第 3 章 月桃根茎由来 5,6-dehydrokawain と
第 4 節 5,6-Dehydrokawain および類縁体の合成
1. 目的
骨芽細胞の分化促進効果が見出されたDKが,実際に生体において骨粗鬆症 効果を有するのかを検証することが重要である。そこで本節では,動物実験に 供することの出来る分量のDKを有機合成により得ることを目的とした。
過去に5,6-dehydrokawainをはじめとするkavalactoneに関する合成法がいくつ か報告されている(Scheme 3-1)。 Correiaらは,Heck反応によるkavalactoneの 合成を報告している62,63。また, aldol反応を用いたDK類縁体の合成も複数報告 されている64,65。本節では,量的供給と共に構造多様性を有するDK類縁体を得 ることも視野に入れ,多種類のビルディングブロックが市販されている利点を
考慮してSuzuki-Miyaura クロスカップリング66による新規合成ルートを検討し
た。また,既存の方法によるDKおよびDK類縁体の合成も試みた。
Scheme 3-1
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2. 結果と考察
4-Hydroxy-6-methyl-2-pyroneをジメチル硫酸を用いて, メチル化体3-3を合成 した (Scheme 3-2)67。メチル化体3-3にSeO2を作用させてアルデヒド3-6とし た後,高井反応68により低収率であるものの化合物3-4を合成した。化合物3-4 とアリールボロン酸とのカップリングにより, 目的のDK (2-5)を合成した。
また, McCrackenらにより報告されている方法も行った(Scheme 3-3)。マグネ シウムをメタノール溶液中で加熱(60 ℃)し, Mg(OMe)2を調製した。この溶液 中に化合物3-3とベンズアルデヒドを添加し,加熱還流を6時間実施した。溶媒 を除去した後,酢酸水溶液(3.3 M)を添加してEtOAcで3回抽出した。有機層 を合わせて水で洗浄した後,エバポレータで濃縮した。粗生成物は,移動相溶 媒に溶解させ,ODSカラムを用いた逆相分取HPLCで精製した。純度は,HPLC
により95%以上である事を確認した。Scheme 3-2に示した経路では、化合物3-6
の高井反応によるヨウ素化が低収率であった。それに対して、Scheme 3-3に示 したアルドール反応の経路では,中程度の収率ながら市販の3-5から2工程でDK を合成できた。本方法を用いて動物実験に必要なDKを合計約5 g調製した。
Scheme 3-2
Scheme 3-3
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第 5 節 実験項
1. 使用機器
マイクロプレートリーダーは,Molecular Devices社製 Spectra Max M2を使 用した。高速液体クロマトグラフィー(HPLC)は,分析および分取用ともに島津 製作所製のものを用いた。システムコントローラー (CBM-20A), オートサンプ ラー (SIL-10AP), デガッサー (DGU-20A), ポンプ (LC-20AR), 紫外可視検 出器 (SPD-20A)で分析を行った。
2. 試薬
化合物(DKおよびDDK)の単離は,第2章にて述べた。Alpha-minimum essential medium (α-MEM)およびpenicillin streptomycin は,Sigma-Aldrich社製を用いた。
FBSとGlutaMAXTMは,ThermoFisher scientific社より購入た。アスコルビン酸 お
よびβ-glycerophosphateは和光純薬工業株式会社より購入した。その他の試薬に
ついては,可能な限り最上級のグレードを使用した。
3. 細胞培養
MC3T3-E1細胞およびRAW264細胞は,RIKEN Cell Bank (Tsukuba, Japan)よ り購入した。細胞は,10% FBS, 1% Glutamax, 100 units/mL penicillin, 100 µg/mL
streptomycinを添加したα-MEM培地にて培養した(培養培地)。MC3T3-E1細
胞を骨芽細胞へと分化誘導させるため,50 µg/mL ascorbic acidと10 mM
β-glycerophosphateを培養培地に添加した分化培地を用いた。サンプルは,DMSO
に溶解したものを用い,DMSOの終濃度が0.1% (v/v)以下となるように培地に 添加した。培養中,培地を2, 3日おきに交換した。細胞は,5% CO2, 37 ℃の 条件で培養した。
4. 統計処理
統計解析は,GraphPad Prism V5.02 softoware for Windows (Graphpad Softoware) を用い,一元配置分散分析とDunnettの多重比較検定に供した。5%未満の危険 率で,コントロールとの有意差の有無を判定した。
