濱田祐樹1) 中島隆宏1) 武井 藍1) 脇田政之1) 松岡秀樹1)
【背景と目的】当院では 2015 年 4 月に脳神経血管内治療専門医が赴 任した.当院にて脳神経血管内治療専門医着任が脳梗塞の急性期血 行再建術に与えた影響を検討した.【方法】対象は,2014 年 4 月~
2015 年 7 月に脳梗塞に対して急性期血行再建術を施行した症例と した.2014 年 4 月~2015 年 3 月を前期,2015 年 4 月~7 月を後期 として,臨床背景,治療時間(発症-来院,来院-画像検査,画像検査-穿刺,穿刺-再開通),再開通率,退院時転帰を比較した.なお退院 時 mRS0-2,もしくは発症前 mRS まで改善,または NIHSS が入院 時より 10 以上改善したものを Good Neurological Outcome(GNO) と定義した.【結果】前期は 6 例(平均 62 歳,女性 1 例),後期は 6 例(平均 74 歳,女性 4 例)に対して急性期血行再建術を施行してい た.閉塞血管は,前期は ICA 5 例,MCA M1 1 例,後期は ICA 2 例,
MCA M1 2 例,BA 2 例であり,入院時 NIHSS は前期は中央値 17 (IQR 6.75-20),後期は 25.5(19-29)であった.治療内容は,前期は UK 動注 2 例,ステントリトリーバー 4 例,後期はステントリトリー バー 5 例,Penumbra 1 例であった.後期は前期と比較して,来院-画像検査[中央値 14 分(IQR 13-19.5) vs. 27(24.5-44),P=0.014],
画像検査-穿刺[57(47-87.25) vs. 114(86.5-139),P=0.05],穿刺-再開通[57(28.25-69.5) vs. 103(47.25-119.5),P=0.092]が短縮し,
再開通 TICI2B 以上は,後期は 100%,前期は 67%であった.退院 時 mRS 0-3 は,後期は 67%,前期は 33%であり,後期は前期と比 較 し て 退 院 時 に GNO が 多 い 傾 向 で あ っ た (100% vs. 33%,
P=0.061).【結論】脳神経血管内治療専門医着任により,急性期血 行再建術の治療時間が短縮し,退院時転帰が良好になっていた.
2-O9-4
Drip & ship の安全性と治療時間経過について 山口大学 医学部 脳神経外科1)
山口労災病院 脳神経外科2) 山口リハビリテーション病院3) 石原秀行1)
Ishihara Hideyuki
奥 高行1) 岡 史朗1) 末廣栄一1) 篠山瑞也1) 山根亜希子1) 清平美和1) 杉山修一2) 貞廣浩和1) 加藤祥一3) 鈴木倫保1) 脳梗塞超急性期の Drip & ship アプローチは有効性が示されている が,時間の節約と安全性については検証の必要がある.今回,Drip-ship された症例をまとめ,安全性と治療時間経過について報告す る.【対象】2009 年以降,一次脳卒中センターで rt-PA 静注療法を 開始後当院へ救急搬送された 41 例(drip ship 群)を対象とした.安 全性評価として,前医から当院搬入までの血圧,脈拍,神経所見の 変化,制吐剤や降圧剤の使用について検討した.また,治療時間経 過について,同時期に当院へ直接搬入され rt-PA 静注療法後血管内 治療を追加された 32 例(直接搬入群)を対照として,治療開始時間,
再灌流時間を比較検討した.【結果】搬送方法は,救急車 30 例,ド クターヘリ 11 例であった.当院搬入時 CT で救急車搬送の 1 例に 出血性梗塞を認めた.血圧の変動は救急車搬送に比べドクターヘリ 搬送で小さかった.搬送直前 NIHSS は平均 17.7 で,rt-PA 静注療 法開始までは平均 131 分で,発症から当院搬送までの平均は 217 分 であった.24 例に血管内治療が追加され,その鼠径部穿刺までの時 間は平均 296 分,再開通時間は平均 360 分で,直接搬入群よりいず れも 75 分の遅れがあった.血管内治療が追加された 24 例の 3ヶ月 後転帰は,mRS 0-2: 13 例,mRS 3-4: 9 例,mRS 5-6: 2 例であっ た.【考察】Drip-ship は搬送によるストレスは考慮が必要と考えら れた.救急車に比べドクターヘリの安全性は高いと考えられた.治 療時間経過からは,一次脳卒中センターで rt-PA 静注療法開始から 搬送開始までの時間と,当院搬入から血管内治療開始までの時間に 短縮の余地があり,時間短縮による更なる治療成績向上の可能性が あると考えられた.
