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7.8 結果と考察
σsame = 0.18 ns、σdiff = 0.32 nsを用いれば、
σsignal = 0.18 ns、 (7.20)
σtrigger= 0.26 ns (7.21)
と見積もる事ができる。この値は参考程度ではあるが、トリガー部の時間分解能が信号と比較 して悪い事が見て取れる。
7.8 結果と考察
このビーム試験において、ECAL試作機は
エネルギー分解能5%以下の要求値を十分満たす
位置分解能10 mm以下の要求値を十分満たす
トリガー検出器としての時間分解能1 ns以下の時間分解能の要求を十分満たす
事を示した。しかし、時間分解能について、Phase-Iのビーム測定において要求される粒子識 別能力のための時間分解能0.25 ns程度の時間分解能については、達成できているとは言えな い。これも含め、確認できた問題点や課題点を以下で述べる。
デッドチャンネル
今回のビーム試験においてデッドチャンネルが頻出した。解析によって、デッドチャンネル の漏れ込みがあるようなイベントは排除したが、実機におけるデッドチャンネルは、測定感度 に直接的な影響を与える。
デッドチャンネルの原因として、真空チェンバー内のAPDとフィードスルーの接続に使用 したツイストケーブルが挙げられる。ノイズ低減のためにツイストケーブルを強く撚った際 に、被覆を剥いた部分同士で短絡する事があった。ビーム試験中は、この間にテフロンテープ を挟んで対策したが完全ではなかった。また、このツイストケーブルとAPD 基板の接続方 法も問題となった。図7.26に示す通り、基板と水平に半田付けされたケーブルを垂直に折り 曲げて引き出したために、折り曲げ箇所に負荷が掛かり、ここで断線する事が相次いだ。し たがってAPD 基板のデザインを改善し、この問題の解消を図る。詳細については次章で述 べる。
同相ノイズ
今回取得されたデータでは、全チャンネルに伝播する同相ノイズが見られた。ビーム試験後 に原因調査を行った結果、温度モニターのケーブルをフィードスルー基板に接続した際にこの ノイズが発生する事を確認した。したがって、スローコントロールの配線を十分に静電遮蔽し て接続する。詳細については次章で述べる。他に、APDに印加する電圧を変更し増幅率を上 げることで、ノイズに対する信号の比を増やす事も考えられる。この場合、EROSで測定可能
図7.26: APD基板とツイストケーブルの接続図。
な電圧値を保つために前段増幅器の増幅率を下げて作り直すか、E-MEZにおいてさらに信号 を減衰させる必要がある。
エネルギー較正
エネルギー分解能曲線(7.18)について、105 MeVにおける各項の値は、
psto/√
E = 1.4×10−5%、 (7.22)
pconst = 4.0%、 (7.23)
pnoise/E = 1.5% (7.24)
である。フィッティング結果がデータ点を完全には再現していないため、精度の高い議論はで きないが、定数項がエネルギー分解能の主な成分である事が見て取れる。この項は主に電磁 シャワーの漏れを反映しているが、他に各チャンネルのエネルギー較正のばらつきもこの項と して現れる。また、本解析で行った宇宙線によるエネルギー較正の結果得られたエネルギー分 布は、シミュレーションにおける分布と異なるものとなった。
どちらもエネルギー較正に問題があることを示唆している。少なくとも原因として、宇宙線 によるエネルギー較正の統計誤差が挙げられる。すなわちエネルギー較正係数の基準として使 用したビーム試験中の宇宙線データのイベント数が不足していた。使用した宇宙線データのイ ベント数は、1万2000イベントであったが、各チャンネルにおけるカウント値は、最も多い もので600、最も少ないもので100程度である。検出器に対して垂直に入射したイベントのみ を用いた事も、イベント数の低下に拍車をかけている。
7.8 結果と考察 99 宇宙線のイベントレートは低く、先述の1万2000イベントは8時間近くの測定で得られた ものである。イベントの選定を行わないとすれば、エネルギーデポジットの分布のピーク部分 のイベント数は最も少ないもので300となる。十分なイベント数としてピーク部分に計1000 イベントを設定するとしても、測定時間は1日かかる見込みであり、高レートかつ安定的な較 正手法の導入が望まれる。
実機における較正手法としてLEDによる較正が計画されている。今回のビーム試験では運 用を見送ったが、この較正手法について開発が続けられている。
トリガーの時間分解能
本解析においてトリガーのタイミングは、波高がベースラインを基準とした閾値を超えたタ イミングとして取得した。トリガー波形は、図4.31に示した通り、矩形波である。そのため に本解析ではトリガー波形に対する波形フィッティングの適用を見送った。例えば、トリガー 波形をRC回路を通して記録する事や、移動平均による平滑化を適用する事で矩形波を鈍らせ る事ができる。これにより波形フィッティングの適用が容易となるが、時間分解能の対する寄 与は、今後の研究で明らかにしなければならない。
第 8 章
ECAL 試作機の改良
前章で述べたビーム試験の結果を元に、ECAL試作機に改良を施した。