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越えたコミュニケーション学習のためには,参加者同士の親密な関 係が前提条件となる。すなわち,お互いが全く知らない人同士とい  う関係のままコミュニケーション学習を計画することは好ましくな い。ネットワーークを介した日常的なコミュニケーションの機会を設

けるなどの配慮が必要である。

0 2時間では少ない。しかし,指導計画上これ以上の時間をとるこ  とは難しい。コミュニケーション学習を常時生徒に開放し,休み時

間や放課後などの参加も認めたり,過去の作品を通常の授業で教材 として用いるなど,生徒がコミュニケーション学習に接する時間を 拡大することもひとつの方策である。

0 1時間の練習では理解できない生徒や,コンピュータになじめな い生徒などがいる。今回の実践では,技術・家庭科の情報基礎の単 元での学習を仮定していたため,まだ学習していないクラスの生徒 には負担が大きかったかも知れない。ただし,システムの操作につ いては,YYMathシステムに触れる機会を経ることによって次第に解 消できるものと思われる。また,コンピュータになじめない生徒は 人数的にはそう多くないので,教師が適宜補助することで対応でき よう。しかし,このような生徒に対する対応は慎重であるべきであ る。このことについては,生徒に,コンピュータを使うことが目的 ではないことが実感できる経験をさせることは効果的だと考える。

また,課題解決に共同で取り組むことが,数学の学習でもあり,た のしい活動でもあることを経験させることも重要である。教師が生 徒に寄り添って,共に参加していくといった対応が望まれる。

○ 課題解決に取り組むことと意見を提出することが競合してどちら か一方しかできない生徒がいる。これは,短期的には個人的学習活       180

動または共同的学習活動に偏った学習がおこなわれていることを示 すものである。しかし,どのような参加の仕方であろうとも,その 生徒のスタイルで参加できることがコミュニケーション学習の長所 でもある。このような学習活動をコミュニケL一一一一ション学習の中で経 験することから始まって,長期的にはバランスのとれた学習活動へ と変容していくことが期待できる。それには,他者の学習態度から 学ぶ機会を設けることも重要で,肯定的相互評価が有効である。

学習課題に関して

○ 参加者が自分に適した課題を決定することはそれほど容易なこと ではない。解決に関わっていく中で,生徒が思っていた以上に難し い課題であることがわかったり,興味がある課題だと思っていても,

実は苦手なアプローチが必要な課題であったりする。また,別の課 題にも参加してみたい生徒がいる。課題の変:更をどこまで認めるか

は検討の余地がある。しかし,コミュニケV・・一一一ション学習では,よい 考え方や理想的な解法だけが認められるというわけではない。参加  している生徒が自分の考え方を披露し合う様子も事例の中には見ら

れる。また,抽出生徒SF4がインタビューで「バビロニアの人が こんなに難しいことをしていたんだということがわかって,そのこ  とだけでもおもしろかった」といっているように,わからないけれ  どおもしろいということを経験することもある。したがって,基本 的には選んだ課題の変更ができなくても致命的な問題は生じないと 考える。しかし,課題解決の後,次の課題へと発展する場合の課題 の変更は重要である。この場合は,課題の連鎖としてとらえ,もと の課題との関係を保ちながら次の課題へと移行するように援助した

い。

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○ 課題は,本来生徒自身が掲げることが理想である。今回の実践で は教師が用意して,その中から選択させた。また,生徒の中には,

自分で課題を作り出すことができないものも少なくない。さらに,

教師としても,是非取り組んでみてほしい課題がある場合もある。

このことについては,生徒自身が課題を設定できるようにした場合 でも,教師が課題の候補を用意しておくことはより効果的であると

考える。

個別学習活動に関して

○ 積極的参加姿勢にあっても,消極的学習活動しかできない生徒や,

解決に関係しない意見や消極的な参加者の態度によって参加意欲が 減衰する生徒への配慮ができるかどうかを検討しなければならない。

このことについては,ひとりの参加者としての教師の役割が重要で ある。事例の中では,特定の意見やアトリエの内容がきっかけにな って共同的学習活動に参加できるようになっていく生徒の姿が見ら れる。生徒の積極的な姿勢を,意見の提出やアトリエへの書き込み などに結びつけるようなきっかけになる意見を,教師が意図的に提 出することで,この問題の解決がはかられる。

