ンシを0に設定した。この場合、波形の読み出し準備が完了していないにもかかわらず、デー タを読み出す事となる。例として、EROSに正弦波を入力した場合に得られた波形を図4.11 に示す。最初の約 25 nsまでの区間において、意味の無いデータが記録されている。そのた め、本研究において50 ns未満のデータは使用しなかった。現在は、レイテンシの最適値が得 られており、この問題は解決している。
4.2 LYSO 結晶の比較
ECALに用いるLYSO結晶について、Saint-Gobain社製結晶とOXIDE社製結晶が候補に 挙がっている。両者の性能を比較するため、Saint-Gobain社製65本および、OXIDE社製16 本について測定した。
4.2.1 測定セットアップ
セットアップを図4.12に示す。反射材で覆っていないLYSO結晶の両端を、1.5 mm厚の Eljen Technology社製のシリコンクッキーEJ-560 [41]で光検出器と光学的に接続し、60Co 線源から放出されるガンマ線を測定した。光検出器には、浜松ホトニクス社製のメタルパッ ケージ光電子増倍管 (PMT: Photomultiplier Tube) R7600-06 *1を2 台使用した。片方の
PMTには+800 V、もう片方には+740 Vの電圧を印加して使用した。
図4.12: LYSO結晶の性能比較に用いたセットアップ。
測定は、25となるよう設定した恒温槽内で行った。LYSO 結晶の中央に60Co線源を置 き、1173 keVと1333 keVガンマ線を測定した。PSIにおいて開発されたDRS4 Evaluation
Board [49]を用いて信号波形を記録した。本測定では波形から求めた電荷量を光量の指標と
した。ここで電荷量は、波形の電圧値の時間積分値をインピーダンス50 Ωで除したものと して定義した。Saint-Gobain社製のLYSO結晶の測定において得られた波形と電荷量の分布 を、それぞれ図4.13と図4.14に示す。
*1MEG実験の液体キセノンカロリメータのために特注されたPMTである。極性が正である点や、アッセンブ リを排している点などの違いがある。
Time [ns]
0 200 400 600 800 1000
Amplitude [mV]
−250
−200
−150
−100
−50 0
図4.13: PMTで読み出した LYSO結晶の 信号の例。
Charge [pC]
0 100 200 300 400 500 600 700
Counts / 2 pC [A.U.]
0 100 200 300 400 500 600
図4.14: LYSO 結晶の比較における電荷量
の分布。260 pCと300 pCにおいて光電効 果によるガンマ線のピーク(光電ピーク)が 確認できる。
4.2.2 測定結果
まず、信号の形状として、半値全幅(FWHM: Full Width at Half Maximum)を比較した。
2つのPMTそれぞれについて、光量で規格化した平均波形のFWHMを取得した。これらの 平均を、そのLYSO結晶のFWHMとした。LYSO結晶のFWHMの分布を図4.15に示す。
Saint-Gobain社製結晶は46.4 ns、OXIDE社製結晶は44.5 ns である。OXIDE社製結晶の FWHMが0.4%だけ狭く、わずかに早い応答を示した。
次に、信号の光量を比較した。この比較には、波形から求めた電荷量の分布における
1333 keVの光電ピークに対して、ガウス関数でフィッティングを行った場合の中央値を用い
た。1173 keVの光電ピークは、LYSO結晶の自発光の影響を排するために使用しなかった。
2つの PMTそれぞれについて電荷量を取得し、これらの平均値をそのLYSO結晶の光量と した。LYSO結晶の光量の分布を図4.16に示す。Saint-Gobain社製結晶は277 pC、OXIDE 社製結晶は250 pCである。Saint-Gobain社製結晶の光量が10%だけ大きく、発光量の性能 で優れている。
最後に、エネルギー分解能を比較した。分解能は、σ/Q1333 keVとして定義した。ここでσ は、電荷量の分布における1333 keV の光電ピークに対してガウス関数でフィッティングを 行った場合の標準偏差、Q1333 keV は1333 keVの光電ピークの電荷量である。2つのPMT それぞれについて分解能を取得し、これらの平均値をそのLYSO結晶の分解能とした。LYSO 結晶の分解能の分布を図4.17に示す。Saint-Gobain社製結晶は4.36%、OXIDE社製結晶は
4.37%である。非常に僅差であり、明確に違いがあるとは言えない。
4.2 LYSO結晶の比較 45
Saint-Gobain Entries 65 Mean 46.4 RMS 0.6352
FWHM [ns]
42 44 46 48 50
Fraction / 0.5 ns [A.U.]
0.0 0.1 0.2 0.3
Saint-Gobain Entries 65 Mean 46.4 RMS 0.6352
OXIDE Entries 16 Mean 44.46 RMS 1.138
OXIDE Entries 16 Mean 44.46 RMS 1.138
Saint-Gobain Entries 65 Mean 46.4 RMS 0.6352
図4.15: LYSO結晶の信号波形のFWHMの比較。
OXIDE Entries 16 Mean 250.4 RMS 15.88
Charge [pC]
200 250 300 350
Fraction / 10 pC [A.U.]
0.0 0.1 0.2 0.3 0.4
OXIDE Entries 16 Mean 250.4 RMS 15.88
Saint-Gobain Entries 65 Mean 277.2 RMS 13.33
Saint-Gobain Entries 65 Mean 277.2 RMS 13.33
OXIDE Entries 16 Mean 250.4 RMS 15.88
図4.16: LYSO結晶の信号の光量の比較。
OXIDE Entries 16 Mean 4.37 RMS 0.2828
Energy Resolution [%]
4.0 4.5 5.0 5.5
Fraction / 0.1% [A.U.]
0.0 0.1 0.2 0.3
OXIDE Entries 16 Mean 4.37 RMS 0.2828
Saint-Gobain Entries 65 Mean 4.364 RMS 0.1532
Saint-Gobain Entries 65 Mean 4.364 RMS 0.1532
OXIDE Entries 16 Mean 4.37 RMS 0.2828
図4.17: LYSO結晶の信号のエネルギー分解能の比較。
4.2.3 結論
本測定において、ECALで最も重視するエネルギー分解能について、Saint-Gobain社製結
晶とOXIDE社製結晶に明確な違いは無かった。測定に使用した60Coからのガンマ線のエネ
ルギー1333 keVは、COMET実験の測定対象となる運動量105 MeVの電子と比較して非常 に小さい。したがって、ECALに適した結晶を選定するためには、さらに運動量105 MeVの 電子ビームによる性能評価をふまえてから行う必要があると結論づけた。