このとき,(yi,y˜i)から(xi,x˜i)への座標変換は次のJacobianを持つ:
∂(x,x)˜
∂(y,y)˜ =
∂xi
∂yj
∂xi
∂˜yj
∂˜xi
∂yj
∂˜xi
∂˜yj
!
=
δij πij 0 δij
. (6.125)
この座標変換は,元のΘCの正準関数αp = 12πij(x)pipjによる変形(ツイスト)と見ること が出来る.変形前のホモロジカル関数をΘ′C =ξiqi + ˜ξipiと書き直せば,αpによる正準変換 はホモロジカル関数を次のように変換する:
ΘC =eαpΘ′C = ξiqi+ ˜ξipi+πijξipj − 1 2
∂πjk
∂xi (x)qipjpk. (6.126) この変形を座標変換としてみれば,次の座標変換としてみることが出来る:
ηi = ξi− 1 2
∂πjk
∂xi (x)pjpk, (6.127)
˜
ηi = ξ˜i−πijξj. (6.128)
(6.128)第二項が存在するため,(6.125)中(1,2)成分にポアソン構造πが入ったと理解出来る.
切断条件は次のように変形される:
ξ˜i
ξi− 1 2
∂πjk
∂xi (x)pjpk
= 0. (6.129)
この切断条件を満たすようにξ˜i = 0を満たす部分空間を取る.このために,ξ˜iを含むPoisson 括弧も全て0になると要請すると,∂˜•= 0で定義される物理的な部分多様体に制限すること に対応する.以下ではx˜ = 0に制限する場合を考える.そして,物理的な部分空間に制限さ れたホモロジカル関数は標準的Courant algebroidとPoisson Courant algebroidのそれぞれの ホモロジカル関数の和となる:
ΘC|x=0˜ = ΘH=0+ ΘR=0. (6.130) 部分空間上ではΘCについてのマスター方程式から{ΘH=0,ΘR=0}= 0が分かるため,ΘCは1 つのdouble complexを定義している.実際にΘH=0+ ΘR=0はT M⊕T∗M上のLie bialgebroid を定義する[30].HとRが0でない場合はproto-Lie bialgebroidを定義することが知られて いる[27, 31].もし完全Courant algebroid[19]が構成可能ならば,古典マスター方程式の解は 2つのフラックスの関係式を与えることになる.
正準変換により切断条件がη˜i = 0 から ξ˜i = 0と変わったため,一般に配位空間MがMc内 に直積M×M˜ として埋め込まれているという保証はない.ただ,MはMc内で非自明な部分 多様体をなしている.
最後にホモロジカル関数(6.119)にB変形とβ変形を施した場合の具体形を示す:
e−δBe−δβΘC = (ηi−Bmiη˜m)qi+ (˜ηi−ηmβmi+ ˜ηnBnmβmi)pi + 1
2
h−Bin∂˜iBrs+∂nBrs i
qnqrqs +
1 2
∂˜iBmn+ (Blm∂˜lBns−∂mBns+ 1
2Bls∂˜lBmn− 1
2∂sBmn)βsi
piqmqn +
1
2∂iβhk− 1
2Bli∂˜lβhk+ ˜∂hBinβnk
− 1 2
h−Bli∂˜lBrs+∂iBrs−Bls∂˜lBir+∂sBir+Blr∂˜lBis−∂rBis i
βshβrk
qiphpk +
1 2
∂˜iβhk− 1
4∂lβihβlk− 1
4βli∂lβhk+1
4Bln∂˜lβihβnk + 1
4Blnβni∂˜lβhk− 1 2
∂˜iBmnβnhβmk +1
3!(−Bln∂˜lBrs+∂nBrs−Bls∂˜lBnr+∂sBnr +Blr∂˜lBns−∂rBns)βsiβrhβnk
piphpk, (6.131)
ただし,β= 12βij(y,y)p˜ ipj及びB = 12Bij(y,y)q˜ iqjは元の座標(y,y)˜ に対する関数C∞(M×M˜)
である.(6.131)には全ての3階のフラックスH, F, Q, Rがポテンシャルの形で同時に入って
いる.
