7.4 AKSZ シグマ模型間の双対性
8.1.2 導来括弧による Poisson 括弧の導出
ただし,F, G∈Lb=Map(∂Σ,L)であり S1 =
Z
∂Σ
µ∂Σ(z) Θ(Z(z)) (8.190)
である.また,写像pr:M → Lを写像空間に引き上げた写像prb : Map(∂Σ,M)→Lbを用い た.この写像空間上のPoisson括弧は次数0である.
証明 境界∂Σはn−1次元多様体であるため,|S1|=|µ∗ev∗Θ|= (n−1) + (n+ 1) = 2であ る.写像空間M上のシンプレクティック形式ω = µ∗ev∗ωはゴースト数n−(n−1) = 1で あり,M上のPoisson括弧は次数−1である.従って,写像空間Lb上のPoisson括弧は次数 2−1−1 = 0である.
最も簡単なQ構造としてΘ =ξiqiを考えると,M上の導来括弧が(xi, pi, qi, ξi)の自分を含 む任意のペアの間に定義される.そのようにして定義された導来括弧は,一般に引数に対し て対象/反対称いずれの場合もありえる.Θの具体形から,非零の値を持ちうるのは明らかに (xi, pi)のペアだけである.そのようなM上の導来括弧をLϑ上に制限すると,以下の関係が 得られる:
{{xi,Θ}, xj}= 0, (8.194)
{{xi,Θ}, pj}=−{{pj,Θ}, xi}=δij (8.195)
{{pi,Θ}, pj}= 0 (8.196)
(8.215)の反対称性は|Θ|= 3,|pj|= 1である事から従う.これはpの次数が1である事を除い ては,T∗M上の標準的なPoisson括弧と同じ形になっている.
次にこれを写像空間に持ち上げることで,超場についてのPoisson括弧が定義出来ることを 見る.超多様体∂Σ=T[1]S1を考え,局所座標を(σ, θ)とする.標的空間Mの基底を転入写 像で持ち上げることで,写像空間Map(∂Σ,M)上の基底である超場が次のように得られる:
xi(σ, θ)∈Map(∂Σ, M) 次数0 (8.197)
qi(σ, θ)∈Map(∂Σ, Tx[1]M) 次数1 (8.198) ξi(σ, θ)∈Map(∂Σ, Tx∗[2]M) 次数2 (8.199) pi(σ, θ)∈Map(∂Σ, Tq∗[2]Tx[1]M) 次数1 (8.200) ここで,導来括弧を求めるためにS1を与える:
S1 =µ∗ev∗Θ (8.201)
= Z
∂Σ
µ∂Σ(z) Θ(Z(z)) (8.202)
= Z
∂Σ
dσdθ ξi(σ, θ)qi(σ, θ) (8.203) Lの局所座標(xi, pi)の転入写像はLbの局所座標そのものである:
b
pr∗xi =xi(σ, θ) (8.204)
b
pr∗pi =pi(σ, θ) (8.205)
(8.194)–(8.196)を写像空間に持ち上げることで,各基底超場に対する導来括弧を得られる.つ まり,(8.189)へ代入することで,次の境界Map(∂Σ,M)上のPoisson括弧を得る:
{{xi(σ, θ), S1},xj(σ′, θ′)}b
L ={xi(σ, θ),xj(σ′, θ′)}P B = 0, (8.206) {{xi(σ, θ), S1},pj(σ′, θ′)}b
L ={xi(σ, θ),pj(σ′, θ′)}P B =−δijδ(σ−σ′)δ(θ−θ′),(8.207) {{pi(σ, θ), S1},pj(σ′, θ′)}b
L ={pi(σ, θ),xj(σ′, θ′)}P B = 0 . (8.208) ただし,ラグランジュ部分多様体LbをLcϑ ={(xi,pi,qi,ξi)|ξi =qi = 0}にとる.このとき,ラ グランジュ部分多様体の定義よりωは零となり,同時にS1も零となる.このようにして,定 義8.2を用いて,境界上のPoisson括弧を定めることが出来た.この方法の良いところは,次 に見るように標的空間のフラックスをΘを変えることで,統一的に反映させることが出来る.
