第7章 結論
7.2 発見事項
7.2.1 SRQ1 への回筓
SRQ1:スーパーコンピュータ開発において、どのようにイノベーションが発生して きたのか?
Top500 のデータを用いて、スーパーコンコンピュータ開発におけるイノベーショ
ン発生の状況について定量的に分析を行った。製品種別毎に分類し、製品間での性能 向上の状況を分析した結果、特定の製品で、性能向上トレンドを大幅に引き上げる特 長を持った製品が存在することが確認された。このラディカルなイノベーションに関 係すると考えられる製品をラディカル製品と命名した。ラディカル製品は、同一アー キテクチャを持つ製品ラインの中ではほとんど1回だけしか発生しておらず、またラ ディカル製品の開発には、ラディカルなリードユーザー(以降ラディカルリードユー ザー)が関係する国のプログラムの存在が確認された。
7.2.2 SRQ2 への回筓
SRQ2:スーパーコンピュータ開発において、どのような要因でイノベーションが創 発したのか?
ラディカルなイノベーションを起こした製品ラインは、開発初期において自社内の クローズドイノベーションによるもの以外に産学官連携や M&A や協業といった社 外のオープンイノベーション取り込むことが重要なイノベーション創発の要因にな っていることが確認された。
また、ラディカルなリードユーザーが存在し、そのリードユーザー自身によるイノ ベーションや、先行ユーザーとしてのユーザーイノベーションがラディカル・イノベ ーション創発の要因となっていることが確認された。また、ユーザーコミュニティの 存在もこのユーザーイノベーションの強化につながっていると考えられる。
7.2.3 SRQ3 への回筓
SRQ3:スーパーコンピュータ開発において、イノベーションを継続するための要素 はなにか?
上述のように、オープンイノベーションで起動したイノベーションが、ユーザーイ ノベーションで強化され、ラディカルイノベーションにつながりその後インクリメン タル・ノベーションへ移行する傾向が確認された。このことから、ラディカルイノベ ーションを継続的に創発させるためには、計画的かつ継続的にオープンイノベーショ ン取り込み、社内のクローズドイノベーションとの連携を図るイノベーションマネジ メントの実践が重要である事がわかった。
また、ユーザーイノベーションに関しては、継続的に高い目標を要求するラディカ ルリードユーザーの存在が重要であることがわかった。
7.2.4 MRQ への回筓
MRQ:先端大規模技術開発において継続的にイノベーションを創発させるための必 要条件はなにか?
スーパーコンピュータ開発の分析から、企業がラディカルイノベーションを継続的 に創出するためには、3つのイノベーションとイノベーションマネジメントの存在が 重要になると考えられる。特に、ラディカルイノベーションの創発には、ラディカル
リードユーザーが必須である。すなわち、社外の技術を取り込むオープンイノベーシ ョンを積極的に推進するとともに、社内においては技術基盤を継続的に強化するクロ ーズドイノベーションを推進。高い目標設定を行い市場を先導するラディカルリード ユーザー見出し、それが引き起こすユーザーイノベーションを活用推進することによ ってラディカルなイノベーションが実現できる、これら3つのイノベーションを社内 のイノベーションマネジメントによって持続的・計画的に推進することによって、継 続的なイノベーションが創発させることができると言える。
従来の技術の延長線にはない新たな技術的非連続性を取り込んだ開発を行わない とラディカルなイノベーション生み出す事は難しい。この未知とも言える技術的非連 続性は、自社内のクローズドイノベーションの延長上だけで生み出されることは難し く、そのままではインクリメンタルなイノベーションに留まる傾向がある、このため、
新たなイノベーションの種を、社外から取り入れるオープンイノベーションが重要で あるといえる。また、大学や研究所がユーザーである先端技術開発においては、ユー ザー自身が高い知識を持っており、自らが製品設計を実施したり、メーカーと共同開 発することでユーザー自身がイノベーションを起こす能力を持っているといえる。ま た、このラディカルリードユーザーによって高い開発目標が設定される事で、それを 実現する努力の中からラディカル製品が生まれてくる可能性が高まる。さらに、メー カーの視点から考えると、先端大規模技術開発は、開発投資が大きいうえにリスクが 大きい開発であり、開発投資自身の判断も難しい。これに対して先進ユーザーが市場 を先導し、先行して製品を導入することで、市場に製品投入することに対するリスク を低減してくれていると言える、このリードユーザーの存在は、メーカーの開発投資 の後押しをする存在でもある。