ECALは直径1 mの全吸収型カロリメータである。複数イベントの同時測定、荷電粒子の 入射位置の測定の為、小型の無機結晶シンチレーション検出器を集積させて構成する。ECAL
3.3 検出器の構成 35 のイメージ図を図3.4に示す。
図3.4: ECAL。
3.3.1 無機結晶シンチレータ
ECALには、高いエネルギー分解能を達成するために発光量の多い無機結晶シンチレータを 使用する。また、パイルアップイベントを抑制するためには発光の崩壊時定数が短い方が好ま しい。これらの要求を満たすシンチレータとして、先行研究によって、LYSO (Lu2−xYxSiO5) 結晶の採用を決定した [38]。表3.2にLYSO結晶と代表的な無機結晶シンチレータの特性を 示す。
結晶 LYSO GSO(Ce) PWO CsI(pure)
密度[g/cm3] 7.40 6.71 8.3 4.51
放射長[cm] 1.14 1.38 0.89 1.86 モリエール半径[cm] 2.07 2.23 2 3.57 崩壊時定数[ns] 40 600s,56f 30s,10f 35s,6f 波長[nm] 420 430 425s,420f 420s,310f
屈折率 1.82 1.85 2.2 1.95
光量[NaI(Tl)≡100] 83 3s,30f 0.083s,0.29f 3.6s,1.1f
表3.2: 無機結晶シンチレータの特性の一覧。添字のsとf はそれぞれ崩壊時定数が遅い成分 と速い成分を意味する。
結晶の大きさは20×20×120 mm3 である。放射長 X0 を単位とすれば、結晶の長さは 11X0 である。20X0 以上が望ましいとされる電磁カロリメータの基準に満たないが、これ以 上に長いLYSO結晶の生産は技術的に困難である。もっとも、結晶を長くしたとしても、シ ンチレーション光の減衰のため、一概に性能が良くなるとは限らない。結晶の短さのために、
電磁シャワーの後方への漏れが無視できず、ECAL内でのエネルギーデポジットは、低エネル
3.3.2 光検出器
LYSO結晶のシンチレーション光を検出する光検出器としてアバランシェフォトダイオード (APD: Avaranche Photo Diode)を使用する。APDは、シリコン半導体検出器であり、半導 体バンドギャップ以上のエネルギーを持つ光子が入射した場合に電子・正孔対が生成される。
この時、APDにダイオードの逆電圧を印加しておけば、電子と正孔はそれぞれ電極にドリフ トされる。さらに、電圧が十分高ければドリフトされる電子は加速され、さらなる電子正孔対 を生成する。これが連続的に起きる事で信号を増幅させる。この増幅現象をアバランシェ増幅 と言う。
APDの増幅率は、印加電圧と温度によって変化する。印加電圧が高い程、ドリフト電子は より加速される。この場合、アバランシェ増幅が起こりやすくなるため、信号の増幅率は増加 する [39]。温度が高い程、APDの格子振動が激しくなり、ドリフト電子と格子の衝突確率が 大きくなる。ドリフト電子が十分加速されるより前に格子に衝突した場合、アバランシェ増幅 が起きないため、信号の増幅率は低下する。
3.3.3 測温抵抗
APDの温度に依存した増幅率の変化を補正するために温度計を設置する。温度計として白 金測温抵抗を用いる。白金の抵抗値は、温度に対して非常に線形性が良く、精度の良い測定が 可能である。
3.3.4 発光ダイオード
高レートかつ安定的な較正手法として発光ダイオード(LED: Light Emitting Diode)を採 用する。前述した通り、APDは印加電圧や温度によって増幅率が変動する。また、APD以外 にLYSO結晶や反射材の性能も、温度や放射線などの環境因子によって変化しうる。
検出器の較正のため、LYSO結晶のシンチレーション光を模倣するように、シンチレーショ ン光に近い波長のLEDを用い、結晶にLEDの光を入射する。このLED光は、結晶のシンチ レーション光と同様に、結晶内を通過し反射材で反射してAPDへと入射する。
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第 4 章
ECAL 試作機の開発
ECALの性能評価のため、試作機を製作した。ECAL試作機は、実機と同じ構成要素を用 いた縮小版である。本章ではECAL試作機の構成と、試作機の開発における研究について述 べる。