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 Cタイプが減少し、瓦質鍋の類似形態を示すEタイプや瓦質鍋の増加が特徴である。資料数 が少なく、詳細は不明瞭である。

2.吉備型土師質椀の変化との比較

 鍋のこうした変遷を土師質椀と比較すると非常に興味深い(表3)。椀の変化を簡単に概略 すると次のようにまとめることができる。1期は中世的椀の成立期で、光沢のある大振りな深 椀が完成する。n期には「吉備型」への画一化が完成すると同時に器高の低下とミガキの消失 が本格化する気配を見せる。いずれの要素も成立期の椀を特徴づける点であることを考える と、注目すべき転期の始まりと捉えるべきであろう。皿一1期はH期に始まったミガキの消失 が完成し、さらに急速な法量減少の開始期である。1期とは異なった浅い小形の椀への転換と 評価できる。田一3〜W期は終焉期である。皿一3期には高台の縮小化が急速に進み、W期に は一部で高台の消失も認められ、椀形態自体が消滅する。

 こうした状況は、時期的にも内容的にも既述した土師質鍋の形態面の変遷と一致しているこ とは明らかである。両者の共通した動向は密接な関係を示すものであり、それは、土師質土器 全体の動きとして評価できるのではなかろうか。

3.画期と意義

〈画期〉以上の検討から、鍋の変遷の中で抽出できる重要な画期は、古代的要素を残しつつも 中世的鍋が成立する1期、古代的要素が払拭されて新たな形態への転i換と完成が進み、使用面 でも大きな変化を見せる1期〜皿一1期、従来の形態の衰退と新たなタイプの出現に見られる 終焉・再編成期の田一3期〜W期に求めることができた。さらに、これらの画期は鍋と椀の変 遷の共通性から、土師質土器全体の画期ともいえる。

〈意義〉それらの画期の背景にある要因としては土師質土器生産上の問題と、土師質土器に対 する使用上の意識の変化があげられる。

 生産上の問題では土師質土器生産者内の関係と瓦質土器生産者との関係である。

 前者では、1期に併存するA・B両タイプの違いやn期のCタイプへの画一化が注目されよ う。成立期におけるA・Bタイプの存在状況は、少なくとも二系列の工人が存在した可能性を 示唆しており、それは、椀においても吉備型土師質椀以外の土師質椀の流通が認められること に通じる。ところが、H期〜皿一1期には鍋・椀ともに画一化した姿を呈しており、この段階 で生産者側に何らかの統一が進んだ状況を窺うことができる。

 後者では田一2期における瓦質鍋や皿一3期におけるDタイプの出現、三足付鍋の足部断面 形の円形化などが重要とみる。皿一2期に出現する瓦質鍋は、Cタイプの占有率を減少させ、

そうした中で出現するDタイプは、形態の特徴に瓦質鍋に近いものをもつ。さらに、W期には 瓦質鍋あるいは瓦質の羽釜が急速に流入してくる点、皿一3期に三足付鍋の足部断面形が成立 当初の方形から、瓦質鍋と同じ円形へ主体を大きく移す点など、様々な点に従来の土師質鍋生 産者と瓦質鍋生産者とが関連を深める様子を見ることができるのではなかろうか。こうした点 から、皿一3期・W期は新たな生産の模索期といえよう。

 土師質土器使用上の意識変化の問題では、1期で求められた要素が∬期の段階に放棄され始 め、皿一1期には全く異なる容器に転換しその方向を一層強めていく点、そして小形食器に対 する鍋の出土率が皿一1期以降、飛躍的に増加する点がポイントである。

 具体的には、1期で重要な要素は、鍋では深くて大きな鍋、椀では光沢のある硬質な大振り の深椀である。1期の間は、鍋では法量の変化は認められず、椀でもミガキの粗雑化という傾 向を示しつつも、大形の深い法量や両面ミガキという要素を失うことはない。求められている 機能は変化していない状況と言える。しかし、皿期には、鍋では器高の低下から深い鍋の要素 を失い、椀では器高の低下と口径の減少・ミガキの消失化が開始される。そうした動きは、

皿一1期に一定の形態として完成する。すなわち、浅い鍋と浅くて小形の粗雑な作りの椀であ る。いずれも1期を特徴づける要素を失った形態である。椀では、その後もこの流れが継続 し、ついには高台の消滅という椀形態自体の消滅につながる。椀の占有率の変化は小形食器内       く  における椀においても見られるのである。こうした現象の背景には、土師質土器に求められる       くエの

祭祀性の問題が関わるであろう。その性格は既に椀では指摘されているが、鍋においてもn期 を境に同様の意識が広まったと考えざるを得ない。土師質土器全体の意識がこの段階に大きく 変化する可能性を指摘しておきたい。

 また、こうした様々な大きな変化が鍋と椀に共通して生じるためには、両者がその生産と流 通において密接な関連を持つことが不可欠であろう。遺跡の性格によっても遺物の様相は異な

