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第6章 組織でのeラーニング活用

6.1 e ラーニング普及の課題

ICT教育環境は表6-1のように整備された.1996年から全新入生にノートパソコンを配付し,実習科 目(必修)を設置して情報リテラシー教育を行なってきた.CCS を稼働させるまでに,ネットワークはじ め十分な情報教育環境を整備している.この時期は,4章で説明した第2,3期に相当する.

6-1 ICT教育環境の整備年表

年 事項

1992年 商学部が新入生にノートパソコン配付 1994年 大学がインターネットに接続

1996年 全学部の新入生にノートパソコン配付

必修科目「情報処理入門」の新設→ 少人数でのPC実習 情報コンセントの設置:900口

1997年 学内向けPC実習テキストの作成 1998年 ノートパソコンでのインターネット実習

2000年 事務連絡用にグループウェア導入(Webベース)

2001年 システム開発

1. CCS(Campus Communication System)

2. 自学自習システム 2002年 システム稼動

CCS普及への取り組み

学生:必修科目「情報処理入門」で基本操作 教員:CCS講習会と事例紹介

職員:PC講習会と日常業務 2003年 年間27万件アクセス

約1年間の開発期間を経て,2002年にCCSを稼働させた.この特徴は一般的なLMSとは異なり,

大学内の事務システムとLMSが一体化していることである.例えば,学生は通常の授業コース(LMS)

に加えて,課外活動・奨学金・図書館などの大学生活に関わる一切の情報へアクセスすることが可能 である.CCSでは大学生活に関わる情報や支援機能が統合されており,一人ひとりのポータルがWeb 上に用意されている(図6-1参照).また,通常のLMSと異なるのは,すべての開講科目に対して授業 ページ(履修者情報を含む)が設置64)されており,教員は開講前のシラバス入力から最後の成績入力 までを授業ページで行なえる.

64 多くのLMSでは開講する授業ページを作成し,履修者を登録する作業が発生する.他方,CCSは 教務システムと連動しているので,教務部での事務処理がそのまま全開講科目の授業ページヘ反映 される.

6-1 CCSの個人ポータル画面(学生用)

Webベースで明快なインターフェイスになっているので,パソコンに苦手意識を持つユーザでもブラ ウザだけで容易に利用できる.稼働当初より履修登録をCCSで行なっているため,すべての在学生が アクセスしている.授業を含む学内のすべての情報が網羅されているので,学内ユーザの利用率は 極めて高い.利用状況をログイン数のデータで示すと,以下の様なグラフになる.稼働した初年度は 約27万ログインであったものの,順調に利用数は増加した.現在では学生の年間アクセス数が100万 に近づいているので,学生一人あたりのアクセス数は約 200 回/年になる.これは大学の授業日数

(32回×5日=160日)を超えている.このデータからもCCSは大学にしっかりと根付いたコミュニケーシ ョンツールであるといえよう.

6-2 CCSのログイン数の推移(年度別)

CCSには簡素なeラーニングシステムである自学自習システムが搭載されている.このシステムは選 択式設問65)とその解説という簡単な形式である.学生が解答するとただちに採点結果が表示される.

また,図 6-3 のように設問には,画像ファイルを添付資料として含めることができる.これを応用すれば,

音声・ビデオファイルを使った外国語のリスニング問題,Excel のデータファイルを添付すれば計算問 題の出題も可能である.このシステムの主な使い方は,授業内容に関係する設問をいくつか用意して,

授業の事前・事後学習に利用するという方法である.

学習者にとって,CCSという統合されたシステム内にeラーニングシステムがあるのは大きなメリット である.もし学内に複数の情報システムが稼働しているような場合,eラーニングで学習しようとする度 にログイン認証が要求される.頻繁に課題があるとアクセスで面倒になってしまい,利用状況が著しく 低下する恐れがある66).CCSならば大学の情報をチェックしたついでに自学自習へアクセスするという ような使い方ができる.

教員にとっても,選択式の設問形式なので作問が容易である(図6-3).また,自分の授業ページに 自学自習の範囲を指定することができる(図5-2の下,「自学自習リンク」を参照)ので,履修者へ学習 指導がしやすい.さらに,Webの履修者名簿から自学自習の取り組み状況が入手できるので,平常点 として学生の成績評価に利用できる.

65 選択肢は5択まで設定可能である.2007年度より正解は択一だけでなく複数選択も可能とした.

66 シームレスな情報環境を提供するためにシングルサインオン化する動きも多い.

6-3a 自学自習システムの出題画面(例)67)

6-3b 自学自習システムの設問登録画面(例)

67 児島(2011a)p.93より引用.

名古屋学院大学では表6-1のように情報環境を整備した経緯もあって,CCSのログイン数は実績グ

ラフ(図 6-2)のように順調に伸びていった.その反面,e ラーニングである自学自習システムを自ら積

極的に使おうとする教員はごく僅かであった.履修者名簿や学生への連絡・成績入力という事務的な 処理にはCCSを利用せざるを得ない.しかし,CCSのLMS 機能を利用するかどうかは,教員個人の 意欲や判断に任されている.とりわけ,自学自習システムを授業での学習ツールに活用すれば,大き な教育効果につながることを紹介しても,ログイン数ほどの大きな進展は見られない.すなわち,DIY 的な e ラーニング利用では学生ユーザの増加には結びつかず,全学的な広がりを見せない.以上の ことから,簡便なシステムや学生が利用するための十分な環境があっても,DIYではeラーニングまで 至らないことが明らかとなった.