第 4 章 事業化した場合の経済効果及びインドへの影響の分析
3. インド全体の経済及びエネルギー需給に対する潜在的効果の検討
3.2.2 BEMS
BEMSについては、新たに建設されるオフィスビル等のうち、2030年に50%、2040年 に100%に対してBEMSが導入されるとした。但しビルはエアコンに比べて耐用年数が長 いため、2030年時点のストックベースでのBEMS導入比率は15%程度、即ち図4.3.4に示 す業務用電力需要のうち44 TWh程度がBEMSの対象となるとした。
3.2.3 PV
PVについては、インド政府の提出した約束草案(INDC)では2022年に100 GWの導 入が見込まれている。2030年には更に導入拡大が見込まれることから、ここではレファレ ンスケースの2030年のPV導入量16GWに対し、2030年に150 GWh、設備利用率を17%
0 100 200 300 400 500 600
1990 2000 2013 2020 2030
TWh
Residential
Commercial
84
シェアを占めることとなる。
3.3 省エネルギー導入による潜在的経済効果
上記の前提条件のもとで、エアコン・BEMS 及びPVの導入による費用・便益を計算す
ると(図4.3.5)のようになる。但し、ここでPVにおける追加コスト及び便益がAC及び
BEMSに比べて大きいため、PVのみスケールを10分の1倍している。また、ここでの省 エネ便益は石炭火力の燃料費削減分と初期投資費用、及び石炭火力発電所の運転維持費を 含んでいる。なお石炭価格については「アジア/世界エネルギーアウトルック2015」の2030 年の石炭価格106ドル/tを用いた。
図4.3.5 省エネ機器導入の費用及び便益(インド全体)
追加投資による生産誘発効果は図4.3.6及び図4.3.7のようになる。ここでもPVについ てのみスケールを10分の1倍している。国内で生産を行った場合、生産誘発効果は全体で 38兆ルピー、雇用誘発効果は4,500万人に及ぶ。38兆ルピーの生産誘発効果は、単年に換 算するとインド全体のGDPのおよそ0.8%に相当する。
-1.5 -1 -0.5 0 0.5 1
PV AC BEMS
Saved energy cost Additional investment Net benefit
10 trillion Rs (PV), trillion Rs (AC & BEMS)
85
図4.3.6 追加投資による生産誘発効果(インド全体)
図4.3.7 追加投資による雇用誘発効果(インド全体)
省エネルギーによる発電量減少効果は221 TWh、2030年の発電電力量の8.1%に及ぶ(図
4.3.8)。但しここでは、PV の導入分も「省エネ」と見做している。これにより、図 4.3.9
に示すように、石炭火力発電の設備投資は約4.1兆ルピー減少、また2030年までの累積の 燃料費は6.1兆ルピー減少する。
0 1 2 3 4
Domestic Import Domestic Import Domestic Import
PV AC BEMS
Indirect Direct 10 trillion Rs (PV), trillion Rs (AC & BEMS)
0 1 2 3 4 5
Domestic Import Domestic Import Domestic Import
PV AC BEMS
Indirect Direct 10 million (PV), million (AC & BEMS)
86
図4.3.8 省エネによる発電量削減効果
図4.3.9 省エネ機器導入による投資額の変化
レファレンスケースではエネルギー起源CO2排出量は 2013年の1,894 Mtから、2030 年には3,459 Mtまで1.8倍に増大する(図4.3.10)。これに対して、PV、AC及びBEMSを 導入することにより、2030年のCO2排出量を206 Mt(6.0%)削減することができる。
0 500 1,000 1,500 2,000 2,500 3,000
1990 2000 2013 2020 2030
TWh
8.1%(221 TWh)
-10 -5 0 5 10 15
PV, AC & BEMS Coal trillion Rs
Initial investment Fuel cost PV
AC & BEMS
87
図4.3.10 省エネルギーによるCO2削減効果 0
500 1,000 1,500 2,000 2,500 3,000 3,500
1990 2000 2013 2020 2030
MtCO2
6.0%(206 MtCO2)
88