ることは充分考えられるが、少なくとも全ての土師質土器生産において、器種ごとの独立性が 高い形態がとられていたとは考えにくい。

(6)まとめ

 鍋の変遷過程を明確にした上で、3つの画期を抽出し、その背景に生産者の問題と土師質土 器使用上の意識変化を想定した。

 中世的土器様相を成立させる1期、一定の画一化を達成する∬〜皿一1期、そして、1期に 成立した様相の終焉期であり新たな時代への再編成期といえる(皿一3〜)W期、それぞれに 見られる変化は生産者の状況を色濃く示す。また、その間でH期〜皿一1期は士師質土器に とって使用上の重要な転i換期と言える。土師質土器が全くの実用品ではなかったとは言い切れ ない。しかし、祭祀的行為の中で使われる道具を祭祀具と称すならば、土師質土器に祭祀具と いう側面がこの段階を境に強化された可能性は高い。さらに、道具立ての変化を評価するなら ば、祭祀行為自体にも変化を認める必要があるかもしれない。

 最後に、ここでは、中世前半期の煮炊具に関して、岡山県南部を代表する意味で鹿田遺跡の 例を取り上げた。現段階での分析は、遺跡の性格による違いや資料面での数量的制約性など多 くの問題点を残している。このデータをたたき台として、周辺遺跡での検証、さらに周辺地域 との比較を行い、修正・補強を進める必要があろう。また、成立期に関して前段階からの経過 もふれたいところであるが、紙面の都合もあり、これらに関しても今後の課題としておく。

       (山本)

(1)近年では、時代・地域を越えた資料の集成なども行われている。

   第4回 東海フォーラムr鍋と甕 そのデザイン』1996東海考古学フォーラム尾張大会実行委員会

(2)古くは、岡山県南部地域において「早島式土器」として通称されていた椀である。橋本久和氏らによって、

   その特徴や分布状況などから「吉備系土師器椀」と呼称されている。筆者もその用語を使用していたが、伝    統的土師器に見られる成形技法や焼成面など様々な点で異なる状況を見ることができることから、両者を    区別するべきだという立場から土師質土器としたい。また、「吉備系」に関しては、森隆氏が提唱され、鈴    木康之氏も賛同されている「吉備型」の名称がある。現在の同椀の認識からして、こうした意見は妥当と考    え、以後「吉備型土師質土器椀」を使用したい。

   百瀬正恒・橋本久和 1988「中世平安京の土器様相と各地への展開」r考古学ジャーナル』299

   森 隆 1992「中世土器の生産にみる地域型の提唱と工人集団の系譜について一西日本の土器生産を中心    とした一」『中近世土器の基礎研究W』

   鈴木康之 1996「吉備型土師質土器椀の需給構造をめぐって」第15回研究集会報告資料 中世土器研究会

(3)使用する鹿田遺跡の資料は、以下の報告書から引用している。

   鹿田遺跡第1次調査・第2次調査:岡山大学埋蔵文化財調査研究センター編 1988r鹿田遺跡1』(岡山大

  学構内遺跡発掘調査報告3)

  鹿田遺跡第3次調査・第4次調査:岡山大学埋蔵文化財調査研究センター編 1ggo r鹿田遺跡亙』(岡山大   学構内遺跡発掘調査報告4)

  鹿田遺跡第5次調査:岡山大学埋蔵文化財調査研究センター編 1993r鹿田遺跡3』(岡山大学構内遺跡発   掘調査報告6)

(4)時期は吉備型土師質土器椀から設定したものを使用する。

  鈴木康之 1988「鹿田遺跡出土の中世土器について」r鹿田遺跡1』(岡山大学構i内遺跡発掘調査報告3)

  岡山大学埋蔵文化財調査研究センター

  山本悦世 1993「吉備系土師器椀の成立と展開」r鹿田遺跡3』(岡山大学構内遺跡発掘調査報告6) 岡山   大学埋蔵文化財調査研究センター

  吉備型土師質土器椀の編年基準は上記の研究成果に基づいている。それに加え、鹿田遺跡第6次調査にお   いてさらに数量的な補強がなされたことをうけ、編年基準を補強する意味で、鹿田遺跡第1次〜6次調査   の同椀の資料を全て法量分布図(下図)に挙げた。その結果得られる時期別の分布域を、参考として法量表   にして添えている。

  ただ、鍋の分析に係わる部分に限定したため、その表記方法・数値が上記文献のものとやや異なっている   ので説明しておこう。1−1〜3期は、法量変化に大きな差を生じていないことから1期としてまとめ、

  皿期は、ここでは細分を行っていないため、分布域が広くなっている。皿期では、その後の資料の増加や分   析成果の他に5㎜単位での表記であるため、数値に変化が生じたが、平均値でみると分かるように大勢に   影響はなく、従来の編年を補強するかたちとなった。

1−1期:11世紀中頃  5 1−2期:11世紀後半     〜12世紀初頭

1−3期:12世紀前半   II期:12世紀後半 III−1期:13世紀前半 III−2期:13世紀後半  3     〜13世紀末 III−3期:14世紀初頭   IV期:14世紀前半

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