証明. 定理2.57により、P =|K0|となる単体複体K0 で、各σ ∈K0 に対してf|σ がア フィン写像となるものが存在する。f は固有であるから、(f(σ))σ∈K0 はQにおいて局所 有限な多面体の族である。よって、定理2.53 により、Q =|L|となる単体複体Lとその 部分複体の族(Lσ)σ∈K0 で|Lσ|=f(σ)となるものが存在する。最後に定理2.59により、
単体細分K0▷K でf: K →Lが単体写像となるものが存在する。
系 2.62. PL写像f: P →QにおいてP がコンパクトであるか、またはf がPL同相写 像であるならば、P, Qの三角形分割K, L が存在してf: K →Lは単体写像となる。
例2.63. 定理2.61はf: P →Q が固有であるという条件なしには成り立たないので注意 が必要である。実際、P =R+ = [0,∞),Q=I として、f: P →Qを、各n∈R+∩Zに 対してf(n) = 1/(n+ 1)かつf|[n,n+1]はアフィン写像であるという条件により定義する。
すると、f は命題1.27(2)によりPL写像である。もし、定理2.61のようなK, Lが存在 すれば、各R+∩Z⊂V(K) であるから{1,1/2,1/3, . . .}={f(n)|n∈R+∩Z} ⊂V(L) となり、これはLの局所有限性に反する。
あらかじめP, Qにそれぞれ三角形分割K, Lが与えられている場合は、定理2.61の証 明の途中で系2.49を用いて適切に共通細分を取る修正を加えることで、次を証明できる。
定理 2.64. 任意の単体複体 K, L と固有 PL 写像 f: |K| → |L| に対して、単体細分 K▷K′, L▷L′ が存在してf: K′ →L′ は単体写像となる。
最後に、PL同相写像を単体写像で表した場合は、それが必ず単体同型となることを注 意しておこう。
定理 2.65. PL同相写像f: P →QとP, Qの三角形分割K, Lに対してf: K →Lが単 体写像ならば、f: K →Lは単体同型である。
証明. PL 同相写像 f は|K| から|L| への全単射となるので、これは命題 2.55 から従 う。
証明. Lの重心細分をL′と表す。単体写像φ: K′ →K(I)を、
φ(ˆσ) = {
0 σ ∈L のとき
1 σ ∈K\L のとき
により定める。このとき、φ−1(0) = |L|であることを確かめよう。そこで、x∈ |L|とす る。x∈ρとなるρ∈L′を選ぶと、Lの単体の列σ1 >· · ·> σk が存在して、ρ= ˆσ1· · ·σˆk
である。ところが、このとき各iに対してφ(ˆσi) = 0 だから、φ(x) = 0 である。逆に、
x ∈ |K|に対してφ(x) = 0 であると仮定する。ρ ∈ K′ をx ∈˚ρとなるように取り、ρ をK の単体の列σ1 >· · ·> σk を用いてρ= ˆσ1· · ·σˆk と表す。すると、x=∑k
i=1tiσˆi,
∑k
i=1ti = 1, ti > 0 と表すことができる。もし、ある i に対して σi ∈/ L であれば、
φ(ˆσi) = 1であるから、φ(x)≧ti >0となり矛盾する。よって、σ1, . . . , σk ∈Lなので、
x∈ρ⊂ |L′|=|L|である。
注意 2.67. 上の補題で、K を重心細分に置き換える操作は一般には省略できない。例え
ば、K =K(I)とし、Lをその部分複体L={∅,{0},{1}} とすれば、φ−1(0) =|L|とな るような単体写像φ: K →K(I)は存在しない。
定理 2.68. Qi ⊂Pi ⊂Rni(i= 1,2)を閉部分多面体の列とする*9。P1, P2をPL同相写 像h: Q1 → Q2 により貼り合わせて得られる商位相空間P1∪hP2 を考える。このとき、
あるnに対して、Rnの閉部分多面体P を像にもつ位相的埋め込みP1 ∪h P2 →P ⊂Rn が存在し、各iに対して合成Pi →P1∪h P2 →P がPL埋め込みとなるようにできる。
証明. 定理2.53により、各i ∈ {1,2}に対してPiの三角形分割Ki を取り、Ki のある部 分複体Li に対して|Li| = Qi となるようにできる。必要ならK1, L1 をその重心細分に 置き換えれば、補題2.66により、単体写像φ: K1 →K(I) をφ−1(0) =|L1|=Q1 とな るように取れる。
v ∈V(K1)に対して˜h(v)∈Rn2 を
˜h(v) = {
h(v) v ∈V(L1) のとき 0 v /∈V(L1) のとき
と定義し、さらにK1 の各単体上アフィン写像として拡張すれば、hを拡張するPL写像