2-O9-5
経皮的脳血栓回収術目的の革新的な医療連携が治療効果に及ぼ す影響の調査
独立行政法人 国立病院機構 災害医療センター 脳神経外科1) 重田恵吾1)
Shigeta Keigo
八ツ繁寛1) 早川隆宣1) 住吉京子1) 百瀬俊也1) 榎本真也1) 佐藤 慎1) 平 直記1) 正岡博幸1) 高里良男1)
【概要】Nashville hope を受け,急性期血栓回収療法への期待が高 まっている.地域の治療環境の整備として,t-PA 施行病院から血 管内治療施行病院への転送ネットワークを,2015 年 6 月から再構築 している.東京多摩地区での連携を検証し,地域治療環境の課題を 明らかにした.【対象と方法】2009 年 7 月~2015 年 6 月の間,急性 脳動脈閉塞に血管内治療をした 41 例中,転院搬送 8 例について,発 症から前医搬送・診断・治療,当院へ転院・治療・退院の流れを検 証した.【結果】8 例について,前医の画像診断(iP:picture of in-troducer)から当院到着(Door)までの時間(iP2D)は平均 122.8 ± 31.2 分.紹介医師に当院が血管内施行病院の認識あり:なしでの iP2D は 112 ± 26.5:155 ± 22.6 分(P < 0.001)で,前医の認識が iP2D 時間の短縮に関連した.3 か月後 mRS は前医が当院を認識し ていた 6 症例全例で 0 まで回復したが,認識していなかった 2 症例 は 3 だった.前医が当院を認識していた理由として血行再建機器の 講習で相互面識があった医師 3 件,地域ガイドラインで連携してい た医師 1 件があった.【考察】今回の検証で,紹介元医師が当院を 知っていることの重要性が明らかになった.講習や学会活動を通じ ての血管内治療医同士の面識が奏功していた.地域でのガイドライ ン策定も有用だった.【結語】連携の現状を検証した.出自の異な る comprehensive stroke center がひしめく都心部での連携は独特 であるが,血管内治療施行施設の周知が重要で,連携の再強化につ いて説明する.
2-O9-6
脳主幹動脈閉塞に対する急性期血栓回収療法 院外発症例への 脳血管内治療チームによる「Drip, Go, Retrieve」は有効か?
名古屋大学 医学部 脳神経外科1) 松原功明1)
Matsubara Noriaki
泉 孝嗣1) 太田圭祐1) 新帯一憲1) 田島隼人1) 伊藤真史1) 西堀正洋1) 若林俊彦1)
【背景】本邦においてもステント型血栓回収デバイスが使用可能に なり急性期主幹動脈閉塞に対する治療成績向上が期待されている.
一方で脳血管内治療医が不在の施設においては十分な対応ができな い問題がある.このような問題を踏まえ,当科脳血管内治療チーム は地域関連病院からの要請に応じて当チームの医師が直ちに現地に 移動して再開通治療を行う「Drip,Go,Retrieve」による治療を試 みている.自施設での治療成績と合わせて「Drip,Go,Retrieve」
の有効性について検討した.【方法】2014 年 4 月から 2015 年 6 月 の 15ヶ月間に,当科脳血管内治療チームにより 13 例の急性期主幹 動脈閉塞に対する血行再建療法が行われた.内訳は自施設治療 9 例,他院治療 4 例であった.それぞれの治療施設別の成績について 検討した【結果】自施設治療例と他院治療例の患者背景はそれぞれ , 平均年齢: 59 才 vs 78 才,NIHSS: 13 vs 17,ASPECT-DWI: 9.0 vs 7.0,t-PA 使 用: 56% vs 25%で あ っ た.治 療 成 績 は,全 例 で TICI2B 以上の再開通が得られた.発症から再開通までの平均時間 は 327 分 vs 308 分,穿刺から再開通までの時間は 77 分 vs 70 分で あった.退院時 mRS 0-2 は,67% vs 50%であった.結果として他 院治療例「Drip,Go,Retrieve」においても院内治療例と同等の対 応と成績が得られていた.【結語】「Drip,Go,Retrieve」は脳血管 内治療医不在施設における急性期主幹動脈閉塞症例に対する解決策 の一つとなり得る.
2-O9-7
移動式血栓除去チームによる急性期再開通治療の治療成績 -Kanazawa mobile embolectomy team の取り組み-金沢大学 医学部 脳神経外科1)
小松市民病院 脳神経外科2) 金沢市立病院 脳神経外科3) 恵寿総合病院 脳神経外科4) 富山労災病院 脳神経外科5) 浅ノ川総合病院 脳神経外科6) 内山尚之1)
Uchiyama Naoyuki
毛利正直1) 見崎孝一1) 上出智也1) 東 良2) 廣田雄一3) 岩戸雅之4) 吉田優也5) 光田幸彦6) 南出尚人1) 正印克夫1) 中田光俊1)
【目的】石川県では血管内治療専門医不在病院でも急性期再開通治 療を行えるように,当院に Kanazawa mobile embolectomy team (KMET)を組織し,出張治療を行う方式を 2014 年 3 月より始めた.
