4.4 基板依存性
4.4.1 PET フィルムからの水分の影響
図 4.11:RF電力0WでガラスおよびPET基板上に作製したGZO膜の比抵抗分布
図 4.12:RH2= 0.2 ,RF電力0Wで作製したガラスおよびPET上に作製したGZO膜のHall移動 度およびキャリア密度分布
−50 0 50
10
−310
−210
−110
010
110
2Mesurement Position (mm)
R e s is ti v it y ( Ω − c m )
10% − Glass 10% − PET 20% − Glass 20% − PET H2 Gas Ratio − Base
−50 0 50
0 5 10
10
1910
2010
21Mesurement Position (mm)
H a ll M o b il it y µ (c m
2/V s ) C a rr ie r C o n c e n tr a ti o n n ( c m
−3)
µ n
Glass PET n
µ
基板の違いによる移動度の差について,その原因を検討するため,GZO膜のエロージ ョン部のXRD測定を行った.RF電力:0 W,RH2 = 0.2作製したGZO膜のXRDパター
ンを図 4.13に示す.ガラス上,PETフィルム上のGZO膜の両方にZnO(0002)の回折ピ
ークが見られる.36°および 44°付近に見られるピークは試料ホルダーに用いた Al のも のである.PET上 GZO 膜の回折強度はガラス上のものと比較し低い.PET フィルム上 の膜のピークの強度が小さくなった原因は,ガラスと比較し表面平滑性が悪く,PETフ ィルムは配向性を持っているため,結晶の成長が阻害されのではないかと考えている.
図 4.13:RF電力0W,RH2= 0.2作製したGZO膜のエロージョン部分におけるXRDパターン
30 40 50
2θ (deg.)
In te n s it y ( a rb . u n it s )
ZnO(0002)
Al(Holder)
FWHM: 1.35 deg.
FWHM: 1.15 deg.
on PET
on Glass
PETフィルム上にRFプラズマを用いずに作製したGZOにおいて,キャリア密度分布 の均一性がガラスと比較して向上していた.GZO膜のキャリア密度はドーパントによる ものと酸素空孔によるものが主である.今回の実験条件では,Gaの添加量を変化させて いないのでドーパント量の変化は考えにくい.よって,得られたキャリア密度の増加は,
酸素空孔が増加したためではないかと考えた.酸素空孔の量は成膜中の雰囲気に影響さ れ,雰囲気中の酸素量が減少することで増加すると考えられる.そこでRF電力:0 W,
RH2 = 0.2の条件で,PETフィルム基板上,およびガラス基板上にGZO膜を作製した時
の雰囲気を4重極質量分析計を備えたプロセスガスモニターで測定した.成膜開始時か らの分圧の変化量を(a)質量数(M/Z)18,および(b)32について測定した結果を図 4.14に示
す.M/Z = 18,および32は,それぞれ水,および酸素分子を想定している.図 4.14(a)
より,ガラス,PETフィルムともに成膜開始(0sec)後から徐々に分圧が増加している.両 者を比較すると,PETフィルム基板上の方がガラス基板より圧力の変化量が大きい.図
4.14(b)において,酸素分子の分圧はPETフィルム,ガラス基板の両方ともほとんど変化
が見られない.これより,PET フィルム基板上に GZO 膜を作製する場合,ガラスと比 較して水分子と考えられるM/Z = 18の量が増加し,酸素量はほとんど変化がないことが わかった.ガラスと比較しPETフィルムは吸湿量が大きく,基板が加熱されることで基 板中存在する水が放出される.両者の成膜中の水分圧の差は,PETフィルム中にあった 水分子が成膜過程において加熱されることにより放出されたものであると考えられる.
RFプラズマを用いず作製したPETフィルム基板上GZO膜でのエロージョン上におけ る比抵抗の減少は,PET フィルム基板から放出された水が関係していると考えられる.
水はプラズマにより2つのH原子と1つのO原子,もしくはH原子とOH分子に分解 されると考えられる.水が分解されると,酸素と比較し水素の量が2倍生成されチャン バー内の雰囲気が還元雰囲気になること,もしくは,Hと OH に分解された場合は OH の酸化作用により酸化雰囲気になると考えられる.
PETフィルム基板の膜における,水の影響についてガラス基板上での確認実験を行っ た.図 4.15に示すとおり,基板近傍の導入ガスとしてH2O中にてバブリングを行った Arガスをガラス基板上に供給しながらGZO膜を作製した.この時のシート抵抗分布を
図 4.16に示す.RFプラズマを用いない場合,水の導入量の増加と共に比抵抗は増加す
る.一方,RFプラズマを用いた場合,水の導入量と共にシート抵抗は減少する.この結 果から,水の導入は RF プラズマを用いない場合に酸化作用として働き,逆にプラズマ を用いた場合は還元作用に働く傾向があると言える.PETフィルム上のGZO膜の場合,
水はPET基板から出たのちプラズマで分解され,還元反応に寄与しているのではないか
と考えられる.
(a)
(b)
図 4.14:PET上およびガラス基板上へのGZO膜作製時におけるチャンバー内の分圧測定結果:
(a)M/Z= 18,(b)M/Z= 32
0 50 100 150 200
0.0 5.0 10.0 [1×10−4]
Depositon Time (sec) Partial Pressure Variation (M/Z = 18) (Pa)
PET Glass Substrate
0 50 100 150 200
0.0 5.0 10.0 [1×10−4]
Depositon Time (sec) Partial Pressure Variation (M/Z = 32) (Pa)
PET Glass Substrate
図 4.15:チャンバー内への水の導入方法
図 4.16:水を導入してガラス基板に作製したGZO膜のシート抵抗分布
Ar Ar
Ar H
2O+Ar
Substrate
Target H
2O
−50 0 50
10
210
410
610
8Measurement Position (mm) S h e e r R e si st a n ce ( Ω /sq .)
Ar onlyAr−H2O:30 Ar−H2O:50
0 300
RF Power (W) Reactive Gas Flow (sccm)