˜h: P1 → Rn2 を得る。同様の構成をk =h−1: Q2 → Q1 に適用して、k を拡張するPL 写像k˜: P2 →Rn1 も得られる。
*9ここで、PiがRni の閉集合であるという仮定は外すことができる。実際、どんな多面体P ⊂Rn に対 しても、像が閉集合であるようなPL埋め込みi: P →Rn+1が存在する。その構成の概略を述べよう。
説明を簡単にするため、P は連結とする。P の三角形分割K を取り、頂点v0 ∈V(K)を一つ固定す る。v ∈V(K)に対して、各iについてvi, vi+1 がKの単体を張るような列v0, v1, . . . , vn =vが存 在する最小のnをn(v)としよう。このときi(v) = (v, n(v))で定義されるi:V(K)→Rn+1をKの 各単体上にアフィン写像として拡張すると、像が閉であるPL埋め込みi:P =|K| →Rn+1を得る。
以上の準備のもと、αi: Pi→Rn1 ×Rn2 ×R=Rn1+n2+1 (i= 1,2)を α1(x) = (x,h(x), φ(x)),˜ α2(y) = (˜k(y), y,0) (x∈P1, y∈P2)
で定義する。˜h, ˜k, φはPL写像なので、像P˜1 =α1(P1), ˜P2 =α2(P2)はPL写像のグラ フとして多面体であり、α1, α2 はそれぞれPL埋め込みである。また、PiがRni の閉集 合であるという仮定から、n=n1+n2+ 1とおけばP˜1,P˜2はRnの閉集合である。よっ て、P = ˜P1∪P˜2はRnの閉部分多面体である。さらに、αi はPiからP へのPL埋め込 みを与え、同相写像P1∪hP2 →P を誘導する。
上の定理を、有限個の多面体の貼り合わせに拡張しよう。Pi ⊂ Rni(i = 1, . . . , m) を それぞれ閉部分多面体とし、Pi には閉部分多面体Qij(j = 1, . . . , m) が与えれていると する。さらに、各i, j に対してPL同相写像hij: Qji → Qij が与えられ、各iに対して Qii =Pi, hii = idPi であり、かつ、各i, j, kに対して条件hjk(Qki∩Qkj)⊂Qji および hij(hjk(x)) =hik(x) (x∈Qki∩Qkj) (⋆) を満たすとする。このとき、直和位相空間⨿m
i=1Pi上の関係∼を x ∼hij(x) (x∈Qji,1≦i, j ≦m)
で定義すれば、∼は同値関係になる*10。そこで、商位相空間 P˜ = (⨿m
i=1Pi)/∼ を考 える。
系 2.69. 上の状況において、あるnに対して、Rnの閉部分多面体P を像にもつ位相的 埋め込みP˜ = (⨿m
i=1Pi)/∼ → P ⊂ Rn が存在し、各i に対して合成Pi → P˜ → P が PL埋め込みとなるようにできる。
証明. mについての帰納法で証明する。m = 1のときは明らかであり、m = 2のときは 定理2.68そのものである。m ≧ 3とする。同値関係 ∼を⨿m
i=2Pi に制限したものを再 び∼と書くとき、商空間P˜′ = (⨿m
i=2Pi)/∼を考える。帰納法の仮定により、あるn′ に 対して閉部分多面体P′ ⊂ Rn′ を像とする位相的埋め込みP˜′ →P′ ⊂Rn′ が存在し、各 i≧2に対して Pi →P˜′ →P′ はPL埋め込みとなる。このPL埋め込みをhi: Pi →P′ と書こう。
Q′ =∪m
i=2hi(Qi1)とおくと、hi(Qi1)がP′ の閉部分多面体となることから、Q′はP′ の閉部分多面体である。また、Q1 =∪m
i=2Q1i はP1 の閉部分多面体である。自然なPL 同相写像h: Q1 →Q′ を定義したい。
i, j ≧2とx ∈Q1i ∩Q1j に対して、hji(hi1(x)) =hj1(x)∈ Qj1 となるので、hi1(x) とhj1(x) はP˜′ における像が等しく、よってhi(hi1(x)) = hj(hj1(x)) である。よって、
PL写像h: Q1 →Q′がx∈Q1iのときh(x) =hi(hi1(x))とすることにより定義される。
*10反射律は明らかで、(⋆)においてi=kとして、h−1ij =hjiを得るから対称律が成り立つ。推移律は若干 の注意を要する。hij(hjk(x))が定義されるときにそれがhik(x)に等しいことをいえばよく、(⋆)によ れば、それにはhkj(Qji∩Qjk)⊂Qkiが言えればよいが、それは既に仮定している条件である。
h がPL 同相写像であることを示すため、h の連続な逆 k: Q′ → Q1 を構成しよう。