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5. 第1節の実験
5-1. MC3T3-E1細胞におけるALP活性促進作用の評価
MC3T3-E1細胞を5.0×104 cells/wellの密度で24 well プレートに播種し,培養 培地で7日間培養した。7日間培養後,分化誘導培地に,DMSO (溶媒コントロ ール)もしくはサンプルを溶解させた溶液に交換し,さらに7日間培養した。
細胞をPBSで洗浄した後,lysisバッファー(0.1 M Tris-HCl pH 7.5 containing 0.1%
Triton-X 100) 100 µLを添加し,超音波ホモジナイザーで細胞を溶解させた。細
胞溶解液50 µLを96 well プレートに分注し,TRACP and ALP assay kit (タカラ バイオ株式会社)の基質溶液を50 µL添加後,37 ℃で30 minインキュベートし た。インキュベート後,マイクロプレートリーダーで405 nmにおける吸光度を 測定した。本方法は,基質であるp-nitrophenyl phosphateがALPにより加水分解 されることにより生じるp-nitrophenol の405 nmにおける吸光度を測定すること でALP活性を評価する方法である。ALP活性促進率は,コントロールの吸光度
を100%とした相対値として算出した。
5-2. MC3T3-E1細胞におけるカルシウム沈着促進作用の評価
MC3T3-E1細胞を5.0×104 cells/wellの密度で24 well プレートに播種し,培養 培地で7日間培養した。分化誘導培地とともに,DMSO (溶媒コントロール)も しくはサンプルを溶解させ,さらに13日間培養した。細胞は,冷却した70% EtOH にて固定し,20 mM alizalin red S 溶液(和光純薬工業株式会社)で染色した。
カルシウム沈着量の定量のため,cetylpyridinium chloride溶液 (10% w/v)で細胞 及び色素を溶解させ,96 well プレートに移したのちに,550 nmにおける吸光度 をマイクロプレートリーダーで測定した。カルシウム沈着の促進率は,コント ロールの吸光度を100%とした相対値として算出した。
5-3. MC3T3-E1細胞における細胞増殖抑制作用の評価
細胞数の測定は,WST-8 試薬(同仁化学)を用いて行った。MC3T3-E1 細胞 を5.0×104 cells/wellの密度で24 well プレートに播種し,培養培地で7日間培養 した。分化誘導培地とともに,DMSO(溶媒コントロール)もしくはサンプルを 溶解させ,さらに7日間培養した。WST-8試薬を各wellに加えて30分インキュ ベートした後,450 nmにおける吸光度をマイクロプレートリーダーで測定した。
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細胞増殖率は,コントロールの吸光度を100%とした相対値として算出した。
6. 第2節の実験 6-1. 装置
RT-PCR装置は,StepOnePlusTM Real time PCR System (Life Technologies)を使用 した。
6-2. 試薬
各種 1 次抗体(p38 mitogen-activated protein kinase (MAPK)), phospho-p38 MAPK (p-p38), p44/42 MAPK (ERK1/2), phosphop44/42 MAPK (Thr202/Tyr204;
p-ERK1/2), stress-activated protein kinase/jun-amino-terminal kinase (SPAK/JNK;
JNK), phospho-JNK (p-JNK))は,すべてCell Signaling Technology社製を用いた。
6-3. 定量的RT-PCR
MC3T3-E1細胞を5.0×104 cells/wellの密度で24 well プレートに播種し,培養 培地で7日間培養した。分化誘導培地とともに,DMSO (溶媒コントロール)も しくはサンプルを溶解させ,さらに 2 日間培養した。培養後,TRIzol 試薬
(invitrogen)を用いて細胞を溶解させ,RNeasy Mini Kit (Qiagen)によって total RNA を抽出した。抽出した total RNA から PrimeScript TM Reverse Transcriptase (Takara Bio)による逆転写反応により cDNA を得た。その後,Fast SYBR Green Master Mix (Life Technologies)と各種プライマー(Table 3-1)を用いて定量的
