7.2 第 2 研究の方法
7.2.1 IRT 適用の前提条件の確認
IRT の適用にはいくつかの前提条件がある。加藤他(2014)の記述に従って 整理すると,特に重要な条件としては,一次元性と局所独立性が挙げられる。一 次元性とは,対象の項目群が一種類だけの能力(満足度)を測定していることで あり,局所独立性とは,能力(満足度)を 1 つの値に固定した時に各項目への 反応は互いに独立であるということである。また,IRT 適用の前提条件ではな いが,項目分析もこの節で確認する。
a.項目分析
IRT のパラメタ推定を実行する前に学校評価アンケートの項目分析をおこ なった。確認したのは,集団ごとの,項目平均,I-T相関(Item-Total 相関),
クロンバックのα係数(Cronbach, 1951)である。なお,項目平均は第 1研究 における「項目満足度」,I-T 相関は第 1 研究における「個人総合満足度との 関連度」と同値である。数式で表すと,
(項目平均値) = 𝑥̅ = 1
𝑁 ∑ 𝑥𝑖𝑗
𝑁
𝑖=1
(7.1)
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(I − T相関) = 𝑟𝑗 = ∑𝑁𝑖=1(𝑥𝑖𝑗− 𝑥̅)(𝑦𝑖− 𝑦̅)
√∑𝑁𝑖=1(𝑥𝑖𝑗− 𝑥̅)2√∑𝑁𝑖=1(𝑦𝑖− 𝑦̅)2
(7.2)
なお,𝑦𝑖 = ∑𝐽𝑗=1𝑥𝑖𝑗は,個人総合満足度(総合得点)である。
(クロンバックのα係数) = 𝛼 = 1
𝑛 − 1{1 −∑𝑛𝑗=1𝜎2(𝑥𝑗)
𝜎2(𝑦) } (7.3)
について,確認した。なお,𝜎2(𝑥𝑗)
は項目 𝑗 の得点の分散,
𝜎2(𝑦)は個人総合 満足度(総合得点)の分散である。b.一次元性の確認
IRT のパラメタ推定を実行する前にテストの測定の一次元性を, 集団ごと に,ポリコリック相関係数の固有値の減衰状況から確認した。具体的には,
EasyEstimation(熊谷,2009)を用いてスクリープロットを描いて確認した。
c.局所独立性の確認
局所独立性の指標として,Q3 統計量 (Yen, 1984)を算出した。各集団の項 目パラメタを推定し,次に受検者の特性値パラメタを推定する。項目反応デー タから,推定された項目パラメタ および能力パラメタを基に算出されるモデ ル上の期待得点(反応確率)を引いた残差得点の項目間の相関として求められ る数値が Q3統計量である。Q3統計量の算出について,泉・倉本(2017)の記 述に従って整理すると以下のようになる。
2PLMにおける Q3統計量は次の式を用いて求められる。
𝑃𝑗(𝜃̂𝑖) = 1
1 + 𝑒𝑥𝑝{−𝐷𝑎̂𝑗(𝜃̂𝑖− 𝑏̂𝑗)} (7.4)
𝐸𝑗𝑖= 𝑃𝑗(𝜃̂𝑖) (7.5)
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𝑑𝑗𝑖= 𝑥𝑗𝑖− 𝐸𝑗𝑖 (7.6)