i, j ≧2とx ∈hi(Qi1)∩hj(Qj1)に対して、h−i 1(x)∈Qi1 ⊂Pi とh−j1(x)∈Qj1 ⊂Pj
は P˜′ における像が等しいから、h−j1(x) ∈ Qji かつ hij(h−j1(x)) = h−i 1(x) である。
よって、(⋆)により、h1i(h−i 1(x)) = h1i(hij(h−j1(x))) = h1j(h−j1(x)) である。よって、
x ∈ hi(Qi1)に対してk(x) =h1i(h−i 1(x)) とすることで、k: Q′ = ∪m
i=2hi(Qi1) → Q1 が定義される。k は各閉集合hi(Qi1)上で連続であるから、kは連続である。k がhの逆 を与えることは定義から直ちに確認できる。これでh: Q1 → Q′ がPL同相写像である ことが分かった。
P1 と P′ を h に よ り 貼 り 合 わ せ た 空 間 P1 ∪h P′ を 考 え る 。自 然 な 同 相 写 像 (⨿m
i=1Pi)/∼= ˜P →P1∪hP′ があるので、この同相写像により、以下ではP1∪hP′ と P˜を同一視する。
定理2.68により、あるnに対して、Rnの閉部分多面体P を像にもつ位相的埋め込み P1∪hP′ = ˜P →P ⊂Rnが存在し、合成P1 →P˜ →P,P′ →P˜ →P はそれぞれPL埋 め込みとなる。i≧2に対して、自然な写像Pi →P′ はPL埋め込みだったから、これを 上の合成写像にさらに合成して、Pi →P˜ →P がPL埋め込みであることが分かる。
次に、与えられたn次元以下の多面体、あるいはそれらを可算個直和したものを、2n+ 1
次元のEuclid空間に閉部分多面体として埋め込めることを証明しよう。
定理 2.70. (Pi)∞i=1 を多面体の族とし、Pi の次元はすべてn以下であると仮定する(定 義2.8)。このとき、PL埋め込みhi: Pi →R2n+1(i= 1,2, . . .) で、次を満たすものが存 在する。
(1) 直和空間からの写像⨿∞
i=1hi: ⨿∞
i=1Pi →R2n+1 は位相的な埋め込みである。
(2) ∪∞
i=1hi(Pi)はR2n+1の閉部分多面体である。
証明. 定理2.52により、各iに対して、Pi の三角形分割Ki を取ることができる。注意 2.34により、頂点の集合V(Ki) は高々可算だから、直和集合V =⨿∞
i=1V(Ki)は高々可 算である。そこで、V ={vk|k = 1,2, . . .}と番号づける(V は以下では無限集合とする が、有限集合の場合でも同様である)。
pk = (k,0, . . . ,0)∈R2n+1 (k = 1,2, . . .)とする。k ≧1について帰納的にqk ∈R2n+1 を以下の条件を満たすように取る。
(i) |pk−qk|<1/2
(ii) 任意の1≦ l0 ≦ · · ·≦ l2n ≦k −1に対して、qk はql0, . . . , ql2n が張る(高々2n 次元の)アフィン部分空間に属していない。
R2n+1において2n次元以下のアフィン部分空間は内点をもたない閉集合であるから、qk を取ることは実際に可能である。このように帰納的に定義された{qk|k = 1,2, . . .}から 任意の(2n+ 2)個以下の元を選ぶと、(ii)により、それらは常にアフィン独立となってい ることに注意する。
さて、h: V →R2n+1をh(vk) =qkにより定義し、hi =h|V(Ki)とする。各iに対して、
hi をKi の各単体上でアフィン写像として拡張すると、PL写像hi: Pi =|Ki| →R2n+1 が得られるが、このhi(i= 1,2, . . .)が条件を満たすことを示そう。
主張 1. 各iに対して、hi: Pi →R2n+1 は単射である。
主張1の証明. x, y ∈ |Ki|として、hi(x) = hi(y) とする。x ∈ σ ∈ Ki, y ∈ τ ∈ Kj となる σ, τ ∈ Ki を取る。V(σ ∩τ) = V(σ)∩V(τ), V(σ), V(τ) の元の個数をそれ ぞれ r, s, t とおき、V(σ) ∩V(τ) = {vk1, . . . , vkr}, V(σ) = {vk1, . . . , vks}, V(τ) = {vk1, . . . , vkr, vks+1, . . . , vkN} と表そう。 ただし、N =s+t−rとする。このとき、x, y はそれぞれσ, τ の頂点の凸結合としてx=∑N
j=1sjvkj, y =∑N
j=1tjvkj と表すことがで きる。ただし、vkj ∈/ V(σ), vkj ∈/ V(τ)のときはそれぞれsj = 0, tj = 0 であるとする。
