PL 多様体の三角形分割は、各頂点の周りの様子によって特徴づけることができる。こ れを定式化して証明するため、しばらく単体複体と多面体についての一般論に戻る。
K が単体複体でv がK の頂点であるとき、vのK におけるスター(star)とリンク (link)を
st(v, K) ={σ ∈K|ある τ ∈K に対して v∈τ かつ σ ≦τ} lk(v, K) ={σ ∈st(v, K)|v /∈σ}
で定義する。このうち、st(v, K)は胞体複体におけるスター(例2.35(5))の特別な場合 である。st(v, K), lk(v, K)はK の部分複体である。さらに、K の局所有限性から分かる ように、これらは有限部分複体である。
各σ ∈lk(v, K)に対して、vσは錐である。さらに、σ, τ ∈lk(v, K)に対して補題2.36(1) により、V(vσ∩vτ) = V(vσ)∩V(vτ) = {v} ∪(V(σ)∩V(τ)) = {v} ∪V(σ∩τ) = V(v(σ∩τ)) となることから、vσ∩vτ = v(σ ∩τ) である。よって、命題1.8 により、
v|lk(v, K)|は錐であることが分かる。したがって、単体複体としてスターはリンクの錐
であること、すなわち、
st(v, K) =vlk(v, K) が分かる。
さらに、vのK におけるオープンスター(open star) O(v, K)を O(v, K) =|st(v, K)| \ |lk(v, K)|
=|K| \∪
{σ ∈K|v /∈σ}
と 定 義 す る 。O(v, K) は v の |K| に お け る 開 近 傍 で あ る 。よ っ て 、|st(v, K)| = v|lk(v, K)|は多面体|K|におけるvの錐近傍を与え、しかも、この錐近傍は命題1.13 の 条件を満たしている。
後になって使う事実であるが、オープンスターの全体は開被覆をなす。
補題 3.6. 単体複体K に対して、{O(v, K)|v ∈V(K)} は|K|の開被覆である。
証明. x ∈ |K|に対して、x ∈˚σ となるようにσ ∈ K を選び(補題2.36(2))、σ の頂点 v を一つ固定する。このとき、x ∈ O(v, K)である。実際、そうでないとすると、ある τ ∈ K に対してx ∈τ, v /∈ τ であるが、このときx ∈˚σ∩τ により˚σ∩τ ̸= ∅であるか ら、命題2.33の条件(2′)により、v∈σ ≦τ となり矛盾する。
次の補題が、リンクのPL同相不変性(定理3.10)の証明の鍵となる。
補題 3.7. K を単体複体、vをK の頂点、K▷K′ を単体細分とする。このとき、PL同 相写像|lk(v, K′)| → |lk(v, K)|が存在する。
証明. 最も安直な方法は、x ∈ |lk(v, K′)|に対して、線分vxをxの側に延長した半直線 を考え、それと|lk(v, K)|との交点をπ(x)と定めることだろう。しかし、例2.27から分 かるように、このπ: |lk(v, K′)| → |lk(v, K)|は一般にはPL写像ではない。そこで、次 のような修正を行う。
σ ∈ lk(v, K′)とする。vσ ⊂vτ となるようにτ ∈ lk(v, K)を選ぶと、π|σ は放射投影 vτ\ {v} →τ の制限に等しい。よって、系2.29(5)により、π(σ)は単体である。したがっ て、L={π(σ)|σ ∈K}は単体からなる集合である。さらに、系2.29(4)を用いると、Lが 単体複体でlk(v, K)▷Lであり、各σ ∈lk(v, K′)に対してπ(V(σ)) =V(π(σ))であるこ とが分かる。よって、命題2.56により、π0′ =π|V(lk(v,K′))は単体同型π′: lk(v, K′)→L を誘導し、これはPL同相写像π′: |lk(v, K′)| → |L|=|lk(v, K)|を定める。
上で定義された PL 同相写像 π′: |lk(v, K′)| → |lk(v, K)| を擬放射投影 (pseudo-radial projection)という。
補題 3.8. v, w をそれぞれ単体複体K, Lの頂点とする。(|K|, v)と(|L|, w)がPL 同相 であるならば、(|st(v, K)|,|lk(v, K)|)と(|st(v, L)|,|lk(w, L)|)もPL同相である。
証明. f: (|K|, v) → (|L|, w) をPL 同相写像とする。系 2.62 および定理2.65 により、
K, Lの単体細分 K′, L′ が存在してf: K′ → L′ は単体同型となる。f はPL 同相写像
|lk(v, K′)| → |lk(w, L′)|を誘導するが、これと補題3.7のPL同相写像を合成すること