○ 数学の学習に対して拒否的な生徒がどこまで課題解決に関わるよ  うになるかは本実践の2時間からは判断できない。これについても

教師のひとりの参加者としての関わりが重要である。また,参加者 同士のコミュニケーションの作用も大きい。今後,コミュニケーシ  ョン学習を組み入れた授業を継続的に実践していく中で,注意深く

見ていく必要がある。

意見交換に関して

○ 課題解決に関係しない意見の交換は,参加串間の良好な関係の形       182

成に役立つものではあるが,積極的参加姿勢にある生徒の意欲をそ ぐなどの問題点もある。しかし,課題解決に関係しない意見の交換 を統制することは,そのような意見交換にしか参加できない生徒を,

学習活動から閉め出すことになる。この問題については,第5章の コミュニケーションの3層構造をふまえて考察したい。

○ 自分の投げかけた質問に対して必ずしも適切な応答が返ってくる とは限らない。このことについて不満を感じる生徒が存在しうる。

これについては,参加者間の関係の問題ととらえ,参加者間での良 好な関係の醸成によって,不満の解消をねらいたい。

参加に関して

○ 共同で書き上げていった解答を消去してしまったり,拒否的とも とれる意見を提出するなどの行為がみられ,積極的に取り組んでい る生徒が不愉快な思いをすることがある。この問題についてもひと  りの参加者としての教師の働きかけが重要と考える。

○ 課題解決に関係しない意見や課題解決そのものがうまくいかない ことなどに影響されて,課題解決を取りやめてしまう生徒がいる。

この問題についても,第5章のコミュニケーションの3層構造をふ まえて考察したい。

システムに関して

○ 文字入力の難しさは,思考活動を中断させたり混乱させることが ある。しかし,現時点でこれ以上の練習時間を設けることはできな い。基本的には教師が適宜補助することと,文字以外の数式や図表 を用いた表現を可能にしたり,あるいは数学的モデルを用いた表現 のためのツールを組み込むことで対応したい。

○ 意見提出のボタンのキャプションがその意図を十分に伝えていな       183

 い。これについては,第6章で検討する。

○  「アトリエ」の内容が消えることがあるので,いったん「私のノ  ート」の部分に記入し, 「私のノート」の記述を「アトリエ」や意  見に移動させるしくみがあるとよい。 「アトリエ」については,そ  の変化の様子を意見として残しておくことによって,振り返ってみ  ることができるようになる。このような一連の構造を持ったシステ  ムへと改善する必要がある。

○ コンピュータになじめない生徒への配慮が必要である。このこと  については,授業設計に関しても考察したが,課題解決に共同で取  り組むためのひとつの道具であるという感覚を尊重し,ことさらに  コンピュータを意識しないよううながしていきたい。

○ 課題解決に関係しない意見の交換は,参日頃間の良好な関係づく  りに効果的ではある。しかし,そのような意見交換のためのボタン  は,生徒からの要望はあるが,基本的にはコミュニケーション学習  にとって好ましい方向を示していないと考える。

 「わいわい数学」の授業で用いたコミュニケーション学習のためのネ ットワーク環境は,通常の授業でコミュニケーションに参加することが 困難な生徒が数学的コミュニケーションに楽しく有意義に参加すること ができるという点で,数学教育の大衆化への対応に適したものといえる。

しかし,解決すべき事柄も山積している。これらの多くは,コミュニケ ーション学習の具現化としての「わいわい数学」の授業を実施する際の 留意事項として教師が心に留めておくべき点であるととらえる。

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