• (6.131)にてβij = 0かつ超重力枠(˜ηi = ˜∂i = 0)を取り,以下の読み替え:
Hijk = 1
2∂[iBjk] (6.132)
を用いると,Hフラックスにより変形された標準的Courant algebroidのホモロジカル 関数ΘH(5.84)に一致する.
• (6.131)にてBij = 0かつ超重力枠の双対(ηi =∂i = 0)を取り,以下の読み替え:
Rijk = 1 2
∂˜[iβjk] (6.133)
を用いると,双対な対応物が得られる.
7 位相的膜理論の構成
QP多様体によって標的空間を取り扱うことにより,標的空間上の位相的シグマ模型をAKSZ と呼ばれる手法を用いて構成することが出来る.AKSZでは次数nの場合はn+ 1次元の世 界体積を持つ位相的シグマ模型となる.本論文では次数2のQP 多様体を考えるため,3次元 世界体積すなわち3次元位相的膜理論となる.
特に,標的空間にPoisson Courant algebroidの構造を対称性として持つ位相的膜理論の構 成方を示す.標準的Courant algebroidに基づく位相的膜理論の構成方法は[32, 33]にて示さ れているが,これに倣いPoisson Courant algebroidに基づく位相的膜理論を構成する.この 膜理論は境界のある3次元世界体積理論であり,3ベクトル場であるRフラックスの入った 模型となる.初めに,AKSZシグマ模型[34, 35, 36]について確認する.
7.1 AKSZ シグマ模型
世界体積に対応する次数付可微分多様体X,X 上の外微分D,非退化積分測度µの三つ組 み(X, D, µ)を考える.標的空間に対応する(M, ω, Q)をQP 多様体 とする.X からMへの 滑らかな写像全体の空間をMap(X,M)とする.
Map(X,M) = (
f
X → M z 7→f(z)
)
(7.134) これはすなわち,標的空間Mに埋め込まれた世界体積X 上のシグマ模型を考えていること に相当する.
Map(X,M)上の基底 標的空間Mの局所座標をZiとする.Ziによって埋め込み写像とし て超場Zi(z)が定まる.超場Zi(z)は写像空間Map(X,M)上のの局所基底をなす.
Map(X,M)上のベクトル場 M上のベクトル場X =Xi(Z)∂Z−→∂i は写像空間Map(X,M)上 のベクトル場:
X = Z
X
µ(−1)d|Xi|Xi(Z(z))
−
→δ
δZi(z) (7.135)
を誘導する.
X上の微分同相写像とM上の微分同相写像の直積Diff(X)×Diff(M)は写像空間Map(X,M) に対して自然に作用するので,X 上の外微分DとM上のベクトル場QはそれぞれDˆ とQˇ
をMap(X,M)上に誘導する.具体的に書き下すと,世界体積上の座標z ∈ X, 埋め込み写像 f ∈Map(X,M)に対して
Dˆ = Z
X
µ(z)θµ(∂µZi) δ
δZi(z) (7.136)
(7.137) また,Q={Θ,−}=Qi ∂∂Zi と成分表示すると
Qˇ = Z
X
µ(z)Qi(Z) δ
δZi(z) (7.138)
である.
以下では世界体積X の標的空間Mへの埋め込み写像Zi(z)に関連し,必要となる写像を 定義する.
7.1.1 転入写像µ∗ev∗
本節では以下で重要となる写像を定義し,それらの組み合わせにより転入写像µ∗ev∗を定 義する.
