• 検索結果がありません。

第4章 Top500 によるデータ分析

4.3 対象企業の選定

4.3.3 PC クラスタを除く理由

パーソナルコンピュータの高性能化に伴い、特に21世紀に入ってから、ハイエ ンドコンピューティング領域においても安価な市販のPC用のプロセッサを多数並列 接続するPCクラスタシステムが市場シェアを拡大させている。当初は、大規模シス テムの実現や安定性なのどの点において課題が大きかったが、急速なPC用プロセッ サの性能向上に伴い、汎用部品を組み合わせたモジュラー型製品によるイノベーショ ンとして、既存スパコンの市場を脅かしている。

PCクラスタは、ハードウェアはIntel社やAMD等のPC用をベースにしたプロセ ッサとプロセッサボードと Etherや Infiniband といった汎用のネットワークカード を組み合わせ、OSとしては主にLinuxが採用され、その他ミドルウェア、ソフトウ ェアはオープンソースのものを組み合わせるなどして構成されたシステムである。

モジュラー型製品であるためシステムを構築する事自身には技術的難度はあまり高

くないため、多くのPCクラスタ・提供ベンダーが市場に参画している。専用設計の スーパーコンピュータ開発は、現在、日本と米国でのみであるが、PC クラスタは、

導入先の各国で製造されている場合が多い。 現在Top500で2位に位置する中国も PCクラスタである(汎用のグラフィックプロセッサを付加して性能強化)

また、PC クラスタは、接続台数を増やす事で最大性能を積み上げているが、大規 模システムでは実行効率が低下し、最適設計された専用設計機に対して低くなる傾向 にある。このため、主に、あまり規模が大きくないミドル規模以下のシステムとして 導入される傾向にある。

今回の調査対象から、PC クラスタ製品および PC クラスタのみを提供しているベ ンダーを除いている。しかしながら、Top500に占める PCクラスタの比率は、2000 年以降増え続けており、図4-3に示すように現時点ではシステム数で8割近く(一部 PC クラスタ以外のクラスタ製品を含む)を占める状況に至っている。 ただし、図 4-4 の性能シェアでは、7割以下となっており、このことは、PC クラスタ製品がど ちらかというと低位のシステムを中心に分布している事を示している。

図4-3 Top500に占めるPCクラスタのシステム数シェア (出典:Top500)

PC クラスタ

図4-4 Top500に占めるPCクラスタの性能シェア (出典:Top500)

このように、TOP500 における PC クラスタの存在は無視できるものではないが、

今回の研究に関して、以下の見地からPCクラスタを除くものと判断した。

第一に、PC クラスタはモジュラー型製品であり、イノベーションの担い手が、主 にモジュール側(CPUなどの部品)にあるため、システムメーカーの寄与が小さく、

今回のシステムメーカーごとの分析手法に適合しない。実際にはプロセッサを開発製 造しているIntelの影響が大きいが、Intel自身は過去に一時的にスーパーコンピュー タシステムの開発を行ない ASCI プログラムに参画するなどしていたが、2000 年ご ろにはシステム開発から撤退し、現在はシステムを開発・製造していない。また、PC クラスタの提供メーカーは中小メーカーを含め多数存在し Intel以外の特定メーカー を代表して評価することも適切ではないと考えた。

第二に、PC クラスタは、現時点においては一種のドミナントデザインを形成して おり、アーキテクチャとしては固定化している。台数を増やすことでTop500の上位 システムとして姿を見せる事はあるが、新たなアーキテクチャやテクノロジの採用と いった技術的非連続性を伴うイノベーションへの貢献度は現状低いと考えられる。

また、PC クラスタは、ネットワーク性能が弱く、大規模システムでの実プログラ

PC クラスタ

ムの運用においてLinpackベンチマーク以外では実行効率が低く、全体システムとし て運用されることはあまりなく、システムを分割して運用される傾向がある。このた

め単一のシステムとしての性能として評価する有効性についても若干疑問が残る。

以上のようなことから今回の分析方法において有効な知見を得ることが難しいと 判断した。