図5.6: DAQシステムの概念図。
ビーム測定は他と比較してトリガーの周期が短いため、データの処理中に他のトリガーが発行 されうる。これをビームトリガー検出器のコインシデンスにおけるセルフVETOによって防 止した。宇宙線測定においては、ECAL試作機上下の2つの宇宙線トリガー検出器の出力の コインシデンスをトリガー信号として、宇宙線がECAL試作機を垂直に貫通するイベントを 取得した。ノイズ測定においては、クロックジェネレータからの信号をトリガーとして、信号 を含まないノイズデータを取得した。
いずれの場合も、トリガーはCOMET Trigger (COTTRI)ボード [59]に入力する。
COT-TRIは Phase-Iにおけるトリガーとして開発中のボードであるが、Phase-IIにおいても同
ボードを使用する事が検討されている。トリガーを受け取った COTTRIは、EROSに対し てイベント ID と共にトリガーを出力する。この出力端子は 1 つしか実装されていないた め、Intermediate Boardによって4 つのEROS へトリガー信号を分配する。また、同時に
EASIROCモジュールに対してもトリガーを出力する。
COTTRI、EROS、EASIROCはいずれもFPGAを用いてTCP通信を実現するSiTCP [60]
を搭載しており、Ethernetを通じてDAQコンピュータ(DAQ PC)にデータを送信する。
5.3.1 APD の温度と電圧のモニター
APDの増幅率は、温度や電圧に依存して変動するため、増幅率を一定に保つためには、こ れらをコントロールする必要がある。現在、温度や電圧のコントロールシステムは開発中であ
5.3 データ集積システム 61 る。このビーム試験では、オフラインの解析によって増幅率の変動を補正するため、APDの 温度と電圧をモニターした。
温度測定のため、各測温抵抗の抵抗値を、2端子法によって電圧値として読み出す。これを 温度測定モジュールに接続した。このモジュールは、ADCチップを搭載しており、電圧値を デジタル化する。
電圧測定のため、電圧分配モジュールの計測用端子を、電圧測定モジュールに接続した。こ のモジュールも温度測定モジュールと同様に、ADCチップによって各APDに与えられる電 圧値をデジタル化する。
以上のモジュールをマイコンボードRaspberry Pi [61]に接続する。これは後述のMIDAS フロントエンドプログラムを用い、計測モジュールからデータを取得し、DAQ PCへ転送 する。
5.3.2 MIDAS を用いた DAQ システム
現在、COMET実験におけるDAQソフトウェアとして、PSIとTRIUMFによって共同開
発されたMIDAS [62]を使用する事が予定されており、開発が進められている。このビーム試
験において、MIDASを用いたDAQシステムを開発し、使用した。
MIDASは、DAQシステムのフレームワークであり、中小規模の実験で使用される。原子
核物理実験や素粒子物理実験においてしばしば用いられる規格であるVME やCAMACな どの各種測定モジュールや、Ethernet、USB、RS232Cを始めとする各種通信を介したコン ピュータとの命令やデータの通信を補助するライブラリを提供している。さらに、ブラウザ上 でDAQのコントロールやモニターを行うインタフェースも提供している。MIDASの運用に は、DAQシステムを統轄するメインサーバーが必要となる。これは、フロントエンドプログ ラムを実行しているコンピュータと命令やデータのやり取りを行う。
このビーム試験では、DAQ PC が MIDAS のメインサーバーの役割を担うと同時に、
COTTRI、EROS等とデータを通信するDAQフロントエンドプログラムを実行した。また、
Raspberry Piはスローコントロール用フロントエンドプログラムを実行し、DAQ PCと命令
やデータのやり取りを行った。
5.3.3 イベントの再構成
各モジュールが取得したデータは、個別にDAQ PCに送られるため、同じトリガーを元と したイベントとして再構成する必要がある。COTTRI とEROSからは、データにイベント IDが付与された状態で送られるため、イベントの再構成にはイベントIDを使用する。一方、
EASIROCからのデータはイベントIDを持たないため、データを取得した時間を元にイベン
トの再構成を行う。
モジュールが入力を受け付けないビジー状態であった場合や、通信の不具合が発生した場合 において、イベントIDや時間情報が揃わないために、イベントの再構成が不可能となる。こ
使用しなかった。