合)

td-max (ti−ti-1>td-maxの場合)

ti-1、ti:0.5mmパルスが発生したi-1番目及びi番目の時刻(分刻み)

td-max : 最大均し時間[分]

Ri-1 : i-1 番目の 0.5mm パルスが発生した時刻(分刻み)の均し分配される前の 累積降雨量[mm]

R’i-1 i-1番目の0.5mmパルスが発生した時刻(分刻み)の均し分配された後の

累積降雨量[mm]

Rand.: 0〜1の一様乱数

− このようにして修正した各パルス点での累積降雨量を秒単位で補間した後、各時刻(分 刻み)の差分をとって1分間降雨強度を求める。なお、パルス間隔が最大均し時間以上 ある部分については、後続パルスから最大均し時間分遡った時点と先行するパルスと の間は、累積降雨量は変化させない。

均し分配処理により、最後の0.5mmパルスが発生した時刻(分刻み)より前の時刻(分刻 み)においては、累積降雨量に正のバイアスが生じるように理解されることが想定され る。しかしながら、そのような場合であっても、考察の対象としている 1 分間降雨強 度は累積降雨量の差分であり、均し分配が一様分布に基づくものである限り、同降雨 強度に影響を及ぼすこととはならない。

これは、一様乱数を用いた補正を行ってパルスの秒位置を与え、パルス間隔が長すぎ る場合に雨の仮想の降り始めを最大均し時間という条件で与え、その上で先に野本他が示 した、単調増加保証補間による降雨強度算出法[23]を適用したものと考えることができる。

各パルス間の補間には、累積降雨の単調増加性を維持しつつ滑らかな補間を行えるよう、

区分的 3 次 Hermite 多項式補間(以下、PCHIP:Piecewise Cubic Hermite Interpolating

Polynomialという)を用いている[23]。なお、先には説明を略したが、同一条件での比較と

なるよう、図4-3及び図4-4に示した処理においてもPCHIPを用いた補間を行っている。

1 分間降水量の各パルス位置を秒単位で与えるような乱数パターンは無数と言ってよ いほどのパターンが得られるが、無作為に選んだ1つのパターンを用いて実際の1分間降 雨強度の変化を忠実に再現できるというものではないことは容易に想像できる。そこで複 数の乱数パターンを用いて秒単位均し分配処理を行ったものの平均をとることが考えら れた。降雨強度計実測データから擬似 1 分間降水量データを作成し、最大均し時間を 60 分として、10個と100個の乱数パターンを用いて秒単位均し分配処理を行い、単位をmm/h に変換して CDFを求め、さらにその平均値カーブを求めたもの(同一累積確率値におけ る1分間降雨強度の平均をとったもの)を、図4-7(a)〜(c)に示す。

ただし、

Δt=

(a)  10個の乱数を用いる場合

(b)  100個の乱数を用いる場合

(c)  10及び100個の乱数使用の場合の平均値カーブの比較

0 50 100 150 200 250 300

0.0001 0.001 0.01 0.1 1 10 100

1分間降雨強度 [mm/h]

10 個の乱数を用いた秒単位均し分配処理後の CDF の平均  10 個の乱数を用いた秒単位均し分配処理後の CDF の標準偏差

0 50 100 150 200 250 300

0.0001 0.001 0.01 0.1 1 10 100

1分間降雨強度 [mm/h]

100 個の乱数を用いた秒単位均し分配処理後の CDF の平均  100 個の乱数を用いた秒単位均し分配処理後の CDF の標準偏差

0 50 100 150 200 250

0.0001 0.001 0.01 0.1 1 10 100

10個の乱数を使用 100個の乱数を使用

1分間降雨強度 [mm/h]

図4-7  秒単位均し分配処理(10及び100個の乱数使用)後CDFの平均値カーブと標準偏差

図4-7(a)及び(b)には、10個と100 個の乱数パターンを用いて秒単位均し分配処理を行 い求めたCDFの平均値カーブに対し、各CDFのバラツキ度合いがわかるよう、適当な間 隔で平均値カーブを挟んで降雨強度方向で求めた標準偏差σの幅(±1σ)を示している。

特定の乱数パターンを用いた秒単位均し分配処理によって得られる1分間降雨強度 CDF が、偶然、降雨強度計 CDF に近いものとなることも考えられるが、反対に起こりえるバ ラツキの範囲の中で、降雨強度計 CDF とは平均値カーブを挟んで大きく離れて位置する ような関係になるケースも考えられる。これに対し、平均値カーブであればバラツキの中 央に位置するため、降雨強度計 CDF との誤差が大きくなりすぎるのを抑えることができ る。したがって、乱数パターンによる偏りを避けるという意味で、平均値カーブを用いる ことが望ましいと考えられる。

図4-7(c)には、10 個の乱数パターンを用いる場合と100個の乱数パターンを用いる場

合について、平均値カーブの比較を示しているが、両者は極めて良い一致を示している。

したがって、乱数パターンの数については、演算量を抑えるという点を考慮すると、10 個の乱数パターンを用いることでよいと考えられる。

図4-8に、図4-7(a)で示した、擬似1分間降水量データに対し10個の乱数パターンを

用いて秒単位均し分配処理を行った後に CDF の平均値カーブを求めたものと、降雨強度 計CDFとを、比較する形で示す。

図4-8  秒単位均し分配処理(10個の乱数使用)後CDFの平均値カーブと降雨強度計CDF

0.0001 0.001 0.01 0.1 1 10 100

0 50 100 150 200 250

1分間降雨強度 [mm/h]

       

1 分間降水量相当 CDF 

        10 個の乱数を用いた秒単位均し分配処理後の CDF の平均

       

降雨強度計 CDF

 

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