本章では,本研究においてはじめて骨芽細胞分化促進効果が明らかとなった
5,6-dehydrokawainについて,その標的分子を同定することを目的とした。第4
章において,DKの骨芽細胞分化促進作用にA環の構造は重要であり,B環の パラ位に疎水性の置換基を導入することで,活性が上昇することを見出した。
これは,B環のパラ位への置換基導入がDKの活性を低下させず,さらに疎水 性置換基導入により分子の疎水性が向上し,細胞への浸透性が高まったためと 推察した。よって,B環パラ位を介してアフィニティービーズや蛍光基を接続 することでDKの標的分子の同定や可視化が可能であると考え研究を行った。
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第 1 節 5,6-Dehydrokawain の標的分子同定に使用する
分子プローブの機能評価
1. 目的
本節では,第4章にて見出した5,6-dehydrokawainのアルキン体4-23の作用機 構の評価を目的とした。アルキン体4-23 (Fig. 5-1)は,アジド基を有する蛍光プ ローブやアフィニティービーズと,ヒュースゲン反応により銅触媒存在下で簡 便に連結する事が出来る(Scheme 5-1)79。そこで,まずはアルキン体4-23がDK と同様の作用を有するかを骨芽細胞分化促進活性の測定により確かめた。さら に,DNAマイクロアレイを用いて,アルキン体4-23およびDKをMC3T3-E1細 胞に添加した際の骨代謝関連遺伝子の発現状態を調べ比較した。
Fig. 5-1. Structure of DK analog 4-23.
Scheme 5-1. Cu-catalyzed azide alkyne cycloaddition.
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2. 結果と考察
初めに,DKの標的分子同定に使用する分子プローブとして,DKのアルキン 体である化合物4-23が使用できるかを検討するため,DKと4-23 との活性発現 機構の評価を行った。化合物4-23は,30 µMの終濃度において60 µMのDK と同様のカルシウム沈着促進作用を示した(Fig. 5-2)。また,DNAマイクロアレ イの結果をFig. 5-3に示した。一つ一つのプロットが1つの遺伝子を表しており,
コントロールに対する DK 添加細胞における骨代謝関連遺伝子の相対発現比を 横軸に,コントロールに対する化合物4-23添加細胞における骨代謝関連遺伝子 の相対発現比を縦軸に現してプロットした。単回帰分析の結果,これらの相関
係数は0.957と非常に強い相関が認められたことより,DKと類縁体4-23は骨代
謝関連遺伝子の発現に与える影響が非常に類似しており,骨芽細胞分化促進効 果に関して同様の作用機構を有している可能性が強く示唆された。以上の結果 より,アルキン 4-23 は,DK の標的分子同定に使用できる分子プローブである と結論づけた。
Fig. 5-2. Effect of 4-23 on mineralization of MC3T3-E1 cells. The cells were cultured with or without test compounds in an osteoblast differentiation medium containing ascorbic acid (50 µg/mL) and β-glycerophosphate (10 mM) for 10 days. For quantification of mineralization, cells were solubilized with cetylpyridinium chloride and the absorbance of the solution was measured at 550 nm. The data represent means
± SD (n = 12). The various letters indicate significant differences in Tukey-Kramer test results (P < 0.05).
0 50 100 150
200
a a
b
Control DK (60M )
M in e ral iz at io n ( % o f C o n tr o l)
4-23(30M )144
Fig. 5-3. Result of single regression analysis of gene expression changes caused by addition of DK and compound 4-23 by DNA microarray.
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第 2 節
5,6-Dehydrokawain の細胞内局在
1. 目的
本節では,5,6-dehydrokawainのアルキン体4-23のMC3T3-E1細胞内における 局在を観察することを目的とした。
2. 結果と考察
MC3T3-E1細胞におけるDKの細胞内局在を調べる目的で,DKと類似した骨
芽細胞分化促進効果を示す化合物4-23を細胞に添加し,その後,ヒュースゲン 反応によりアジド基を有する蛍光基質(Azide fluor 488)と反応させて検出する事 を試みた(Fig. 5-4)。細胞の核は,DAPI (4',6-diamidino-2-phenylindole)により染色 した。その結果,化合物4-23, Azide fluor 488の添加およびヒュースゲン環化反 応すべてを行った際にのみ,核および細胞質全体に広がる局在を観測できた。
以上の結果より,4-23 が核を含む細胞質全体に行き渡って存在する可能性が 示唆された。
Fig. 5-4. Intracellular localization of compound 4-23.