評価写像ev 任意のz ∈ X 及びf ∈Map(X,M)に対して,評価写像 ev: X ×Map(X,M)→Mを次で定義する:
ev:
X ×Map(X,M) → M (z, f) 7→ f(z)
(7.139)
チェイン写像µ∗ 次数付微分形式ω,X 上のグラスマン積分R
Xµに対して,次数付微分形式 の空間に対するチェイン写像µ∗を以下で定義する:
µ∗ :
Ω•(X ×Map(X,M)) → Ω•(Map(X,M)) ω(z, f) 7→ (µ∗ω)(f) =R
Xµ(z)ω(z, f).
(7.140) ただし,µ(z)はn+ 1次元体積要素×n+ 1次元グラスマン積分測度である.これら二つの写 像から構成される合成写像µ∗ev∗は転入写像(transgression map)と呼ばれる:
µ∗ev∗ : Ω•(M)→Ω•(Map(X,M)) . (7.141)
例として,ホモロジカル関数Θ =ξiqiは転入写像µ∗ev∗により以下に移される:
µ∗ev∗Θ = µ∗ev∗ξiqi
= Z
X
µ(z)ξi(z)qi(z). (7.142)
また,次数n= 2の場合,写像空間Map(X,M)上のP 構造ωはM上のP 構造ω(3.40)を転 入写像で写すことで次のように定義される:
ω :=µ∗ev∗ω
= Z
X
µ(δxi∧δξi+δqi∧δpi). (7.143) ここで,δxi,δξi,δqi,δpiはΩ•(Map(X,M))の基底である.写像µ∗ev∗は元のM上のωの 性質を保つため,Map(X,M)上のωも非退化で閉形式である.このωから定まる写像空間 Map(X,M)上の次数付Poissonブラケットも同じ記号{−,−}で表記する.このMap(X,M) 上の次数付Poissonブラケット{−,−}は BV括弧{−,−}BV もしくは通常のPoisson括弧 {−,−}PBと等価であることを後に示す.
写像空間Map(X,M)上の内部積 写像空間上の微分形式Ω•(Map(X,M))が定義されたの で,対となる写像空間状の内部積を以下と定義する:
ιX = (−1)|X| Z
X
µ(z) (−1)d|Xa|Xi(Z(z))
−
→δ
δ(δZi(z)) . (7.144) 7.1.2 写像空間Map(X,M)上の次数付きシンプレクティック幾何学
本小節では転入写像µ∗ev∗によってM上の構造から引き起こされる写像空間Map(X,M) 上の構造を与える.これは写像空間Map(X,M)上に次数付きシンプレクティック幾何学を定 める.写像空間の元は超場とみることができ,次数付きシンプレクティック幾何学は超場で書 かれた場の理論のBV(Batalin-Vilkovisky)形式を与えていることが分かる.
次数nのQP 多様体M上のシンプレクティック形式ω = (−1)n|q|δqi∧δpiに対応する写像 空間Map(X,M)上のシンプレクティック形式ωは
ω= Z
X
µ(−1)(d−1)|q|δqi(z)∧δpi(z) (7.145)
と定義する.シンプレクティック形式ωの次数は|ω|=|µ|+ 1 +|qi|+ 1 +|pi|=−d+ 2 +n=
−d+ 2 +d−1 = 1である.ただしn=d−1である.ここで,写像空間上Ω•(Map(X,M)) の外微分δを以下で定義する:
δ =µ∗ev∗d= Z
X
µ(−1)d(|Zi|+1)(δZi)(z) δ
δZi(z). (7.146) 関数fに対する写像空間Map(X,M)上での外微分は
δf = Z
X
µ(−1)d(|Zi|+1)(δZi)(z) δf
δZi(z) (7.147)
となる.これより,シンプレクティック形式ωから写像空間Map(X,M)でのLiouville 1形 式ϑは
ω =−δϑ (7.148)
として定まる.写像空間Map(X,M)でのハミルトニアンベクトル場Xf は
ιXfω =−δf (7.149)
として定める.このシンプレクティック形式ωから得られる次数1のPoisson括弧は Batalin-Vilkovisky括弧(以後BV括弧と呼ぶ)[37, 38, 39]と呼ばれ,以下で与えられる:
{f, g}BV =Xfg . (7.150)
局所座標で計算すれば,以下の写像空間Map(X,M)上のBV括弧の局所座標表示を得る.