RT-PCRを行った。各種mRNA発現量は,比較Ct法により,コントロールのmRNA
発現量に対する各試験区のmRNA発現量をmRNA発現率として算出した。内部 標準としてβ-actinのmRNA発現量で標準化を行った。
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Table 3-1. Primer pairs in this study
Gene name Primer Primer sequence (5' to 3')
Actb Forward CATCCGTAAAGACCTCTATGCCAAC
Reverse ATGGAGCCACCGATCCACA
Runx2 Forward CTGCAAGCAGTATTTACAACAGAGG
Reverse GGCTCACGTCGCTCATCTT
Osterix Forward ATGACTCATCCCTATGGCTCGTG
Reverse AGTAGGTGTGTTGCCTGGACCTG
Alpl Forward GCAGTATGAATTGAATCGGAACAAC
Reverse ATGGCCTGGTCCATCTCCAC
Bglap Forward TCTCTGACCTCACAGATGCCAAG
Reverse AGCGCCGGAGTCTGTTCACTA
6-4. ウエスタンブロット
MC3T3-E1細胞を10.0×104 cells/wellの密度で12 well プレートに播種し,培養 培地で7日間培養した。分化誘導培地にDMSO (溶媒コントロール)もしくはサ ンプルを溶解させ, 0, 5, 15, 30分インキュベートした。インキュベート後,細胞を PBSで2回洗浄しLysis buffer (Roche Diagnostic)で抽出した。ライセートを13,000
rpm, 4 ℃で5分間遠心し,上清を回収した。上清のタンパク量は,Pirce BCA
Protein Assay Kit (Thermo Scientific)を用いて定量し,サンプル間で均一となるよ う適宜希釈した。ライセートを2-mercaptoethanolを 5%含有させた2×Lamimli
Sample Buffer (Bio-Rad)に溶解させ,100 ℃で5分間変性させた。同量のタンパ
クをSDS-PAGEにて分離し,PVDFメンブレン (Merck Millipore)に転写した。2%
ECL Blocking reagent (GE Healthcare)でブロッキングを行った後,TPBSで各種一 次抗体を希釈し,4 ℃で一晩インキュベートした。その後,メンブレンをTPBS にて4回洗浄し,2次抗体(GE Healthcare)にて室温,1時間反応させた。反応後,
さらにTPBSで4回洗浄し,ECL Prime Western Blotting Detection Reagent (GE Healthcare)を添加し,LAS-4000 Luminescent Image Analyzer (GE Healthcare)を使用 して検出した。タンパクの定量は,Multi Gauge version 3.11 software (Fujifilm Life Science)を用いて行った。
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7. 第3節の実験 7-1. 試薬
Mouse RANK Ligand, Soluble Recombinant (RANKL) はR&D Systems (Minneapolis, USA)より購入した。1M Tris-HCl (pH 7.5)はNippon Gene製,
TRACP/ALP assay kit はTakara Bio社製を用いた。水酸化ナトリウムは和光純薬
工業株式会社より購入した。その他の試薬については,可能な限り最上級のもの を購入した。
7-2. RAW264 細胞におけるTRAP活性および細胞数の測定
RAW264細胞を2.5×104 cells/wellの密度で24 well プレートに播種し,24時間 培養した。培養後,DMSO (溶媒コントロール)もしくはサンプルを溶解させた
溶液にRANKLを10 ng/mLとなるよう加えた分化誘導培地に交換し,さらに48
時間培養した。培養後,細胞を PBS で洗浄した後に回収し,lysis buffer (0.1 M Tris-HCl, 0.1% Triton-X100)で溶解した。細胞溶解液50 µLを96 well プレートに
分注し,TRACP and ALP assay kit (タカラバイオ株式会社)の基質溶液を50 µL添
加後,37 ℃で30 minインキュベートした。インキュベート後,NaOH溶液50 µL
を添加して反応を停止させた後,マイクロプレートリーダーで 405 nm における 吸光度を測定した。細胞数は,培養細胞にWST-8溶液(Dojindo)を加え,30分後