このとき、
∑N
j=1
sjqkj =
∑N
j=1
sjf(vkj) =f(x) =f(y) =
∑N
j=1
tjf(vkj) =
∑N
j=1
tjqkj
である。ところが、N = s +t − r ≦ s +t = dimσ + dimτ + 2 ≦ 2n + 2 によ り、qk1, . . . , qkN はアフィン独立であるから、sj = tj(j = 1, . . . , N)である。よって、
x=∑N
j=1sjvkj =∑N
j=1tjvkj =yである。
主張 1と全く同じ議論により、i ̸=j のときhi(Pi)∩hj(Pj) =∅ であることも証明で きる。よって、⨿∞
i=1hi: ⨿∞
i=1Pi →R2n+1 は単射である。あとは、次の主張が示せれば よい。
主張 2. ⨿∞
i=1hi: ⨿∞
i=1Pi →R2n+1は固有写像である。
実際、⨿∞
i=1hi が固有写像といえれば、この写像は単射かつ固有であるから、閉埋め 込みであり、とくに像 ∪∞
i=1hi(Pi) はR2n+1 は閉集合である。さらに、各 i に対して hi: Pi →R2n+1 も固有PL写像となるから、系2.12により、hi(Pi)は多面体となり、し たがってhiはPL埋め込みである。さらに、⨿∞
i=1hi の固有性により(hi(Pi))∞i=1 は局所 有限となるから、∪∞
i=1hi(Pi)も多面体となり、これですべて証明が終わる。
主張2の証明. 各k ≧1に対して、
Ck =
∪∞ i=1
{x ∈Pi| pr1◦hi(x)≦k}
が⨿∞
i=1Pi のコンパクト集合であることを示せばよい。ここで、pr1: R2n+1 →R は第1 座標への射影とする。
まず、i0 ≧1を十分大きく取り、∪i0
i=1V(Ki)⊃ {v1, . . . , vk}となるようにする。i > i0
とすると、v ∈V(Ki)に対してpr1◦hi(v) > k である。したがって、hiがKi の各単体
上アフィン写像であることにより、任意のx ∈ Pi = |Ki|に対してpr1◦hi(x)> k であ る。以上から、Ck ⊂⨿i0
i=1Piである。
Ck,i = {x ∈ Pi| pr1◦hi(x) ≦ k} とおく。C = ∪i0
i=1Cki であるから、各 i ≦ i0 に対して Ck,i がコンパクトであることを示せばよい。i ≦ i0 とし、Vi を有限集合 Vi =V(Ki)∩ {v1, . . . , vk}とする。σ ∈Ki, V(σ)∩Vi =∅とすると、任意のv ∈V(σ) についてpr1◦hi(v)> kであり、よってσ∩Ck,i =∅である。したがって、
Ck,i ⊂∪
{σ ∈Ki|V(σ)∩Vi ̸=∅}
である。Viは有限集合だから、Kiの局所有限性により、上の式の右辺はコンパクト集合 の有限和となっている。よって、Ck,i はコンパクトである。
以上で定理が示された。
3 PL 多様体
3.1 PL 多様体の定義
微分トポロジーでの可微分多様体に対応して、PL トポロジーの中心的な研究対象と なっているのがPL 多様体である。ここでは、「境界つき多様体」を単に多様体と呼ぶ流 儀を取る。
n次元の閉じた上半空間をRn+ で表す。つまり、
Rn+ ={(x1, . . . , xn)∈Rn|xn ≧0} とする。n= 0の場合は、R0+ =R0 ={0}とする。
定義 3.1. n ≧ 0とする。多面体M がn次元 PL多様体 (PL n-manifold)であると は、任意のx ∈ M に対して、xのある開近傍U からRn+ のある開集合V へのPL 同相 写像h: U →V が存在することをいう。
定義から明らかに、PL 多様体であることはPL不変な概念である。すなわち、M と N がPL 同相な多面体であるとき、M がn次元 PL 多様体であればN も n次元 PL 多様体である。n次元PL 多様体M の点x に対して、定義3.1 のようなPL 同相写像 h: U → V をxの座標近傍(coordinate neighborhood)と呼ぶ。次の命題は、初歩 的な代数的トポロジーから証明される*11。
*11実際、命題を示すには次が分かればよい:「開集合V, W ⊂Rn+とx∈V および同相写像h:V →W に対 して、x∈Rn−1× {0}ならばh(x)∈Rn−1× {0}である」。この事実を証明するには、ホモロジー群の 切除定理からHn(Rn+,Rn+\{x})∼=Hn(V, V \{x})∼=Hn(W, W\{h(x)})∼=Hn(Rn+,Rn+\{h(x)}) となることに注意すればよい。