{f, g}BV = (−1)d−|q| Z
X
[f←− δ δqiµ
−
→δ g
δpi + (−1)d(1+|q|)f←− δ δpiµ
−
→δ g
δqi] (7.151) BV括弧は以下の性質を満たすことが分かる:
{f, g}BV =−(−1)(|f|+1)(|g|+1){g, f}BV
{f, gh}BV ={f, g}h+ (−1)(|f|+1)|g|g{f, h}BV
{f,{g, h}BV}BV ={{f, g}BV, h}BV + (−1)(|f|+1)(|g|+1){g,{f, h}BV}BV . 本節のポリベクトル場,微分形式,演算子について,次数を列挙しておく:
• ベクトル場:|X|=−d+|X|
• 内部積:|ιX|=−d+|X| −1 =|X| −1 (|δZi|=|Zi|+ 1)
• シンプレクティック形式:|ω|=−d+ 1 +|qi|+ 1 +|pi|= 1 (d =n+ 1)
• Poisson括弧:|{−,−}PB|=−(|ω| −2) =−|ω|+ 2 = 1
• 関数に対する全微分:|δf|=−d+ 1 +|f|+d= 1 +|f|
• ハミルトニアンベクトル場:|Xf|= 1 +|f|であり|ιXf|=|f| BFV形式d=nのとき
7.1.3 シグマ模型の作用
AKSZ構成では作用は写像空間Map(X,M)上のホモロジカル関数(Q構造)として与えら れる.作用SはLiouville1形式からなる部分と,標的空間Mのホモロジカル関数Θからなる 二つの部分で構成される:
S =S0+S1 (7.152)
S0 =ιDˆµ∗ev∗ϑ (7.153)
S1 =µ∗ev∗Θ (7.154)
ただし,M上のシンプレクティック形式ωから,Liouville1形式ϑはω =−δϑと与えられる.
例えば,Hフラックスにより変形されたCourant algebroidの場合はΘ = ΘHとして,以下 のシグマ模型の作用が得られる:
S =S0+S1 (7.155)
=ιDˆµ∗ev∗ϑ+µ∗ev∗ΘH (7.156)
= Z
X
µ
−ξidxi +pidqi+ξiqi+ 1
3!Hijk(x)qiqjqk
. (7.157)
この作用はCourantシグマ模型と呼ばれる.
このAKSZ構成法により定まるSが写像空間Map(X,M)上のホモロジカル関数であるこ とはS0, S1の定義及び各写像の性質より示すことが出来る.記号として書けば,ホモロジカ ル関数Sは古典マスター方程式を満たす:
{S, S}= 0, (7.158)
超多様体Mの時と同様に,次数1のホモロジカルベクトル場QはQ={S,−}として定義 する.古典マスター方程式よりQ2 = 0であり,Qは余境界作用素である.
上記の構成法により,写像空間Map(X,M)はQP 多様体 となり,この理論はAKSZシグ マ模型と呼ばれる.
以上のようにMap(T[1]X,M)上のQP 構造 は,全てのゴースト場と反場(antifield)を含む 位相的シグマ模型のBatalin-Vilkovisky形式に等しく,写像空間Map(T[1]X,M)上のPoisson 括弧はBV括弧{−,−}BV に等しくなる.
別の場合として,Xがn次元多様体の場合,写像Map(X,M)上のP 構造 は次数2のもの となる.
|ω|=−d+ (n+ 2) =−n+ (n+ 2) = 2 (7.159) この場合は写像空間Map(T[1]X,M)上のP 構造 はハミルトニアンBFV形式と等しく,写像 空間Map(T[1]X,M)上のPoisson括弧は通常の場の理論のPoisson括弧{−,−}P B と等しい.