𝑑𝑗 = {𝑑𝑗1, 𝑑𝑗2,・・・, 𝑑𝑗𝑁} (7.7) 𝑄3𝑗𝑗′ = 𝑟(𝑑𝑗, 𝑑𝑗′) (7.8)
𝐸𝑗𝑖は,特性値パラメタが𝜃̂𝑖である受験者𝑖にける項目𝑗への反応確率𝑃𝑗(𝜃̂𝑖),つ まり期待得点である。𝐷は尺度因子(定数;本研究では 1.702 とする)であり,
𝑎𝑗は項目𝑗の識別力パラメタ,𝑏𝑗は項目𝑗の困難度パラメタである。𝑑𝑗𝑖は,受験 者𝑖の項目反応𝑥𝑗𝑖と期待得点𝐸𝑗𝑖の差,つまり残差得点を表す。𝑑𝑗,𝑑𝑗′は,それ ぞれ,全受験者から得られた𝑑𝑗𝑖,𝑑𝑗′𝑖を要素とするベクトルである。𝑁は受験者 数を表す。𝑟(𝑑𝑗, 𝑑𝑗′)は,𝑑𝑗と𝑑𝑗′との相関係数を示し,これが Q3統計量𝑄3𝑗𝑗′であ る。
GRMなど多値型における Q3統計量は次の式を用いて求められる。
𝑃𝑗𝑘(𝜃̂𝑖) = 𝑃𝑗𝑘∗(𝜃̂𝑖) − 𝑃𝑗𝑘+1∗ (𝜃̂𝑖) (7.9) 𝑃𝑗𝑘∗(𝜃̂𝑖) = 1
1 + 𝑒𝑥𝑝{−𝐷𝑎̂𝑗(𝜃̂𝑖− 𝑏̂𝑗𝑘∗ )} (7.10)
𝐸𝑗𝑖= ∑ 𝑘𝑃𝑗𝑘
𝐾
𝑘=0
(𝜃̂𝑖) (7.11)
𝑑𝑗𝑖= 𝑥𝑗𝑖− 𝐸𝑗𝑖 (7.12)
𝑑𝑗 = {𝑑𝑗1, 𝑑𝑗2,・・・, 𝑑𝑗𝑁} (7.13) 𝑄3𝑗𝑗′ = 𝑟(𝑑𝑗, 𝑑𝑗′) (7.14)
項目𝑗の回答カテゴリが𝑘 = 1, … , 𝐾であるとする。𝑃𝑗𝑘∗(𝜃̂𝑖)は推定された特性値 が𝜃̂𝑖である受験者𝑖が項目𝑗において𝑘以上と反応する確率である。𝑃𝑗𝑘(𝜃̂𝑖)は推定 された特性値が𝜃̂𝑖である受験者𝑖が項目𝑗において𝑘と反応する確率である。𝐷は 尺度因子(定数;本研究では 1.702 とする)であり,𝑎𝑗は項目𝑗の識別力パラメ タ,𝑏𝑗𝑘∗ は項目𝑗において𝑘以上のカテゴリをとることに対する困難度パラメタ である。𝐸𝑗𝑖は,能力パラメタが𝜃̂𝑖である受験者𝑖の項目𝑗への期待得点である。
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𝑑𝑗𝑖は,受験者𝑖の項目反応𝑥𝑗𝑖と期待得点𝐸𝑗𝑖との差を表す。𝑑𝑗, 𝑑𝑗′は,それぞれ全 ての 受 験者 か ら得 ら れた𝑑𝑗𝑖, 𝑑𝑗′𝑖を 要 素 と す る ベ クト ル であ る 。𝑟(𝑑𝑗, 𝑑𝑗′)は,
𝑑𝑗, 𝑑𝑗′の相関係数を示し,これが Q3統計量𝑄3𝑗𝑗′である。
2PLM の場合,Q3統計量の絶対値が 0.2 を超えると,項目間の局所依存の 度合いが高いと判断される(Chen & Thissen, 1997;泉・倉本,2017)。GRM の場合,Q3統計量の絶対値が 0.36 を超えると項目間の局所依存の度合いが高 い と 判 断 さ れ る (Smits, Zitman, Cuijpers, Hollander-Gijsman, & Carlier,
2012;雲財・中村,2018)。この基準を用いて,局所独立性を確認した。
なお,特性値パラメタθの推定については,後述する7.4.3の検討を踏まえ て EAP(Expected A Posteriori)推定法を用いた。