7.2 第 2 研究の方法
7.2.4 等化法の検討
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を選択)の場合に,特性値θは最尤推定の際,発散し,具体的な数値を推定方法 上,求めることができない。そのような場合でも,何らかの推定値を与えること ができるのが,MAP 推定法と EAP 推定法といった特性値θに関する事前分布 を利用できるベイズ推定の利点である(加藤他,2014)。MAP推定や EAP 推定 であれば,上記のケースでも 合理的な推論仮定に基づき 何らかの推定値を与え られるため,貴重な分析対象データを有効に生かせると考え,検討候補とした。
なお,反応パタン𝑢が観察されたときのθの事後分布𝑓(𝜃|𝑢)は,ベイズの定理 より,
𝑓(𝜃|𝑢) =𝑔(𝜃|𝜇𝜃, 𝜎𝜃)𝐿(𝑢|𝜃)
𝑓(𝑢) (7.35)
と,表される。𝑔(𝜃|𝜇𝜃, 𝜎𝜃)はθの事前分布であり,母平均𝜇𝜃,母標準偏差𝜎𝜃の正 規分布を想定している。𝐿(𝑢|𝜃)は尤度関数であり,𝑓(𝑢)は反応パタン𝑢の周辺分 布である。ここで,MAP推定法はこの事後分布の確率密度が最大となるθの値 をθの推定値とする方法である。一方,EAP 推定法はこの事後分布の期待値(平 均値)をθの推定値とする方法である。
検討の仕方として,個人適合度を もとに指標を考案した。先述の項目適合度 の指標とした OUTFIT 統計量,標準化した OUTFIT 統計量,INFIT 統計量,
標準化した INFIT統計量の4つの指標は,それぞれ項目ごとに算出する統計量 であった。この4つの指標は受検者個人ごとに算出することもでき,これを個 人適合度という。集団ごとに,個人適合度の4つの指標のうち,少なくとも一つ 以上の基準を満たしている人数割合を適合割合と考え,MAP 推定法と EAP 推 定法を用いて,適合割合が高くなる方を本研究における 特性値θの推定方法と して採用する。
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て扱い,共通項目を含むすべてのパラメタを一度で推定する同時尺度調整法や,
既に推定されている共通項目の パラメタを固定してそれ以外の項目のパラメタ を推定する項目パラメタ固定法などがある。等化係数を用いる方法は,さらに 線形等化法と特性曲線変換法に大別される。線形等化法としては, 項目識別力 パラメタ𝑎と項目困難度パラメタ𝑏の平均をもとに等化係数を算出する Mean &
Mean 法と,項目困難度パラメタ𝑏の平均と標準偏差から 等化係数を算出する
Mean & Sigma 法がある。また,特性曲線変換法としては,共通項目のパラメタ
から得られた項目特性曲線(Item Characteristic Curve:ICC)の差の二乗の和 から等化係数を算出する Haebara 法と,共通項目の母数パラメタから得られた ICC の和の差の二乗から等化係数を算出する Stocking & Lord法がある(加藤 他,2014)。
本研究においては,等化係数を用いる方法を検討候補とした。本研究の内容 は,最終的に教育現場での実用を考えており,項目プールの管理や年度ごとに 増えるデータを一元管理する難しさ等を踏まえて,等化係数を用いない方法は,
主として利便性の観点から検討候補とはしなかった。
本研究の等化は,共通項目デザインに該当する。(図 7.1)。県の指定により,
どの学校においても共通して問わねばならない項目が 13 項目設定されており,
本研究で分析対象としたデータに関しては,年度・学校の違いを問わず,この 13 項目は共通である(2020 年時点)。この共通 13 項目を鍵として,2 つの異な る集団(年度または学校が異なる集団) を等化し,比較可能な統一尺度に乗せ て、受検者の特性値θの変化を推定する。なお,藤森(1998)では,シミュレー ションデータに 2PLM を設定した分析から,共通項目デザインにおける必要な 共通項目数の目安は 6~8個と報告されており,泉・山野井・山田・金森・対馬
(2011)でも実際の大規模学力テストデータについて2PLMを設定した分析か ら,必要な共通項目数の目安は 6~8個と報告されている。一方,熊谷・荘島
(2015)では,絶対的な基準はないが,経験的に共通項目数は 15 以上(受検者 の処遇に関わるようなテストでは 20 項目)が必要であるとされている。本研究 の共通項目 13 個は,十分な数の共通項目数であると判断して,分析を進める。
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図 7.1 本研究の調査対象データの共通項目のイメージ
共通項目デザインで項目パラメタを等化するとき, 集団①と集団② を独立に 分析し,集団②を集団①に等化する場合を想定する。 等化前の集団②の受検者 の特性値をθ,項目識別力パラメタを𝑎,項目困難度パラメタを𝑏として,等化 後パラメタにはアスタリスク*をつけ等化後特性値を𝜃∗,等化後項目識別力パ ラメタを𝑎∗,等化後項目困難度パラメタを𝑏∗で表すとすると,これらの関係は以 下の式で表される。
𝜃∗ = 𝐴𝜃 + 𝐵 (7.36)
𝑎∗ = 𝑎
𝐴 (7.37)
𝑏∗ = 𝐴𝑏 + 𝐵 (7.38)
このように,等化係数が求まれば,容易に 等化後パラメタを算出することがで きる。等化係数の算出にはプログラミング言語 R(R core Team, 2019)ver.3.6.2 で plink パッケージ(Weeks,2010)ver.1.5.1 の関数を用いた。この等化係数算出 の R コードを付録 C に示す。
等化法の検討の仕方は,藤田・前川(2012)の方法を改変した。集団①,集団
②それぞれで項目パラメタを推定し,集団 ①の項目パラメタを param①,集団
②の項目パラメタを param②とする。次に,集団②を集団①に等化するための 等化係数を算出する。Mean & Mean 法,Mean & Sigma法,Haebara 法,Stocking
& Lord 法で算出した等化係数 A,B が求まる。それぞれの等化法で算出した等 化係 数で 変 換さ れた 集団 ② の項 目 パラ メタ を param②_MM,param②_MS,
param②_HB,param②_SLとする(図 7.2)。また,これらとは別に項目パラメ
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タ固定法で集団②の共通項目については param①に固定し,集団②の独自項目 のパラメタを推定して得られたパラメタを param②_Fix とする(図 7.3)。集団
②の反応パタンとそれぞれの等化によって得られたパラメタ(param②_Fix,
param②_MM,param②_MS,param②_HB,param②_SL)を用いて,特性値θ を推定する。それぞれのパラメタから得られた特性値 θを𝜃0,θ_MM,θ_MS,
θ_HB,θ_SL とする(図 7.4)。ここで,𝜃0を真値に設定し,𝜃𝑋𝑋(θ_MM,θ _MS,θ_HB,θ_SL)それぞれの二乗平均平方根誤差(Root Mean Square Error: RMSE)を以下の式
𝑅𝑀𝑆𝐸 = √∑𝑛𝑖=1(𝜃𝑋𝑋−𝜃0)2
𝑛 (7.39)
で算出し,RMSE が低かった等化法が真値に近い等化ができたと判断する。
図 7.2 等化係数から等化後項目パラメタの算出
図 7.3 項目パラメタ固定法による等化後項目パラメタの算出
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図 7.4 各等化法での項目パラメタによる特性値θの推定