に 450 nm における吸光度をマイクロプレートリーダーにて測定し評価した。
TRAP 活性および細胞数は,コントロールの吸光度を 100%とした相対値として 算出した。
8. 第4節の実験 8-1. 試薬
4-Hydroxy-6-methyl-2-pyroneは東京化成工業株式会社より購入した。SeO2は純 正化学のものを用いた。塩化クロム(II)はナカライテスク,S-phosはシグマ,マグネシ ウム, メタノール,テトラヒドロフラン (THF) は和光純薬工業製を購入した。その他 の試薬は,可能な限り最上級のものを購入して使用した。
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8-2. 装置
NMR装置はJEOL JNM-ECZ400Sを用いた。HRMSはThermo scientific Q
ExactiveTMを用いた。高速液体クロマトグラフィー(HPLC)は,分析および分取
用共に島津製作所製のものを用いた。システムコントローラー (CBM-20A), オ ートサンプラー (SIL-10AP), デガッサー (DGU-20A), ポンプ (LC-20AR), 紫 外可視検出器 (SPD-20A)で分析および分取を行った。
8-3. 5,6-Dehydrokawain (2-5) の合成
マグネシウム(1.56 g, 64.2 mmol)をメタノール (150 mL) 中, 窒素雰囲気下で 加熱(60 ℃)し懸濁させた。この中に4-mthoxy-6-methyl-2-pyrone67(3-3, 3.00 g, 21.0 mmol)とbenzaldehyde (2.59 mL, 25.5 mmol)を加え,60 ℃で6時間加熱した。
冷却した後,3.3 M酢酸水溶液(100 mL)で酸性とし,酢酸エチルで4回抽出した。
抽出エキスを無水硫酸ナトリウムで乾燥し,減圧下溶媒を除去した。逆相HPLC (Detection: 210 nm, Solvent: MeCN/H2O (70:30), Flow rate: 10 mL/min, Column:
Wakosil-Ⅱ5C18RSPrep φ20×250 mm, Rt: 11.1 min) で精製し, 第2章第2節で構 造を同定したDK (2-5) 2.33 g (10.2 mmol, 49%)を白色固体として得た。
2-5:1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.52-7.35 (5H, m, aromatic), 7.50 (1H, d, J = 15.9 Hz, 8-H), 6.58 (1H, d, J = 16.0 Hz, 7-H), 5.94 (1H, d, J = 2.4 Hz, 5-H), 5.49 (1H, d, J = 2.0 Hz, 3-H), 3.82 (3H, s, MeO-); 13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ 171.1, 164.0, 158.6, 135.8, 135.2, 129.4, 128.9, 127.4, 118.6, 101.3, 88.9, 55.9; HRMS (ESI): [M+H]+ calcd for C14H13O3, 229.0865; found, 229.0859.
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第 4 章 5,6-Dehydrokawain の骨芽細胞分化促進作用および
破骨細胞分化抑制作用に対する構造活性相関
第3章において,月桃(Alpinia zerumbet)より単離した5,6-dehydrokawain(DK) にマウス頭蓋冠由来骨芽前駆細胞MC3T3-E1細胞の分化促進作用があることを 見出した。近年,生物活性物質とその標的分子との親和性を利用することで,
無数の生体分子の夾雑物の中から目的の生体分子を精製する手法としてアフィ ニティ精製法が用いられている。具体的には,生物活性物質(リガンド)をビ ーズなどの固相担体に固定化し,標的分子を含む細胞や動物組織の抽出液から アフィニティークロマトグラフィーによって精製することで標的分子を単離す ることができる。その際,リガンドの生物活性を損なわない位置を用いて固相 担体に固定化する必要がある。そこで,今後, DKの標的分子の同定を行うため には,活性に関与する重要構造因子を特定する必要があると考えられた。
一方,骨芽細胞の分化促進効果がある食品中の天然物としては,これまで に大豆などに含まれるisoflavoneであるdaidzein69,70や,同じく flavonoidである kaempferol71,14などが知られている(Fig. 4-1)。
Fig. 4-1. Structures of daidzein and kaempferol.