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月桃(Alpinia zerumbet)と同じショウガ科植物であるハナショウガ(Zingiber zerumbet SMITH)に豊富に含まれるセスキテルペンであるzerumbone(Fig. 5-5)は,
抗がん作用や抗炎症作用など様々な生物活性を有することが報告されている80。 Murakamiらは,zerumboneの示す抗炎症作用について,Kelch-like ECH-associated protein 1-NF-E2 related factor 2 (Keap1-Nrf2)タンパク質複合体に作用し,Nrf2に よる第二相解毒酵素群の誘導を促進する特異的な作用機構81(Fig. 5-5) に対し,
求核付加を受けやすいzerumboneのα, β-不飽和カルボニル基に様々なタンパク 質が非特異的に結合することによって,タンパク質の品質管理機構を担う heat
shock factor-1 (HSF-1)を誘導し,その結果として抗炎症作用を示す非特異的な作
用機序が存在することを報告している82。その際,zerumboneは,核を含む細胞 質全体のタンパクに結合し,存在することが報告されている83。
月桃から得られた DK についても,ラクトンのカルボニル基から共役の 2 重 結合が伸びており, zerumbone のような機構で様々なタンパクに作用している 可能性が考えられた。今後,さらなる標的分子の同定が必要と考えられる。
Fig. 5-5. Nucleophilic addition of cysteine thiol to zerumbone.
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第 3 節 実験項
1. 第1節の実験方法
1-1. 機器
マイクロプレートリーダーは,Molecular Devices社製 Spectra Max M2 を 使用した。
1-2. 実験試料および試薬
化合物4-23は第4章にて合成した物を用いた。DNAマイクロアレイは,三菱 レイヨン製 フォーカストアレイ ジェノパールを用いた。その他の試薬につ いては第4章にて使用したものを用いた。
1-3. 細胞培養
MC3T3-E1細胞は,第4章と同様に取り扱った。
1-4. MC3T3-E1細胞を用いた骨芽細胞分化促進効果の評価
骨芽細胞分化促進活性試験は,第4章第2節と同様の方法で行った。
1-5. DNAマイクロアレイ解析
MC3T3-E1細胞を5.0×104 cells/wellの密度で24 well プレートに播種し,培養 培地で3日間培養した。分化誘導培地とともに,DMSO (溶媒コントロール)も しくはサンプルを溶解させ,さらに2 日間培養した。培養後,TRIzol 試薬(Life Technologies)およびRNeasy Mini Kit(Qiagen)を用いてTotal RNAを抽出した。
抽出したTotal RNAを用いてBiotin標識RNAを作製した後, 214個の骨代謝関
連遺伝子を搭載したフォーカスト DNA マイクロアレイ (Genopal Mouse Bone Metabolism Chip, Mitsubishi Chemical, Tokyo, Japan)を, 製造者のプロトコールに 従って実施した。
1-6. 統計処理
統計解析は,GraphPad Prism V5.02 softoware for Windows (Graphpad Softoware) を用い,一元配置分散分析と Tukey-Kramer の多重比較検定に供した。5%未満
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の危険率で,コントロールとの有意差の有無を判定した。
2. 第2節の実験方法
2-1. 装置
蛍光顕微鏡観察は,Olympus IX71 microscopeを用いて行った。
その他の装置は,第3章と同様のものを用いた。マイクロプレートリーダーは,
Molecular Devices社製 Spectra Max M2を使用した。
2-2. 実験試料および試薬
化合物 4-23 は第 4 章にて合成した物を用いた。PBS, Azide-fluor 488 は
Sigma-Aldrich製を用いた。10%-中性緩衝ホルムアルデヒド液はナカライテスクより購
入した。Click-iT® Cell Reaction Buffer Kit, ProLong Gold Antifade Reagent with
DAPIはinvitrogen製を購入した。その他の試薬は可能な限り最上級グレードのものを
用いた。
2-3. 細胞培養
MC3T3-E1細胞は,第4章と同様に取り扱った。
2-4. イメージング実験
フィルムボトムディッシュ(松浪硝子工業株式会社)に,MC3T3-E1細胞を2
×105細胞播種した。1日後,DMSO (control)もしくは化合物4-23 (30 µM)を培 養培地(FBS添加なし)に溶解させて細胞に添加した。30分後,PBSにて洗浄し た後,10%ホルムアルデヒド溶液で固定化した。固定化した細胞をPBSで洗浄 し,Click-iT® Cell Reaction Buffer Kitを用いて,細胞内に浸透した化合物4-23の アセチレン基とAzide-fluor 488をヒュースゲン反応により環化させた。1% BSA およびPBSで洗浄した後,DAPIで核を染色し,蛍光顕微鏡で観察した。
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