Qi =Pi∩Pi+1(i≧1),Q0 =∅とおく。定理2.51により、各i≧1に対して、|Ki|=Pi
となる単体複体Ki と部分複体L+i−1, L−i ⊂ Ki で、|L+i−1| =Qi−1, |L−i | =Qi となるも のが存在する。系2.49により、各i≧1に対してL+i , L−i に共通の単体細分Li を取るこ とができる。また、L0 = {∅} とする。命題2.43により、Ki の単体細分Ki′ であって、
Li−1∪Li を部分複体にもつようなものが存在する。さて、
K1 =
∪∞ k=1
K2k′ −1, K2 =
∪∞ k=1
K2k′ , L=
∪∞ i=1
Li
とおけば、K1, K2 は単体複体であり(局所有限性の条件に注意)、LはK1, K2 の共通 の部分複体で、|K1| ∩ |K2| = |L|, |K1| ∪ |K2|= P である。よって、命題2.37により、
K =K1∪K2は単体複体であって|K|=P となる。
定理2.52の証明とまったく同様の議論により、より強い次の定理を示すことができる。
定理 2.53. 多面体P ⊂RnおよびP の部分多面体の族(Qλ)λ∈Λ が、次の条件を満たす とする。
• 各λ∈Λに対して、QλはP の閉集合である。
• (Qλ)λ∈Λ はP において局所有限である。すなわち、任意のx ∈P に対して、xの P における開近傍U でU ∩Qλ ̸=∅となるλ ∈Λが有限個に限るようなものが存 在する。
このとき、P の三角形分割K とその部分複体の族(Lλ)λ∈Λ でQλ =|Lλ|(λ ∈Λ)となる ものが存在する。
命題 2.55. 単体写像 f: K → L が|K| から|L|への写像として全単射であるならば、
f:K →Lは単体同型である。
証明. f−1: L →K が単体写像であることを示せばよい。そこで、∅ ̸=τ ∈ Lとする。τ の重心τˆに対してx =f−1(ˆτ)とおき、σ ∈K を、x ∈σ◦ となるように取る。f が単体 写像かつ全単射であることから、f|σ はアフィン写像でf(σ) ∈Lであり、f−1|f(σ)もア フィン写像である。あとは、f(σ) =τ を示せばよい。
命題2.25(2)により、
f(σ) =f(σx)⊂f(σ)τˆ
である。したがって、f(σ) = f(σ)τˆ なので、τˆ∈ f(σ)˚である。よって、f(σ)˚∩˚τ ̸=∅ となるから、f(σ) =τ である。
単体写像f: K →Lの制限は頂点集合の間の写像f0: V(K)→V(L) を定めるが、逆 にf はその制限f0 から決定される。実際、次の命題が簡単に確かめられる。
命題 2.56. K, Lを単体複体とし、頂点集合の間の写像f0: V(K)→V(L) が与えられて いるとする。このとき、各σ ∈ K に対して像 f0(V(σ))がLのある単体を張るならば、
f0を拡張する単体写像f: K →Lが一意的に存在する。
さらに、f0 が全単射で、S ⊂V(K)に対して「S がK の単体を張る ⇐⇒ f0(S)がL の単体を張る」となるならば、単体写像f: K →Lは単体同型である。
定理 2.57. f: P → Q⊂Rn をPL写像とする。このとき、P =|K|となる単体複体K が存在して、各σ ∈K に対してf|σ: σ →Rn はアフィン写像となる。
証明. 系 2.10 により、単体の局所有限な族 (σλ)λ∈Λ で、P = ∪
λ∈Λσλ でありかつ各 λ ∈Λに対してf|σλ: σλ→ Rnがアフィン写像となるものが存在する。次に、定理2.53 により、単体複体K とその部分複体の族(Lλ)λ∈Λ で|Lλ|= σλとなるものが存在する。
このとき、K が求めるものである。
系 2.58. K, Lを単体複体、f: |K| → |L| ⊂RnをPL写像とする。このとき、単体細分 K▷K′が存在して、各σ ∈K′ に対してf|σ: σ →Rnはアフィン写像となる。
証明. 定理2.57と系2.49から分かる。
定理 2.59. K, Lを単体複体とし、f: |K| → |L|とする。各σ∈K に対してLの部分複 体Lσ が存在して、次を満たすとする。
(1) f|σ はアフィン写像である。
(2) f(σ) =|Lσ|である。
このとき、単体細分K▷K′ であって、f :K′ →Lが単体写像となるものが存在する。
証明. σ ∈K, τ ∈Lに対して、C(σ, τ) =σ∩f−1(τ) と定義する。命題2.25(1)により、
C(σ, τ) は胞体であって、
C(σ, τ)x =C(σx, τf(x)) を満たす。よって、
K0′ ={σ∩f−1(τ)|σ ∈K, τ ∈L}
