第3.3節において,T-S間距離を短縮しRFプラズマを用いることで,比抵抗の面内分 布を均一にし,値を低減できることを確認した.そこで,本節では RF プラズマがエロ ージョン上の膜におよぼす効果について検討を行った.RF電力:0および300 W,RH2 = 0.1,T-S間距離:70mmで作製したGZO膜の比抵抗の面内分布を図 3.12に示す.RFプ ラズマを用いない場合,比抵抗はエロージョン部分で 1.8~4.5×10-1 Ω・cm,中央部分は
2.0~4.5×10-2 Ω・cmであり,比抵抗の差は約10倍である.RFプラズマを用いた場合,
比抵抗はエロージョン部分,中央部分それぞれ0.9~1.1×10-2 Ω・cm, 0.8~1.4×10-2 Ω・cm と差はほとんどなく,分布はT-S間距離:120 mmと同様に改善される.図 3.13に膜の Hall 移動度,およびキャリア密度の分布を示す.また,エロージョン,および中央部分 における,RF有無でのHall移動度,キャリア密度,および比抵抗の値を表 3.5に示す.
RF電力:0Wの場合,エロージョン部分に対する中央部分のHall移動度,およびキャリ ア密度の比は,それぞれ0.25,および0.5である.一方,RF電力:300Wにおけるエロ ージョン部分に対する中央部分のHall移動度,キャリア密度の比は両者とも1.0である.
Hall移動度およびキャリア密度の分布においても,RFプラズマアシストによりほぼ均一 になっていることがわかる.
図 3.12:T-S間距離:70 mm,RH2= 0.1で作製したGZO膜の比抵抗の面内分布
−50 0 50
10−3 10−2 10−1 100 101
Resistivityρ (Ω·cm)
Measurement Position (mm)
without RF Assist with RF assist (300W)
図 3.13:T-S間距離:70 mm,RH2= 0.1で作製したGZO膜のHall移動度およびキャリア密度の 面内分布
表 3.5:T-S間距離70 mm,RH2= 0.1で作製したGZO膜の電気特性
Position RF Power (W)
Resistivity (Ω・cm)
Hall Mobility (cm2/Vs)
Carrier Concentration (cm-3)
Center 0 2.0~4.5×10-2 2.3~4.5 4.2~8.2×10-19
300 0.8~1.4×10-2 3.6~4.9 1.2~1.7×10-20
Erosion 0 1.8~4.5×10-1 0.8~1.2 1.6~4.2×10-19
300 0.9~1.1×10-2 3.6~4.6 1.2~1.7×10-20
RFプラズマをT-S間に発生させることで,エロージョン部分の比抵抗値が大幅に改善 された.この理由として,エロージョン部分のHall移動度,キャリア密度の両方が増加 していることを示した.
そこで,Hall移動度の増加について詳細な検討を行うため,図 3.12および図 3.13で 得られた膜の電気特性が改善されたエロージョン部分における,RFプラズマ有無での結
−50 0 50
10−2 10−1 100 101
1018 1020 1022
Hall Mobilityµ (cm2 /V·s)
Measurement Position (mm)
Carrier Concentration n (cm−3 )
n µ
without RF Assist with RF Assist (300W)
ョン部分および(b)基板中央部分のXRDパターンを図 3.14に示す.基板中央部における
ZnO(0002)の回折強度はRFプラズマを用いることで増加するが,半値幅に大きな変化は
見られない.次に,エロージョン部分の XRD パターンを比較すると,基板中央部分と 同様,RFプラズマを用いることでピーク強度が増加する.エロージョン部分のZnO(0002) 回折ピークの半値幅はRF電力:0 Wの時2.36°,RF電力:300 Wの時1.34°であり,RF プラズマを用いることで半値幅が減少する.
エロージョン部分のGZO膜表面および断面の観察を行った.図 3.15に(a)RF電力:0 W で成膜を行った膜,および(b)RF電力:300 W で作製した膜の表面SEM像を示す.
RFプラズマアシストの有無による膜の表面を比較すると,膜の結晶粒径が大きく異なっ
ている.RF電力:0 Wの場合,10~20 nm程度の小粒径結晶の中に50 nm程度の粒径の
ものが散在している.一方,RF電力:300 Wで作製した膜の結晶粒径は大部分が80~
100 nmであり,その中に20 nm程度のものが存在している.膜の結晶粒界では,不純物
が偏析し粒界散乱により移動度が低下する.結晶粒径の増加は,単位面積当りの粒界の 数を減少する結果となり,移動度が増加したものと考えている.
さらに詳細な検討を行うためRF電力:0,300 Wで作製したGZO膜におけるエロー ジョン部分の断面 TEM 像,および膜表面近傍の電子線回折像を図 3.16 に示す.(a)RF 電力:0 Wで作製した膜と(b)RF電力:300 Wで作製した膜の断面TEM像より,両方と も結晶は基板との界面から柱状に成長していることが確認できる.しかし,結晶粒の大 きさ(柱の幅)を比較すると,表面の SEM 観察を行った結果とほぼ一致し,膜の断面 全てにおいて結晶粒の大きさが異なっていることがわかる.また,結晶粒界はRF電力:
300 Wで作製した膜の方が明瞭である.さらに両者のGZO膜表面近傍の電子線回折像を
比較すると, (c)RF電力:0 Wでは回折パターンはリング状であり配向性が悪いことが わかる.結晶面のスポットとしてあらわれているものは,ZnO(0002)の他,Out-of-Plane でのXRDパターンでは見られなかったZnO(101),ZnO(100)が見られることから,完全
に ZnO(0002),すなわち c 軸には配向しておらず,様々な配向が混在していることがわ
かる.一方,(d)RF電力:300 Wで作製した膜の回折像は,RF電力:0 Wの場合と比較
し,ZnO(0002)のスポットが明瞭でありリング状には見られない.このとき,RF電力:0
Wで作製した膜に見られた他面による回折スポットはほとんど見られない.以上の結果 および XRDパターンの結果を考慮すると,RFプラズマを用いることで,c軸に強く配 向した膜が得られることが確認された.キャリア密度とのRF電力関係は次節で論じる.
(a)
(b)
図 3.14 :T-S間距離70mm,RF電力300W,RH2= 0.1で作製したGZO膜のXRDパターン:(a) エロージョン部,(b)中央部
20 40 60 80
2θ (deg.)
Intensity (arb. units)
ZnO(0002) without RF with RF (300W)
2.36deg.
1.34deg.FWHM
20 40 60 80
2θ (deg.)
Intensity (arb. units)
ZnO(0002) without RF with RF (300W)
FWHM 1.20 deg.
1.45 deg.
図 3.15:RH2= 0.1において, (a) ロージョン部分の表面SEM像
(a)
(b)
(a)RF電力:0 Wおよび(b)RF電力:300 Wで作製した 像
で作製したGZO膜のエ
(a)
(c) 図 3.16:RH2= 0.1で作製したGZO
断面TEM像,(b) RF電力:300 W 電力:300 Wでの電子線回折像
(002
(00-2)
(100)
(
(101)
(10-1)
(002
(00-2)
(100)
(
(101)
(10-1)
(b)
(d) GZO膜の断面TEM像および電子線回折像:(a) RF
Wでの断面TEM像,(c) RF電力:0 Wでの電子線回折像,
002)
(-100)
002)
(-100)
(00-( 100)
( 101 )
( 10-1 )
(a) RF電力:0 Wでの での電子線回折像,(d) RF