EROSはPSIにおいて開発されたDRS4チップを用いて、波形を記録する。EROSを使用 するにあたり、DRS4チップのパターンコレクションと時間較正を行った。
4.4.1 DRS4 チップの動作原理
DRS4チップでは、1024個のスイッチトキャパシタアレイを、リング状に接続する。この 構造を図4.22に示す。
スイッチの閉じているキャパシタには、入力信号の波高に比例した電圧が印加される。ス イッチの閉じているキャパシタはリングを回るように入れ替わり、それぞれに、スイッチを開 く直前の電圧に比例した電荷が蓄えられる。DRS4チップは、スイッチの開閉を順番に行う事 で、開閉の各時刻における波高すなわち波形を記録する。
トリガーが入力された時点で、波形の記録を止め、Analog to Digital Converter (ADC)に
4.4 EROSの較正 49
PTFE(2)
Outer Inner
ESR(1) PTFE(2)
ESR(1)
PTFE(1) ESR(1)
PTFE(1) ESR(1)
PTFE(2) ESR(1)
Intensity [A.U.]
0.9 1.0 1.1 1.2 1.3 1.4
図4.20: 反射材の組み合わせの比較。
Reference PTFE(2)
Tile ESR PTFE(0)PTFE(1)PTFE(2)
Separated Tube ESR PTFE(0)PTFE(1)PTFE(2)
Combined Tube ESR PTFE(0)PTFE(1)PTFE(2)
Intensity [A.U.]
0.9 1.0 1.1 1.2 1.3 1.4
図4.21: ESR取り付けのバリエーションの比較。
図4.22: DRS4チップの基本構造。
よって各キャパシタに蓄えられている電荷を読み出す。本論文では、トリガーによって記録を 止めた境界となるキャパシタをストップキャパシタと呼称する。
4.4.2 パターンコレクション
DRS4チップはキャパシタの個体差により、信号を入力しなかった場合においても、固有の 波形(パターン)が記録される。この波形の例を図4.23に示す。本来の入力波形を取得する ためには、このパターンを差し引く補正を行う必要がある。この操作をパターンコレクション と言う。
信号を入力せずに取得したデータから、キャパシタ番号毎の波高の平均値としてパターンを 取得した。これを用いて同データにパターンコレクション行った。パターンコレクション後の 平均波形を図4.24に示す。入力は無いため、波形の中心値が常にゼロである事が期待される が、明らかな時間依存性を持っている事がわかる。
Capasitor Number
0 200 400 600 800 1000
Amplitude [mV]
180 190 200 210 220 230 240 250 260
0 5000 10000 15000 20000 25000 30000 35000 40000
図4.23: EROSのベースライン。
Time [ns]
0 200 400 600 800 1000
Amplitude [mV]
−25
−20
−15
−10
−5 0 5 10 15 20 25
0 5000 10000 15000 20000 25000 30000
図 4.24: ストップキャパシタ番号毎の平均
値をパターンとしたパターンコレクション 後の平均波形。
DRS4の読み出しにおいて、ADCはストップキャパシタの次のキャパシタから順に電荷を
4.4 EROSの較正 51 測定するため、読み出しまでの待ち時間に起因するストップキャパシタ番号依存性が存在する と仮定した。一例として、キャパシタからの電荷の漏れ出しが考えられる。また、ストップ キャパシタ番号が近い場合は、同じパターンを適用できると仮定した。
ストップキャパシタ番号の分布を図4.25に示す。この図から、32個ごとにストップキャパ シタになっている集団がある事が分かる。そこで、この集団毎に1つのパターンを作成しなお し、同データに対してパターンコレクションを行った。このパターンコレクション後の波形を 図4.26に示す。図4.24で見られていたような時間依存性は見られず、中心値がゼロとなって いる。以後の解析では、最後の方法でパターンコレクションを行った後の波形について行って いる。
Stop Capasitor Number % 32
0 5 10 15 20 25 30
Stop Capasitor Number / 32
0 5 10 15 20 25 30
0 200 400 600 800 1000 1200 1400 1600
図 4.25: ストップキャパシタ番号の分布。
最も左下にストップキャパシタ番号0が、右 上にストップキャパシタ番号1023が対応す る。
Time [ns]
0 200 400 600 800 1000
Amplitude [mV]
−25
−20
−15
−10
−5 0 5 10 15 20 25
0 5000 10000 15000 20000 25000
図 4.26: パターンのストップキャパシタ番
号依存性を考慮したパターンコレクション 後の平均波形。
4.4.3 時間較正
EROSは1.07 GHzのサンプリングレートで動作させる。そのため、各記録点の時間間隔は
0.94 nsである。しかし実際には各キャパシタの個体差により、時間間隔にばらつきが生じる。
これは時間分解能を悪化させるため、この時間間隔を較正した。
DRS4の時間較正の方法として、正弦波を用いた手法 [51]が知られており、今回はこれを 採用した。EROSにE-MEZを接続し、E-MEZの入力端子の一端をグラウンド、もう一端を ファンクションジェネレータに接続した。ファンクションジェネレータから20 MHzの正弦 波を入力し、EROSで波形を取得した。この際、E-MEZにおける減衰により、EROSでは振
幅50 mV程度の正弦波が記録された。この一例を図4.27に示す。記録された正弦波が真の
周期50 nsとなるように、各記録点の時間間隔を較正した。
較正前後における入力された正弦波に対する推定周期の分布を図4.28に示す。時間校正に より、分布の広がりが小さくなっている事が確認できる。
Time [ns]
0 200 400 600 800
Amplitude [mV]
−100
−50 0 50
図4.27: 時間較正のために記録した正弦波
の例。
After Entries 93655 Mean 49.97 RMS 0.1524
Period [ns]
48 49 50 51 52
Counts / 0.01 ns [A.U.]
0 200 400 600 800
After Entries 93655 Mean 49.97 RMS 0.1524 Mean 50.06 RMS 0.4171 Mean 50.06 RMS 0.4171
After Entries 93655 Mean 49.97 RMS 0.1524
図4.28: EROSの時間較正前後における、入 力された正弦波の推定周期の分布。