とおけば、K0′ は胞体複体の定義2.32の条件(1)を満たす。また、条件(0)(3)も満たすこ とが容易に確かめられる。よって、K0′ が胞体複体であることを示すには、命題2.33 の条 件(2′′)を確かめればよい。
そこで、σ, σ′ ∈K, τ, τ′ ∈Lとし、x∈C(σ, τ)˚∩C(σ′, τ′)˚とする。x∈ σ∩σ′ によ りx∈(σx)˚∩(σ′x)˚となるので、σx =σ′xである。f(x)∈τ ∩τ′に注目すれば、同様に して、τf(x)=τf(x)′ も分かる。よって、
C(σ, τ) =C(σ, τ)x =C(σx, τf(x)) =C(σ′x, τf(x)′ ) =C(σ′, τ′)x =C(σ′, τ′) となる。これで条件(2′′)が確かめられ、K0′ は胞体複体であることが分かった。
主張. 任意のσ ∈K, τ ∈Lに対して、f(C(σ, τ))≦τ である。
主張の証明. もちろん、C(σ, τ)̸=∅としてよい。f|σはアフィン写像なので、f(C(σ, τ))は 胞体のアフィン写像による像として胞体となる。f(C(σ, τ)) =f(σ∩f−1(τ)) =f(σ)∩τ だが、仮定からf(σ)∩τ はτ の面の有限和であるので、命題2.24により、f(σ)∩τ ≦τ である。よって、f(C(σ, τ))≦τ である。
主張でC(σ, τ)が1点である場合を考えると、f(V(K0′))⊂V(L)となることが分かる。
これとf(C(σ, τ))⊂τ により、
f(V(C(σ, τ)))⊂V(τ) (⋆)
を得る。K′ を、定理 2.48 により得られる K0′ の単体細分で V(K′) = V(K0′) となる ものとする。このとき、任意の ρ ∈ K′ に対して、f|ρ はアフィン写像である。また、
ρ⊂C(σ, τ)となるσ, τ を選べば、
V(ρ) =V(ρ)∩C(σ, τ)⊂V(K′)∩C(σ, τ) =V(K0′)∩C(σ, τ) =V(C(σ, τ)) となることと(⋆)によりf(V(ρ))⊂V(τ)となるので、f(V(ρ))はLの単体を張る。よっ て、命題2.56により、f はK′ からLへの単体写像である。
系 2.60. f: K →Lが単体写像、L▷L′が単体細分のとき、ある単体細分K▷K′ が存 在してf: K′ →L′ は単体写像となる。
定理 2.61. f: P →Qを固有PL写像とする。このとき、P, Qの三角形分割K, L が存 在してf: K →Lは単体写像となる。
証明. 定理2.57により、P =|K0|となる単体複体K0 で、各σ ∈K0 に対してf|σ がア フィン写像となるものが存在する。f は固有であるから、(f(σ))σ∈K0 はQにおいて局所 有限な多面体の族である。よって、定理2.53 により、Q =|L|となる単体複体Lとその 部分複体の族(Lσ)σ∈K0 で|Lσ|=f(σ)となるものが存在する。最後に定理2.59により、
単体細分K0▷K でf: K →Lが単体写像となるものが存在する。
系 2.62. PL写像f: P →QにおいてP がコンパクトであるか、またはf がPL同相写 像であるならば、P, Qの三角形分割K, L が存在してf: K →Lは単体写像となる。
例2.63. 定理2.61はf: P →Q が固有であるという条件なしには成り立たないので注意 が必要である。実際、P =R+ = [0,∞),Q=I として、f: P →Qを、各n∈R+∩Zに 対してf(n) = 1/(n+ 1)かつf|[n,n+1]はアフィン写像であるという条件により定義する。
すると、f は命題1.27(2)によりPL写像である。もし、定理2.61のようなK, Lが存在 すれば、各R+∩Z⊂V(K) であるから{1,1/2,1/3, . . .}={f(n)|n∈R+∩Z} ⊂V(L) となり、これはLの局所有限性に反する。
あらかじめP, Qにそれぞれ三角形分割K, Lが与えられている場合は、定理2.61の証 明の途中で系2.49を用いて適切に共通細分を取る修正を加えることで、次を証明できる。
定理 2.64. 任意の単体複体 K, L と固有 PL 写像 f: |K| → |L| に対して、単体細分 K▷K′, L▷L′ が存在してf: K′ →L′ は単体写像となる。
最後に、PL同相写像を単体写像で表した場合は、それが必ず単体同型となることを注 意しておこう。
定理 2.65. PL同相写像f: P →QとP, Qの三角形分割K, Lに対してf: K →Lが単 体写像ならば、f: K →Lは単体同型である。
証明. PL 同相写像 f は|K| から|L| への全単射となるので、これは命題 2.55 から従 う。