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第6章 組織でのeラーニング活用

6.3 同一条件下での活用の差異

CCSおよび自学自習システムの導入から4年の歳月を経て,ようやく経済学部が教育ツールとして 組織的に活用しはじめた.前節のような取り組みを契機として,簡単なeラーニングで著しい利用増が 観察されるようになった.このプロジェクトを一過性とせず,ミクロ経済学やマクロ経済学の必修科目を 中心に継続した.その結果,自学自習システムによる基礎学力を補完する方法は,経済学部の特色 ある教育のひとつとなった.では,まったく同じICT環境にある他の学部ではどうであろうか.この疑問 に対して実際の学習データを学部別に整理して分析する.すなわち,組織的に利用されるかどうかに よって,どれほどの違いが生じるかを2種類のデータで示す.

CCSを導入した2002年には3つの学部があり,表6-1で示されるようなICT教育環境を享受してき た.各学部には独自の教育方針があり,自学自習システムの利用スタンスも異なっている.経済学部 では2004年より組織的な取り組みを開始し,以来,設問コンテンツの質量および利用方法も発展し続 けている.既存の文系2学部(商学部,外国語学部)では,数名の教員が自学自習システムを自主的 に活用するといった,いわゆるDIY的eラーニングが続いている.

経済学部と既存2学部の2グループに分けて,学習データの比較を行った.経済学部生の総数は

約2,000名であり,既存の文系2学部の学生数は2,300名ほどなので,人数的には大きな差がない.

2010年度の学習量のレベルを時系列グラフで表示した.2つのグラフとも,学習量をLevel0から6(以 下,LevelをLで表記)の7段階(レベル)で表示75)している.学生は指示された自学自習システムの 学習範囲(ターム)を全問正解(クリア)することが求められており,クリアできるまで何度も繰り返し挑戦 することがひとつの達成基準になっている.レベルは,全問クリアする回数が増えてゆくとL0からひと つずつ上がってゆく.なお,制覇したターム数の累積値で評価するので,学生が到達したレベルは下 がることはない.

75 CCSでは7つの学習段階ごとにキャラクタを用意している.学習すれば進化するので,これを学生 の学習意欲の維持に利用している.また,CCSの教員画面では,自学自習システムの学生達成度を 学部別に一覧できるようなグラフが示されている.(図6-12の上,「学習状況」を参照)

6-8 経済学部生の達成レベル状況(月別)

6-9 他学部生の達成レベル状況(月別)

まず,図6-8は経済学部の学生分布である.年度の初め(4月)は新入生が含まれているので,左端 のL0は全学生の25%ほどを構成する.授業が進行するにつれて,自学自習システムを全く利用して いないL0の割合は減り,L6が増えてゆくことが分かる.そして,春学期が終了する8月にはL0はわ ずかになり,L6は約3割に達する.同様の傾向は秋学期でも確認され,最終的にL6は40%を越える.

他方,L0の学生が学部全体の1.4%しかいなくなる.これは学部全体で自学自習システムを活用した ひとつの証左であるといえよう.

次に,既存の文系2学部である.図6-9のように時間の経過とともに変化は見られるが,明らかに経

済学部に比べてスピードは緩やかである.学部全体の授業の中で,数科目の授業でしか活用されな ければ上のレベルへ進まない.したがって,全体の分布はL1ないしL2を頂点とする単峰型になって いる.その他の特徴としては,極めてよく学習するテールの部分(L6)に2%程度の学生がいることが 確認される.既存2学部では,自学自習システムが授業での成績評価や資格試験対策などに直結し ていないにもかかわらず,2%であるが自主的に取り組む学生がいることは注目すべきである.すなわ ち,Webでの学習コンテンツが用意されれば自ら進んで学習する学生を示している.学習によるキャラ クタの進化やランキング機能による効果なのかも知れないが,2%程度の学生はこのようなeラーニング 形態に馴染むことが明らかになった.これも学生の多様性(diversity)を示すひとつの現象である.

別のデータで同一条件下での活用の差異を確認するために,学習データのうち正答数を以下の図 に示した.横軸に累積正答数,縦軸には人数をとっているので,一般的には正答数が増えるに従って 学生数が減少する.図6-10から,経済学部と既存2学部では明らかに形状が違うことが窺える.

6-10 学生の学習(正答数)分布の比較

以上のように,学部ごとの取り組みの差異が自学自習の利用状況に大きな違いを生み出したことは,

学生の学習分布データから明らかとなった.