初期成績を振り返り今後の課題を明らかにする.【方法】石川県内 9 病院と富山県内 1 病院が参加した.初療病院で主幹動脈閉塞が確認 されると,当院に電話後 KMET が出向いて治療を行った.再開通 は TICI grade で,臨床的予後は 30 日後の mRS で評価した.年齢,
性別,NIHSS,ASPECTS-DWI,発症時刻,到着時刻,MRI 施行時 刻,KMET 連絡時刻,iv-tPA 開始時刻,大腿動脈穿刺時刻,および 再開通時刻を記録し,各種記録項目から予後良好の因子を検出した.
【結果】2015 年 7 月までに 35 例に再開通治療を行った.2 例は当院 転送後に,33 例は KMET が出向いて治療をした.結果は,TICI 2B&3: 77%,mRS 0-2: 57%であった.平均時間経過は,発症から 病院まで 68 分,到着から MRI まで 76 分,到着から tPA まで 96 分,
到着から穿刺まで 161 分,穿刺から再開通まで 74 分,発症から再開 通までは 303 分であった.また到着から KMET への連絡まで 106 分,連絡から再開通までは 130 分であった.予後良好の因子は,
NIHSS 20 未満,ASPECTS-DWI 8 以上,TICI 2B&3,の 3 項目であっ た.【結論】当院を中心とする半径 75km の地域において,現在の時 間経過で良好な予後が期待できるのは NIHSS 20 未満,ASPECTS-DWI 8 以上の患者であった.より重症で虚血の強い症例の予後改 善には全体の時間短縮が望まれるが,KMET への連絡から再開通 までの時間は 120 分前後と一定であるので,今後は初療病院での患 者到着から画像診断までの時間を短縮する必要がある.
2-O10-1
急性血行再建術において血栓直接吸引(ADAPT) とステント型 回収デバイスそれぞれを第一選択とした場合での治療成績の違 い
小倉記念病院 脳卒中センター 脳神経外科1) 西 秀久1)
Nishi Hidehisa
石井 暁1) 松本省二1) 定政信猛1) 甲斐康稔1) 石橋良太1) 五味正憲1) 坂 真人1) 岡田卓也1) 瀧田 亘1) 宮田 悠1) 永田 泉1)
【目的】自施設において Stent retriever(SR),A direct aspiration first pass technique(ADAPT)それぞれを 1st choice とした時期を 経験したため,両者の治療成績を比較した.【対象と方法】我々の施 設では 2014 年 1 月-8 月までは急性血行再建術において ADAPT,
SR を症例毎に使い分けていたが,手技時間短縮のために治療戦略 のプロトコル化を行い,2014 年 9 月-2015 年 3 月まで ADAPT を 1st choice とし,2015 年 4 月以降は SR を 1st choice とした.今回,
ADAPT を 1st choice とした群(以下 AD 群)と SR を 1st choice と した群(以下 SR 群)で,背景因子,治療手技および治療成績を後方 視的に二群間比較した.【結果】AD 群は 37 例,SR 群は 21 例であっ た.Device mTICI2b-3 / Final mTICI2b-3 は AD 群 51%/64% vs SR 群 85%/90%と 両 者 の 再 開 通 率 に 有 意 差 を 認 め た (P=0.006 /P=0.02).AD 群 に お け る 使 用 カ テ ー テ ル 別 の 再 開 通 率 (mTICI2b-3)の内訳は,3MAX:2/12 例(16%),4MAX:2/2 例 (100%),5MAX:2/5 例(40%),ACE:13/17 例(76%)であり,AD 群で So-numbra/Tre-numbra に移行したものが 9/36 例(25%)あっ た.P2R 中央値は AD 群 64min vs SR 群 69min(p=0.72).出血性 合併症:PH1 + PH2 は AD 群 5.4% vs SR 群 0.0%(p=0.27),SAH AD 群 5.4% vs SR 群 14%(p=0.24),SICH は両群とも認めず.退 院時予後良好(mRS0-2)は AD 群 24% vs SR 群 38%(p=0.26)で あった.【考察・結語】SR の方が ADAPT と比較して再開通率が良 好であった.ADAPT では大径吸引カテーテルを閉塞部まで誘導 できるかどうかが再開通率に大きく影響すると考えられた.出血性 合併症の観点からは,SR でやや SAH が多い傾向が示唆されたが SICH は認めず,機能的予後への影響は少ないと考えられた.