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LMS 活用に向けた戦略:イノベーション理論

第7章 実践的 ICT 活用へ向けた方策

7.1 LMS 活用に向けた戦略:イノベーション理論

効果が現れることを意味している.

7-1 経済学部の学年別状況78)

学年 達成者数(a) 在籍者数(b) (a)/(b)

1年生 155 511 30.3%

2年生 330 496 66.5%

3年生 298 472 63.1%

4年生 156 388 40.2%

5年生以上 16 75 21.3%

合計 955 1,942 49.2%

(2010年2月,現在)

では,以上のような利用実績を達成するためにはどれほどの教員が関わる必要があるのだろうか.

結論として,全教員が絶えず積極的に関与する必要はない.必要条件としては,取り組みに対して(1) 全教員の理解の元で,(2)おおよそ3割程度が積極的に関わっていればよい,ということである.先の 事例で示すと,2004年度末に全教員に取り組みの主旨を説明し,授業に関連する設問を作成した.

この設問群によって学部教育の共通基盤となるコンテンツを形成した.これによって(1)の条件は満た されている.もうひとつの条件(2)では,2009年度の1年間で自学自習システムの設問を更新・アップし ている教員数は13名であった.これは教員全体の3割程度に相当する.設問群の中には,加筆・修 正されないままとなっているコンテンツも散見される.そのような退潮が見られる中で,持続的利用者が この取り組みを支えてきたことが分かる.一例から結論付けるにはいささか難があるが,この程度の支 援体制を維持できれば,組織的な取り組みが成功する可能性は極めて高くなるといえる.というもの教 員は複数の授業を担当し,その中で多くの受講生と接する.さらに,学生には4年以上にわたる学修 期間があるので,全体の3割にあたる教員が自学自習システムを活用していれば,所定の教育課程 のいずれかで必ず自学自習システムというeラーニングを使った科目を受講することになる.

まず,(1)のステップをRogers(1962)の理論で考えてみる.Rogersは,個人がイノベーションを取り 入れるまでの段階を次の5ステップで説明している.

(a) Knowledge (b) Persuasion (c) Decision

78 児島(2011b)p.98より引用.

(d) Implementation (e) Confirmation

経済学部の事例では,最初に全員への説明(b)から実施(d)までの段階を実施しているので,取り 組みの主旨は全員に理解されている.このように運用方法までを理解し体験してもらえば,レイトマジョ リティやラガードが関与しなくとも組織的な取り組みの基盤が確立する.その後にマジョリティの参加を 促すような努力を継続すればよい.アーリーマジョリティはeラーニングでの教育効果が示されると

Confirmationされ,持続的に利用するようになる.

次に(2)のステップをMoore(2002)のキャズム理論で説明してみる.キャズム(Chasm)とは,イノベー ションが普及する際に超えなければならない溝であり,とりわけハイテク製品やサービスがこれを超え られず,普及する以前に市場から消えてしまう現象を説明する理論である.イノベーションが組織内で 定着するには,図7-1のようにアーリーアダプタとアーリーマジョリティの間に横たわるキャズムを超えな くてはならない.自学自習システムの事例では,利用した専任スタッフが13名で全教員の30%を超え ており(13/32=40.6%),アーリーマジョリティの一部まで取り込んでいる.

以上のようにeラーニングが組織内で成功できるかについて,(1)全教員の理解,と(2)16%以上の 参加,であることがひとつの結論である.これはLMS導入期におけるひとつの戦略である,

キャズム

7-1 イノベーションの普及とキャズム79)

79 Moore(2002)より引用,修正.