で、PL同相写像|lk(v, K)| → |lk(w, L)|が得られる。この写像の錐を取ることで、求め るPL同相写像を得る。
多面体のリンクのPL不変性を示すため、次をあらかじめ証明しておく。
補題 3.9. P を多面体、a∈P とし、N =aLをaのP の錐近傍で、命題1.13の条件を 満たすものとする。すなわち、LはP の部分多面体で、N \LはP の開集合であると仮 定する。このとき、aを頂点にもつP の三角形分割K で|lk(a, K)|=Lとなるものが存 在する。
証明. 定理2.53により、P のaを頂点にもつ三角形分割K0とその部分複体J で、|J|=L となるものが存在する。さらに、単体複体K1を錐aJ と定義すると、|K1|=N である。
次に、U =N \L とおき、K0の部分複体K2 をK2 ={σ ∈ K0|σ∩U =∅} で定める。
K1, K2 を「貼り合わせて」K を作りたいが、そのために次を示す。
主張. |K2|=P \U である。
主張の証明. 定義から|K2| ⊂P\U である。逆の包含を示すため、x∈P \ |K2|とする。
x ∈˚σ となるσ ∈ K0 を取れば、σ∩U ̸= ∅である。U は開集合で˚σ はσ で稠密だか ら、˚σ∩U ̸= ∅である。また、˚σ∩L = ˚σ∩ |J| ̸= ∅ とすれば補題2.36(2)によりσ ∈J であり、よってσ ⊂L だから、σ ∈ K2 となりx /∈ |K2| に反する。よって、˚σ∩L = ∅ である。P \Lは二つの開集合U, P \N の交わりのない和集合であり、˚σは連結だから、
˚σ ⊂U でなければならない。よって、x ∈U である。
K1, K2 はともに J を部分複体にもち、|K1| ∩ |K2| = N ∩(P \U) = L = |J| であ るから、命題 2.37により、K = K1 ∪K2 は単体複体であり、|K| = P, |lk(a, K)| =
|lk(a, K1)|=|J|=Lである。
定理 3.10. P1, P2を多面体、a1 ∈P1, a2 ∈P2 とし、Ni =aiLiをai のPi における錐 近傍とする(i= 1,2)。ただし、Li はPi の部分多面体であるとする。このとき、(P1, a1) と(P2, a2)がPL同相ならば、(N1, L1)と(N2, L2)もPL同相である。
証明. i = 1,2に対してUi = Ni\LiがPi の開集合である場合については、補題3.8 と 補題3.9を組み合わせれば従う。
Ui が開集合と限らない場合は、命題1.13 を用いて、L′i が部分多面体であるような a のPi における錐近傍Ni′ =aL′i ⊂Ni を、Ui′ =Ni′\L′iがPiの開集合であるように取れ る。あとは、(Ni, Li)と(Ni′, L′i)がPL同相であればよいが、これは、Ui, Ui′がともに多 面体Niの開集合であることに注目すれば先に示した特別な場合から従う。
リンクのPL不変性の応用として、n胞体がPL n球体になることが確かめられる。
定理 3.11. 任意のn胞体C に対して、(C,C)˙ は(In, ∂In) とPL同相である。とくに、
CはPL n球体、C˙ はPL (n−1)球面である。
証明. C をn胞体とする。C ⊂ Rn, 0 ∈C˚であるとしてよい。ε > 0を十分小さく取れ ば、Nε(0,Rn) = 0 ˙Nε(0,Rn) は0のC における錐近傍である。一方C = 0 ˙C も0の錐 近傍を与えるので、定理3.10により、(C,C)˙ は(Nε(0,Rn),N˙ε(0,Rn)) にPL同相であ る。
上の定理から、n胞体C のn次元PL 多様体としての境界∂C と内部IntC がそれぞ れC, ˚˙ C に等しいことも分かる。そこで、以下では、胞体C の境界、内部はそれぞれ∂C, IntCで表す。
定理 3.12. n次元 PL 多様体M の点xに対して、部分多面体L⊂ M がxのリンクで あるとする。すなわち、xLがxの錐近傍をなすとする。このとき、x ∈IntM ならばL はPL (n−1)球面、x∈∂M ならばLはPL (n−1)球体である。
証明. 定理3.10により、それぞれ一つの具体例について示せば十分である。そこでM を n単体σ とする。x∈˚σ = Intσのとき、σ˙ はxのリンクであるが、これは定理3.11によ りPL (n−1)球面である。また、xをσの頂点の一つとすると、x∈σ˙ =∂σ であるが、
このときはσのある(n−1)次元の面τ についてσは錐xτ となる。よって、τ はvのリ ンクであるが、τ は定理3.11によりPL (n−1)球体である。