各超場を∂Σ=T[1]S1のグラスマン方向について局所座標θで級数展開すると以下となる:
Φ(n)(σ, θ) = Φ(n)(σ) + Φ(n−1)(σ)θ , (8.209) グラスマン座標であるため,級数展開はθの1次で止まる.nは超場Φの次数である.展開 後の成分場はθの次数,すなわち次数が1だけ下がったものを含む.超場x,pの次数はそれ ぞれ0,1であるため,それぞれの展開に物理的な場x(0)i(σ)とp(0)i (σ)が現れる.
物理的な基底についてのPoisson括弧は(8.206)–(8.208)を計算すると,最左辺はδ(θ−θ′) に比例するので,両辺のデルタ関数を落とせば以下を得る:
{xi(σ), xj(σ′)}P B = 0, (8.210) {xi(σ), pj(σ′)}P B = δijδ(σ−σ′), (8.211) {pi(σ), pj(σ′)}P B = 0 (8.212) これはハミルトン形式における境界上の位相的シグマ模型の物理的な場に対するPoisson括 弧である.
Hフラックスを含む境界Lcϑ上のPoisson括弧を定義するためには,標準的Courant algebroid のQ構造関数
Θ = ξiqi+ 1
3!Hijk(x)qiqjqk (8.213) を用いれば良い.このΘを用いると,Lϑ上の基底に対する導来括弧は次のように変更される:
{{xi,Θ}, xj} = 0, (8.214)
{{xi,Θ}, pj} = δij, (8.215) {{pi,Θ}, pj} = −Hijk(x)qk. (8.216)
写像空間Map(∂Σ,M)上の超場は(8.197)-(8.200)と同じである.ふたたび,導来括弧を求め るためにS1を与える:
S1 =µ∗ev∗Θ (8.217)
= Z
∂Σ
dσdθ
ξiqi+ 1
3!Hijk(x)qiqjqk
(8.218)
(8.214)–(8.216)を写像空間に持ち上げることで,各基底超場に対する導来括弧を得られる:
{{xi(σ, θ), S1},xj(σ′, θ′)} = 0, (8.219) {{xi(σ, θ), S1},pj(σ′, θ′)} = −δijδ(σ−σ′)δ(θ−θ′), (8.220) {{pi(σ, θ), S1},pj(σ′, θ′)} = Hijk(x)qk(σ, θ)δ(σ−σ′)δ(θ−θ′). (8.221) ここで,場をLcϑ上に制限すると,(8.221)右辺のqkが零となってしまい,Hフラックスの効 果が残らない.Hフラックスの効果を残すためには,S1を変形する,もしくはラグラジアン 部分多様体Lcϑを変形することである.我々はM上の正準変換によって,これを実現するこ とが出来ることを見出した.
上記を実現するための正準変換はLiouville 1形式からα0 =ιDˆµ∗ev∗ϑL =−R
µpidxiとし て構成することが出来る.このα0による正準変換は,正準変数の変換qk→qk−dxkを与え る.これによりS1は次のように変形される:
eδα0S1 = Z
∂Σ
dσdθ
ξi(qi−dxi) + 1
3!Hijk(x)(qi−dxi)(qj −dxj)(qk−dxk)
(8.222) この正準変換後に導来括弧をξi =qi = 0で定義される正準ラグラジアン部分多様体Lbϑへ制 限することで,次のPoisson括弧を得る:
{xi(σ, θ),xj(σ′, θ′)}P B = 0, (8.223) {xi(σ, θ),pj(σ′, θ′)}P B = −δijδ(σ−σ′)δ(θ−θ′), (8.224) {pi(σ, θ),pj(σ′, θ′)}P B = −Hijk(x(σ, θ))dxk(σ, θ)δ(σ−σ′)δ(θ−θ′). (8.225)
(8.209)と同様にして,物理的な場についてのみPoisson括弧を書くと以下となる:
{xi(σ), xj(σ′)}P B = 0, (8.226)
{xi(σ), pj(σ′)}P B = δijδ(σ−σ′), (8.227) {pi(σ), pj(σ′)}P B = −Hijk(x)∂σxk(σ)δ(σ−σ′). (8.228) このPoisson括弧は[44]で議論されているHフラックスがある場合の基底に対するPoisson 括弧と一致している.