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第 4 章 事業化した場合の経済効果及びインドへの影響の分析

2. JCM 化そのものによる経済効果の検討

本項では、3章で検討したPV、エアコン、BEMSの追加投資額と省エネによるエネルギ ーコスト低減について経済的評価をする。さらに、JCM等によって導入された機器による 追加投資がナビムンバイ地区を中心とした国内のマクロ経済に与える影響を評価する。こ の目的のため、本項では産業連関分析を用いてこの波及効果を推計する。特に、当該技術 に関連する機器が国内(ナビムンバイ工業団地も含めたインド全体)において製造される 場合と、海外から輸入される場合との双方の評価を行う。

2.1 追加投資額と省エネによるエネルギーコスト低減の経済的評価

JCM 事業化による追加投資額の算出方法は機器ごとに異なる。PVはkW当たりの追加 投資額に導入設備容量、BEMS は省エネ量当たりの追加投資額に省エネ量、エアコンは台 当たりの追加投資額に導入台数を乗じて算出する。

PVの導入設備容量、エアコンの普及台数は3章で示した通りである。PVの導入設備容 量の家庭、工場、商業の比率は面積比(7.5%、85%、7.5%)で配分した。PV・エアコン・BEMS の追加投資額は

表4.2.1の通り想定した。

表4.2.1 各機器の単位当たりの追加投資額

PV (1000Rs/kW) BEMS (1000Rs/MWh) エアコン (1000Rs/台)

93 31 25

JCM事業化によるエネルギーコスト低減額はマハラシュトラ州の電気料金に3章で推計 した省エネ量を乗じて算出した。マハラシュトラ州では複数の電力会社が異なる電気料金 で電力を供給しているが、各社の発電量を用いて加重平均をし、電気料金を算出した 34。 用いた電気料金は表4.2.2の通りである。

表4.2.2 2014-15年の電気料金(Rs/kWh)

家庭 工場 商業

6.85 9.18 10.69

出典:Economic Survey of Maharashtra 2014-2015Economic Survey of Maharashtra 2010-2011を用 いて推計。

この追加的な投資額と省エネにより得られる便益を合わせると、BEMSは1.1 billion Rs、 エアコンは2.2 billion Rs の純便益を生む。PVは工場用で5.4 billion Rs、商業用で0.8

34 電気料金については2014-15年の値を用いた一方で、発電電力量については利用可能な 最新のデータが2010-2011年であったことから、その値を用いて加重平均を行った。

79

billion Rsの純便益を生む一方で、電力料金が比較的低い家庭用PVはネットで0.01 billion Rsのコストとなる(図4.2.1)。

図4.2.1 直接的な便益・費用の推計

2.2 追加的な投資額の国内生産、雇用への波及効果分析

追加的な投資は新たな需要を生むため、国内産業や雇用数に影響を与える。

表4.2.1で示した投資額を産業別に分け、投資による国内産業の生産、雇用への波及効果

を推計した。産業別比率は文献調査などから表4.2.3で示した割合を用いた。

表4.2.3 各機器の追加投資額の産業別内訳

PV BEMS エアコン

機械 74% 21% 80%

その他製造工業製品 0% 4% 0%

建設 15% 4% 14%

商業 10% 5% 5%

運輸 1% 0% 1%

ソフトウェア業 0% 66% 0%

全ての関連する財を国内で製造した場合、誘発された分を含む総生産額は PV では 57.9 billion Rs、エアコンでは9.6 billion Rs、BEMSでは0.6 billion Rsの増加となる。この合

計は68.1 billion Rsとなり、マハラシュトラ州のGDPの0.5%に相当する。さらに、産業

の生産増加を受け、雇用がPVでは68.8 thousand person、エアコンでは11.1 thousand person、BEMSでは1.3 thousand person増加し、合計で81.3 thousand personの増加に

-20 -15 -10 -5 0 5 10 15 20 25

HouseholdPV PV

Industry PV

Commercial Air

conditioner BEMS Saved energy cost Additional investment Total benefit

Billion Rs

80

資が多いことから、波及効果が大きくなる。このため、PVとエアコンは国内で生産するか、

輸入するかで経済影響が大きく変わる。全機器を海外から輸入した場合、誘発分を含む生 産額はPVでは10.9 billion Rs、エアコンで1.4 billion Rs、BEMSで0.4 billion Rsの増加 に留まり、合計では12.4 billion Rsに留まる。雇用もPVでは22.8 thousand person、エ アコンでは2.6 thousand person、BEMSでは1.1 thousand personの増加に留まり、合計 で22.8 thousand personの増加になる。

図4.2.2 追加投資額の生産誘発効果

図4.2.3 追加投資額の雇用誘発効果

エアコン、BEMS、産業用PV、商業用PVはそれを導入する主体がエネルギーコストの 削減により便益を得ることができる。一方、家庭用PVはそれを導入する主体は導入コスト が省エネによって得られる便益よりも高いことから負担を強いられる。さらに、エアコン やPVが輸入される場合は国内経済にもたらす便益は限定的である。仮にこれらが国内で製 造されることになれば、国内の生産や雇用が増加し、経済全体にプラスの影響になる。ス マートコミュニティ化を進めていく際は、エネルギー環境関連技術の生産企業を国内に誘

100 2030 4050 60

Domestic Import Domestic Import Domestic Import Domestic Import Domestic Import

HouseholdPV PV

Industry PV

Commercial Air conditioner BEMS

Indirect Direct Billion Rs

10 0 20 30 40 50 60 70

Domestic Import Domestic Import Domestic Import Domestic Import Domestic Import

PV

Household PV Industry

PV

Commercial Air

conditioner BEMS Indirect Direct Thousand Person

81

致していくことが推奨される。